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最終更新日:2023/7/13

正しい相続手続きVOL26  相続税の計算のために把握すべき「課税相続財産」とは?

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/nakano/

相続の手続きを進めるためには、被相続人の財産の状態を確認しなければいけません。

どのような種類の財産を持っているのか、財産総額はいくらであるか、こうした情報は相続手続きを行うためには必須の情報です。

ところが、このような情報はどのようにして入手すればよいのでしょうか?今回は、相続財産の内容及びその入手方法について解説をさせていただきます。

相続財産とはどこまでを指すか?

相続人にとって相続手続きにおいて最もネックとなることの一つに、相続税納付がありますから、少しでも相続税を安くしようと行動をします。

これに対して、相続税を少しでも多くとりたいと考える国税局は何とかして相続税をとるための制度を整えていく訳です。

ここには、今日まで数多くの争いがあり、現在では被相続人自身の名義となっている財産だけではなく、被相続人名義の財産ではないけれども被相続人が管理・運用している財産についてまで相続税の課税対象が及んでいるとされています。

また、ここに問題となりやすいのが「証拠」です。

多くの場合、上記の後者において問題となるのですが、被相続人名義でない財産は自分のものであると主張をするためには、それが被相続人によって管理されているわけではなく、間違いなく自分が管理・運用しているのだという客観的証拠を揃えておく必要があります。

相続財産の集め方について

相続財産の種類としては、現金・預貯金のほかに、株式・不動産・自動車・ゴルフ等会員権などがあるでしょう。

これらの財産の集め方についてみていきましょう。

不動産の財産情報について

不動産の相続財産に関する情報は、登記事項証明書・名寄帳・公図等の資料を法務局等により、取り寄せることにより収集します。

しかしながら、相続手続きの中で、とりわけ相続税の計算をする場合には、必ず現地を訪問しなければいけません。

なぜならば、資料当時の状況が現況と乖離している場合もありますし、その他の事情により保存資料が正確でないことも考えられるからです。

不動産の相続の結末としては、最終的に相続登記をすることになるのですが、この相続登記というのは、相続税申告とは異なり、完了する義務がありませんので、相続登記がいつまでも未了なまま残っているということがよくあります。

例えば、名寄帳あるいは固定資産税課税明細書などを確認してみると、名義人の名前が入っているかと思います。

それらを参考に相続登記がどこまで進んでいて、どこで止まっているのかを把握することができます。

その相続登記を行うためには、現状の名義人からこれから相続する者まで、すべての過程を経た法的文書を作成して手続きを行わなければいけません。

ここで、不動産の相続については、小規模宅地等の特例の適用の余地があります。

そのため、誰でも彼でも不動産を相続させればよいというのではなく、法律的に、そして相続税としても最善の分配方法をよく検討しなければいけません。

金融財産の情報について

相続財産として、最も一般的なものがこの現金・預貯金等の金融資産であるということができるでしょう。

ここで、どれほどの金融財産を有しているのかについて確認をするために、残高証明書をとることが有効であると考えられます。

例えば、この他に投資信託、生命保険などの金融資産も考えられますが、手続きとしては同様に考えればよいでしょう。

また、被相続人が株式などの証券口座をお持ちの場合については、「証券保管振替機構(通称『ほふり』)」にお客様情報が登録されていることになります。

つまり、そこに被相続人の財産に関する開示請求を行うことにより、詳細な財産情報を得ることができます。

例えば、そこに記載のある株式銘柄等の情報を元に、具体的な残高証明書などを入手できるという訳です。

相続手続きをなかなかされずに放置していたという場合もあるかもしれませんが、残高証明書などの取引情報は、法律上10年間保管されることになっていますので、必要な期間分をきちんと把握をして、調査を行うようにしましょう。

国内にない財産の調査について

国内における財産情報であれば、お近くの金融機関、法務局などある程度辺りを付けることができますが、国内に存在しない財産に至っては、一筋縄に行きません。

海外の制度について調べないといけませんし、多くの場合専門家のサポートが必要となるでしょう。

保険関係の情報について

保険関係も財産的価値がありますので、これに対して相続財産として情報収集をしなければいけません。

保険に関する情報としては、まず保険証券を確保しておきましょう。

問題となる保険の例としては、生命保険・損害保険などがあるでしょう。

相続における保険関係と財産については、保険料負担者が誰であるかが問題となります。

契約者はあくまでも契約を行った者に過ぎず、実際の保険料負担者、受取人に関する情報に注意してみていきましょう。

相続財産から除外されるもの

本来であれば、相続財産の合計したものは、すべて相続財産であると考えられるはずですが、その中でも特別に相続財産から除外することができる債務が認められています。

例えば、被相続人の葬儀費用、入院等の際に支出した医療費、固定資産税、所得税などの債務が考えられるでしょう。

ここで、葬儀費用については、場合によっては領収書を出してもらえないこともあります。

この場合には、代替手段として、支出した金額、どうして支払いをしたのか、どこに支払いを行ったのか(その名称と住所)、その他その支払いに関する情報を一定程度特定することができるのであれば、相続財産より控除することができる取り扱いとなっています。

贈与の成立の是非についての判断

相続財産を確定させる上で、非常に大きな問題となりやすいのが贈与に関する問題です。

相続対策として、生前贈与を行う方が増えてきているように思います。

贈与が適法に行ったといえるかどうかの判断として、家族間の贈与は最も疑われるところです。

贈与は、法律上当事者間で行う契約ですので、当事者間でそれが贈与であるとの共通認識を有していなければいけないのですが、贈与をしようと思っている者が一方的に贈与をしたと思い込み、その贈与を受けた者は贈与を受けたと認識をしていない場合にまで贈与が問題なく成立するかは疑問の余地があるでしょう。

そのため、問題なく贈与を成立させるには、きちんと贈与契約書を作成し公的な手続き等で証明する等の方法が有効でしょう。

相続財産が確定すると、相続税申告を行いましょう

上記手続きにより、相続財産が確定した場合には、年度内に相続税の申告手続きをしなければいけません。

プラスの財産とマイナスの財産を合算し、申告すべき相続税金額を把握した後は、相続税申告書作成手続きに入りましょう。

まとめ

今回は、相続財産の把握及び、その調査の仕方についてお話をさせていただきました。

初めて相続手続きをする場合にはややこしいですが、財産種類ごとに入手手続きが異なりますので、どこに確認すべきかきちんと押さえておきましょう。

また、相続財産を確定させる上で、贈与は問題となりやすいので、税務署からの指摘に対して問題なく反論することができるように、客観的な資料をそろえておきましょう。

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