この記事でわかること
- 上場株式の相続税評価額の計算方法を知ることができる
- 非上場株式の相続税評価額の計算方法を知ることができる
- 株式を保有する場合に相続税の負担を減らせる方法がわかる
被相続人が保有している財産として、相続税の課税対象となるものの1つに株式があります。
株式には、大きく分けて上場株式と非上場株式の2種類があり、それぞれ異なる相続税評価額の計算方法が定められています。
財産の相続税評価額は、相続税の税額を計算する基礎となる金額であり、大変重要な計算といえます。
ここでは、株式を相続した場合の相続税評価額の計算方法や、株式を保有している場合の節税方法について解説していきます。
目次
上場株式の相続税評価方法
一般的に、株式を保有しているという場合、上場株式を保有していることを指します。
上場株式を保有している人が亡くなると、その株式は相続税の課税対象となるのです。
上場株式とは
上場株式とは、金融商品取引所に上場している株式をいいます。
金融商品取引所とは、東京証券取引所をはじめとする証券取引所のことです。
現在、日本には東京証券取引所のほか、名古屋、福岡、札幌にも証券取引所があります。
ただ、市場の規模や取引量では東京証券取引所にほぼ集中しています。
また、証券取引所には同じ取引所の中にもいくつかの市場があります。
たとえば、東京証券取引所には第一部、第二部、マザーズ、ジャスダックの4つの市場が設けられています。
それぞれ上場の基準が異なるため、古くからの企業が多いものや新興企業が多いものなどといった特色があります。
これらに上場している株式はいずれも上場株式となり、市場による違いはありません。
上場株式の相続税評価額
証券取引所に上場している株式は、毎日その市場において取引価格が決まり、価格は毎日変動しています。
そこで上場株式の相続税評価額は、その市場における価格をもとに計算することとされています。
まず基礎となるのは、被相続人が亡くなった日(相続開始日)の終値です。
- ①「相続開始日の終値×株数」の計算を行い、その評価額を計算したもの
ただ、相続開始日の株価が極めて特殊な要因により高騰している場合もあります。
このような場合は、単に相続開始日の終値で評価することがその株式の正しい実力を示しているとはいえません。
そこで、相続開始日前の情勢を加味した評価額になるよう、以下の株価の計算を行うこととされています。 - ②相続開始日の属する月の終値の平均額
- ③相続開始日の属する月の前月の終値の平均額
- ④相続開始日の属する月の前々月の終値の平均額
そして、①~④の中で最も低い価格を選択し、その価格に株数をかけて相続税評価額の計算を行います。
こうすることで、相続開始日あたりにたまたま株価が高騰していた場合でも、正しい評価額を求めることができるのです。
上場株式の評価額を求める際の注意点
相続開始日が土日や祝日のため、証券取引所が休場となっている場合は、その日の取引価格がありません。
このような場合は、相続開始日に近い日の終値を使って相続税評価額の計算を行います。
たとえば相続開始日が土曜日の場合は、金曜日の終値を用います。
また、相続開始日が日曜日の場合は月曜日の終値を相続開始日の終値とするのです。
株価の調べ方
3か月分の株価の終値について、毎月の平均の終値を計算しなければならないため、難しいとか面倒と感じる方もいることでしょう。
株価や1か月分の終値の平均を求めるには、どうしたらいいのでしょうか。
最も早いのは、被相続人が取引していた証券会社に問い合わせをすることです。
証券会社には、どの銘柄の株式を何株保有していたのかを確認する必要もあるため、その時一緒に確認するようにしましょう。
また、相続開始日の終値は株価を検索できる様々なサイトで調べることもできます。
終値の平均額については、日本取引所グループのホームページで銘柄ごとの月間平均額を調べることが可能です。
非上場株式の相続税評価方法
被相続人が中小企業の株主となっている場合は、その株式について非上場株式の相続税評価額を計算しなければなりません。
非上場株式の相続税評価額を求める際には3つの計算方法があり、その会社や株主の状況にあわせて使い分けることとされています。
この3つの計算方法について、簡単に確認しておきましょう。
