この記事でわかること
- 準確定申告の際に医療費控除を受けられることがわかる
- いつまでに支払った医療費が対象となるか知ることができる
- 医療費控除の対象になるものとならないものの違いがわかる
医療費を多く支払うと医療費控除が適用され、税金の負担が抑えられることがあります。
そのため、自身や家族の支払った医療費を集計して、確定申告したことのある方も多いでしょう。
一方、亡くなった人の準確定申告を行う際にも、その状況によっては医療費控除が適用できる場合があります。
いつ支払った医療費が対象になるのか、どのような支払いが医療費となるのか、確認していきましょう。
目次
支払った医療費は準確定申告で医療費控除できる
亡くなった人がなくなるまでの間、入院したり介護施設に入所したりして医療費を支払うことがあります。
このような医療費を支払っている場合、準確定申告をすれば医療費控除が受けられることがあります。
ところで、準確定申告や医療費控除とはどのような場合に行うものなのでしょうか。
準確定申告とは
所得税の計算は、毎年1月1日から12月31日までの所得金額に応じて税額を計算し、自ら申告・納税します。
亡くなった人についても、1月1日から死亡した日まで所得が発生するため、所得税の納税義務があります。
しかし、亡くなった人は自分で確定申告を行うことはできません。
そこで、相続人が亡くなった人の1月1日から死亡した日までの所得金額を計算し、申告・納税を行うこととされています。
この申告などの手続きを準確定申告といい、相続人が亡くなった人に代わってその手続きを行わなければなりません。
医療費控除とは
医療費控除は、確定申告を行う際に適用が受けられる所得控除の制度の1つです。
その名のとおり、医療費を支払うとその額に応じた所得税の控除額が計算されます。
医療費の集計は、通常の確定申告では1月1日から12月31日までの期間で行います。
しかし、準確定申告の場合は、1月1日から死亡した日までの医療費を集計して申告することとなります。
また未納付税額が発生した場合には、相続人が税金の支払い義務も負うこととなります。
死亡日時点までの支払い分が医療費控除の対象になる
前述したように、死亡した人が支払った医療費は、準確定申告を行う際に医療費控除の対象となります。
ただし、医療費控除の対象になる医療費は、死亡した人が亡くなる前に実際に支払った金額に限定されます。
亡くなった人が実際に負担したものだけが、準確定申告における医療費控除の対象とされています。
一方、亡くなった日以後に支払った医療費については、準確定申告における医療費控除の対象にはなりません。
亡くなった後に亡くなった人の財産で支払いを行ったとしても、その金額を準確定申告における医療費控除には含めることができません。
ただ、まったく医療費控除を適用できないわけではありません。
亡くなった人の医療費を、本人が亡くなった後に支払った場合は、亡くなった人と同一生計にある人の確定申告で医療費控除の適用を受けられます。
この場合、たとえば配偶者が自身の確定申告で医療費控除を受けることができます。
医療費控除の対象になる支払い・ならない支払い
医療費控除の適用を受けようとする際に迷いやすいのが、何が医療費となるのかという点です。
ここでは、医療費控除の対象になるもの、ならないものの具体例の中でも、特に準確定申告で間違えやすいものをご紹介していきます。
医療費控除の対象になる支払い
準確定申告で医療費控除を受ける場合、亡くなる直前には入院、あるいは介護施設に入所しているケースが多いでしょう。
このような場合に発生する支払いで、医療費控除の対象になる医療費には以下のようなものがあります。
- 治療の対価として支払う診療費用
- 治療や療養に必要な医薬品の購入費用
- 病院の入院費用
- 指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホームなど)に支払う介護費、食費、居住費などのサービス対価の2分の1
- 介護老人保健施設に支払う介護費、食費、居住費などのサービスの対価
- 指定介護療養型医療施設に支払う介護費、食費、居住費などのサービスの対価
- 介護療養院に支払う介護費、食費、居住費などのサービスの対価
- 診療等を受けるために必要な交通費
- 医師の診療を受けるために必要な義手、義足、松葉づえ、補聴器、義肢などの購入費用
- おむつ使用証明書の発行を受けて使うおむつ代
この他にも、医療や介護に関する様々な負担をしているケースがあり、その中で医療費控除が認められるものがあります。
なお、介護施設に対する支払いは、その施設の種類によって取り扱いが異なります。
また、一度に支払った場合でも、医療費控除の対象になるものとならないものが混在している場合もあります。
この場合は、その施設から受け取った領収書に医療費控除の対象額が明記されています。
そのため、受け取った領収書をもとに、医療費控除の計算をするようにしましょう。
医療費控除の対象にならない支払い
医療費控除の対象にならない支払いとして、特に間違いやすいものをご紹介します。
まず、準確定申告の際に必ず発生するのが、死亡診断書料です。
