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最終更新日:2022/3/17

特定の相続人(長男)だけに相続させたい場合について

本間 剛 (行政書士)
この記事の執筆者 行政書士 本間剛

ベンチャーサポート行政書士法人 代表行政書士。山形県出身。

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「相続人は長男だけにしたいのだけれど・・・」そんな相談が時おり見られます。

これは旧民法での制度のひとつである家督相続というものに由来しているケースや、単純に他の相続人との不仲説、家業を引き継がせるため等々、様々なケースが考えられます。

今回は長男だけに相続分を残したい、という場合において様々な観点から説明をしていきます。

法定相続について

一般的に、相続の単純承認をすると、下記の順位から該当する相続人が遺産を相続することになります。

1 死亡した人の配偶者
2 死亡した人の子供
3 死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)
4 死亡した人の兄弟姉妹
※相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされます。
※内縁関係の人は、相続人に含まれません。
(民法887条、889条、890条)

特定の相続人(長男)に相続させる場合

上記のように、法定相続がなされると特定の相続人(以後、「長男」とします)のみに遺産を相続させるということが出来ません。

長男のみに相続させる方法としては下記のパターンになります。

遺産分割協議により長男にのみ相続させる

他の相続人全員の同意が必要になりますが、相続人で話し合いを行い、全員がその内容で納得する場合に成立します。

ただし、価額が高額で、ほかにめぼしい遺産がない場合は、何らかの見返りを条件としたくなるのが人の常であり、実際の姿でもあるので、他の相続人が一部でも反対をしていると話がまとまらない場合があります。

遺言により長男にのみ相続させる

長男に相続させる旨を予め遺言にて決めておく方法です。

しかし、遺言で長男のみに相続させる旨を記載した場合には、他の共同相続人から遺留分減殺請求を行使される可能性があります。

遺留分というのは、最小限度これだけは、その相続人に残さなければならない割合であるので、相続分の約半分が遺留分に当たります。

また、被相続人の生存中に家庭裁判所の許可を受けて、被相続人の死後に遺留分を主張しないという取り決めをしておくことも可能ですが、強制することはできません。

また、裁判所は事情を調べた上でないと許可しません。

他の相続人に相続を放棄してもらう

被相続人の死後に、他の相続人がそれぞれ相続を放棄して長男にのみ相続をさせる方法です。

被相続人の死亡により相続が開始したことを知ったときから三ヵ月以内に、他の相続人が相続放棄申述書を家庭裁判所へ提出します。

家庭裁判所の受理によって放棄者には相続権がなかったことになり、放棄しなかった相続人だけが相続分に応じて遺産を分配し、放棄しない者が長男のみであったときは、1人で全財産を相続します。

相続放棄が出来る期間は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」と民法で定められていますので、他の相続人が生前に相続放棄をしようとしても、家庭裁判所にて受理してもらうことは出来ません。

生前贈与をおこなう

贈与税が加算されますが、被相続人の生存中に該当の遺産を贈与する方法です。

また、生前贈与するものによっては贈与税が免除されるものもあります。(例えば、農地など)

相続人を長男にする際のポイント

上記で述べたとおり、被相続人の生前に相続放棄をすることは出来ませんが、遺留分を放棄することは可能です。

相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずるとされています(民法1043条)。

被相続人の生前には、他の相続人が同意していたのに、いざ相続が開始してみると遺留分を主張する相続人が出現するということもあり得ますので、そのようなことを防ぐために、遺言書の作成に加え、生前の遺留分放棄をさせておくことが有効です。

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最後に

特定の人物だけに相続させるということは、裏を返せばその特定の人物以外には相続させない、させたくないという意思が介入することになります。

それにより、相続人の間でトラブルになる要因としては大きいものだと思いますので、慎重に事を運ぶ必要があります。

専門家の手を借りて適切に対応することでトラブルの火種を最小限に留めることが出来るかも知れません。

仲の良い親族関係の場合は勿論のこと、どのような親族関係の場合でも円満に相続が進められれば良いと思います。

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