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最終更新日:2023/3/7

結婚・子育ての資金贈与の特例が改正!非課税対象者や範囲の変更、デメリットを解説

古尾谷 裕昭
この記事の執筆者 税理士 古尾谷裕昭

ベンチャーサポート相続税理士法人 代表税理士
東京税理士会 登録番号104851

東京、横浜、千葉、大宮、名古屋、大阪、神戸など全国の主要都市22拠点にオフィス展開し、年間2,200件を超える日本最大級の相続税申告実績を誇る。 業界最安水準となる明朗料金ときめ細かいフォローで相続人の負担を最小にすることを心がけたサービスが評判を得る。1975年生まれ、東京都浅草出身。

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書籍:今さら聞けない 相続・贈与の超基本
Twitter:@tax_innovation
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結婚・子育ての資金贈与の特例が改正!非課税対象者や範囲の変更、デメリットを解説

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この記事でわかること

  • 結婚・子育ての資金贈与に関する特例の概要を理解できる
  • 結婚・子育ての資金贈与に関する特例の利用要件を理解できる
  • 特例のメリットやデメリットがわかる
  • 2021年の税制改正によって変更された特例の内容がわかる

景気の先行き不安などから結婚や出産に踏み切れないという方も多いのではないでしょうか?

「結婚・子育ての資金贈与に関する特例」は、父母や祖父母からの資金贈与1,000万円が非課税となるため、結婚や出産、子育て資金に不安を感じている方にはメリットの大きい非課税制度です。

当初は平成31年3月31日までの時限立法でしたが、2回の税制改正により令和5年(2023年)3月31日まで延長されることになりました。

結婚や子育てを控えているカップルや夫婦にとって有益な制度ですが、具体的な利用方法やメリット・デメリットはあまり知られていないため、今回の記事で詳しく解説します。

2021年の税制改正によって変更された特例の内容についても紹介しますので、結婚や子育てを控えている方は参考にしてください。

結婚・子育ての資金贈与に関する特例とは

「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」とは、父母や祖父母(直系尊属)から子や孫(直系卑属)への贈与額1,000万円までを非課税とする制度です。

資金の用途は結婚や出産、子育てに限られており、利用できる金融機関や受贈者(お金を受け取る人)の年齢や所得などにも制限はありますが、金銭的な不安から結婚や出産に躊躇している方にとっては利用価値のある制度となります。

もともとは平成27年4月1日~平成31年3月31日までの特例措置でしたが、平成31年の税制改正により2年間延長され、さらに令和3年(2021年)の改正で令和5年3月31日まで使える特例になりました。

