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最終更新日:2023/7/13

正しい相続手続きVOL 17 相続の際に婚外子がいるか確かめる方法

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/nakano/

相続手続きの第一歩は、相続人を確定することです。

そこで、この記事では、近親者が亡くなった場合に、誰が相続人になるかを漏れなく確認する方法について説明したいと思います。

1.相続人を確認する必要があるわけ

相続人が何人いるか、誰が相続人なのかということは、相続手続きを行う上で最初にしなければならないことです。

なぜなら、相続税がかかるか否かの基準となる基礎控除の額は、相続人が何人いるかによって決定されるからです

具体的な計算式は

基礎控除額=3,000万円+(600万円×相続人の人数)

となります。

つまり、相続人が1人増えるごとに、基礎控除額は600万円増加するのです。

また、実際に遺産分割を行う際にも、遺産分割協議はすべての相続人が参加して行う必要があります。

もし、相続人のうちの一人でも参加していなかった場合には、その遺産分割協議自体が無効とされてしまいます。

以上のように、相続人が何人いるか、具体的に誰が相続人かの確認は、相続手続きを行う上で、最初に行わなければならない事項と言えるのです。

2.誰が相続人かは当然にわかると思っていませんか?

誰が法定相続人になるかは民法が定めていて、第1順位は子供、第2順位は直系尊属、第3順位は兄弟姉妹、と定められています(民法第887条、第889条)。

また、配偶者は常に相続人となります(民法第890条)。

こういうと「被相続人の子供として誰がいるかなんて、わざわざ調べなくてもわかる」と言う声が聞こえてきそうですが、実際には必ずしもそうとは言い切れない場合があるのです。

例えば、被相続人に離婚経験があって、以前の婚姻時に子供がいたり、婚姻外で子供がいてその子供を認知しているなど、被相続人が亡くなった時点の家族は知らない子供がいるという場合があり得るのです。

また、被相続人に子供がおらず、直系尊属もすでに亡くなっている場合には、被相続人の兄弟姉妹が相続人となりますが、

その場合には既に付き合いが疎遠になっている親戚がいたり、また、その兄弟姉妹がすでに亡くなっていた場合には、その兄弟姉妹の子供(被相続人から見ると甥、姪)が相続人になることになりますが、そうなると、ほとんどその存否もわからなかったりと言うこともあり得ます。

ですから、相続人なんてわざわざ確認しなくてもわかりきっている、と勝手に思い込まずに、きちんと確認することが必要なのです。

3.相続人の調査方法

(1)調査方法

では、具体的にどのように調査するのでしょうか。

相続人になる人として誰がいるかを調査する方法としては、被相続人の出生した時から亡くなる時までの戸籍の写しをすべて取り寄せる方法によることになります。

戸籍には、その人をめぐるすべての身分関係の変動が記録されているからです。

例えば、出生した時点で出生届が提出されると、その親の戸籍(旧民法の場合には戸主の戸籍)に登録されます。

その後、婚姻すると従来の戸籍から転出して新たな夫婦の戸籍が編纂されます。

その後、子供が生まれるとその戸籍に記載されるという形で、その人をめぐる身分関係の変動等がすべて記録されていくのです。

ですから、被相続人の戸籍の写しを取り寄せて調べることで、誰と結婚して、子供が何人いるか、さらには、兄弟が何人いるかということまですべて確認することができるのです。

ところで、父親が婚外子を認知した場合、その事実は父親の身分関係欄に記載されます。

ところが、その後に本籍地を移したり改製がなされたことによって、新たに戸籍が作られた場合には、この認知をした旨の記載は転記されないのです。

したがって、現在の戸籍を見ただけでは認知した子供がいるか否かはわからない場合があるのです。

そこで、相続人を確定するためにも、その被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍の写しを取得することが必要になるのです。

(2)戸籍の種類

謄本と抄本

これまで、「戸籍の写し」と言う表現を用いてきましたが、戸籍の写しには謄本(正式には「全部事項証明書」といいますが、本記事では従来からの用法として「謄本」という表現を使います。)と抄本(これも正式には「個人事項証明書」といいますが、本記事では従来からの用語として「抄本」という表現をつかいます。)とがあります。

これは、その写しに記載されている内容の違いです。

謄本と言うのはその戸籍に記載されている人全員の情報を記載した写しで、戸籍全部の内容が記載されています。

これに対して抄本は、特定の個人に関する情報の部分のみを表示したものです。

相続人を確認する場合に必要な情報は、その被相続人に配偶者がいるか、子供がいるか、兄弟姉妹がいるかという情報ですので、被相続人個人だけの情報では不十分で、その戸籍に記載されたすべての人の情報が必要となります。

したがって、相続人の調査において必要な戸籍の写しとしては「戸籍謄本」を取得する必要があります。

戸籍、改製原戸籍、除籍

さらに、戸籍の請求書などの書類を見ると、「戸籍」のほかに、「改製原戸籍」とか「除籍」と言う言葉が出てきて戸惑うかもしれません。

「戸籍」というのはそのまま現在有効な状態にある戸籍です。

これに対して、その戸籍に記載されていた人の全員が、婚姻などによる新たな戸籍編纂による転出によって抹消されたり、または、亡くなったことによって抹消されたりした結果、その戸籍に記載されている人がだれもいなくなった場合には、その戸籍は閉鎖されます。

