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最終更新日:2023/6/16

5,000万円の遺産にかかる相続税はいくら?節税に使える控除や特例など

古尾谷 裕昭
この記事の執筆者 税理士 古尾谷裕昭

ベンチャーサポート相続税理士法人 代表税理士
東京税理士会 登録番号104851

東京、横浜、千葉、大宮、名古屋、大阪、神戸など全国の主要都市22拠点にオフィス展開し、年間2,200件を超える日本最大級の相続税申告実績を誇る。 業界最安水準となる明朗料金ときめ細かいフォローで相続人の負担を最小にすることを心がけたサービスが評判を得る。1975年生まれ、東京都浅草出身。

PROFILE:https://vs-group.jp/sozokuzei/supportcenter/profilefuruoya/
書籍:今さら聞けない 相続・贈与の超基本
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5,000万円の遺産にかかる相続税はいくら?節税に使える控除や特例など

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この記事でわかること

  • 5,000万円の遺産がある場合にどれだけの相続税が発生するかがわかる
  • 相続人の構成により相続税の負担がいくらになるか知ることができる
  • 相続税の計算方法や節税に使える特例などの制度を知ることができる

相続税の負担は非常に大きく、相続人にとっては重荷になる可能性があります。

相続税がどれくらいかかるのかの見当がつかなければ、不安にもなるでしょう。

税制改正前に相続税がかかるか否かのひとつの基準であった遺産5,000万円を例に、どれくらいの相続税がかかるのかを確認してみましょう。

また早見表を活用して、おおよその相続税の税額を知る方法についても解説していきます。

相続税の計算方法や、相続税の控除・特例の制度についても、その詳細を確認していきます。

5,000万円の遺産にかかる相続税はいくら?

遺産の総額が5,000万円であった場合、非常に多くの相続税がかかるのではないかと心配する方もいるでしょう。

しかし、遺産が5,000万円であっても、そのすべてが課税対象になるわけではありません。

相続税の計算上、課税対象に含めない金額を計算する基礎控除額があるため、実際の課税対象額は少なくなるのです。

基礎控除額の計算は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で行います。

たとえば法定相続人が子ども1人のみの場合は3,600万円、配偶者と子どもが3人いる場合は5400万円となります。

そして、遺産総額から基礎控除額を差し引いた後の金額が、実際の課税対象となります。

配偶者のみの場合は5,000万円-3,600万円=1,400万円に対して相続税の計算を行います。

一方、配偶者と子どもが3人いる場合は、5,000万円-5,400万円<0円となるため、相続税の課税対象はありません。

実際の納税額は相続人が子ども1人の場合、160万円となります。

また、基礎控除額の方が遺産より大きい場合には、相続税額はゼロとなります。

相続税の早見表

相続税のおおよその税額を知るためには、相続税の早見表を使うのが便利です。

早見表とは、以下のルールに基づいて作成された相続税額の合計金額を計算した表です。

  • 遺産を法定相続分のとおりに分割する
  • 配偶者の相続分については配偶者の税額軽減を利用して税額ゼロとする
  • 基礎控除と配偶者の税額軽減以外の特例や控除は利用しない

