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最終更新日:2022/3/31

住宅資金贈与の非課税枠は父母それぞれで利用可能?メリットや利用条件・非課税枠も解説

古尾谷 裕昭
この記事の執筆者 税理士 古尾谷裕昭

ベンチャーサポート相続税理士法人 代表税理士
東京税理士会 登録番号104851

東京、横浜、千葉、大宮、名古屋、大阪、神戸など全国の主要都市22拠点にオフィス展開し、年間2,200件を超える日本最大級の相続税申告実績を誇る。 業界最安水準となる明朗料金ときめ細かいフォローで相続人の負担を最小にすることを心がけたサービスが評判を得る。1975年生まれ、東京都浅草出身。

PROFILE:https://vs-group.jp/sozokuzei/supportcenter/profilefuruoya/
書籍:今さら聞けない 相続・贈与の超基本
Twitter:@tax_innovation
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住宅資金贈与の非課税枠は父母それぞれで利用可能?メリットや利用条件・非課税枠も解説

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この記事でわかること

  • 贈与税の非課税枠の計算方法について理解できる
  • 非課税枠で納める贈与の計算が自分でできる
  • 住宅資金贈与について税理士に相談するときのコツがわかる

住宅資金は高額なので、両親などの親族から一部を援助してもらう人も多いのではないでしょうか。

住宅資金を援助してもらう際に使える制度が、住宅資金贈与の非課税枠の制度です。

ところで、住宅資金贈与の非課税枠の制度は、父母からそれぞれもらった場合でも利用できるのでしょうか。

今回は、住宅資金贈与について、どのような仕組みなのか、どういった条件で使えるのかなどをご紹介します。

住宅資金贈与とは

まず、住宅資金贈与とはどのような制度なのでしょうか。

簡潔に解説していきます。

住宅資金贈与は、家屋の新築、取得、増改築のために、父母や祖父母から贈与を受けることを言います。

他の贈与との違いは、使い道が決まっていることと、住宅取得を目的としているので金額が大きいことです。

また、住宅資金贈与の特例を使う場合は、一定の金額まで贈与税がかかりません。

通常であれば、贈与税がかかるところを、かからなくできるのですから、これから住宅を取得したい人にとっては是非とも利用したい制度でしょう。

住宅資金贈与の特例は、家屋の新築や購入だけではなく、増改築に使うこともできます。

追加で部屋が必要になったので増築する場合にも使えますので、この制度の対象の幅はかなり広いと言えるのではないでしょうか。

ところで、住宅資金贈与の非課税枠を利用するメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。

単に税金がかからないことだけではない、住宅資金贈与の非課税枠活用のメリットをご紹介します。

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住宅資金贈与の非課税を利用するメリット

住宅資金贈与の非課税枠を利用するメリットは、以下の通りです。

相続時の持ち戻しの制度が適用されない

通常、贈与は相続が発生する3年前までの分については、相続財産に含めて計算することになっています。

つまり、1,000万円贈与を受けたあと、3年以内に相続が起こってしまったら、相続財産を前もってもらったとみなされてしまうということです。

前もって何ももらっていない相続の場合は、相続財産を相続人の間で分けることになりますが、前もってもらっている財産がある場合は前もってもらった分も含めて話し合いをして、相続人の間で財産をわけます。

相続人が一人しかいない場合はさほど困らないかもしれませんが、何人もいる場合はそれでトラブルになったり、ややこしいことになったりする可能性があります。

もっとも、相続時にはきっちり相続分をもらいたいというのが多くの人の本音ではないでしょうか。

そうであれば、持ち戻しが発生しない住宅資金贈与の非課税枠は、持ち戻しが発生しないというだけでもかなりのメリットになります

この他にも住宅資金贈与の非課税枠にはメリットがあります。

暦年贈与や相続時精算課税制度と組み合わせて生前の相続対策ができる

住宅資金贈与の非課税枠は、暦年贈与もしくは相続時精算課税制度と組み合わせることが可能です。

暦年贈与は、1年間に110万円まで贈与できます。

ただし、毎年110万円きっちり贈与をしていると、定期贈与なのではないかと疑われてしまうことがありますので、定期贈与ではないとするために契約書を作成するなど一工夫必要です。