なお、実際に相続が発生した場合には、どの評価方法によるのかを判定し、その評価額がいくらになるのか、正確に計算しなければなりません。
しかし、専門家でもない人が正確に非上場株式の相続税評価を行うのは非常に困難です。
そのため、相続の際に非上場株式が相続財産に含まれている場合は、税理士に相談した方がよいかもしれません。
類似業種比準方式
営む業種が近い上場企業の株価を反映させて、非上場株式の評価額を計算する方法です。
配当した金額、利益金額、純資産額の3つの要素を、業種が類似する上場企業の平均額と比較します。
そして、その比率を上場企業の株価に乗じて、非上場株式の評価額を求めるのです。
純資産価額方式
非上場企業の純資産額から、その会社の株式の1株あたりの価値を計算する方法です。
ここで用いる純資産額は、会社の資産も相続税評価額で計算して求めた額となります。
そのため、土地や建物、有価証券などは相続税評価方法にもとづいて計算し直す必要があります。
配当還元方式
非上場株式を相続した人が少数株主にあたり、配当による収益くらいしか株式を保有するメリットがない場合の評価方法です。
過去に配当された金額をもとに株価を評価するため非常に簡単で、他の評価方法より低い金額になります。
株式の相続税計算方法
それでは、実際に株式を相続した場合の相続税の計算方法について確認しておきましょう。
ここでは、相続税評価額800万円の株式のほか、預金1,000万円、土地・建物6,000万円を子ども3人で相続したものとして考えてみます。
相続財産の額を求める
相続財産の額は、相続した財産の相続税評価額を計算し、その合計額を求めます。
このケースでは、800万円+1,000万円+6,000万円=7,800万円となります。
株式や土地・建物などの不動産の相続税評価額は時価と異なるため、相続税評価額を正確に求める必要があります。
基礎控除や債務の額を差し引く
基礎控除とは相続財産の合計額から差し引くことができる金額として、すべての人に認められている金額です。
その金額は、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」であり、法定相続人が3人いる場合は4,800万円となります。
また、被相続人に金融機関からの借入金などがある場合は、債務の額として相続財産の額から控除することができます。
このケースでは被相続人に債務はなかったものとします。
すると、相続財産から控除される基礎控除4,800万円を指し引いた後の課税対象となる財産の額は、3,000万円となります。
相続税額を計算する
課税対象となる相続財産の金額を計算したら、その金額を法定相続分に分け、その金額から相続税額を求めます。
この場合、3,000万円を法定相続分に分けると1,000万円となり、相続税額は1,000万円×10%=100万円となります。
そのため、3人で納付する相続税額の合計は100万円×3人=300万円となるのです。
実際に納付する相続税額は、相続した財産の割合によって按分します。
また、相続人の状況によっては、未成年者控除や障害者控除などの税額控除が受けられます。
非上場株式は相続対策の重要性が高い
保有する株式はすべて相続税の課税対象となるため、相続人は多額の相続税を納付しなければならない場合があります。
特に非上場株式の場合は、その評価額が高額になる一方で売却することもできないため、相続税の納税に苦労することがあります。
そこで、非上場株式を保有する人は、相続対策を行うことの重要性が非常に高いのです。
株式の相続税負担を減らす方法5つ
株式、特に非上場株式を保有する際に考えておく必要があるのが、税負担を減らすための方法です。
ここでは、相続財産から生じる税負担を減らすことができる方法について解説していきます。
取得費の特例を利用する
相続した株式をその相続後に売却すると、譲渡所得が発生します。
この譲渡所得の計算を行う際には、売却した際の収入金額からその株式を取得するのにかかった取得費と譲渡費用を控除します。
相続した株式を相続開始から3年10か月以内に売却すると、相続した際に支払った相続税を取得費に含めることができます。
そのため、相続の際に相続税を負担しても、その後の所得税を軽減することができるのです。
非上場株式を会社に売却した場合の特例
相続した非上場株式を、その会社に買い取ってもらう場合があります。
