この記事でわかること
- 相続登記の委任状がどんなケースで必要なのかがわかる
- 相続登記の委任状が自分で作成できる
- 相続登記を専門家に依頼した場合の費用がわかる
相続財産に不動産が含まれていた場合は相続登記をする必要があります。
相続登記をせずに放置していると将来トラブルになる可能性があります。
面倒に思えてもすみやかに登記しておくと良いでしょう。
もちろん、自分で相続登記をせずに誰かに依頼することもできます。
なるべく費用を抑えるために相続登記を自分でやりたいという場合もあるでしょう。
この場合は委任状が必要です。
では、委任状はどんなケースで必要なのでしょうか。
何を記載する必要があるのでしょうか。
ここでは相続登記の委任状とその書き方について解説していきます。
相続登記とは?
相続登記とは、法務局に申請する不動産の名義変更手続きのことです。
不動産の所有者が亡くなったときに、名義を元の所有者(被相続人)から相続人へと変更する手続きのことを指します。
この手続きは現行の法律では義務ではなく任意の手続きとなっています。
そのため、いつまでにしなければいけないと期限が定められているわけではありません。
でも、だからといって後伸ばしにして放置してしまっていると後々問題が生じます。
相続登記をせずに放置しておくと後々大変になる
たとえば、相続登記をしていない不動産はそのままだと売却することができません。
不動産の名義が故人のままだとその不動産を処分することができないのです。
また、いざ不動産を処分したいと思って名義変更をしようとしても、元の所有者が亡くなってからかなり年月が経っていた場合は手続きが煩雑になりがちです。
元の所有者の相続人の中にすでに亡くなった人がいたりすると相続人の数が子や孫と、どんどん増えていきます。
結果、相続登記のために全く面識のない遠い親戚の印鑑証明書と実印が必要になり、手続きがスムーズに進まないことがよくあるのです。
また、相続登記をしていないままだとその不動産を担保にして融資を受けることもできません。
こうした事態を防ぐためにも、相続登記はできるだけ早くしておくのが最善です。
委任状とは?
委任状とは、自分以外の他人に代理権を与えて手続きをしてもらうときに使用する書類です。
たとえば、自分の代理として子供や司法書士に相続登記をしてもらうときに必要となります。
相続登記をする人は以下の3パターンになります。
- ・遺言の内容に従って登記する場合
遺言で指定された受遺者や相続人が登記申請人になる。 - ・遺産分割協議の内容に従って登記する場合
遺産分割協議の結果、不動産を相続することになった相続人が登記申請人になる。 - ・法定相続分に従って登記する場合
相続人全員、もしくは相続人のうち1人が代表で相続登記をする。
上記のケースでそれぞれ登記申請人本人が申請する場合、委任状は必要ありません。
逆に、本人以外が代理で申請する場合、委任状が必要になります。
委任状が必要なケース・不要なケース
相続登記の際に、いつも委任状が必要となるわけではありません。
以下の通り必要なケースと不要なケースがあります。
家族や司法書士に依頼するときは委任状が必要
すでに述べたように、登記申請人以外の人が申請する場合は委任状が必要となります。
相続した不動産が遠方にあるため、家族や親せきに相続手続きをお願いしたいこともあるかと思います。
もちろん、司法書士など専門家に任せるケースもあるでしょう。
このように誰かに依頼する場合は委任状が必要になります。
委任できる相手は司法書士や弁護士など専門家に限りません。
基本的には誰にでも依頼することができます。
知人、友人にも依頼することができるわけです。
とはいえ、ほとんどの場合は家族や親せきなど信頼できる相手に頼むケースがほとんどでしょう。
また司法書士、弁護士以外の人が報酬を得て相続登記を代理で行うのは法律違反ですので注意しましょう。
法定相続分とは異なる割合で相続するときは委任状が必要
相続人の代表者が法定相続分と異なる割合で相続の手続きをするときも、委任状が必要となります。
たとえば、法定相続人が長男と次男の2人で長男が相続登記の手続きを行うとします。
このケースでは法定相続分は長男と次男共に1/2です。
これを長男2/3、次男1/3など法定相続分と異なる共有持分で登記する場合は、次男から長男への委任状が必要になります。
法定相続分通り1/2ずつの共有で申請するのであれば委任状は不要です。
でも、この場合は登記申請しなかった次男は登記完了後に登記識別情報を受け取ることができませんので注意が必要です。
本人申請の場合は委任状は不要
相続人や受遺者本人が申請するときは委任状は不要です。
たとえば遺産分割協議の結果、長男が不動産を相続することにした場合、長男本人が申請するのであれば委任状は不要です。
法定代理人が申請するときは委任状は不要
本人以外が相続登記するときは基本的に委任状が必要ですが、例外もあります。
法定代理人が申請する場合は委任状は必要ありません。
法定代理人とは、法律で代理権を認められている人のことで具体的には以下のようなケースがあります。
- ・親権者(本人が未成年者の場合)
- ・成年後見人(本人が成年後見開始の審判を受けた場合)
- ・未成年後見人(本人が未成年者で親権者がいない場合)
このようなケースでは、法定代理人にすでに代理権が認められているので委任状は必要ありません。