これを「除籍」と言います。

また、「改製原戸籍」というのは、戸籍の書式が変更されたことにより、その記載内容を新たな戸籍として書き直した場合、その書き直す前の戸籍を言います。

これまで、改製がなされたのは2回あり、戦後の民法改正により戸籍が戸主を中心とした戸籍から夫婦を単位とした戸籍に変更されたとき、それから、平成になって戸籍のコンピューター化に伴い、従来の縦型の帳簿方式から横書きのものに変更されたときです。

4.戸籍調査の実際

(1)請求手続きの流れ

実際の調査方法としては、以下の順序で行うことになります。

  • ①相続人が亡くなった時における本籍地の市区町村役場に対して、「戸籍」の謄本を請求します。
  • ②その市区町村役場に登録されている期間に改製がなされていた場合には、改製前の「改製原戸籍」の謄本も取得する必要があります。
  • ③戸籍が、他の市区町村役場の戸籍から本籍地の変更により転籍してきた場合には、その転籍前の市区町村役場に対して、その転籍前の戸籍の写しを請求することになります。
     この場合の戸籍は、転籍によってすでに閉鎖されていますので「除籍」謄本を申請することになります。
  • ④婚姻等によって新戸籍が編製されている場合には、その新戸籍が編製される前の戸籍の写しを請求することになります。

この場合、すでに被相続人の親が亡くなっていたり、その兄弟姉妹の全員が新戸籍編纂によりその親の戸籍から除籍されている場合には「除籍」謄本を取得することになります。

一方、被相続人の親が存命の場合には通常の「戸籍」謄本、そして、さらに改製されている場合には「改製原戸籍」の謄本を取得することになります。

(2)実際の請求手続き

戸籍の写しの請求は、基本的にその本籍地(現在の本籍地および過去に本籍が置かれていた場所)の市町村役場で行うことになります。

その窓口に実際に行って請求するのが一般的ですが、本籍地が遠隔地などの場合には、代理人によって請求してもらったり、郵送で取得することも可能です。

直接窓口で請求する場合

この場合には、被相続人の家族またはその代理人の人が市町村役場に出頭して、請求を行うことになります。

戸籍情報は重大な個人情報ですので、第三者が勝手に請求することはできません。

したがって、その請求を行う際にはその請求者が対象となっている人の家族等であることの証明になる身分証明書(免許証やマイナンバーカードなど)の持参が必要となります。

また、代理人によって請求を行う場合には、その家族の方からの委任状が必要となります。

戸籍の写しの請求に際しては、改製前の戸籍があるか否か、それ以前の戸籍が除籍されているか否かなど、実際に調べてみなければわからないことがあります

本来であれば、直近の戸籍を取得し、そのあと、そこから順番に過去にさかのぼっていく形で戸籍の写しを請求することになります。

ただ、何回も市区町村役場に足を運んだり、同じ日であっても何度も請求するのも手間なので、窓口で請求する場合には、係の人に、被相続人について、その市区町村役場において登録されているすべての戸籍の写しが必要であることをお伝えして、すべてを出してもらうことを相談してみるといいでしょう。

費用は、戸籍謄本は1通あたり450円、改製原戸籍の謄本・除籍謄本はそれぞれ1通あたり750円となっています。

郵送で請求する場合

本籍地が遠方である場合などには、直接市区町村役場の窓口に行くのが困難な場合があります。

そのような場合には、戸籍の写しを郵送で請求することもできます。

現在、各市区町村はホームーページなどで、郵送で戸籍等を請求する場合の請求書のフォームを公開していますので、それらをダウンロードして必要事項を記入したうえで、郵送することで請求することになります。

この場合も、本来は請求書に必要な書類の種類(戸籍、改製原戸籍、除籍の別)を記載するようになっているのが一般的ですが、具体的に何が必要なのかわからない場合が多々あると思われます。

その場合に備えて、請求書に対象となる被相続人の「出生から死亡まで」の戸籍謄本等が必要であるということを表示する箇所があるのが一般的です。

それをチェックしておくと、市区町村役場の担当者がそれに合わせて書類をそろえてくれます。

発行手数料の金額は窓口で請求する場合と同じで、戸籍謄本は450円、改製原戸籍・除籍謄本は750円です。

ただし、その手数料の納付方法としては、定額小為替を同封して送る方法によります。

定額小為替は郵便局の窓口で購入しますが、その際に、手数料として1枚当たり100円の手数料が発生します。

郵送で請求する場合には、請求書と必要枚数分の定額小為替のほかに、返信用の切手を貼付した返信用封筒、それに、身分を証明する証明書(運転免許証やマイナンバーカードなど)の写しを同封して、本籍地がある市区町村役場あてに送ることになります。

なお、戸籍謄本は1通がそれなりのページあったりしますので、返信用封筒はできればA4サイズが入る角2の封筒を利用することをお勧めします。

また、返信用封筒に貼る切手も、重量オーバーとなる危険がありますので、140円切手を貼っておくことをお勧めします。

まとめ

ここまで、相続人の調査の必要性およびそのための戸籍の写しの取得方法について説明してきました。

戸籍の調査は、戸籍の見方がわからないと、その取得を含めて、結構大変な作業となります。

場合によっては、弁護士や司法書士、行政書士などに依頼して、戸籍の取得および相続人の調査をしてもらうということを考えてもいいかもしれません。

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