上記の条件に沿った形で、相続人全員で負担する相続税の合計額を知ることができます。

配偶者がいる場合といない場合とで違いがあるため、まずは配偶者がいる場合の早見表をご紹介しましょう。

なお、配偶者のみが法定相続人となる場合は、早見表がありません

その理由は、遺産のすべてが配偶者の税額軽減の対象となり、相続税が発生しないからです。

配偶者ありの場合の早見表
遺産総額 配偶者と子ども1人 配偶者と子ども2人 配偶者と子ども3人
5,000万円 40万円 10万円 なし
6,000万円 90万円 60万円 30万円
7,000万円 160万円 113万円 80万円
8,000万円 235万円 175万円 138万円
9,000万円 310万円 240万円 200万円
1億円 385万円 315万円 263万円
2億円 1,670万円 1,350万円 1,217万円
3億円 3,460万円 2,860万円 2,540万円
5億円 7,605万円 6,555万円 5,963万円
8億円 1億4,750万円 1億3,120万円 1億2,135万円
10億円 1億9,750万円 1億7,810万円 1億6,635万円
配偶者なしの場合の早見表
遺産総額 子ども1人 子ども2人 子ども3人
5,000万円 160万円 80万円 20万円
6,000万円 310万円 180万円 120万円
7,000万円 480万円 320万円 220万円
8,000万円 680万円 470万円 330万円
9,000万円 920万円 620万円 480万円
1億円 1,220万円 770万円 630万円
2億円 4,860万円 3,340万円 2,460万円
3億円 9,180万円 6,920万円 5,460万円
5億円 1億9,000万円 1億5,210万円 1億2,980万円
8億円 3億4,820万円 2億9,500万円 2億5,740万円
10億円 4億5,820万円 3億9,500万円 3億5,000万円

相続人の人数が多いほど、基礎控除額が大きくなるために相続税額は少なくなります。

また、配偶者がいる場合は配偶者の税額軽減が適用できるため、配偶者がいない場合より相続税額は少なくなります。

なお、この早見表で求められる税額は、法定相続分どおりに遺産分割を行った場合の税額です。

実際の遺産分割の方法によっては、配偶者の税額軽減の対象になる税額が変化するため、これ以上の税額になることもあります。

相続税の計算方法

早見表を使って、相続税のおおよその税額を知る方法があることはおわかりいただけたでしょう。

しかし、実際に発生する相続税額はこの早見表のとおりにはならない場合もあります。

では、相続税の計算を行う際の手順を順番にご紹介します。

具体例

ここでは、以下のような事例にしたがって、相続税額の計算を行います。

  • 遺産の内訳
    預貯金6,000万円、土地5,000万円、建物1,000万円、有価証券2,000万円
    葬儀費用200万円
  • 法定相続人
    配偶者、長男、長女の3人
  • 遺産分割の割合
    配偶者が4割、長男と長女がそれぞれ3割を相続する

