この記事でわかること
- 遺言書内容の変更手続きについて理解できる
- 遺言書内容の変更の流れがわかる
- 遺言書の内容を変更する際のポイントがわかる
時間の経過や家族関係の変化は、自然な流れとはいえ止めることはできません。
そのような時の変化とともに、自分の気持ちが移り変わっていくことは当然のことといえます。
「一度書いた遺言書を変更(撤回・修正)したい」と思われることも少なくないと思います。
では、いったいどのようにして手続きを行えばよいのでしょうか。
法的な手続きは、煩雑で厳格なルールが求められるので、何から手をつけて良いのかわからず、なかなか前に進めないと悩まれる方も多いのではないでしょうか。
遺言書は一種類ではありません。
遺言書の種類により手続きは異なるのでしょうか。
ここでは最も一般的な「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の変更(撤回・修正)について詳しく解説するとともに、その手続きについて解説していきます。
遺言書の変更は、法律で定められている方法により行うこととされています。
この方法に従って変更を行わないと認められないこともあり、注意すべきポイントもありますので、これから作成される際に、是非ご参考にしてください。
遺言書内容の変更(撤回・修正)は可能なのか?
結論からいえば、相続が起こるまで(本人が亡くなるまで)はいつでも変更が可能です。
遺言者(作成した人)が亡くなった時から、遺言書の効力が発生するからです。
遺言書の種類(自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言)により変更不可となることはありません。
新たに作成する遺言書が、前の遺言書と種類が異なっていても可能です。
(例)公正証書遺言→自筆証書遺言により変更(撤回・修正)
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
遺言書の内容を変更(撤回・修正)する場面でよくあるケースとしては、「相続財産の分割」を変更する場合です。
財産の大小に関係なく、相続人間でもめてしまう原因となります。
後になって、調停や訴訟にならないようにするためにも生前にしっかりと準備しておきたいものです。
なお、原則として撤回の撤回はできません(詐欺などを理由に取り消す場合を除く)。
法律関係が複雑になり、遺言内容が不明確なものとなりかねないためです。
遺言書内容の変更の流れ
いつでも変更が可能な遺言書ですが、注意が必要な場合があります。
法的に有効な遺言書でなければ意味がありません。
せっかく作成するのですからご自身の願いが叶うものを作りたいものです。
変更(撤回・修正)には、さまざまなルールがあり複雑ですので、法的に有効な遺言書を作成するのであれば、経験豊富な「相続専門のプロ」に一度ご相談することをおすすめします。
自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言について具体的な手続きの流れを下記で解説していきます。
自筆証書遺言の場合
自筆証書遺言は、ご自身のみで変更することが可能ですが、最終的には家庭裁判所の「検認」が必要となります。
- 自筆証書遺言作成
- 保管
(※2020年7月以降は法務局で保管可能) - ルールに従い変更(撤回・修正)
- 保管
(※2020年7月以降は法務局で保管可能) - 本人死亡
- 遺言書発見
※「封印」がある場合は勝手に開封してはいけない(相続人等の立ち会い必要)。 - 遅滞なく遺言書を家庭裁判所(亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所)に提出し「検認」を請求
※法務局で保管の場合は検認の適用除外 - 家庭裁判所による「検認」
- 「検認済証明書」の申請
- 「検認済証明書付き遺言書」をもとに遺言の執行
実際に、遺言書に基づいて執行を行う際に、銀行や法務局、税務署などの公的機関では遺言書の「検認済証明書付き遺言書」がなければ受け付けてもらえません。
(例)不動産名義変更手続きなど
※検認手続きには諸費用、添付書類が必要となります。
検認とは?