毎年110万円の贈与を、10年間行ったら1,100万円を贈与することができます。

住宅資金贈与の特例は、1,200万円まで適用できます。

そうすると、110万円+1,200万円=1,310万円まで控除をすることが可能です。

暦年贈与の部分を10年間行ったとしたら、1,100万円+1,200万円=2,300万円控除されたことになります。

暦年贈与110万円の部分については、結局何年間贈与が続くのかというところにもよるのですが、長期間になればなるほど、たくさん贈与することができます。

相続時精算課税制度との組み合わせを考えてみましょう。

相続時精算課税制度と組み合わせる場合は、相続時精算課税の特別控除2500万円と、住宅資金贈与の特例1,200万円を足して、2,500万円+1,200万円=3,700万円を控除することができます。

相続時精算課税制度と、暦年贈与の両方を使うことはできないので、片方のみの選択となります。

相続時精算課税制度の場合は、贈与税はかかりませんが、相続が発生した時に相続税がかかります。

住宅資金贈与と暦年贈与、住宅資金贈与と相続時精算課税制度のどちらを選択すれば良いでしょうか。

相続がいつ発生するのかという面で贈与を開始する年齢にもよりますので、どちらを選ばなければいけないという制約はありません。

ただ、相続の発生が近そうなのであれば、暦年贈与だと大きい金額を贈与することは難しいかもしれません。

その場合は、相続時精算課税制度の活用が検討されるでしょう。

一方で、相続時精算課税制度では相続時に相続税がかかってしまいます。

そのためのお金も用意しておかなければいけません。

相続時に相続税を払うのが大変であるということであれば、暦年贈与を使っての贈与になるでしょう。

もし、どちらを選んだらいいのかわからない時は税理士に聞いてみてください。

どちらを選んでもメリット、デメリットがあります。

しかし、税金の知識がない側にとっては、メリットもデメリットもよくわからないことが多いので、税理士からアドバイスを受けることが重要です。

ところで、住宅資金贈与の落とし穴として、お金を使い切らなかったというものがあります。

暦年贈与の場合は、とくに使い道も決まっていませんし、とっておいても良いのですが、住宅資金贈与の場合は、住宅資金のために贈与されるものですので、当然、住宅の取得のために使われなければなりません。

住宅の取得のために使うということで贈与を受けたのに、使わないままに貯金してしまったとしましょう。

この場合は、特例の適用はできません。

住宅の取得や新築、増築のために、もらったお金を使い切るようにしてください。

住宅資金贈与の非課税限度額

住宅資金贈与の非課税限度額についてご説明します。

住宅資金贈与の非課税限度額は、以下の通りです(消費税額10%の場合)。

契約締結日が令和2年4月1日~令和3年3月31日の場合、省エネ住宅であれば1,500万円、それ以外の住宅の場合は1,000万円が限度額です。

契約締結日が令和3年4月1日~令和3年12月31日の場合は、1,200万円、それ以外の場合は700万円になります。

ポイントは、契約締結日がいつなのかというところです。

また、省エネや、耐震基準を満たす家屋の場合は、手厚い控除枠が設定されています。

住宅用家屋の新築等に係る契約の締結日 省エネ等住宅 左記以外の住宅
平成31年4月1日~令和2年3月31日 3,000万円 2,500万円
令和2年4月1日~令和3年3月31日 1,500万円 1,000万円
令和3年4月1日~令和3年12月31日 1,200万円 700万円

引用:国税庁ホームページ(住宅用の家屋の新築等に係る対価等の額に含まれる消費税等の税率が10%である場合)

