この記事でわかること
- 空き家特例の概要
- 税制改正による改正点
- 買主に取り壊しまたは耐震リフォームを依頼する場合の注意点
空き家の増加を抑制すべく、特別控除3,000万円の空き家特例が創設されましたが、利用するためには、空き家の売却までに耐震リフォームをするか更地にしなければならず、売却前の手間や出費を敬遠して二の足を踏んでいるという相続人が多くいました。
このような状況を受け、国は空き家特例の利用がしやすくなるように、リフォームや更地化を空き家の所有者だけでなく、買主側でもできるように適用要件を改正しました。
この記事では、空き家特例の概要と改正によって変わった点を詳しく解説します。
目次
相続空き家の3,000万円特別控除の特例の概要
国土交通省の調べによると、平成10年には180万戸だった空き家が平成30年には350万戸と増加し、令和12年には470万戸に増加すると見込まれています。管理されていない空き家が増えることで、防災、防犯、衛生、景観へ悪影響を及ぼしています。
空き家が増加を続けている主要な要因として相続による取得が上げられます。
相続では、そもそも利用する予定がなかった土地や遠方の土地を引き継ぐことになったり、解体や家財の整理をするにも費用がかかるため、放置されてしまうケースが多いです。また、固定資産税の住宅用地の特例を適用するため、空き家を取り壊さずに残しているというケースも増えています。
このような背景から増え続ける空き家を減らすための対策のひとつとして、税制面からの後押しが相続空き家の3,000万円特別控除の特例です。
どのような制度か
不動産を売却すると、売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いた売却益に対して譲渡所得税が課税されますが、この特例を適用して空き家を売却すると、3,000万円の特別控除を売却益から差し引くことができます。そのため、売却益が3,000万円超えない場合、譲渡所得税は課税されません。
なお、この特例は親族など利害関係者への売却には適用できないため注意が必要です。
対象となる空き家
空き家特例の対象は、被相続人が主として居住の用に供していたと認められる家屋とその敷地両方を相続または遺贈で取得した空き家で、他にも以下の要件を満たしている必要があります。
- 昭和56年5月31日以前に建築された建物
- 区分所有建物以外の建物(マンションや二世帯住宅は対象外)
- 相続開始の直前に被相続人以外に居住をしていた者がいなかったこと
- 売却価額が1億円以下
令和元年度の税制改正前までは、相続開始の直前まで、被相続人が家屋に居住していた場合のみが適用対象でしたが、平成31年4月1日以降の譲渡について、要介護認定等を受け、被相続人が相続開始の直前に老人ホーム等に入所していた場合も適用対象となりました。
売却価額には、年の途中の売買の場合に発生する固定資産税精算金も含まれます。売却価額がちょうど1億円の場合、固定資産税精算金分が売却価額に含まれ特例が使えないことに注意してください。
また、空き家特例の適用を受けたあとに、被相続人の家屋等を売却した日から3年を経過する日の属する年の12月31日までにこの特例の適用を受けた被相続人家屋等の残りの部分を自分や他の相続人が売却して売却代金の合計額が1億円を超えたときには、その売却の日から4カ月以内に修正申告書の提出と納税が必要となります。
適用期限
特例の適用期限は令和9年12月31日までですが、相続発生から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に売却した空き家に対して適用するという期限もあります。
たとえば、相続発生が令和4年5月3日だった場合、空き家特例を適用したいのであれば、令和7年12月31日までに売却が必要です。
空き家特例の令和5年の税制改正による改正点
取り壊しまたは耐震リフォームの時期
改正前の空き家特例の適用には、空き家の譲渡前に耐震リフォームの工事を済ませるか、空き家を取り壊す必要があるため、売主は買い手だけでなく、リフォームまたは解体のための費用の準備が必要となり、使い勝手のいい制度ではありませんでした。
そこで、令和5年度税制改正により、令和6年以後の譲渡から、譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに耐震リフォーム工事または除却の工事を行った場合も適用対象となるよう改正されました。
これにより、買主が譲渡後に工事を行った場合であっても空き家特例が適用できるようになり、売主は売却する前に解体するための資金を用意できなくても売却することができます。
買主が取り壊しまたは耐震リフォームをする場合の注意点
買主が耐震リフォーム工事または取り壊し工事をする場合、売主は工事費用を用意する必要がなくなりますが、譲渡年の翌年2月15日までに工事が完了していなければ空き家特例の適用を受けることができません。
このような特例の適用可否によるトラブルを防ぐために、国土交通省はホームページでは「被相続人居住用家屋等確認書」という買主の責めにより売主が空き家特例を適用できなかった場合に、税控除額相当の損害賠償を買主に請求できるといった内容の特約の文例を掲載しています。
工事を買主に任せる場合、必ずこの特約を契約内容に含めるようにしましょう。
複数人で適用する場合の控除額
適用要件を満たしている相続人が空き家を共有していた場合、空き家の売却時にそれぞれが特別控除を適用できますが、税制改正により3人以上で空き家特例を適用する際の控除額が変更になりました。
適用する相続人が2人までは1人当たりの特別控除は3,000万円ですが、3人以上で適用する場合は1人当たりの特別控除額は2,000万円となります。
まとめ
空き家特例の概要と令和5年税制改正による改正点についてみてきました。空き家特例を活用すれば相続した空き家を売却する際に譲渡所得税を抑えることができますが、家屋と敷地の両方を相続しているなど適用要件を満たしている必要があります。
また、空き家特例を適用するには家屋所在地の市区町村で「被相続人居住用家屋等確認書」を取得して、申告書に添付しますが、静岡市は10日程度、新潟市は2週間程度、杉並区だと1~2週間程度と自治体によって取得に要する日数が前後するため、余裕をもって準備するようにしましょう。
そして、今回の改正点である買主側に工事を任せる場合、契約内容に工事が間に合わなかった際の損害賠償特約が盛り込まれているかについても注意しなければいけません。
最大600万円もの税負担が軽減される空き家特例ですが、適用にはいくつも注意点があります。相続専門の税理士事務所であれば、相続税の申告のときから、空き家を処分して譲渡所得税の申告までしっかりとサポートをしてもらえます。初回相談は無料となっておりますので、お気軽にご相談ください。
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