亡くなったことを医療機関が証明する際に、必ず死亡診断書料が発生しますが、医療費控除の対象外です。
最後に入院費用などとまとめて請求される場合もあるため、死亡診断書料は除外して計算します。
介護施設と同様に、入院費用を支払う際に、医療費控除の対象とならないものが含まれている場合があります。
本人や家族の都合で個室にした場合などの差額ベッド代は、医療費控除の対象になりません。
また、医師や看護師に対する謝礼も診療の対価ではないため、医療費控除の対象にはなりません。
介護施設に支払った金額の中で医療費控除の対象に含まれないものの一例は以下のものです。
- 理美容代などの日常生活費など、施設にいてもいなくても支払う費用
- 施設内の希望者で実施されるクラブ活動の費用など、特別なサービス費用
どんなものが日常生活費や特別なサービス費用となるのかは、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。
また健康保険から支給された給付金・高額療養費は、医療費控除の対象にはなりません。
医療費控除で知っておきたいこと
ここからは、準確定申告の医療費控除について知っておきたいことを紹介します。
準確定申告の手続きがある場合は、必ず確認しておきましょう。
準確定申告の期限は4ヶ月
準確定申告は、手続き期限が決められています。
相続の開始を知った翌日から、4ヶ月が申告期限になります。
もし1月1日に死亡したことを知ったら、翌日である1月2日から4ヶ月後の5月2日か期限になります。
申告期限を過ぎてしまうと、追加で税金の支払いが発生するかもしれません。
準確定申告があれば、期限の4ヶ月以内に手続きが完了できるように気をつけましょう。
手続きが不安な人は、税理士に依頼したり、税務署へ相談したりするのがおすすめです。
控除金額が返ってくるわけではない
確定申告では、控除金額が返金されるわけではありません。
「亡くなった人が医療費を100万円使っていたから、医療費控除で100万円返金される」と思っている人がいるかもしれませんが、それは間違いです。
医療費控除とは、確定申告で課税所得を計算するときに、所得から差し引ける費用です。
例えば亡くなった人の所得が年間500万円あったときに、一切控除がなければ、500万円に対して税金がかかります。
そこで医療費控除が100万円分使えれば、500万円(所得)ー100万円(医療費控除)=400万円が課税金額になります。
- ・医療費控除なし:課税金額500万円
- ・医療費控除あり:課税金額400万円
このように医療費控除が活用できれば、課税金額も少なくなり、結果的に節税ができます。
また税金をすでに多く支払っている場合は、多く支払われた分が還付されることもあります。
医療費控除分したら、その金額分が還付されるわけではないので、覚えておきましょう。
自分で判断せずに税理士・税務署で確認する
医療費控除で気になるのが「この費用は医療費控除の対象になるのか?」だと思います。
明確な医療費もあれば、判断が難しいような支払いもあるでしょう。
医療費控除の対象かどうか迷ったら、必ず税理士に聞くか、税務署の窓口で確認しましょう。
なぜなら専門家以外の意見を参考にすると、間違っているケースも多いからです。
「これぐらいは自分で判断できる」「親族から教えてもらった」という場合は、間違えている可能性もあります。
もし間違って準確定申告をしてしまうと、後で修正したり追加で税金を支払い要求されるかもしれません。
専門家でないと正しい判断ができないため、迷ったら税理士・税務署への相談がおすすめです。
医療費10万円以下でも控除が受けられるケースも
医療費控除の基準は、下記の2種類です。
- ・年間10万円以上
- ・所得金額の5%以上(年間所得200万円未満の場合)
年間所得が200万円未満なら、所得金額の5%が基準値になります。
年間所得とは、収入から経費・控除を引いた金額です。
例えば年間の収入が250万円で、控除金額が100万円あったとします。
この場合に250万円 (収入)ー100万円(控除)=150万円が年間所得になります。
年間所得が150万円だと、医療費控除の基準値が5%になるため、150万円×5%=7.5万円が基準値です。
- ・収入:250万円
- ・控除:100万円
- ・年間所得:150万円
- ・医療費控除:7.5万円(150万円×05%)
つまり年間所得が150万円だと、7.5万円以上の医療費が控除対象になります。
年間所得が200万円未満だと、医療費控除の基準が変わるので、必ず確認しておきましょう。
まとめ
準確定申告を行う際に、亡くなった人が支払った医療費について、医療費控除を適用することができます。
亡くなるまでに支払ったものに限られることから、実際に支払った日に注意して、医療費の集計を行いましょう。
また、医療費控除の対象にならない支払いがあることにも注意しなければなりません。
特に入院していた場合、介護施設に入所していた場合などは、様々な支払いが含まれているため、よく確認しましょう。
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