なぜ検認が必要なのでしょうか。
具体的に、どのような手続きなのかを解説します。
検認手続きは「自筆証書遺言」の場合のみ必要です(公正証書遺言は含まない)。
- 相続人に対し遺言の存在、内容を知らせる
- 検認日における遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名などを明確にする
- 検認日における遺言書の内容を明確にする
- 検認日後の遺言書の偽造・変造を防止する
※遺言の有効・無効を判断する手続きではありません(遺言内容の有効性判断は調停、訴訟による)。
自筆証書遺言書には検認手続き、正確には「検認手続きの申立て」を行う必要があります。
亡くなられた方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対し、「遺言書の保管者」又は「遺言書を発見した相続人」が諸費用、必要書類を添付して申立てを行います。
公正証書遺言の場合
公正証書遺言には、煩雑な手続きである検認手続きは不要です。
なぜなら、公正証書遺言は公証役場で公証人の法的なアドバイスを受けながら作成・保管(原本)されているため、法的有効性や遺言書の偽造・変造についても心配する必要がなく、メリットが多いといえます。
- 公正証書遺言作成・保管(公証役場で)
- 法的有効性をもって変更(撤回・修正)・保管(公証役場で)
- 本人死亡
- スムーズに遺言を執行できる
公正証書遺言を作成するには、公証役場で公証人と立会人2人以上のもとで作成します。
立会人の2人は「証人」と呼ばれ、相続人や未成年者はこの証人にはなれません。
証人2名が見つからない場合は、有料で公証役場に依頼することもできますし、事務所によっては弁護士や行政書士が証人になってくれるサービスもあります。
自分一人で有効な遺言書を残すことが不安な場合、費用はかかりますが公正証書遺言を作成するのがおすすめです。
秘密証書遺言の場合
秘密証書遺言は、作成した本人のものであるという「秘密証書遺言の存在」を公証役場で証明するものです。
開封してしまうと無効となります。
遺言書の作成・保管は自ら行う必要がありますので注意が必要です。
また、先の書いた秘密証書遺言に加筆修正をする方法では変更はできません。
- 秘密証書遺言作成・封印
- 公証役場で証明してもらう(公証役場で)
- 保管(自分で)
- 遺言書の変更(撤回・修正)
- 公証役場で証明してもらう(証人が必要)
- 家庭裁判所による「検認」
- 「検認済証明書」の申請
- 「検認済証明書付き遺言書」をもとに遺言の執行
前述したとおり、自筆証書遺言の場合と同様、遺言書に基づいて執行を行う際に、銀行や法務局、税務署などの公的機関では遺言書の「検認済証明書付き遺言書」がなければ受け付けてもらえません。
(例)不動産名義変更手続きなど
なお、検認手続きには諸費用、添付書類が必要となります。
秘密証書遺言のメリットは、遺言の内容を誰にも知られずに自筆以外の方法(代筆・パソコンなど)で作成でき、公証役場に秘密証書遺言の存在を証明してもらえる点にありますが、法的ルールに従い作成しないと無効になってしまいます。
いざ開封してみたら無効な遺言書では意味がありません。
開封してしまった場合や形式的に秘密証書遺言が無効になってしまった場合に備えて、「自筆」で作成した「日付」を明記しておくことにより、自筆証書遺言として認められることもありますので、自筆証書遺言の要件を満たすように慎重に作成を検討されることをおすすめします。
遺言書内容変更の注意すべきポイント
前に作成した遺言書の内容を変更(撤回・修正)する際のポイントを簡単に以下にまとめました。
遺言者(作成者)の死後、いざ相続手続きを始める際に、無効な遺言書とならないように慎重に行うことが求められます。
また、遺言書は先に作成されたものより後から作成されたもの(日付が新しいもの)が有効となります。
内容が矛盾する部分について、後に書かれたものが有効となることに注意してください。
遺言書の内容に非常に曖昧な表現や不明確なことが書かれていると、故人の意思を尊重して遺言書に書かれた趣旨を合理的に解釈することができず、無効になる可能性も否定できません。
既に作成した自筆証書遺言に自分で変更(撤回・修正)を加えていきます。
- 訂正箇所に二重線を引く(二重線の上に押印)
- 訂正した箇所に正しい文字を加筆する
- 開いたスペース(末尾など)に「○行目○文字削除○文字追加 署名」を追記する など
かなり厳格な訂正方法なので、できることなら一から作成し直すことをおすすめします。
[全部撤回]
曖昧な表現とならないように、はっきりと全部撤回する旨を明記してください。
以下のような文言を記載します。
(例)遺言者は、令和○年○月○日付けで作成した自筆証書遺言を全部撤回する。
前に書いた遺言書は、後になり混乱を招かぬようにするためにも破棄することを忘れないでください。
まとめ
ご家族が亡くなられると、しばらくはとても辛い状態が続きます。
相続手続きは厳格で、適切に手続きを進めていかなくてはなりませんが、そのような辛い状況の中ではなかなか難しいのが現実ではないでしょうか。
残された大切なご家族を守るため、遺言者となるご自身の願いが叶うような相続手続きをスムーズに行うためにも、「遺言書」を作成することはとても有益です。
一度作成した遺言書も、時が経てば、作成者であるご自身の気持ちや家族関係も変化していくことは当然のことです。
ご自身の人生の最後に、自分が築いた貴重な財産を有効に残し、次の世代への呪いとしないためにも、相続争いが起こらないようにしっかりと準備しましょう。
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