ではさっそく、結婚・子育て資金贈与に関する特例について要件や特徴などについて解説します。

2022年の改正による変更点

2022年12月に結婚・子育て資金贈与に関する法律改正がありました。

この改正によって、下記の2点が変更になります。

期間の延長

2022年の改正によって、特例の適用期間が延長されました。

以前は2023年3月末が期限でしたが、延長によって2025年3月末まで特例を利用できます。

使いきれなかったお金の課税割合が増える

結婚・子育て資金特例で贈与を受け取った場合、30歳までにお金を使い切らないと贈与税がかかります。

ただしその場合の税率は、通常の税率に比べて低い税率になっていました。

しかし2023年4月以降は、使い切れなかった場合の贈与税は、通常の贈与税率と同様になります。

つまり特例の贈与を使い切れなかった場合の、贈与税が高くなります。

特例を使って贈与をする場合は、30歳までにすべてのお金を使い切ることが重要です。

2021年に改正された結婚子育て資金贈与のポイント

景気の先行きが見えず、結婚や出産に踏み切れない若年層は少なくないため、両親や祖父母からの資金援助は大いに助かるでしょう。

しかし、一方では「税金がかかるから」という理由で、贈与を控える親や祖父母もおられます。

結婚・子育てのネックが資金不足や贈与税であれば、「結婚・子育て資金贈与の特例」の活用を検討してみましょう。

2021年の税制改正で一部の内容も変わったため、活用するときは最新内容のチェックも必要です。

適用範囲の緩和で有利になった部分もありますが、相続税が2割増しになるケースもあるので、改正のポイントをしっかり押さえておきたいですね。

では、今回の改正内容の重要ポイントをわかりやすく解説します。

特例の期間が令和5年3月31日まで延長

令和3年(2021年)の改正により、「結婚・子育て資金贈与の特例」は2年間延長され、令和5年(2023年)3月31日まで適用できるようになりました。

しかし、結婚や子育て費用を父母や祖父母が出したとしても、もともと扶養義務の範囲内になるため、特例なしでも非課税扱いになります。

累計でも7,200件程度(令和3年3月末時点)しか利用されていない実態があることから、今後は制度廃止も検討されているようです。

従って、手持ち資産を1,000万円減らしたいなど、今後は相続税対策が主目的になるケースも考えられるでしょう。

他にも次のような改正点がありますが、令和3年3月31日までに利用開始している場合は、改正前の内容がそのまま適用されます。

特例の対象が18歳~に変更

結婚・子育て資金贈与の特例には民法改正も反映され、令和4年4月1日以降は、受贈者の適用年齢(対象年齢の範囲)が以下のように変更されます。

改正前の対象年齢:20歳以上~50歳未満
改正後の対象年齢:18歳以上~50歳未満

成年年齢の引き下げも令和4年4月1日以降に施行されるため、民法第4条と足並みを揃えた改正内容となっています。

18歳・19歳の子供や孫に結婚資金などを贈与したいときは、対象年齢が拡張される令和4年4月以降に行うとよいでしょう。

子育て資金に利用できる保育料の範囲が拡大

令和3年4月1日以降は、子育て資金に利用できる保育料(教育資金)の範囲も拡大されます。

1日あたり5人以下の乳幼児を保育する認可外保育施設については、都道府県知事等から一定基準を満たす旨の証明書の交付を受けたものに支払われる保育料等が追加されました。

一定基準を満たす旨の証明書とは、「認可外保育施設指導監督基準を満たす旨の証明書」であり、認可外保育施設指導監督基準を満たした場合に交付されます。

孫の管理残高に相続税2割加算が適用

結婚・子育て資金贈与の特例を利用する場合、信託銀行等に専用口座を開設しますが、贈与者死亡時の管理残高は以下のような扱いに改正されています。

改正前(令和3年3月31日まで)は、贈与者が死亡した時点で管理残高があった場合、孫が管理残高を取得しても一般的な相続税計算をしていました。

しかし改正後(令和3年4月1日以降)は、相続や遺贈により孫やひ孫が管理残高を取得した場合は、相続税の2割加算が適用されます。

もともと孫やひ孫には相続税の2割加算を適用していたので、教育資金贈与や結婚子育て資金贈与の特例についても、同様の扱いになったということです。

なお、代襲相続によって孫やひ孫が相続人になった場合は、2割加算は適用されません

結婚・子育ての資金贈与に関する特例の要件

結婚・子育ての資金贈与に関する特例の要件

結婚や出産、育児を控えているカップルや夫婦にはメリットの大きい特例ですが、利用にあたってはいくつかの要件を満たす必要があります。

贈与者と受贈者の関係および受贈者の年齢や所得に関する制限、贈与金の使途などさまざまなので、利用を検討する場合にはしっかり把握しておいてください。

結婚資金に使えるお金は300万円程度

結婚・子育ての資金贈与に関する特例では贈与金の配分が決まっており、結婚資金として使えるお金は300万円程度となっています。

結婚資金といっても内容はさまざまですが、挙式や衣装代などの婚礼費用、新居へ転居する際の敷金・礼金や家賃などが該当します。

婚礼費用については「婚姻の日の1年前の日以後に支払われるもの」と定められており、転居費用についても一定期間内の支払い条件があります。

結婚資金として使った残額700万円程度が妊娠や出産、育児費用として使用でき、内容としては不妊治療や妊婦健診、分べんや産後ケアに関する費用のほか、供の医療費や幼稚園・保育園の保育料(ベビーシッターの料金を含む)が該当します。

贈与資金を払い戻す際に必要な領収証等には提出期限もあるので注意してください。

非課税贈与は18歳以上50歳未満の子や孫が対象

結婚・子育ての資金贈与に関する特例には受贈者となる子や孫への年齢制限があり、18歳以上(令和4年3月末までは20歳以上)50歳未満の子や孫への贈与が非課税となります。

