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最終更新日:2021/11/9

相続時の預金の引き出し方法と流れとは?預金の引き出し法改正も詳しく解説

本間 剛 (行政書士)
この記事の執筆者 行政書士 本間剛

ベンチャーサポート行政書士法人 代表行政書士。山形県出身。

はじめて相続を経験する方にとって、相続手続きはとても難しく煩雑です。多くの書類を作成し、色々な役所や金融機関などを回らなければなりません。専門家としてご家族皆様の負担と不安をなくし、幸せで安心した相続になるお手伝いを致します。

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この記事でわかること

  • 相続した銀行口座を引き出すまでに必要な手続きとその流れがわかる
  • 銀行口座が凍結されても引き出せる制度ができたことを知ることができる
  • 銀行口座を引き出す制度を利用する流れと注意点を知ることができる

亡くなった人の名義となっている銀行口座は、死亡が確認されたら凍結されてしまいます。

そのため、その口座から現金を引き出したり、支払いの手続きを行ったりすることはできなくなります。

ただ、その口座のお金で葬儀費用や入院費用などを支払いたい場合には、そのためのお金を払い出してもらうことができます。

また、2019年7月からは、死亡した人の銀行口座から払い出しを行う際の制度が改正されています。

これらの制度を利用した場合の手続きの流れや注意点について、確認していきましょう。

相続した預金を引き出すまでの流れ

亡くなった人の名義となっている預金口座については、死亡したことが確認されたら凍結されてしまいます

凍結された銀行口座は、その後正式に相続手続きが完了し、名義変更や解約が行われるまでそのままとされます。

ただし、相続手続きが完了する前であっても、必要に応じて被相続人の口座から払い出しを受けることができます。

ここでは、相続発生から実際に解約や払い戻しを行うまでの手続きの流れを確認しておきましょう。

死亡届を提出する

相続に関する手続きを行うためには、死亡届を提出することが大前提となります。

亡くなったことがわかった日から7日以内に、亡くなった人の住所地の市区町村役場に提出する必要があります。

引き落としや入金の口座を変更する

銀行に亡くなったことを連絡する前に、その口座からの引き落とし、その口座への入金の予定を確認しておきましょう

公共料金や携帯電話の支払い、クレジットカードの引き落としなどがストップしてしまうと、その後の日常生活に支障が出ることから、適切に対応しなければなりません。

また、家賃収入などがある場合は入金できないこととなってしまうため、必ず新しい振込先を連絡しておきましょう。

銀行に連絡する

銀行に行って、口座名義人が亡くなったことを伝えると、その口座は凍結されます。

凍結された銀行口座からは、その後一切の入出金ができなくなります。

その後の手続きについて銀行の担当者に説明を受けて、必要書類等の確認をしておくと、その後の手続きがスムーズに進みます。

仮払いの請求を行う

亡くなってしばらくしてから発生する葬儀費用や入院費用、被相続人の債務の支払いなどに被相続人の銀行口座を利用したい場合があります。

この支払いを、すべての相続手続きが完了してから行うというわけにはいきません。

そこで、事前に仮払いを受けるための手続きを行い、一定金額を払い出してもらうのです。

すべての相続において仮払いを請求するわけではなく、必要に応じて行うことができます。

また、仮払いの請求を行う方法として、銀行に直接請求する場合と家庭裁判所に申立てを行う場合があります。

より早く仮払いを受けるためには、銀行で直接手続を行います。

また、より多額の仮払いを受けたい場合には、まずは家庭裁判所で手続きを行うこととなります。

相続の手続きを行う

相続の手続きを行って、被相続人の名義となっている銀行口座の解約や払い戻しを行うための期限はありません。

そのため、中には遺産分割協議が成立するまで1年以上かかる場合もあります。

遺産分割協議が成立し、あるいは遺言書に書かれたとおりに財産を引き継ぐことが決定して初めて、銀行で相続の手続きができます。

この時、銀行に遺産分割協議書あるいは遺言書を持っていく必要があります。

また、各銀行が用意している相続関係の書類を記載する必要もあります。

この他、亡くなった人が生まれてから亡くなるまでの連続した戸籍謄本や受け取った人の印鑑証明書や実印などが必要となります。

仮払いを受けていた銀行口座であっても、解約や名義変更などの手続きを改めて行う必要があるため、忘れないようにしましょう。

口座の持ち主死亡後は銀行口座が凍結されてしまう


銀行口座の名義人が亡くなると、その人の銀行口座は凍結されてしまいます。

凍結される理由は、銀行口座が相続財産として遺産分割の対象となり、亡くなった時点での残高を確定させる必要があるためです。

また、亡くなった人の口座から勝手にお金を引き出す相続人がいると、その後トラブルになることが予想されます。