遺産総額を計算する

相続が発生したら、亡くなった人が保有していた遺産の総額を計算しなければなりません

遺産の総額を計算する際には、まず個々の遺産について相続税評価額を求める必要があります。

預貯金は、相続が発生した日の残高が相続税評価額となります。

土地はその所在地により、路線価方式または倍率方式のいずれかで相続税評価額を計算します。

また建物は、固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となります。

有価証券についても、相続発生前3か月間の各月ごとの終値の平均を求めて、相続税評価額を決定します。

なお、借入金などの債務がある場合はマイナスの財産としてプラスの財産から差し引いて計算します。

また葬儀費用もプラスの財産から差し引きます。

そのためこの事例では、6,000万円+5,000万円+1,000万円+2,000万円-200万円=1億3,800万円が遺産総額となります。

基礎控除額を計算する

基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。

この事例では、3,000万円+600万円×3人=4,800万円が基礎控除額となります。

基礎控除額が遺産総額より大きな金額となる場合は、相続税の課税対象になる金額は発生しません。

そのため、相続税の申告も納税も必要なくなり、これ以上先の手順に進む必要もなくなります。

課税遺産総額を計算する

基礎控除額が遺産総額より小さな金額となった場合は、相続税の申告をしなければなりません。

そこで、課税対象となる遺産の金額を計算します。

遺産総額-基礎控除額の計算を行い、残った金額が課税遺産総額となるのです。

この事例では、1億3,800万円-4,800万円=9,000万円が課税遺産総額となります。

相続税の総額を計算する

課税遺産総額を求めても、その額に税率を乗じて相続税額を計算するわけではありません。

相続税額の計算過程は、以下のようになります。

  • ①課税遺産総額を法定相続分に分ける
  • ②法定相続分に分けた金額に対して相続税の速算表を使って税額を求める
  • ③②で求めたすべての税額を合計する

まずは、①課税遺産総額を法定相続分に分割します

これは実際の遺産分割の方法に関係なく、相続税の計算を行うためだけに分割するのです。

この事例では、課税遺産総額9,000万円を配偶者4,500万円、長男と長女がそれぞれ2,250万円に分割します。

次に②にあるように、分割した金額ごとに相続税の計算を行います

ここでは相続税の速算表を用いて計算することとされていますが、速算表は以下のような表になります。

法定相続分で分割した金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

たとえば配偶者分4500万円については、「5,000万円以下」に該当するため、4,500万円×20%-200万円=700万円になります。

同じく長男・長女分2,250万円については、「3,000万円以下」に該当するため、2,250万円×15%-50万円=287万5,000円となります。

最後にこれらの税額を合計して、すべての相続人が納付すべき相続税額を求めます。

この事例では、700万円+287万5,000円×2=1,275万円となります。

相続税の納税額を求める

ここまでの過程で相続税の合計額を求めましたが、誰が相続税を納付するかはまだ確定していません。

そこで、それぞれの相続人が実際に納税する相続税を計算しなければなりません。

各相続人が相続した遺産の割合に応じて、相続税の合計額を按分し、それぞれの納付額とします。

この事例の場合、配偶者は4割を相続するので、1,275万円×0.4=510万円となります。

また長男と長女はそれぞれ、1,275万円×0.3=382万5,000円となります。

相続人ごとの納税額を求めたら、最後にその納税額に対する控除や特例の計算を行います。

配偶者の税額軽減が適用できるため、配偶者の納税額はゼロとなりますが、長男と長女はそれぞれ納税しなければなりません。

相続の仕方は大きく3種類ある

相続には3つの選択肢があります。

  • 単純承認
  • 限定承認
  • 相続放棄

民法上「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に、相続について、単純もしくは限定の承認または放棄をしなければならない」と規定されているため、限定承認または相続放棄を選択する場合は3か月以内に家庭裁判所で手続きをしなければなりません。

