この記事でわかること
- 親子で共有している不動産がある場合の相続税の計算方法がわかる
- 親子で共有する不動産についての相続税評価額の求め方がわかる
- 共有となっている不動産について共有を解消する方法がわかる
親子で同居している場合やいくつも賃貸物件を保有している場合には、親子で1つの物件を共有していることがあります。
普段は共有にしていても問題はないのですが、相続が発生した場合に相続税の計算方法や遺産分割の方法など、多くの疑問が生じます。
そこで、親子で共有している不動産がある場合の相続税の計算方法や、その不動産の相続税評価額の求め方を確認していきます。
また、共有を解消するための手続きについても解説していきます。
目次
親子で共有名義にしている不動産の相続税計算方法
まずは、共有名義となっている不動産がある場合の相続税の計算方法について確認していきます。
ここでは、相続税評価額1億円の土地・建物を、父と長男がそれぞれ2分の1ずつ所有するものとします。
また、父が亡くなったため母と長女・次男を含めた4人が法定相続人となり、他には相続財産が7,000万円あるものとします。
課税対象となる金額を求める
まずは、すべての相続財産の合計額を求めます。
共有名義の不動産がある場合は、被相続人の持ち分に応じた金額が相続財産の額となります。
この場合、共有の不動産は1億円×1/2=5,000万円が相続財産の額となり、他の財産も合わせた1億2,000万円が相続財産の合計額となります。
その後、基礎控除の計算を行います。
「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算されるため、このケースでは5,400万円となります。
相続財産の合計額から基礎控除の額を差し引いた6,600万円が、相続税の課税対象となる金額です。
相続税の合計額を求める
相続税の計算をするため、先ほど求めた6,600万円を、法定相続分に分割します。
このケースでは、母3,300万円、3人の子どもはそれぞれ1,100万円となります。
この法定相続分に分割した金額に対して相続税の税率を乗じて、相続税を求めます。
3,300万円に対する相続税額は460万円、1,100万円に対する相続税額は115万円となります。
その結果、相続税の合計額は460万円+115万円×3=805万円となります。
各相続人に相続税を配分する
先ほど求めた相続税の合計額は、相続人全員で負担することとなる相続税額です。
この金額を相続人が実際に相続した財産の額に応じて按分し、各相続人が納付する相続税額を計算します。
たとえば、法定相続分どおりに遺産分割を行った場合は、相続税額も法定相続の割合に分割することとなりますので母の納付する税額は402.5万円、3人の子どもはそれぞれ、1,341,600円となるのです。
親子共有名義の不動産の評価方法
共有名義となっている不動産の場合、相続税評価額の計算方法はどのようになるのでしょうか。
建物と土地に分けて、その評価方法を確認していきます。
共有建物の評価方法
建物の相続税評価額は、固定資産税評価額と同額です。
そのため、固定資産税課税明細書や評価証明書などに記載されている金額を確認すれば、簡単に知ることができます。
共有名義となっている建物の場合は、被相続人の持ち分となっている部分が相続財産となります。
たとえば、父が亡くなって3,000万円の建物(父3分の2、息子3分の1)がある場合、3,000万円×2/3=2,000万円が相続財産となります。
共有土地の評価方法
土地の評価方法は、路線価方式と倍率方式の2つの方法があります。
路線価方式は、国税庁が定める路線価に土地の面積を乗じて、土地の相続税評価額を計算する方法です。
ただ、土地の形状や間口距離・奥行距離によっては補正率を乗じてその評価額を減額することができます。
一方、倍率方式は土地の固定資産税評価額に、国税庁が定める倍率を乗じて計算するものです。
路線価方式と倍率方式は、納税者がいずれかを選択するものではなく、どちらの方法で評価するのかが所有する土地の所在地ごとに決められています。
いずれかの方法で評価を行ったら、被相続人の持ち分を乗じて、相続財産の額を計算します。
たとえば、父が亡くなった時に5,000万円の土地(父2分の1、息子2分の1)がある場合、5,000万円×1/2=2,500万円が相続財産となります。
親子共有名義のリスク・対処法
不動産を共有する場合には、様々な問題が起こりやすいと認識している方も多いでしょう。
ただ、親子間での共有であればそのような問題は起こらないのではないかと考えている人もまた多いのではないでしょうか。
しかし、実際は親子で不動産を共有する場合でも、様々な問題が起こる可能性はあります。
どのような問題が起こると考えられるのでしょうか。
子どもが一人っ子の場合
子どもが一人っ子で、その子どもと親が不動産を共有している場合、親が亡くなると相続で子どもの単独所有となります。
この場合もまったくリスクがないわけではありません。
相続が発生する前に親が認知症になってしまうと、その不動産を活用することができないこととなってしまうのです。
また、親と折り合いが悪い場合は、不動産の活用や相続対策などの話し合いができません。
その結果、多額の相続税が発生する可能性があるのです。
このようなリスクを回避するためには、親が認知症になる前にきちんと話し合いをしておくことが重要です。
元気なうちに親に遺言書を作成してもらう、あるいは生前贈与により子どもがスムーズに相続できるようにしておくのです。
あるいは家族信託を利用して、不動産の管理を子どもが行えるようにしておくことも重要です。
子どもが複数人いる場合
子どもが複数人おり、親と子どもが共有する不動産がある場合、その活用や相続の際に問題が起こる可能性が高くなります。