そのため、トラブルを起こす原因とならないように、また銀行が相続人間のトラブルに巻き込まれないようにするねらいもあるのです。

銀行口座が凍結されるのは、どの金融機関でも例外なく行われています。

しかし、被相続人が家族の中心的な存在であり、その人の口座から生活費などの支払いを行っていると非常に困ったことになります。

この場合、銀行口座が急に凍結されてしまうと、相続後の相続人の生活費を引き出すことができません。

また、生活費だけでなく葬儀費用や亡くなった人の病院にかかった費用を支払うことも難しくなってしまうのです。

凍結が正式に解除されるのは、遺産分割に関する手続きが完了し、どの相続人がどの財産を相続するかが確定した時です。

しかし、そのような状態になるまでには数か月かかることが普通であるため、その間の支払いが大きな問題となってしまいます。

法改正で遺産分割前に預金の引き出しが可能になった

これまでも、遺産分割が正式に決定する前に必要な手続きをすることで、被相続人の銀行口座から払い出しを受けることができました。

しかし、これはすべての相続人が共同して行う行為であり、相続人全員の書類などが必要とされていました。

具体的には、相続人全員の署名・押印が必要となる書類を作成したうえ、全員の印鑑証明書も必要となります。

この場合、相続手続きを行う時のように、遺産分割協議書を作成する必要はありません。

しかし、相続人全員に署名してもらったり印鑑証明書を取得してもらったりする必要があるため、準備に時間がかかります。

また、協力的でない相続人がいる場合には、必要な書類を準備することができず、あるいは必要以上に時間がかかってしまいます。

そのため、葬儀費用の支払いなど、本当に必要な時までに間に合わないということも起こっていました。

そこで、これまでの制度を見直して、より使いやすい制度に変更されたのです。

2019年7月1日以降に被相続人の銀行口座から払い戻しを行う場合、相続人全員の署名を必要とする書類は不要です

相続人が単独で手続きを行うことができるようになったため、本当に必要なタイミングで払い出しを受けることが可能となりました。

具体的な手続きの流れについては、この後詳しく解説していきます。

遺産分割前に故人の預金の引き出しを行う流れ

仮払いを受けるためには、金融機関の窓口で直接手続きを行う方法と、家庭裁判所に仮払いを申立てる方法の2つがあります。

この2つの方法に分けて、その手続きの流れや必要書類を確認していきましょう。

金融機関の窓口で手続きを行う場合

相続人が急いで仮払いを受けたい場合、金融機関の窓口で直接仮払いの手続きを行うことができます

家庭裁判所での手続きを行う場合に比べて手間がかからず、払い出しを受けるまでの日数を短縮することができます。

また、改正された新しい制度を利用する場合、金融機関に仮払いを受ける理由を説明する必要はありません。

実際には葬儀費用の支払いや病院の費用の支払い、生活費などにあてることが多いとは思います。

しかし、そのことを詳しく説明する必要はないのです。

手続きの流れと必要書類

仮払いを受けるための手続きはすべて金融機関で行われます。

事前に金融機関に対して、仮払いを受けたいと伝えておいたうえで必要な書類を確認しておくと、スムーズに進むでしょう。

なお、どの金融機関でも被相続人が生まれてから亡くなるまでの連続した戸籍謄本、相続人の印鑑証明書は必要です。

そのほか、金融機関所定の申請書などの書類が必要となるので、金融機関で確認をして準備するようにしましょう。

仮払いの上限額

金融機関で直接仮払いを受ける場合に、払い戻しを受けることのできる金額は次の計算式で求めます。

相続開始時の銀行口座の残高×相続人の法定相続分×3分の1

この計算式で求めた金額と150万円のいずれか大きい金額の範囲内で仮払いを受けることができます。

つまり、1つの金融機関で最大150万円の仮払いを受けることができるのです。

家庭裁判所で申立てを行う場合

家庭裁判所で申立てを行うことで、金融機関からの仮払いを受ける制度があります。

金融機関で直接手続きを行う場合と比較して手続きに時間がかかるため、緊急の支払いに利用するのは不向きです。

また、裁判所に申し立てる際には仮払いを受ける理由を記載しなければなりません。

さらに、仮処分を求めるという手続きの性質上、自分ですべてを行うことは難しいと言わざるを得ません。

そのため、弁護士に依頼して行う必要があり、費用も多くかかってしまいます。

その一方で、家庭裁判所での手続きを行えば、金融機関で手続きを行った場合に比べてより多くの仮払いを受けることができます。

手続きの流れと必要書類

家庭裁判所に仮払いの申立を行う際には、その仮払いを受ける理由が必要です。

そのため、仮払いを受ける必要性を示す証拠書類が必要となります。

相続人の生活費を確保するために仮払いを受ける場合には、その相続人の源泉徴収票や課税証明書などの収入資料が必要です。

また、被相続人の債務や未払の医療費などを支払うためであれば、その明細や請求書などが必要です。

仮払いの上限額

家庭裁判所で仮処分決定を受けて払い戻しを行う場合、その相続人の法定相続分の払い戻しを受けることができます。

