この記事でわかること
- 農地を相続したときによくあるトラブル5つがわかる
- 農地の相続でトラブルが起きやすい理由がわかる
- 農業従事者以外が農地を相続したときの対処法がわかる
農業をしたい方にとって、農地は魅力的な相続財産といえます。
しかし、「農業をしたくない」「農地が遠いので農業は無理」と考えている方も多いのではないでしょうか?
一方で相続が発生すると誰かが引き継がなくてはならず、農地法の規制もあるため、放置することもできません。
相続人全員が「農地はいらない」と考えていたら、負の財産の押し付け合いになる可能性もあるでしょう。
農地の相続では様々なトラブルが起きやすいため、農地ならではの特殊性と対処法を理解しておく必要があります。
今回は農地相続にありがちなトラブルや、対処法をわかりやすく解説します。
目次
農地を相続したときによくあるトラブル5つ
農地相続のトラブルは1つ1つの関連性が強いため、「そのうち何とかしよう」と考えていると、次のトラブルが発生し、次第に解決が難しくなります。
- 遺産分割がまとまらない
- 農地の相続手続きがわからない
- 農地転用や売却ができない
- 耕作放棄地になってしまう
- 相続税が高額になる
本コラムの後半では対処法についても解説していますが、まずどのようなトラブルが起きやすいのか知っておいてください。
遺産分割がまとまらない
かつての農地は長子(長男など)や、近くに住んでいる子供が継ぐケースが多く、本人の希望かどうかは別として、ひとまず承継者を確保することができていました。
しかし、近年は義務や負担の承継を避ける傾向が強いため、よほど収益性の高い農地でない限り、積極的に欲しがる相続人は少ないでしょう。
このような事情から、誰が農地を相続するかで遺産分割が難航し、相続手続きに移行できないケースがあります。
承継者が決まるまでは全員の共有状態になるため、決着しないまま次の相続が発生すると、さらに共有者が増えてしまいます。
共有財産は全員の同意がなければ進まないので、農地が塩漬け状態になる可能性もあるでしょう。
農地の相続手続きがわからない
農地を相続したときは、まず法務局で相続登記を済ませます。
そして次に所有者が変わったことを農業委員会へ届け出します。
どちらも馴染みのない手続きのため、何から始めたらよいかや、何を準備するべきか、まったく分からずに迷ってしまう方もおられるでしょう。
しかし農業委員会への届け出は「相続開始日から10ヶ月以内」が期限となっており、期限を過ぎると10万円以下の過料を科される可能性があります。
なお、2024年4月1日からは相続登記の義務化も決定しており、違反した場合は10万円以下の過料を科されるかもしれません。
農地転用や売却ができない
農地を売却するときは、農地のまま売却する、または宅地などに転用して売却する方法があります。
ただし、どちらも農業委員会の許可が必要であり、農地のまま売却するときは、売却相手も農家に限られます。
宅地に転用すれば住宅建築や駐車場にもできますが、原則として転用が認められない地域(農業振興地域など)もあります。
また、土地売却は基本的に抵当権の設定がないことが条件となっています。
農地によっては地主からの借金で購入し、すでに完済しているにも関わらず、抵当権が抹消されていない例も珍しくはありません。
このような状況になると、抵当権抹消は専門家に依頼するしかないでしょう。
耕作放棄地になってしまう
遺産分割がまとまらず、売却や転用もできない農地であれば、いずれ耕作放棄地になります。
しかし耕作放棄地になってしまうと、雑草の種の飛散や害虫の発生によって、近隣農地の作物に悪影響を及ぼす危険性があります。
自宅と農地が近ければ最低限の管理(草刈りなど)ができますが、遠距離の場合は難しいでしょう。
最悪の場合、近隣農家から損害賠償を要求される可能性もあるので、耕作放棄したとしても、管理だけは続けなければなりません。
また、農地を所有している間は固定資産税もかかります。
一般的な宅地よりも税額は軽減されていますが、使っていない財産のために税金を払うのは少々勿体ない状態となってしまいます。
