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最終更新日:2023/7/13

正しい相続手続きVOL38 消費税アップで孫のマイホームに資金援助がしやすくなる?新しい特例とは

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/nakano/

たとえば先日、あなたは子供からマイホーム購入資金について相談されたとしましょう。

ところが、マイホームを購入するには、相当な資金が必要ですから、そんなことをしてしまうと多額の税金を支払わなければいけないことになってしまうのではないかという不安もあることでしょう。

本記事では、そんな疑問を解消するために、税金の仕組みについて解説をさせていただきますので、ぜひ最後までお読みください。

基本的に他人にお金を贈与することは課税対象となってしまいます

相続対策として、贈与における非課税は認められていますが、すべての贈与に対してまで認められているわけではありません。

典型的なものとしては、「生活費の援助」があるでしょう。

この目的のために、一定の者に対して援助を行ったとしても、原則として税金がかかることはありません。

このルールに則ると、冒頭で申し上げたマイホームのための贈与については税金がかかることになってしまいます。

ところが、日本社会の消費税が今後上昇することに伴い、不動産業界において、住宅購入の勢いが高まるのではないかということを鑑みて、特別に住宅取得のための贈与の場合には非課税とされる特例ができました

非課税枠は最大3,000万円まで用意されています

このマイホームの非課税特例を利用するためには、いくつかの条件を満たさなければいけません。

まず、人の要件として、年齢が特例を利用する年の1月1日時点において、20歳以上である必要があります。

また、財産的要件として、マイホームの贈与を受けようとする者の年間所得が2,000万円以下である必要があります。

また、このマイホームに関する非課税の特例の正式名称は、「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税特例」というものです。

この特例については、以下の表にて詳しくまとめられていますので、ぜひご覧いただければと思います。

この特例の効果は、マイホームを取得するための契約締結時期によって、非課税枠が変動します。

例えば、平成32年(2020年)3月までに、一定の住宅を取得するために、贈与を行った場合には、そこで消費税率の10%が適用されるときは、最大で3,000万円の非課税枠が用意されています。

これまでは消費税増税が早い段階で引き上げられることになっていたのですが、ご存じの通り、平成31年(2019年)10月まで引き延ばされましたので、これに伴い、本特例の利用期間も延長されることになりました。

したがって、平成33年(2021年)12月まで住宅の取得に伴う贈与につき、大幅な非課税の利益を受けることができますので、是非活用するようにしましょう

イ 下記ロ以外の場合

住宅用家屋の新築等に係る契約の締結日 省エネ等住宅 左記以外の住宅
~平成27年12月31日 1,500万円 1,000万円
平成28年1月1日~
平成32年(2020年)3月31日
1,200万円 700万円
平成32年(2020年)4月1日~
平成33年(2021年)3月31日
1,000万円 500万円
平成33年(2021年)4月1日~
平成33年(2021年)12月31日
800万円 300万円

ロ 住宅用の家屋の新築等に係る対価等の額に含まれる消費税等の税率が10%である場合

住宅用家屋の新築等に係る契約の締結日 省エネ等住宅 左記以外の住宅
平成31年(2019年)4月1日~
平成32年(2020年)3月31日
3,000万円 2,500万円
平成32年(2020年)4月1日~
平成33年(2021年)3月31日
1,500万円 1,000万円
平成33年(2021年)4月1日~
平成33年(2021年)12月31日
1,200万円 700万円

引用元:国税庁 「https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508.htm」

「省エネ等住宅」について

さて、上記国税庁の図に「省エネ等住宅」というカテゴリーがあります。

この省エネ等住宅に該当すれば、大幅な非課税枠を取得することができることになります。

それでは、どのような条件を満たすと、この「省エネ等住宅」であるとされるのか確認していきましょう

  • (1)省エネ等基準
    (断熱等性能等級4若しくは一次エネルギー消費量等級4以上であること)
  • (2)耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上若しくは免震建築物であること
  • (3)高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上であることに適合する住宅用の家屋であること

引用元:国税庁 「https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508.htm」

特例を受けるためのその他の要件について

上記でご説明した要件以外にも本特例を利用するために、検討すべきその他の要件があります。

まずは、非課税枠を受けるためには、タイミングが大切です。

タイミングについては、まず少しでも大きな金額の非課税枠を受けるためには、なるべく早い時期に特例の申請をする必要があります。

また、実際に贈与を行って、住宅が無事に建築され、贈与を行った年の翌年の3月15日までに、当該マイホームに居住しなければいけません。

しかしながら、これには例外も設けられています。

つまり、3月15日までに居住するはずが、いまだマイホームが完成していないような場合においても、一定程度まで建物が関係していたり、その後マイホームに問題なく居住することが確定していたり、といった事情がある場合には、特別にタイミングの要件を満たすものと考えられます。

すべての要件を満たしている場合には、贈与を行った翌年の3月15日までに本特例を利用することを記載した申告書を提出する必要があります。

ところが、贈与を行った翌年末までに取得したマイホームに、依然として居住していないという事情がある場合には、修正申告書を提出することが求められますので注意が必要です。

この場合には、非課税枠は適用されることなく、通常の手続きに従って贈与税を納めなければいけません。

面積要件についても検討しなければいけません。

本特例においては、対象マイホームの床面積が50㎡以上240㎡以下である必要があります。

ただし、この要件を満たす限りにおいては、マイホームを新規で取得することのみならず、既に建築済みの住宅をマイホームとして取得すること、あるいはマイホームの増改築を行うことも「取得等」であると考えられます。

本特例が適用されるためには、基本的に特例の名称にもなっている通り、住宅に関する贈与である必要があります。

しかしながら、住宅を取得したと同時に、その土地についても取得したという場合には、例外的に本特例が土地についても適用されることになります。

なお、この同時にというのは、取得の契約時期が同じであれば、住宅を取得する前に土地を取得することによっても適用を受けることができます。

住宅を取得等する際には、長期的な視点で支援を行いましょう

本記事執筆現在(2019年7月)では、ちょうど消費税が10%に移行する過渡期ではありますが、現在8%である間に無理に住宅を取得しなくても良いということは、ご理解いただけたかと思います。

どのタイミングで契約を締結し、どのタイミングでマイホームに居住すればよいのかということを、逆算して考えることにより、より効果的な相続税対策を行うことができるようになります。

消費税が8%であることを重視して考えると、もしかしたら消費税分の差引額で得をすることになるのではないかとお考えになる方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことはありません。

最大3,000万円のメリットを受けるためには、やはり消費税の増税を待ってから、行動に移すことが賢明な方法ではないでしょうか

このように、マイホームを取得等するために贈与するための特例を利用して、少しでもお得な相続対策をするためには、適切なタイミングに、そして特例の要件を満たす適切な住宅を取得することが必要です。

まとめ

今回は、子供等に対してマイホームを取得するための贈与による援助の特例をご紹介させていただきました。

本特例を最大限に活用すると、3,000万円の非課税枠の適用を受けることができますが、その一方で本特例の要件を満たす条件を丁寧に検討しなければいけません。

消費税増税前に、釣られてすぐに購入してしまうのではなく、どうすれば本特例を活かして、より効果的に節税効果を受けられるのかという大きな視点を持ちましょう

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