目次
子供から親に対して仕送りをすることがあります。
仕送りを受けた親はその分財産が増えることとなりますが、仕送りをしてくれた子供に対して多めに相続させることはできるのでしょうか。
また、仕送りをした子供は、相続の際に他の相続人より多く財産をもらえるのでしょうか。
ここでは、相続人から被相続人に対して金銭を渡していた場合に考慮すべき寄与分について解説します。
寄与分とは
寄与分とは、被相続人の生前に、財産の交付や事業の支援、介護などを行うことで被相続人の財産の維持や増加に貢献した相続人が、他の相続人より多く相続財産を受け取ることのできる制度です。
被相続人に対して尽くした人と、何もしてこなかった人が同じように相続するのでは不公平であることから、その不公平を調整するための制度として設けられています。
寄与分が認められるための要件
実際に寄与分が認められるためには要件をクリアしなければなりません。
その要件とは、①特別の寄与であること、②その寄与によって相続財産が維持または増加できたことです。
要件①特別の寄与
特別の寄与とは、通常の親子関係から生じる扶養義務を超える特別なものであることをいいます。
仕送りしていた場合には、その仕送りが特別の寄与にあたるのかを判断することとなりますが、親を扶養するために仕送りする必要があるのか、どれくらい継続して行われたのかなどの要素から判断されます。
その仕送りが単に親に対する扶養義務の履行であると判断された場合には、寄与分とは認められないこととなります。
要件②相続財産の維持または増加
相続財産が維持または増加していなければ、いくら生前に被相続人に仕送りしていたとしても寄与分は認められません。
また、財産の維持または増加と仕送りなどの行為との間に因果関係がなければ、相続の際に寄与分として認められることはありません。
寄与分があった場合の影響
実際に寄与分が認められると、法定相続どおりに遺産分割を行った場合でも、相続人間で相続分に差が生じることとなります。
この場合、遺産分割の計算方法は以下のようになります。
- ①相続財産1億円から長男の寄与分1,000万円を控除します。
この9,000万円を3人の相続人で分割することとなります。 - ①相続財産1億円から長男の寄与分1,000万円を控除します。
この9,000万円を3人の相続人で分割することとなります。 - ②9,000万円については、法定相続割合を乗じて各相続人の相続分を計算します。
その結果、配偶者4,500万円、子供2人はそれぞれ2,250万円となります。 - ③長男の寄与分1,000万円については、長男の相続分に加算します。
この結果、配偶者4,500万円、長男3,250万円、長女2,250万円が各相続人の相続分となります。
寄与分の類型
相続の際に寄与分として認められるものには、いくつかのパターンがあります。
ここでは、金銭を渡した場合に寄与分と認められる扶養型、金銭出資型について説明します。
扶養型の寄与分
扶養型の寄与分とは、通常の扶養義務の範囲を大幅に超える扶養をしている場合に認められるものです。
生活費の足しになる程度の金銭を短期的に渡していただけでは、寄与分としては認められないと考えられます。
ただ、いくら以上であれば良いと決められているわけではなく、また被相続人の経済状況にもよると考えられます。
いずれにしても、寄与分が必ず認められるわけではないと考えておく必要があります。
金銭出資型の寄与分
金銭出資型の寄与分とは、被相続人に対して財産の給付を行った場合に認められるものです。
不動産を購入する際に資金提供したが、その不動産の名義は被相続人となっている場合や、老人ホームに入所する際の一時金を支払った場合などが該当します。
扶養型とは違い、1回限りの支出でも認められます。
寄与分が認められるためには
寄与分にはいくつもの類型があり、また寄与分として認められるためには要件があると説明してきました。
相続人の間で寄与分について合意ができれば問題になることはありませんが、相続人同士の話し合いで合意することは必ずしも多くありません。
他の相続人に寄与分を認めてもらうためには、どのような点に注意すると良いのでしょうか。
また、話し合いで解決しない場合に寄与分を主張するにはどうしたらいいのでしょうか。
寄与分が認められるためのポイント
基本的に、寄与分が認められるかどうかは、寄与分を主張する相続人以外の相続人がその主張に合意するかどうかによります。
そのためには、事前に寄与分として認められるような準備をしておく必要があります。
寄与をした人(相続人)がすべきこと
被相続人の財産の維持や増加に貢献した相続人は、具体的にどのような行為によって寄与したのかを立証しなければなりません。
金銭を渡しているのであれば、その日付や金額を客観的な資料にもとづいて主張する必要があります。
特に扶養型の場合は、通常の扶養とは異なることや、その行為によって被相続人の財産が増加する結果となったことを立証するのが難しいため、仕送りをした毎回の金額やその期間の長さから、他の相続人に納得してもらえるような状況を作っておきましょう。
寄与を受けた人(被相続人)がすべきこと
相続人から寄与を受けた被相続人が、寄与してくれた人に多く財産を残したいと考えるのであれば、遺言書に明記するのが一番です。
また、毎月仕送りをしてもらった場合には、その仕送りでもらった金額を別の口座にまとめておき、その預金口座を相続してもらうようにしましょう。
そうすれば、仕送りの金額がはっきりするため、通常の扶養の範囲を超えるものであることや財産の増加に貢献しているとする主張の材料になります。
話し合いで解決しなければ家庭裁判所に申立て
寄与分を主張する相続人は、相続人間の話し合いで合意できなかった場合には、家庭裁判所に申立てを行い、調停や審判の手続きを行うこととなります。
また、調停や審判においても寄与分が認められなかった場合で、その結論に納得がいかない場合には、審判の告知を受けた翌日から2週間以内に即時抗告の申立てを行います。
裁判所での判断は、法律に厳格に則った形で行われます。
そのため、寄与分を主張する者にとってはより厳しいものとなることが想定されます。
また、実際に裁判所で寄与分が認められるケースが多いとはいえないことから、相続人との話し合いで合意できるのが望ましいといえます。
まとめ
被相続人も相続人も、寄与分という制度があることを知ったうえで相続を迎えるのと、何も知らずに相続を迎えるのとでは、寄与分についての対処方法が大きく変わるといえます。
特に、被相続人に対する寄与分を主張しようと考えている相続人は、事前にその主張が認められるような材料をそろえておく必要があります。
寄与分を認めてもらうためのポイントは、他の相続人が納得してくれるかどうかです。
他の相続人に納得してもらえるような証拠書類や行動のメモを残しておきましょう。
また、日頃から他の相続人との良好な関係を築いておくことや、被相続人の協力も欠かせません。
自分だけが得をすれば良いという考えで行動するのではなく、被相続人のための行動をしていると分かってもらえるような関係を築いていきましょう。
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