この記事でわかること
- 株を相続した場合の相続税の計算方法を知ることができる
- 株を相続する際に相続人がすべきことについて知ることができる
- 株を相続する際に発生する相続税を節税する方法がわかる
被相続人が亡くなった時に財産として保有していることが多いものの1つに、株があります
相続財産となった株については、相続人が遺産分割して相続することとなりますが、株に対して発生する相続税の計算方法はどのようになるのでしょうか。
また、株を相続する際に、相続人としてすべきことはあるのでしょうか。
株を相続する段階ではじめて手続きや税金について知ると、慌てて対応しなければなりません。
そのため、事前に株の相続に関する事項について、確認しておきましょう。
目次
株の相続にかかる税金の計算方法について
相続税の税額は、財産の種類に関係なく、すべての相続財産の合計額をもとに計算します。
ただ、それぞれの財産について評価額を計算する必要があり、その計算方法は財産ごとに定められています。
また、株には上場株式と非上場株式の2種類があり、それぞれ評価額の計算方法が異なります。
上場株式の評価方法
上場株式とは、一般的に株式投資を行う場合に購入する金融商品のことを言います。
東京証券取引所などに上場している、株式や投資信託などが該当します。
上場株式は、取引所で毎日公表されている金額をもとに評価を行います。
原則として、亡くなった日の最終価格が評価額となりますが、このほかに3つの価格を求めて、一番低い価格を用います。
3つの価格とは、(1)課税時期の月の終値の平均額、(2)課税時期の前月の終値の平均額、(3)課税時期の前々月の終値の平均額です。
なお、この計算は証券会社に依頼すれば書類をもらうことができるため、自分でする必要はありません。
非上場株式の評価方法
非上場株式とは、上場株式以外のすべての株式などが該当します。
世の中にある株式の大半は非上場株式ですが、一般的に企業経営者でなければ手にすることはないでしょう。
非上場株式は取引所で取引されないため、客観的な価格は公表されておらず、自分で評価額を計算しなければなりません。
評価方法には、(1)原則的評価方式と(2)配当還元方式という2つの方法があります。
(1)原則的評価方式は、会社の「正味財産」と、「配当や利益等」に着目して、その会社の株式を評価する方法です。
会社の正味財産から純資産価額を計算します。
また、会社の配当や利益等の金額と、同業種の上場企業の数値から、類似業種比準価額を計算します。
その後、会社の規模に応じて、純資産価額と類似業種比準価額を組み合わせて、その会社の株価を求めるのです。
(2)配当還元方式とは、株主として配当金を受け取る権利を評価する方法です。
会社の支配権がなく、わずかな株式しか保有していない少数株主だけが利用できる方法です。
1年間の配当金額を10%で還元して、株式の評価額を計算します。
株式の相続方法とは
株式を相続する際には、名義を変更するための手続きを順番に行う必要があります。
名義を変更しないで放置しておくと、後々トラブルになる可能性があるため、遺産分割が成立したら必ず手続きを行いましょう。
上場株式の相続手続き
上場株式の相続手続きはすべて、証券会社など取引していた会社で行います。
被相続人の戸籍謄本・住民票の除票や相続人の戸籍謄本・印鑑証明書などの書類が必要となります。
また、遺産分割協議を行った場合は、遺産分割協議書が必要です。
証券会社ごとに定める書式もあるため、まずは証券口座を開設している証券会社等に連絡するようにしましょう。
さらに株を相続する人は、自分名義の証券口座を開設しなければいけません。
自分名義の証券口座をすでに持っている人はいいですが、証券口座を持ってない人は証券会社で口座を開設してください。
自分名義の証券口座を開設できれば、証券会社に申請書を提出して、株式の振り替えをします。
上場株で証券会社が分からないとき
「上場株を持っているけど、どこの証券会社か分からない」というケースもあるでしょう。
証券会社が分からない場合は、証券保管振替機構に問い合わせしてください。
証券保管振替機構に問い合わせすれば、保有している株がどこの証券会社のものなのか教えてくれます。
問い合わせのときには、開示請求書・戸籍謄本などが必要になるので、準備しておきましょう。
非上場株式の相続手続き
非上場株式の株主の管理を行っているのは、その株式を発行している会社です。
そのため、相続手続きもすべてその会社が行うこととなります。
まずは株式を発行している会社に連絡をし、その指示に従って相続手続きを行いましょう。
株の相続時に相続人がやっておくこと
亡くなった人が株式を保有していた場合、相続人としてどのようなことをしなければならないのでしょうか。
相続財産が株の場合だけに特有の手続きもあるため、忘れずに行うようにしましょう。
株を保有しているかどうかの確認
まずは、被相続人が株を持っているかどうかを確認します。
株を持っていると思っていても、たまたま売却したところで何も保有していない場合もあります。
また逆に、株を保有していることを知らない場合もあります。
株を持っているかどうか確認するには、証券会社や株式発行会社からの郵送物を手がかりにするのが一般的です。
ネット証券の場合は郵送物が少ないため、メールからその手がかりを探すこともあります。
また、直近の確定申告書で株式の保有をうかがわせる内容になっている場合もあるため、あわせて確認しておきましょう。
非上場株式の場合は発行会社からの売渡請求がある場合も
非上場会社の多くは、経営者一族がオーナーとしてその会社の株式を保有し、経営を行っています。
