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最終更新日:2021/9/17

年金保険は相続税の課税対象?【一時金と年金で受け取るのはどちらがお得?】

古尾谷 裕昭
この記事の執筆者 税理士 古尾谷裕昭

ベンチャーサポート相続税理士法人 代表税理士
東京税理士会 登録番号104851

東京、横浜、千葉、大宮、名古屋、大阪、神戸など全国の主要都市22拠点にオフィス展開し、年間2,200件を超える日本最大級の相続税申告実績を誇る。 業界最安水準となる明朗料金ときめ細かいフォローで相続人の負担を最小にすることを心がけたサービスが評判を得る。1975年生まれ、東京都浅草出身。

PROFILE:https://vs-group.jp/sozokuzei/supportcenter/profilefuruoya/
書籍:今さら聞けない 相続・贈与の超基本
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年金保険は相続税の課税対象?【一時金と年金で受け取るのはどちらがお得?】

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この記事でわかること

  • 被相続人が契約していた生命保険が課税対象となることがわかる
  • 生命保険の受け取り方で発生する税金の種類が変わることがわかる
  • 死亡保険金の非課税枠の計算方法や適用の有無を知ることができる

相続が発生すると、被相続人が加入していた生命保険金を受け取ることがあります。

この時、受け取った生命保険金には税金はかかるのか、そしてどのように申告するのか、疑問を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は相続で発生した生命保険の税金の疑問について解説していきます。