不動産の活用や売却などを行うためには、共有者全員の同意が必要とされます。
しかし、共有者の数が増えるほど、反対する人が現れる可能性が高くなります。
その結果、不動産の活用や相続対策などをほとんど行えないケースが出てくるのです。
また、親が亡くなった場合に、誰が相続するのかで揉める可能性が高くなります。
一人っ子の場合は、その子どもが相続すればいいのですが、子どもが何人かいる場合は様々な選択肢があるのです。
子どもが複数人いても、親と一緒に共有している子どもが相続し、単独所有になるのが一番いい方法です。
しかし、そもそも子どもが何人か共有者となっている場合もあることから、相続で単独所有となる場合だけではありません。
また、他の財産の状況次第では、親の持ち分を共有者とはなっていない子どもが相続する可能性もあります。
このように子どもが何人かいる場合は、共有名義の不動産の相続はトラブルの原因となる可能性があります。
このようなリスクを避けるためには、できるだけ共有状態を解消しておくことや、遺言書の作成は欠かせません。
また、不動産以外の財産を用意しておき、遺産分割の際に分けやすい状態にしておくことも対処法として考えられます。
生前贈与を利用する
共有名義の不動産がある場合は、生前贈与の活用もおすすめです。
生前贈与とは、被相続人が生きているうちに、他の人へ不動産を譲ることです。
相続の場合は、被相続人が亡くなっており、法定相続人は自分の相続分を主張できる権利があるため、相続トラブルが起きやすいです。
生前贈与なら、被相続人が自分の意志で「この人に不動産を譲る」と決めて、贈与できます。
ただし贈与は年間110万円を超えると、贈与税がかかります。
不動産は「毎年110万円以下で贈与する」という行為が難しいため、特例の利用がおすすめです。
例えば、相続時精算課税制度という特例を利用すれば、2500万円以下の贈与が非課税になります。
ただし相続が発生したときには、相続時精算課税制度を利用して贈与した不動産を相続財産としてカウントするため、相続税の支払いが必要になります。
不動産の相続では、相続単体ではなく贈与も含んで考える必要があるため、不安な人はプロである税理士への相談がおすすめでしょう。
共有名義の不動産を分ける方法
共有となっている不動産を、その持ち分に応じて別々に分けることができます。
こうすれば。
共有状態を解消して、単独所有の形に変えることができるのです。
どのようにすれば共有を解消できるのか、その方法をご紹介します。
現物分割
現物分割は、共有持ち分の割合に応じて、土地を2つ以上に分ける方法です。
たとえば、500㎡の土地を親が3/5、子どもが2/3の割合で共有していたとします。
この土地を現物分割した場合、親の土地は300㎡、子どもの土地は200㎡となるのです。
土地を分筆することとなるため、登記や測量などの依頼をしなければなりません。
また建物については、現物分割を行うことは一般的ではありません。
換価分割
換価分割は、文字どおり不動産を現金化して、そのお金を共有者で分ける方法です。
共有となっている土地を売却し、残った現金を持ち分で分けることとするのです。
また、土地を何人かで相続し、その直後に売却して現金を分けることもできます。
ただ、購入希望者が見つからなければそもそも不動産を売却することはできませんのでこの方法は解消方法として候補に上らないでしょう。
代償分割
代償分割は、不動産の共有者のうち1人の者が、他の共有者が保有する部分を買い取る方法です。
買い取る人は、他の共有者から土地や建物を現金で買い取る必要があります。
そのため、ある程度の現金がなければ実行できません。
共有名義の不動産相続でやるべきこと
共有名義の不動産は、他の相続財産に比べて計算方法・相続方法が複雑です。
そこで下記では、共有名義の不動産相続でやるべきことを紹介します。
特例を活用して節税する
相続では、特例といって控除金額は増える仕組みがあります。
控除金額が増えればその分課税金額が減るため、特例を活用することは節税に繋がります。
例えば、不動産を相続する場合は、小規模宅地等の特例が利用できるかもしれません。
小規模宅地等の特例は、不動産の評価額を最大80%まで減額できます。
もし2,000万円の不動産を相続する場合に、小規模宅地等の特例を利用すれば、評価額を400万円まで下げられます。
ただし小規模宅地等の特例を利用するには「住居用・事業用・賃貸用の不動産である」といった条件を満たす必要があります。
相続ではこのような特例がたくさんあるため、条件を満たしていれば積極的に特例を利用すべきです。
相続人が複数いる場合は相続財産の分配を考えておく
名義を共有している人以外にも、相続人がいるケースもあるでしょう。
例えば子供がA・Bのふたりいて、Aは名義共有しているけど、Bは名義共有していない場合。
被相続人としてはAに不動産を相続したいけど、Bも相続の権利を持っているため「自分も不動産を相続したい!」と主張するかもしれません。
こういったトラブルを避けるためにも、相続人が複数いる場合は、財産の分配を生前に考えておきましょう。
「不動産はAに相続するけど、その他の財産はBに相続して、A・Bの両者が納得するように」といった配慮が必要になります。
まとめ
不動産を共有名義とすることは、必ずしも珍しいことではありません。
しかし、共有名義にすることで、売却できなくなったり、第三者に貸すことができなくなったりすることがあります。
そのため、現時点で共有となっている不動産については、できるだけ共有状態を解消しておくことが望ましいのです。
あるいは、その後の相続で困ることのないよう、遺言書の作成などの対策を考えておくようにしましょう。
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