金融機関で直接手続きを行う場合よりも金額は大きくなりますし、150万円といった上限金額も定められていません。

そのため、家庭裁判所に申立てを行った場合は、金融機関で直接手続きを行う場合より多額の仮払いを受けることができるのです。

相続時に預金を引き出すときの注意点

遺産分割前に仮払いを受けることが、以前より簡単な手続きでできるようになりました。

葬儀費用の支払、入院費用の支払、相続後の生活費の確保など様々な必要性があることから、仮払いを利用する人は増えるでしょう。

しかし、この制度を利用するにあたっては注意しなければならない点もいくつかあります。

その内容を確認しておきましょう。

相続放棄できなくなることがある

預金の仮払い制度を利用して、被相続人の財産を受け取ると、その後に相続放棄できなくなることがあります

これは、被相続人の財産を受け取って自分のために利用した時点で、他の財産も含めてすべてを相続したこととなるためです。

仮払いを利用しても、葬儀費用などの支払いにあてるだけであれば相続放棄できなくなることはありません。

しかし、仮払いされたお金を生活費に使うと、その時点で相続放棄ができなくなるのです。

仮払い制度を利用する際には、被相続人に借金がないかを確認しておきましょう。

借金がないと確認できれば問題はありませんが、相続放棄するかもしれないと考える場合には、仮払いを利用しない方がいいのです。

相続人どうしのトラブルを招く可能性がある

相続人が単独で被相続人の銀行口座から仮払いを受けることができるようになりました。

そのため、他の相続人に事前に知らせることなく仮払いを受けることが多くなると思います。

しかし、連絡なしに勝手に亡くなった人の銀行口座からお金を引き出したと聞いた他の相続人は、いい気分ではありません。

葬儀費用や入院費用などを支払う必要があった事情を説明し、納得してもらえればいいのですが、そうはいかないこともあります。

その結果、個人的な支出に使ってしまったのではと考え、遺産分割の際に他の財産を減らされてしまうのです。

感情的なもつれが生じてしまうと、その後の相続手続きに大きな影響が出てしまうのです。

必ず事前にお金を引き出す必要があること、そしてその金額がいくらぐらいになるのかを説明しておきましょう。

そして、実際に支払った後にはその領収書を保管しておき、不正な支出を行っていないと説明できるようにしておきましょう。

仮払いを利用せずに済む方法も考えておく

仮払い制度ができたことで、相続人が単独でも仮払いを受けることができるようになりました。

しかし、実際に仮払いを受けるためには書類の準備などにいくらかの時間はかかります。

また、銀行から実際に払い出されるまでどれくらいの時間がかかるのか、はっきりわからないことが多いと思います。

そのため、本当に必要な時期に間に合うのか、不安に思うこともあるでしょう。

そのような不安を抱えないためには、仮払いを利用しなくてもいい状況にしておく必要があります。

たとえば、被相続人が亡くなって口座が凍結される前に、いくらかの現金を引き出しておくだけでもその後の支払いは楽になります。

あるいは、葬儀費用は誰が支払うのかを決めておき、相続の際にその分をもらえるようにしておくこともできます。

仮払い制度を利用しても決して万能ではないことから、他にできることを考えておく必要があるのです。

相続手続きが完了した後の払い出し

相続手続きが完了した状態とは、遺言書あるいは遺産分割協議書にもとづいて、被相続人の銀行口座を引き継ぐ人を決めることです。

この場合、凍結された被相続人の銀行口座から相続人の口座の振込、あるいは各相続人に対して現金の払い出しが行われます

その結果、被相続人の口座についてはすべて払い出しを行い、残高はゼロとなるのです。

基本的には、被相続人の銀行と異なる銀行への振り込みも対応してもらえます。

ただし、被相続人がゆうちょ銀行に口座を持っている場合は、ゆうちょ銀行への振り込みか現金の払い出しとなります。

他の金融機関への振り込みは対応できないため、ゆうちょ銀行に多額の残高がある場合は注意が必要です。

まとめ

亡くなった人の名義となっている銀行口座については、いずれ必ず凍結されてしまいます。

銀行口座が凍結されてしまうと、相続人の相続後の生活に大きな影響が出る可能性があります。

特に、家賃や公共料金などの支払いを行っていた口座が凍結されると、滞納となってしまうこともあるため注意が必要です。

一方で、葬儀費用や入院費用などのまとまった支払いを行うためには、仮払い制度を利用することができます

この制度を利用すれば、相続の手続きが完了する前に亡くなった人の口座から払い出しを受けることができます。

しかし、相続人どうしのトラブルを招く原因となる場合もあるため、勝手に払い出したと誤解をされないような準備は必要です。

亡くなった人がいると数多くの手続きをしなければなりません。

支払いを行う際に、戸惑うことのないようにしておきましょう。

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