保険の種類や受け取り方によって税金の種類や金額が変わってくる可能性があるため、しっかり確認していきましょう。

相続税の課税対象になる生命保険の種類

生命保険と一口に言っても、その保険からどのような税金が発生するかはいくつかのケースに分かれます。

生命保険から発生する税金の種類が異なるのは、生命保険の契約に関する登場人物が多くいるためなのです。

最初に保険契約の登場人物としてあげられるのは、保険の対象となる①被保険者です。

相続により保険金を受けることとなる生命保険契約については、被保険者は亡くなった人(被相続人)となるはずです。

次に、②保険契約者がいます。

保険契約者は、実際にその保険の契約を行い、生命保険料を支払っていた人です。

最後に、③保険金の受取人がいます。

死亡保険金の場合、受取人となるのは被相続人本人ではなく、その遺族ということになります。

この三者の組み合わせによって発生する税金が変わります。

亡くなった夫が被保険者となっていた死亡保険金を、その遺族が受け取った場合でも以下のようなケースが考えられます。

①被保険者 ②保険契約者 ③保険金の受取人 税金の種類
(1) 妻または子 相続税
(2) 所得税
(3) 贈与税

(1)のケースは、亡くなった人が自ら保険料を負担しており、死亡保険金を相続人である妻や子が受け取った場合です。

このようなケースでは、受け取った妻や子に相続税が発生することとなります。

(2)のケースは、亡くなった人が自分で保険料を支払っていない一方、保険料を支払った人と受け取った人が同じ場合です。

このような場合は、保険金を受け取った人に対して所得税が課されることとなります。

最後に(3)のケースは、保険料を負担した人と保険金を受け取った人が別の人という場合です。

このような場合は、保険料を負担した人からの贈与ということになり、保険金を受け取った人に贈与税が課されます。

また、死亡保険金の受取人が、一括受け取りではなく年金形式での受け取りを選択することができることもあります。

この場合は、さらにその評価方法や税金計算が複雑になるため、その内容について確認していきます。

年金保険を受け取った場合の相続税の評価方法

年金形式で保険金を受け取る場合、その金額の相続税評価額は3つに分かれます。

それぞれどのような受け取り方でどのように評価額を計算するのか、解説していきます。

有期定期金の場合

10年や15年という風に期間を区切って定期的に金銭の給付を受けることをいいます。

有期定期金とされた場合は、3つの評価額の計算を行い、その中で最も大きなものを相続税評価額とします。

  • ①解約返戻金の金額
  • ②一時金で受け取ることとした場合の金額
  • ③1年あたりで受け取る年金の平均額×残存期間の予定利率の複利年金現価率

無期定期金の場合

無期定期金は、給付期間を決めずに定期的に金銭の給付を受けることをいいます。

無期定期金とされた場合、以下の3つの評価額の計算を行い、その中で最も大きなものを相続税評価額とします。

  • ①解約返戻金の金額
  • ②一時金で受け取ることとした場合の金額
  • ③1年あたりで受け取る年金の平均額÷予定利率

終身定期金の場合

終身定期金は、被保険者が亡くなるまで金銭の給付が続く契約のことをいいます。

終身定期金とされた場合も、以下の3つの評価額の計算を行い、その中で最も大きなものを相続税評価額とします。

  • ①解約返戻金の金額
  • ②一時金で受け取ることとした場合の金額
  • ③1年あたりで受け取る年金の平均額×定期年金の受取人の平均余命に応じた予定利率による複利年金現価率

