この記事でわかること
- 宝石が相続税の課税対象財産に含まれる理由
- 相続税を計算する流れ
- 相続した宝石の評価額を調べる方法5つ
- 相続した宝石を遺産に計上する方法
- 相続した宝石を相続税申告しないリスク
- 宝石を相続したことが税務署にバレる理由
相続税は経済的な価値のある財産に課税されるので、預金や不動産だけではなく、宝石にも相続税がかかります。
しかし、見た目だけでは宝石の価値を判定できないケースが多いため、「相続税がかかるかどうかわからない」という方もおられるでしょう。
また、相続税は財産の総額から計算しますが、宝石を使った指輪やイヤリングなど、小さなアクセサリーは財産調査から漏れてしまう可能性もあります。
相続税の計算に含めていない財産があると、税務署からペナルティを科される場合があるので注意しなければなりません。
今回は、相続した宝石の評価額を調べる方法や、相続税の計算手順をわかりやすく解説します。
目次
宝石も相続税の課税対象財産に含まれる
宝石は動産として扱われるため、経済的な価値があれば相続税の課税対象に含まれます。
ただし、高価な宝石には必ず相続税がかかるというわけではなく、預貯金や不動産などを含めた「遺産総額」で相続税がかかるかどうかを判定します。
また、相続税には以下の基礎控除があり、控除額を超えた部分のみ相続税の課税対象になるのです。
相続税の基礎控除
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
基礎控除の最低額は3,600万円(3,000万円+600万円×1人)になるため、遺産総額が3,600万円を超えない限り相続税はかかりません。
宝石の評価方法は後述しますが、まず相続税の計算手順を理解しましょう。
相続税を計算する流れ
相続税は、以下の流れで計算します。
- (1)正味の遺産総額の計算
- (2)基礎控除と課税遺産総額の計算
- (3)相続税の総額の計算
- (4)各自が負担する相続税の按分計算
具体例で計算すると相続税がいくらになるのかわかりやすいので、以下の条件で税額を計算してみます。
- 相続財産:1億円
- 借金:1,000万円
- 相続人:2人(配偶者と子ども1人)
- 各自の相続割合:配偶者が相続財産の3/5、子どもは2/5を取得
では、相続税の計算の流れをみていきましょう。
(1)正味の遺産総額の計算
相続税を計算する場合、まずプラスの財産からマイナスの財産を差し引き、正味の遺産総額を計算しておきます。
プラスの財産には預貯金や不動産、宝石などがあり、マイナスの財産は借金や未払金などの負債です。
今回の計算例ではプラスの財産が1億円、マイナスの財産(借金)が1,000万円あるので、正味の遺産総額は以下のようになります。
正味の遺産総額:相続財産1億円-借金1,000万円=9,000万円
正味の遺産総額がわかったら、次のステップへ進みます。
(2).基礎控除と課税遺産総額の計算
正味の遺産総額から基礎控除を差し引くと、課税遺産総額がわかります。
今回の計算例では配偶者と子ども1人が相続人になるため、基礎控除と課税遺産総額は以下のようになります。
- 相続税の基礎控除:3,000万円+(600万円×2人)=4,200万円
- 課税遺産総額:正味の遺産総額9,000万円-基礎控除4,200万円=4,800万円
では次に、相続税の総額を計算してみましょう。
(3)相続税の総額の計算
課税遺産総額に相続税率を乗じると、相続税の総額がわかります。
ただし、相続人が複数いるときは、各自が法定相続分どおりに遺産分割したとみなし、以下のように相続税の総額を計算します。
配偶者と子ども1人が相続人になる場合、各自の法定相続分は1/2です。
- 配偶者と子どもそれぞれの取得分:課税遺産総額4,800万円×法定相続分1/2=2,400万円
- 配偶者と子どもそれぞれの相続税:2,400万円×税率15%-控除額50万円=310万円
- 相続税の総額:310万円+310万円=620万円
相続税の総額がわかったら、最後に按分計算しておきましょう。
なお、相続税の税率と控除額は国税庁ホームページを参照してください。
参考:相続税の税率(国税庁)
(4)各自が負担する相続税の按分計算
相続税の総額を実際の取得割合で按分すると、各自が負担する相続税がわかります。
- 配偶者の相続税:相続税の総額620万円×相続割合3/5=372万円(税額軽減により実際の納税額は0円)
- 子どもの相続税:相続税の総額620万円×相続割合2/5=248万円
配偶者には相続税の軽減措置があるので、遺産総額が1億6千万円を超えかつ配偶者が遺産の大部分を相続するというケースを除いて、相続税を納税することはありません。
相続した宝石の評価額を調べる方法5つ
宝石を相続したときは、以下の方法で相続税評価額を調べることができます。
高価な宝石は相続税の計算に含めなければならないので、これらの方法以外で勝手に価値を評価することは避けましょう。
宝石の購入店で確認する
宝石の購入店に問い合わせると、販売時の記録が残っている場合があります。
購入時期が古い宝石の場合、販売価格と現在の価値は異なりますが、大まかな目安にはなるでしょう。
また、買取りにも対応している店舗であれば、販売記録が残っていなくても買取価格を査定してくれるため、宝石の経済的価値(相続税評価額)がわかります。
買取業者や質屋に査定してもらう
買取業者や質屋に宝石を持ち込むと、買取価格や借入れ価格を査定してもらえます。
買取価格や借入れ価格は現在の市場価値になるため、宝石の相続税評価額になります。
ただし、業者によって査定額に大きな差が出るケースもあるので、少なくとも2~3件に査定を依頼し、平均値を出してみるとよいでしょう。