ひな形から自分で作成する書き方と注意点
委任状のひな形は下記のようになります。
ここでは委任状の書き方と作成時の注意点を解説していきます。
住所、氏名を正確に記載する
代理人、相続人、委任者の住所氏名を記載する部分では必ず住民票の記載通りに正確に書くようにしましょう。
間違っていると個人を特定できないので登記申請を受け付けてもらえない可能性があります。
一文字ずつ確認して正確に記載しましょう。
「登記の目的」は単有か共有かで書き方が変わる
ひな形では登記の目的は「所有権移転」となっています。
この部分は、被相続人が不動産を単独所有か共同所有かで書き方が変わります。
単独所有の場合は「登記の目的 所有権移転」と記載します。
共同所有の場合は「登記の目的 法務太郎持分全部移転」と記載します。
(上記のうち「法務太郎」の部分は被相続人の氏名を書きます。)
被相続人が不動産を単独で所有していたのか共有だったのかは、登記事項証明書で確認することができます。
登記事項証明書の権利部が「所有者」と書かれている場合は単独所有、「共有者」となっている場合は共有です。
「原因」は相続発生日も記載する
登記の原因の部分では、「令和○○年○○月○○日 相続」というように相続が発生した日、つまり被相続人が亡くなった日を記載します。
亡くなった日についても戸籍謄本などを確認して正確な日付を記載するようにしましょう。
「相続人」は単独所有か共有かで書き方が変わる
相続人の部分では、まずは「(被相続人 法務太郎)」と被相続人の氏名をかっこ内に記載します。
次の行では不動産を相続する人を記載します。
この部分は、被相続人が不動産を単独所有だったか、共有だったかで書き方が変わります。
被相続人が不動産を単独で所有していた場合
相続人の住所、氏名を書きます。
もし相続する人が複数いる場合は、下記の様に住所、氏名に加えて持分も記載します。
被相続人が元々単独で所有していた場合は、相続人の持分を合算すると当然1になります。
被相続人が不動産を共有していた場合
相続人が1人の場合でも、下記の様に持分をも記載しなければいけません。
ここで記載する持分は被相続人が元々所有していた持分になります。
登記事項証明書で確認しましょう。
たとえば、被相続人の持分が2/3で、1人で相続する場合は下記のようになります。
また、被相続人の持分が2/3で、2人の相続人がそれぞれ3:1で相続する場合は下記のようになります。
相続人の持分がそれぞれ3/4、1/4とはならない点に注意してください。
不動産情報を正確に記載する
不動産の表示の部分では、登記の対象となる不動産を記載します。
「不動産の表示」と書いてから登記事項証明書を確認しつつ以下の情報を正確に記載します。
- ・土地の場合は、不動産番号、所在、地番、地目、地積
- ・家屋の場合は、不動産番号、所在、家屋番号、種類、構造、床面積
なお、マンションの1室の場合は、記載する部分は多くなります。
不動産番号、一棟の建物の表示、専有部分の建物の表示、敷地権の目的である土地の表示、敷地権の表示を登記事項証明書通りに記載します。
マンションの一室の場合、不動産の表示は以下のようになります。
相続登記に関連する手続きも委任する
相続登記の申請に関連して、他の付随する手続きもあります。
以下のような捕捉的な件に関しても委任しておきましょう。
- 1.登記識別情報に関する一切の件
- 1.復代理人選任に関する一切の件
- 1.原本還付請求受領に関する一切の件
- 1.原本還付請求受領に関する一切の件
- 1.登記識別情報受領に係る復代理人選任に関する一切の件
- 1.登記申請の取下及び登記に係る登録免許税の還付金を受領すること又は再使用証明申出の請求受領に関する一切の件
白紙委任状には注意が必要
白紙委任状とは誰に何を委任するか、どの不動産に関する登記を依頼するのか等の部分が白紙の委任状です。
あとから受任者が空白の部分に書き足して使用します。
便利ではあるのですが、白紙委任状は渡さないのが最善です。
思いもよらない内容を書き足されて悪用されないとも限りません。
捨印も避ける
捨印とは、念のため事前に欄外に押しておく訂正印のことです。
これがあると、委任状に小さな不備があった場合でも改めて訂正印を押すことなく捨印を使って訂正することができます。
便利ではあるのですが、やはり捨印も悪用されないとは限りません。
勝手に内容を書き換えられてしまう可能性があるわけです。
司法書士など専門家に依頼するとき以外は、訂正印で対応するのが最善でしょう。
相続登記を専門家に依頼する場合の費用は?
相続手続きを司法書士に依頼した場合の費用は、不動産1件あたり5~8万円が相場です。
登記する不動産1件あたり、司法書士への報酬のみで大体これだけの費用がかかります。
この他に、戸籍など関係書類の取得手数料、登録免許税などが必要です。
まとめ
ここまで解説してきたように相続人や受遺者本人が相続登記をする場合は委任状は不要です。
でも、誰かにお願いするときには委任状は必要です。
是非ここで解説した内容を参考にし、注意点に留意しつつ作成なさってください。
相続登記をしないまま放置していると将来必ずと言っていいほどトラブルになりますし、手続きも煩雑になります。
早めに申請をされるようお勧めします。
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