住宅資金贈与の非課税を利用する条件

住宅資金の非課税枠を利用する際の条件はいくつかあります。

贈与を受ける側の条件

まずは、贈与を受ける側の条件をクリアできているか確認しましょう。

クリアできない場合は、住宅資金贈与の非課税制度を利用できません。

贈与者の直系卑属であること

贈与を受けた時に、贈与者の直系卑属であることが必要です。

それでは、配偶者の父母の場合どうなるのでしょうか。

配偶者の父母(または祖父母)は直系尊属には該当しませんので、配偶者の父母等から贈与を受ける場合は、住宅資金贈与の非課税枠を使えないことになってしまいます。

ただし、養子縁組をしている場合は、養子ではない子どもと同じ扱いになりますので、直系尊属になります。

配偶者の親から住宅資金贈与を受け、非課税枠の活用をしたい場合は贈与を受ける時までに養子縁組をすることが必要です。

年齢要件・収入要件

贈与を受けた年の1月1日において、20歳以上でなければいけません。

また、贈与を受けた年の年の合計所得金額は2,000万円以下であることが必要です。

住宅資金の非課税を適用してない

平成21年分から平成26年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがないことが必要です。

親族が大工さんをしているので増築・新築を頼んだという場合は適用外

自己の配偶者、親族などの一定の特別の関係がある人から家を買ったとか、これらの方に依頼して、請負契約等によって新築若しくは増改築等をした場合は対象になりません。

要するに、身内で受発注をしたり売買をしたりする場合については住宅資金贈与の非課税枠の適用はできないということです。

贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与を受けた全額を使い切って家屋を所有すること

贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を使い切って、住宅用の家屋の新築等をすることが必要です。

受贈者が期限までに「住宅用の家屋」を所有できなかった場合は特例を使えません。

日本国内に住所があること

原則として、贈与を受けた時に日本国内に住所を有していることが必要です。

日本に住所がない人でも、例外的に制度を利用できる場合があります。

贈与を受けて建てたり買ったりした家屋に住むこと

贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与を受けて建てたり、買ったりした家屋に居住することか、遅滞なく住むだろうと思われることが必要です。

つまり、贈与を受けて建てたり買ったりした家屋でも、居住しないのであれば対象になりません。

また、期限までに居住しない場合でも、もうそろそろ引っ越してくるだろうと思われる場合でなければなりません。

贈与を受けた年の翌年12月31日までにその家屋に居住していない場合は、特例の適用を受けることができません。

受贈者の条件のまとめ

受贈者の条件を簡単にまとめました。

該当するかどうかチェックしてみてください。

  • ・贈与者の直系卑属であること
  • ・年齢要件 20歳以上・収入要 課税所得2,000万円未満
  • ・住宅資金の非課税を適用してない
  • ・親族が大工さんをしているので増築・新築を頼んだという場合は適用外
  • ・贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与を受けた全額を使い切って家屋を所有すること
  • ・日本国内に住所があること
  • ・贈与を受けた年の翌年12月31日までに、贈与を受けて建てたり買ったりした家屋に住むこと

家屋の条件

特例を適用できる家屋の条件は以下の通りです。

新築または取得の場合

  • ・広さ:新築または取得した住宅用の家屋の登記簿上の床面積が50平方メートル以上240平方メートル以下。
  • ・居住スペース:家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者が住むためのものであること。
  • ・使用歴など(1つでも当てはまればOK)
    • ・建築後使用されたことがない
    • ・建築後使用されたことのある建物で、取得の日以前20年以内(耐火建築物の場合は25年以内)に建築された
    • ・建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、耐震基準の証明がある
    • ・上記に当てはまらない建築後使用されたことのある住宅用の家屋(耐震改修などするために都道府県知事からの証明が必要)

増改築の場合

  • ・増改築等後の住宅用の家屋の登記簿上の床面積:50平方メートル以上240平方メートル以下。
  • ・用途:床面積の2分の1以上に相当する部分に受贈者が住むこと。
  • ・証明書について:「確認済証の写し」、「検査済証の写し」または「増改築等工事証明書」などの書類が必要。
  • ・金額: 増改築等の工事代金は100万円以上。増改築等の工事に要した費用の額の2分の1以上は、自己の居住スペース用のものであること。