インターネットで売買価格を調べる
宝石の評価額は、インターネットでも調査が可能です。
買取業者のホームページでは、宝石の写真を送信するメール査定やLINE査定、Zoomなどを使ったオンライン査定を利用できるケースがあります。
実物を直接査定するわけではないため、査定額はあくまでも目安にしかなりませんが、ある程度の価値がわかれば納税資金の準備が必要かどうかを判断できます。
専門家に鑑定を依頼する
専門家の鑑定は査定とは違って価格の算定はしてもらえませんが、宝石が本物かどうか、グレードが高いかどうかがわかります。
宝石の鑑定は以下の専門機関に依頼できるので、住所が近い方は直接持込みしてみましょう。
- CGL(株式会社中央宝石研究所)
- GIA(米国宝石学会)
- AGTジェムラボラトリー
鑑定には3,000~8,000円程度かかりますが、鑑定書を発行してもらうと、買取業者などの査定もスムーズになります。
売却価格を相続税評価額にする
宝石を相続税申告までに売却したときは、売却価格が相続税評価額になります。
申告の際には売却時の明細などが必要になるので、失くさないように注意してください。
相続した宝石を遺産に計上する方法
相続した宝石を遺産に計上する場合、宝石単体の個別計上や、まとめて計上する方法があります。
計上方法は宝石の評価額によって変わるので、以下を参考に切り分けておきましょう。
宝石の評価額が5万円を超えるときは個別計上
宝石の評価額が単体で5万円を超える場合、基本的には遺産に個別計上します。
5万円が明確な基準になっているわけではありませんが、実務上は5万円超の宝石を個別計上するケースが一般的です。
なお、国税庁は宝石の評価を「精通者意見等を参考にするなど、合理的かつ簡易な方法で評価して差し支えない」としており、計算方法は定められていません。
宝石の評価額が5万円以下のときはまとめて計上
評価額が5万円以下の宝石が複数あるときは、遺産にまとめて計上しても差し支えありません。
5万円以下の家財道具もまとめて計上できるので、相続税申告書第11表の細目には「家財一式」と記入します。
相続した宝石を相続税申告しないリスク
相続した宝石を相続税申告の計算に含めなかったときは、追徴課税のリスクがあるので要注意です。
追徴課税が発生すると、結果的に割高な相続税を納めることになるので、以下のペナルティをよく理解しておきましょう。
延滞税:期限後に相続税申告した場合
相続税の申告期限後に申告した場合、納期限の翌日から延滞税が発生します。
延滞税の原則税率は納期限から2ヶ月以内が年7.3%、2ヶ月を経過すると年14.6%になるので、必ず期限内に申告を済ませましょう。
なお、相続税の申告期限は「相続開始日の翌日から10ヶ月以内」です。
過少申告加算税:相続税を少なく申告した場合
宝石を遺産に含めず、相続税を少なく申告したときは、以下の税率で過少申告加算税が発生します。
- 相続税の申告期限後に自主申告した場合:免除
- 税務調査で指摘される前に申告した場合:追加納付額の5%または10%
- 税務調査で指摘された後に申告した場合:追加納付額の10%または15%
遺産総額や相続税は正確に計算しておきましょう。
無申告加算税:相続税を申告しなかった場合
相続税を申告しなかった場合、以下の税率で無申告加算税が課税されます。
- 申告期限から1ヶ月以内に自主申告した場合:免除(一定の要件あり)
- 税務調査の事前通知を受ける前に自主申告した場合:相続税額の5%
- 税務調査で指摘される前に申告した場合:相続税額の10%または15%
- 税務調査で指摘された後に申告した場合:相続税額の15%または20%
- 過去5年間に無申告加算税や重加算税の課税があり、税務調査で指摘された場合:相続税額の25%または30%
地震や台風で被災するなど、やむを得ない正当理由がない限り、原則として無申告加算税は免除されません。
重加算税:悪質な無申告の場合
相続税の発生がわかっていながら、意図的に申告・納税しなかったときは、相続税額×40%の重加算税が相続税の本税に加算されます。
申告期限からの経過日数に応じた延滞税もかかるので、かなり割高な税額になるでしょう。
宝石を相続したことが税務署にバレる理由
宝石を相続しても、「黙っていれば税務署にはわからない」と思われるかもしれません。
ただし、税務署は職権で相続財産を調査できるので、以下のような理由でバレてしまいます。
預金口座やクレジットカードの履歴から判明
高価な宝石を購入した場合、預金口座から高額な引き出しがある、または購入店への振り込みやクレジットカードの利用額が高額になっています。
税務署は相続人の承諾がなくても口座履歴を調査できるので、高額な出金があるにも関わらず、使い道が不明だったときは、宝石購入などを追及されるでしょう。
購入店への照会で判明
預金口座から購入店への振込みがあった場合、税務署は購入店にも販売状況を照会するケースがあります。
「現金払いだからバレない」と思っていても、税務調査が行われると、90%近い確率で申告漏れなどが判明します。
高額な宝石を相続したときは、必ず遺産総額に含めておきましょう。
まとめ
宝石も相続税の課税対象になるので、必ず遺産に含めて相続税を計算してください。
ただし、宝石の評価額だけが判明しても相続税は計算できません。
預金、不動産、株式など、すべてを含めた遺産総額を必ず計算しましょう。
宝石はサイズが小さく、本人しか知らない保存場所にしまわれていることもあり、相続税を申告した後に見つかる場合もあるでしょう。
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