相続税が高額になる
農地は固定資産税評価額が低いため、相続税評価額も低いと思われがちです。
ただし、市街地にある農地は宅地並みの相続税評価額になる可能性が高いので、相続するときには高額な相続税がかかるかもしれません。
市街地農地の場合は、路線価方式をベースにした「宅地比準方式」によって相続税評価額を求めますが、計算方法はかなり複雑です。
正確に計算するには農地の形状や接道状況なども考慮するため、専門家でなければ難しいでしょう。
また、市街地以外の農地は評価額が低い反面、面積が広い、または筆数(土地を数える単位)が大きいケースがあります。
相続税評価額は土地面積と連動しているので、大規模農家の相続税は高額になるかもしれません。
農業従事者以外が農地を相続したときの対処法
サラリーマンなど農業従事者以外の人が農地を相続すると、様々な問題が発生します。
相続しても農業を維持できないようであれば、次の対処法を検討してみてください。
- 農地として売却する
- 宅地などに転用して売却する
- 農地以外の活用方法に切り替える
- 相続放棄する
それでは1つずつ見ていきましょう。
農地として売却する
本コラム前半でも触れていますが、農地として売却するためには農業委員会の許可が必要です。
売却相手も農家に限られるため、買い手を探すだけでも大変な作業となります。
しかし、農業委員会としても耕作放棄地の拡大は避けたいところでしょう。
あらかじめ周辺の農家に相談しておけば、農業委員会と連携して買い手を探してくれる場合があります。
ただし、売却しにくい農地は「買い手市場」のため、希望額で売れる可能性は低くなります。
宅地などに転用して売却する
農地から宅地にするときも農業委員会の許可は必要ですが、転用できれば活用の幅が広がるため、買い手を見つけやすくなります。
宅地は農地よりも高く売却できるので、転用許可が下りそうな農地であれば検討するべきでしょう。
ただし、ほとんどの農地は表層改良が必要であり、地盤の状態によっては杭打ち工事を行わなければならない場合もあります。
一般的に地盤改良などの費用は買主負担になるため、「どうせ買うのであればコストがかからない宅地がよい」と誰もが考えるでしょう。
したがって、よほどの立地条件でなければ売れ残る可能性もあります。
農地以外の活用方法に切り替える
宅地や雑種地に転用できれば、賃貸アパートの経営や駐車場経営に切り替えることもできます。
安定的な賃料収入も確保できるので、土地面積や形状、立地条件がよければ検討する価値があります。
ただし、農業委員会の許可が必要であり、賃貸アパートにする場合は建築資金を調達しなければなりません。
投資額に見合うだけの利回りも重要なので、少なくとも30年先を見据えた事業計画が必要になるでしょう。
相続放棄する
農地売却や転用が難しい場合は、相続放棄も選択肢になります。
相続放棄すると、もともと相続人ではなかったことになるので、農地を相続する義務から解放されます。
しかし農地だけの相続放棄はできないので、現金や預貯金などの財産相続も諦めなければなりません。
また、相続放棄は「相続開始を知った日から3ヶ月以内」が期限となっています。
期限後の相続放棄は認められないので、注意しましょう。
まとめ
農地相続のトラブルは、一般的な不動産相続と性質が異なるため、解決策も複雑になります。
農地法は、農地や農家を守るための重要な法律です。
しかし、農業従事者以外の人にとっては厄介な代物であり、スムーズな相続の障壁になっているケースもあります。
また、ご先祖様の名義で登記されている農地であれば、遺産分割協議の成立すら難しくなるでしょう。
市街地農地の場合は相続税の問題もあるので、納税資金の準備や、相続税申告にも対応しなければなりません。
農地の相続で困ったときは、できるだけ早めに相続の専門家へ相談してください。
登記関係は司法書士、税金関係は税理士がトラブル解決をサポートしてくれます。
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