このように、床面積や支出金額などについて細かく規定があります。

注意しないと、うっかり適用を外れてしまうことになります。

工事業者にも住宅資金贈与の控除額を使用したい旨をきっちり伝えた上で、確認を怠らないようにしましょう。

父母の両方から贈与をもらっても非課税枠は変わらない

ここで問題なのが、父母の両方から贈与を受けた場合はどうなるのかという問題です。

正解は、父母の両方から贈与を受けたところで、非課税枠は変わらないということです。

受ける側ベースで考えると、誰からもらったとしても非課税枠は変わらないですし、はみ出てしまった部分については贈与税がかかることになります。

父母から贈与を受けて、祖父母からも贈与を受けた場合であっても、個人の非課税枠は変わりません。

贈与を複数人数から受ける場合については、限度額を気にするようにしてください。

お金をあげる方の一人当たりの限度額ではなく、もらう側の限度額であるということを覚えておきましょう。

ところで、夫婦が家を新築するとして、それぞれの両親から贈与を受けた場合はどうなるのでしょうか。

贈与を受ける人、一人当たりの控除金額が先の表であらわした通りですので、単純に計算すると2倍になります。

つまり、妻は妻の側から贈与を受けて、夫は夫の側から贈与を受けて、それぞれに住宅資金贈与の特例を使うことは可能であるということです。

ところが、この方法には落とし穴があります。

住宅資金の贈与をそれぞれからもらったのに、住宅の名義が夫だけのものであった場合は、住宅資金贈与の非課税枠は、妻の方については使えなくなります。

夫婦共有名義であれば使えますが、その場合においても、贈与額によって夫婦共有の名義にしておく必要があります。

贈与だけで家を建てるのはなかなか厳しいかもしれません。

贈与や自己資金で足りない部分については、ローンを利用することになります。

住宅ローンの返済を夫しかしていないのに妻も共有名義で、さらに返済もしているということであれば、今度は夫から妻へローン返済部分を贈与していることになってしまいます。

名義は返済の方法とズレがないようにしましょう。

現実に合わせておくのがポイントです。

現実と合わない場合、節税のつもりで適用した制度が適用できなくなり、かえって税金がかかることになってしまいます。

また、夫婦共有名義には、将来的に離婚することになった場合に厄介な問題がついてきます。

夫婦共有ですから、どちらにも持ち分がありますが、離婚して出ていくことになった人はもうその家には住まないですから、住まない部分についてお金をもらって持分を売ることになるでしょう。

一方、家に住み続ける方は、家に住まなくなってしまった方から持分を買うことになります。

まとまったお金が必要になります。

もし、用意できない場合は、自分の持分も合わせて売ることになるでしょう。

夫婦共有名義の家は、仲が良い時は問題ありませんが、仲が悪くなってしまったときにはリスクがあります。

住宅資金贈与の控除額を増やす方法

住宅資金贈与の控除額を増やす方法としては、今までに取り上げてきたように、暦年贈与や相続時精算課税制度と組み合わせる方法や、夫婦それぞれが贈与を受けて、控除額を増やす方法があります。

ただ、これらの方法については要件が決まっていますので、併用する際には要件に当たるかどうか、きちんと確認をしてください。

よくわからない場合は、税理士に相談しましょう。

工務店やハウスメーカーに税理士の紹介を頼んでもいいでしょうし、自分に知っている税理士がない場合は税理士の無料相談会などに行って、質問をしてみてください。

その際には、

  • ・これから買いたい住宅の金額(あれば資料をもっていく)
  • ・資金計画(どれだけ贈与を受けて、どれだけ自己資金もしくはローンなのか)
  • ・贈与をする側の人の情報(年齢や、どれくらいの贈与をしてくれそうか)

などの情報をもっていくようにしてください。

話が具体的であればあるほど、税理士もアドバイスがしやすいです。

まとめ

今回は、住宅資金贈与の非課税枠についてご紹介しました。

住宅資金贈与の非課税枠は、かなりの高額な贈与を一回でできるので是非とも活用したい制度の一つです。

しかし、使える人や、建物・土地の要件が決まっていますので、本当に使えるかどうかをしっかりと確認する必要があります。

暦年贈与や、相続時精算課税制度と組み合わせることで、より多くの金額を贈与することが可能になります。

どちらを使ったらいいのかは、その人の環境や条件によって異なります。

メリットとデメリットを把握するためにも税理士への相談をおすすめします。

父母それぞれでは利用できず、贈与を受ける側一人あたりの控除金額であることもご紹介しました。

したがって、夫婦それぞれで、夫婦それぞれの親から住宅取得のための資金の贈与を受けることは可能ですし、控除枠もそれぞれで使えます。

ただし、その場合においては控除枠を使った後に、住宅を登記するときに夫の単独名義にしてはいけません。

夫婦で共有している名義にする必要があります。

最後に、住宅資金として贈与されたお金は、全て使い切らなければ特例を適用できません。

もらったお金はきちんと最後まで使い切ってください。

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