また贈与者と受贈者の関係も、血のつながった直系であることが要件となります。

受贈者には1,000万円以内の所得制限あり

受贈者については所得の制限もあり、贈与を受ける前年の合計所得が1,000万円以内であれば特例を利用できます。

結婚・子育ての資金贈与に関する特例を利用する場合は銀行で専用の口座を開設する必要があるため、銀行側でも所得を確認します。

口座開設時に確定申告書の写しや源泉徴収票を銀行に提出することになりますので覚えておきましょう。

金融機関に専用の口座を開設

金融機関に専用の口座を開設することも必要です。

口座開設手続きに必要な書類については、後ほど詳しくみていきます。

結婚・子育ての資金贈与に関する特例の利用手順

特例を利用するための手順は以下のようになります。

  • (1)贈与契約書の作成
  • (2)銀行窓口での申し込み(受贈者名義で専用口座を開設)
  • (3)贈与資金の入金(結婚・子育て資金の払い戻し)

それぞれ見ていきます。

(1)贈与契約書の作成

結婚・子育て資金の一括贈与の特例については、税務署でなく金融機関で手続きすることになります。

専用口座を開設する前に、まずは贈与者(親など)と受贈者(子など)の間で贈与契約を結び、書面にしておきます

贈与契約書は口座開設手続きに必要ですが、受贈者は「結婚・子育て資金非課税申告書」も提出するため、あらかじめ銀行窓口でもらっておくとよいでしょう。

(2)銀行窓口での申し込み(受贈者名義で専用口座を開設)

専用口座は受贈者1人につき1口座であり、基本的に口座開設した支店だけの取扱いとなります。

口座開設後は受贈者による利用がほとんどなので、子供やお孫さんが利用しやすい支店を選んでおくとよいでしょう。

場合によっては手続きの際に贈与者の同席が必要になることもあります。

贈与契約書と本人確認書類や戸籍謄本(贈与者と受贈者の関係がわかるもの)、確定申告書の写しや源泉徴収票などを揃えて手続きを行うため、必要書類などはあらかじめ電話などで確認しておいてください。

(3)贈与資金の入金(結婚・子育て資金の払い戻し)

銀行での申し込み完了後、贈与者の口座から受贈者の専用口座へ資金移動が行われますが、払い戻しを行う際には支払い請求書や領収証等の提出が必要となります。

また贈与資金の使い道によっては領収書等以外の書類を必要とする場合もあるので注意してください。

結婚・子育ての資金贈与に関する特例のデメリット

結婚子育ての資金贈与の特例のデメリット

結婚子育ての資金贈与の特例にはいくつかのデメリットもあります。

本来は非課税で利用できる特例ですが、贈与税が発生するケースや特例が終了となるケースもあるため、制度のデメリットをよく理解しておいてください。

受贈者が50歳を超えると贈与税が発生

結婚・子育ての資金贈与に関する特例では受贈者の年齢が18歳以上(令和4年3月末までは20歳以上)50歳未満という要件があるため、50歳になった時点での残額には贈与税が課税されます。

つまり特例のメリットを活かすためには50歳までに使い切る必要があるため、結婚や育児費用の支出タイミングなどを考慮しておくことがポイントとなります。

「贈与資金が使い切れなかった」というデメリットが生じないように計画的な利用を考えておきましょう。

なお、50歳を迎える前に受贈者が亡くなった場合は残額があっても課税対象にはなりません。

贈与者が死亡すると特例も終了

父母や祖父母などの贈与者が死亡した場合、受贈者の年齢が50歳に到達していなくても特例は終了してしまいます。

贈与者が亡くなった時点で使わずに残っていた贈与資金は相続財産にカウントされ、相続税の課税対象となるので注意してください。

贈与者がすでに80歳を超えているなど平均寿命に近い場合は、結婚・子育ての資金贈与に関する特例を使わない方がよい場合もあります。

孫やひ孫への贈与では相続税2割増し

民法上、孫は法定相続人ではないため、すでに子が死亡している場合に孫が相続人となる代襲相続や、遺言によって孫へ財産を承継する遺贈では相続税の2割加算が適用されてしまいます。