年金保険の受け取りは2年目以降所得税として課税される

年金保険を受け取る場合、保険金を何年にもわたって受け取ることとなります。

この場合、1年目に受け取る保険金と2年目以降に受け取る保険金とでは、税務上の取扱いが大きく異なります。

相続が発生した年に受け取る年金保険は、すべて相続税の対象とされます。

一方、相続の翌年以降に受け取る年金保険については、所得税の計算対象に含まれます。

1年ごとに受け取った保険金と、それに対応する保険料から所得金額を計算し、必要に応じて確定申告をすることとなります。

所得区分は雑所得となるため、所得が発生すれば所得税額が発生することとなります。

年金保険を一時金として受け取った場合の相続税の評価方法

年金保険を年金として受け取るのではなく、一時金として受け取ることができます。

一時金として受け取った場合、その一時金は相続税の課税対象となり、受け取った金額がそのまま相続税評価額となります。

なお、一時金として受け取った場合、翌年以降に保険金として受け取る金額はありません。

そのため、この評価方法により評価を行うのは相続が発生した初年度だけということになります。

年金保険の相続税計算・受取方法を専門家に相談すべき理由

相続により年金保険を受け取る権利があることがわかった場合、自身で色々な判断をするのは避けた方が安全だと言えます。

年金保険の受け取り方法によって、その税額が大きく変わることが考えられるためです。

たとえば、年金保険を年金として受け取るのか、あるいは一時金として受け取るのかでその税金の計算方法が変わります。

年金として受け取れば、相続税の対象となる金額は少なくなりますが、翌年以降の所得税の対象となる金額が生じます。

所得税の金額は受け取る人の所得金額により税率が変わるため、どれだけの税額が発生するかを予測するのは簡単ではありません。

税負担を少なくするために一時金として受け取るのか、あるいは年金として受け取るかを自分で判断するのは難しいのです。

また、相続税が発生するのか、所得税が発生するのか、あるいは贈与税が発生するのかを判断しなければなりません。

保険契約者(保険料の負担者)と保険受取人の関係を考え、どの税金が発生するのかを判断する必要があるのです。

さらに、どの税金の対象となるのかを判断することができても、相続税評価額を計算するのは難しいのです。

複利年金現価率や予定利率を用いてその評価額を計算するのは、初めての人には簡単なことではありません。

このようなことを考えると、年金保険が発生する場合にはまず専門家に相談すべきだと言えるでしょう。

死亡保険金は相続税計算時に非課税枠が設定される

死亡保険金を受け取る場合、その死亡保険金の金額は相続財産とみなされ相続税の課税対象となります。

しかし、死亡保険金は残された遺族の生活を守るためのものです。

それが相続税の対象となり、受け取った保険金から相続税を負担しなければならないのでは、本来の目的が達成されません。

そこで、死亡保険金については全額が相続税の対象とならないように非課税枠が設けられています

死亡保険金の非課税枠の金額は、「500万円×法定相続人の数」で計算します。

死亡保険金の金額が、この非課税枠内であれば死亡保険金を受け取っても相続税は発生しません。

たとえば、法定相続人が配偶者と子ども3人の合計4人の場合、非課税枠の金額は2,000万円となります。

この場合、死亡保険金の額が2,000万円以内であれば、死亡保険金には相続税がかからないこととなります。

ただし、死亡保険金以外の相続財産がある場合には相続税が発生する可能性があるため、その点は注意しなければなりません。

死亡保険金に相続税の非課税枠が適用されないケース

被相続人が亡くなったことで死亡保険金を受け取った場合、非課税枠が適用され相続税の負担が軽減されます。

ただ、中には保険金を受け取ったとしても非課税枠が適用されないケースもあります。

非課税枠が適用されずに全額が相続税の対象となるケースにはどのようなものがあるのでしょうか。

保険受取人が法定相続人でない

被相続人が亡くなり、死亡保険金を受け取った場合でも、その受取人が法定相続人でない場合は非課税枠が適用されません

多くのケースでは、配偶者や子どもが受取人となっており、問題になることはありません。

しかし、中には孫が受取人となっている場合があります。

この場合、その孫が法定相続人とならない限り、死亡保険金の非課税枠を計算することはできません。

孫の父親か母親で被相続人の子どもにあたる人がすでに亡くなっており、孫が代襲相続人になる場合は孫が法定相続人となります。

また、孫が被相続人と養子縁組をしている場合も、法定相続人となります。

これ以外の場合は、孫が法定相続人とならないため、はじめから孫を保険受取人としないようにすべきです。

保険受取人が相続放棄をした

非課税枠の計算はできなくなりますが、死亡保険金の受取人は法定相続人に限定されるわけではありません。

また、相続放棄して最初から法定相続人でないこととされた人でも、死亡保険金を受け取ることができます。

ただし、相続放棄した人が死亡保険金を受け取った場合は、相続税の非課税枠を適用できないこととされます。

そのため、死亡保険金の全額が相続税の課税対象となるのです。

解約返戻金として受け取った

被相続人が家族の保険契約の保険料を負担していた場合、亡くなったことで保険料の支払者がいなくなってしまいます。

そこで保険契約を解約すると、それまでに支払った保険料について解約返戻金が発生することがあります。

この解約返戻金は、死亡保険金ではありません。

そのため、解約返戻金としてまとまった金額を受け取っても、非課税枠の計算対象ではないのです。

なお、この解約返戻金は保険料を負担していた被相続人に一旦返戻され、その後相続人が受け取る流れとなります。

そのため、返戻金として受け取った金額はそのまま相続財産として相続税の計算に含まれるのです。

また、保険契約を解約しなかった場合も、被保険者がその保険契約を相続したこととされ、課税対象となります

個人年金保険の死亡給付金を受け取った

一定の年齢から年金を受け取ることができる、個人年金保険の契約をしている方もいます。

ところが、個人年金保険の契約をしていたにもかかわらず、その支給開始前に亡くなってしまうと死亡給付金が支給されます。

この場合、死亡給付金として支給される保険金は、死亡保険金とは別のものと考えられています。

本来であれば被相続人が受け取るはずの保険金を、相続人が代わりに受け取ったものであるため、相続財産に含まれます。

そして、非課税枠の計算対象には含まれず、全額が相続財産となるのです。

まとめ

保険契約は、その当事者が多くいること、そして保険料の負担者と保険金の受取人が異なることも多く、課税関係が複雑です。

そのため、単純に相続税がかかる場合だけでなく、所得税や贈与税が発生するケースも考えられることに注意が必要です。

また、相続税がかかる場合には、相続税評価額の計算や非課税枠の適用についても慎重に検討しなければなりません。

保険の受け取り方を考え、間違いのない税金計算を行うには、専門家に相談するのがいいでしょう。

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