ここでは、3つの違いについて解説します。

単純承認

相続を全て承認する場合は「単純承認」と呼ばれ土地の所有権などの権利(資産)だけでなく、借金などの義務(債務)も含めて全てを相続します。

3か月以内に限定承認・相続放棄の意思を示さなければ、自然に単純承認したものとして判断されます。

限定承認

単純承認が被相続人の全てを相続するのに対し、限定承認は相続人が被相続人の債務を清算して、資産が余った分のみを相続する方法です。

仮に資産より債務の方が大きければマイナス分の債務は切り捨てることができ、反対に債務より資産の方が大きければ、全ての財産を相続できます。

限定承認は、相続財産のうち債務が資産を超過しているか不明な場合に適用されます。

相続放棄

相続放棄は、相続権利を放棄して、一切の財産を相続しない方法です。

相続の権利を完全に放棄するため、相続放棄すれば相続人としてカウントされず、相続に関わらなくても大丈夫になります。

亡くなった被相続人が借金を抱えていた場合に、相続人は借金を肩代わりしなければいけません。

借金といったマイナスの財産が多く、相続自体を拒否したいときに、相続放棄を利用します。

相続税の節税に使える控除・特例

相続人ごとの納税額を計算したら、基本的にはその納税額を相続発生から10か月以内に納付しなければなりません。

しかし、相続人の状況によってはその納税額から控除できる金額が計算されるケースがあるのです。

また、相続財産の内容により、遺産総額から減額できる特例が適用でき、大幅な相続税額の減算となることもあります。

ここでは、相続税の節税に役立つ控除や特例の制度をご紹介します。

小規模宅地等の特例

遺産の中には、被相続人名義となっている自宅が含まれます。

そして相続が発生した後も、その自宅に引き続き配偶者や子どもが住み続けることがあります。

しかし自宅を相続したために多額の相続税が発生すると、その自宅を売却せざるを得ず、住み続けることができなくなります。

そこで、自宅の敷地に対しては、他の土地とは異なり多額の相続税が発生しないような特例が設けられています

自宅の敷地については330㎡まで、評価額の8割を減額することができます

たとえば200㎡で5,000万円の評価額の土地の場合、その評価額を4,000万円減額し、1,000万円とすることができます。

小規模宅地等の特例を利用すると相続税がかからなくなる場合もありますが、申告だけはしなければならない点に注意しましょう

また配偶者と子どもでは適用要件が異なり、持ち家のある子どもでは適用できません。

配偶者の税額軽減

配偶者が相続した遺産については、配偶者の法定相続分か1億6,000万円のいずれか大きい金額まで非課税となる制度です。

これにより、配偶者が相続した遺産については相続税ゼロとなるケースが多いと考えられます。

配偶者が相続した分について適用されるため、遺産分割協議が成立しなければ適用できません

未成年者控除

相続人が未成年の場合、被相続人に扶養されていたケースが多く、相続後の生活のために遺産を多く相続する必要があります。

しかし、遺産を多く相続すればその分相続税の金額も大きくなってしまいます。

そのため、未成年者である相続人については、成人年齢に達するまでの年数×10万円を相続税額から控除できます

なお、2022年4月1日から成人年齢が18歳に引き下げられたのに伴い、未成年者控除の計算も18歳に達するまでの年数で行います。

障害者控除

相続人が障害者の場合、被相続人に扶養されていることが多く、多くの遺産を相続しないと相続後の生活が不安定になります。

しかし、多くの遺産を相続すればその分相続税が多くなってしまいます。

このため、障害者が相続人となった場合には、85歳に達するまでの年数×10万円で計算される金額を控除することができます

また、障害の程度が重い人の場合は特別障害者に該当し、1年あたりの控除額が20万円に増額されます。

相続時の注意点

相続が発生した場合、悲しい気持ちは察しますが、早々に遺産相続の手続きを進めましょう。

正しく相続を進めなければ、家族や親戚間でトラブルになること、資産の差し押さえになる可能性があります。

相続時には以下の内容に注意してください。

  • 法定相続人の確定
  • 相続財産の確認
  • 相続手続き・納税の期限

それぞれ詳しく解説します。

法定相続人の確定

法定相続できる人の範囲と相続人の順位を確定させましょう。

被相続人との関係によって相続できる順位は異なります。

例として、父が被相続人で妻あり、子どもが2人、父には兄弟姉妹が2人いたとします。

そのような場合、相続順位は以下の通りです。

  • 常に相続人:配偶者
  • 第一順位 :直系卑属(子または孫)
  • 第二順位 :直径尊属(親または祖父母)
  • 第三順位 :兄弟または姉妹、甥、姪

あまり連絡を取らない甥や姪であっても状況により相続人に含まれます。

相続人の人数が変われば相続財産の再計算をする必要があるため、相続人は早急に確定しましょう。

なお、遺言により遺産分割を示されるケースがありますが、遺産分割に納得ができない場合、遺留分を請求できる可能性があります。

遺留分とは「遺言でも奪うことができない一定範囲の相続人に認められる、最低限度の遺産取得割合」のことです。

被相続人に近い関係にある「配偶者」「子や孫などの直系卑属」「親や祖父母の直系尊属」が対象です。

相続財産の確認漏れ

相続財産は過不足なく確認しましょう。

相続財産の確認漏れがあると計算のやり直しが発生し、金額によっては相続税も変更になる可能性があります。

相続財産として不動産・現金・貴金属・車など目に見えるものは把握しやすいですが、デジタルで管理されている物も相続対象のため気を付けてください。

銀行口座・証券口座(株式・FX)・仮想通貨などはよく見落とされるため、生前に被相続人と話をしておくか、パソコンや通帳などから手がかりを探しましょう。

相続手続き・納税の期限

相続税の申告・納付は相続開始を知った日の翌日から10カ月以内に行う必要があります。

10カ月以内に申告と納税をしなければ、税金滞納として延滞税がかかり税金が高額になるペナルティが発生します。

また税金を納めなければ税務署からの催促を受け、最終的には財産を差し押さえられるリスクもあります。

必ず期限までに申告と納税をしましょう。

まとめ

相続税の金額は、遺産の金額が大きくなるほど税額も大きくなります。

ただし、同じ遺産の金額であったとしても、実際に納付する相続税額には違いがあるといえます。

法定相続人の人数やそれぞれの相続分、特に配偶者がいるかいないかによって、その税額は大きく変わります。

事前に詳細な金額を知りたい場合は、税理士にシミュレーショしてもらいましょう。

その結果を踏まえて、遺産分割の方法や相続税の節税などを考えておくといいでしょう。

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