一般的に親から子、子から孫へと続く相続を1段階スキップしているための2割加算ですが、結婚・子育ての資金贈与に関する特例では2割加算の適用がありません

贈与時における祖父母の年齢を考慮しておく必要はありますが、家族構成や資産状況などから確実に相続税が発生する場合には利用価値のある制度といえます。

結婚子育て資金贈与の特例以外にも非課税で贈与できる方法がある

もともと必要の都度贈与される結婚資金や子育て資金は非課税であるため、特例を利用しなくても子や孫への非課税贈与は可能となります。

相続税法では扶養義務者からの贈与であり、結婚費用や教育費など「通常必要と認められるもの」については非課税としているため、わざわざ特例を使った一括贈与をしなくても節税効果は同じということになります。

仕組みの似ている制度に「教育資金の一括贈与に関する特例」もありますが、相続税の節税効果が高い同制度に比べ、結婚・子育て資金贈与に関する特例の利用数は少ないようです。

また結婚子育て資金贈与の場合、結婚や子育て以外のことに資金を使えないというデメリットがあります。

一方で年間110万円までの贈与が非課税になる「暦年贈与」の場合、資金はどんな用途で使ってもいいため、結婚子育て資金贈与の代わりに暦年贈与の利用を検討してみてもいいかもしれません。

結婚子育て資金贈与の特例にはデメリットもあるため、「教育資金の一括贈与に関する特例」や「暦年贈与」もあわせて検討することをおすすめします。

取り扱い銀行が限られている

「結婚・子育ての資金贈与に関する特例」については取り扱い銀行も限られており、令和2年(2020年)9月現在では42行となっています。

メガバンクや同系列の信託銀行では取り扱いが多いものの、地方の場合は第1地銀であっても取り扱っていないことがあります。

契約は1度で済みますが、その後の払い戻しは銀行窓口に出向く必要があるため、銀行と受贈者の住まいが遠い場合には不便を感じることになるでしょう。

贈与を隠してもバレる

「自分のお金を子供に渡すだけなのに税金を払う必要のあるの?」
「隠れて現金を手渡しすればバレないだろう」と思うかもしれません。

しかし、隠れて贈与をしても、税務署にバレる可能性が高いです。

もし隠れて贈与をしたことが判明すれば、通常よりも高い税金を払わなければいけません。

税金を払いたくないからといって、隠れて贈与してしまうと、余計に税金を払うことになる可能性があります。

なぜ隠した贈与がバレるかというと、税務署の調査能力が高いからです。

銀行口座の入出金を細かくチェックして、贈与を調査されるため、隠し切るのは難しいでしょう。

「贈与税をなるべく抑えたい」という人は、贈与を隠すのではなく、正しく節税してください。

税理士への相談がおすすめ

贈与について悩んだら、税理士への相談がおすすめです。

結婚・子育て資金の贈与の特例は、適用するための条件が複雑で、手続きも面倒です。

法改正によって細かいルールも変わるため、自分で手続きせずに、専門家に依頼するのが確実です。

専門家に依頼すれば、贈与だけでなく相続までトータルで考えて対策ができます。

贈与税も相続税も税率が高いため、対策をしておかなければ高い税金を払うことになります。

「なるべく税金を払いたくない」という人は、税理士への相談がおすすめです。

初回の無料相談を利用しよう

「税理士に依頼したいけど、費用が気になる」という人もいるでしょう。

費用が気になる人は、初回の無料相談がおすすめです。

相続サポートセンターでは、初回の相談を無料で受け付けています。

まずは無料相談を利用して、依頼した場合の内容や見積もり料金を確認したうえで、実際に依頼するかどうか決められます。

無料相談の範囲内であれば、キャンセルしても利用料金はかからないため、気軽に利用できます。

まとめ

「結婚・子育ての資金贈与に関する特例」には、相続税を安くするといった節税効果はほとんどありません。

結婚や子育てを控えているカップルや夫婦を支援する制度なので、「お金の不安がなければ結婚もしたいし子供も欲しい」という子供や孫がいれば、利用を検討してみてください。

利用を検討する場合はメリットだけでなく、デメリットもきちんと理解しておくことが大切です。

2021年に期間の延長や対象年齢が変更されているため、特例の要件についてもよく確認しておきましょう。

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