オーナーは、株主だった人が亡くなり相続人が株主となる場合、新しく株主となる人がどのような人か、非常に不安に感じています。
会社の経営方針にそぐわない人が株主となって、会社の経営が意図しない方向に向かってしまわないか、心配なのです。
そこで、非上場会社は、相続人に対して株式の売渡請求を行うことが認められています。
相続人は、会社からの売渡請求を受けた場合は、その請求に従って売却することもできますし、拒否することもできます。
なお、この請求に従って売却した場合は、売却益に対して約20%の課税で済むことが決められています。
売却額が多額になる場合は、売渡請求を受けたら売却することも選択肢に入れて検討する必要があります。
遺産分割協議で相続人を決定する
被相続人が株を保有していた場合は、株を相続する人を遺産分割協議で決めなければなりません。
また、遺産分割協議で決めた内容は、遺産分割協議書にまとめておく必要があります。
この遺産分割協議書は、その後の名義変更手続きの際に使用するため、相続人全員が押印して保管しておくようにしましょう。
株の相続税について
株を相続するときに気になるのが、相続税だと思います。
株も他の相続財産と同じように、相続税が発生します。
相続税の税率は、相続する財産の金額によって、下記のように異なります。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | – |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
例えば相続する株の評価額が4,000万円だとしたら税率は15%となり、592万円の相続税がかかります。
※相続では利用できる控除が複数ありますが、今回の計算では入れておりません。
相続税は他の税金に比べて、税率が高く設定されているため、支払う税金も多くなりがちです。
もし自分が株を相続するなら、評価額から全体の金額を計算して、税率・相続税の金額をチェックしておきましょう。
株相続時に発生する税金を節税する方法
最後に、株を相続した場合に発生する相続税の負担を減らす方法について考えてみます。
ただし、これらを実践しても、ある日突然税金が安くなるわけではありません。
長期的な計画のうえで、節税につながるような対策に取り組む必要があるのです。
相続より前に株式を贈与・売却する
上場株式であれば、相続が発生する前に株を売却することで、株に対する相続税を減らすことができます。
株から現金に財産の形が変わるだけと考えるかもしれませんが、納税資金を確保するうえでも、現金化することには意味があります。
一方、非上場株式については、その会社の後継者に贈与しておくことで、相続税の負担を減らすことができます。
事業承継税制などの特例を利用することができれば、さらにその負担を軽減することができるため、検討してみましょう。
非上場株式の評価額を下げる
非上場株式の評価額は、複雑な計算方法により、その1株あたりの評価額を計算することとされています。
そのため、これまでの財産の状況や配当政策などを見直すことで、1株あたりの評価額を下げることができる可能性があります。
何をすると評価額が下がるかは会社ごとに異なるため、専門家に相談しながら、株価を下げる努力をしてみましょう。
株の遺産分割について
株を相続では、相続人の人数によって方法が変わります。
相続人がひとりしかない場合なら、すべての株を相続すればいいだけですが、複数いれば遺産分割が必要です。
遺産分割には、下記のような3つの方法があります。
①株をそのまま渡す
株をそのまま渡す方法を現物分割といいます。
例えば相続人が2人いて、相続する株が全部1,000株ある場合は、500株ずつ相続します。
現物分割だと、株を売却して現金化する手間もかからないため、スムーズな相続ができます。
②株を現金化する
株を売却して現金化したものを、相続する方法を換価分割といいます。
株の相続があったとしても、相続人が「株を保有したくない・運用したくない」という場合もあるかもしれません。
また相続税が発生して、その支払いに急遽現金が必要になる可能性もあります。
そのような場合に、株を現金化すれば、すぐに税金を支払えるというメリットがあります。
③ひとりが株を相続して、残りの人に現金を渡す
相続人のひとりが株をすべて相続して、残りの相続人に株相当の現金を渡す「代償分割」という方法もあります。
例えば相続する株の評価額が3,000万円で、相続人がA・Bの2人いたとします。
Aが株をすべて相続して、Bに1,500万円を渡すのが代償分割になります。
親が会社を経営しており、子供に経営権を引き継ぎたい場合などに、株を分散させることなく相続させられるメリットがあります。
まとめ
株が相続財産になるのは、株式投資を行っている方や中小企業の経営者一族が亡くなった場合に該当します。
株式を保有している理由が異なるため、上場株式と非上場株式を保有している場合に分けて考える必要があります。
上場株式を相続した場合は、売却すれば簡単に現金に換えることもできますし、そのまま保有することもできます。
また、相続前に行う対策も売却するだけであり、簡単に実行することができます。
一方、非上場株式の相続の場合は、簡単に売却できず、相続税の負担だけが重くのしかかるケースも少なくありません。
少しでも相続税の負担を減らせるよう、その評価額を下げる努力を続けることも重要になります。
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