この場合、通常はみなし配当と呼ばれる所得が発生し、所得税と住民税で最大55%もの税額が発生します。
しかし、相続した非上場株式を相続開始から3年10か月以内に発行会社に売却すればみなし配当は発生しません。
この場合、発生した所得はすべて譲渡所得となるため、一律20%の税負担で済むのです。
非上場株式の株価を下げる
自社株とも称される非上場株式から生じる相続税を下げるためには、非上場株式の評価額を下げるのが効果的です。
ただ、評価額を下げるためには会社の利益を圧縮し、あるいは純資産額を減らす必要があります。
そのため、株価を下げることを意識しすぎて、会社の業績が悪化しないよう注意が必要です。
役員退職金の支給や固定資産の購入などを計画的に行い、株価を下げながら会社の業績が悪化しすぎないようにしましょう。
事業承継税制を利用する
最後は、税法が定める事業承継税制の制度を利用する方法です。
事業承継税制を利用すれば、非上場株式の贈与や相続があった時に贈与税や相続税の納税を猶予してもらえます。
ただ、利用にあたっては多くの条件があるため、誰でも利用できるわけではないことに注意が必要です。
生前贈与を活用する
株式の相続税対策としては、相続ではなく生前贈与の活用もおすすめです。
贈与は年間110万円以内であれば暦年贈与といって、贈与税がかかりません。
株式は細かく分割して贈与できるため、贈与税がかからない範囲で毎年コツコツ贈与していけば、節税しながらうまく贈与ができます。
もし自分が株式を持っていて将来的に相続が発生しそうな場合や、親が株式を持っており自分が相続する場合は、生前贈与から活用しましょう。
上場株式であれば、4つの評価方法からもっとも評価額の低いものを選択できます。
うまく生前贈与できれば、通常の相場よりも安く贈与できて、税金の対策にもなります。
相続時精算課税制度の活用
生前贈与では、相続時精算課税制度という仕組みが活用できます。
相続時精算課税制度を利用すれば、最大2,500万円以内の贈与が非課税になります。
ただし相続が発生した場合には、非課税になっている贈与分を相続財産としてカウントしたうえで、相続税を計算します。
そのため相続時精算課税制度は贈与税を払わずに、相続税として支払う、税金の先送り制度といわれています。
「相続時精算課税制度を使っても、結局相続時に税金を払うから意味がない」と思うかもしれません。
しかし株式に関しては、相続時精算課税制度を使うメリットがあります。
相続時精算課税制度を使うと、贈与したときの評価額が基準になります。
将来的に評価額が高くなりそうな株式を、生前贈与することで、安い段階で株式の贈与ができます。
例えば1株500円で贈与した株式が、相続時には1株2,000円まで値上がりしたとします。
通常の相続であれば、1株2,000円で相続財産を算出しますが、相続時精算課税制度を使っていれば1株500円で金額算出できます。
同じ株式なのに、値上がりした1,500円分を節税できることになります。
このように値上がりしそうな株式を持っているなら、相続時精算課税制度の利用がおすすめです。
株式の相続で悩んだら税理士に相談しよう
株式の相続で悩んでいる人は、税理士への相談がおすすめです。
なぜなら株式の相続・贈与は税金の計算が難しく、知識のない状態だと適切な判断ができないからです。
プロである税理士に依頼することで、損することなく贈与・相続ができます。
まずは税理士に相談してみて、どうすればいいのかアドバイスをもらうのが確実でしょう。
相続サポートセンターでは初回の相談を無料で受け付けているので、気軽に相談できます。
まとめ
株式が相続財産になる場合、その相続税評価額は高額になることもあり、相続税の負担が大きくなります。
ただ、その株式が上場株式か非上場株式かで、相続人の負担は大きく変わります。
上場株式の場合は、簡単に売却することができ、また相続人間で容易に分割することができます。
一方、非上場株式は相続人の中でも特定の人に相続させたいと考えることが多く、また簡単に売却することもできません。
そのため非上場株式を保有する方は、会社の経営権の問題も含めてその相続についてあらかじめ考えておく必要があります。
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