東京弁護士会所属。
交通事故の程度によっては、入院が必要になったり、定期的な通院、精神的にも疾患を負ったり、PTSDとして現れることもあります。
こうした状況の中で、交渉ごとを被害者本人でまとめようとすることは非常に大変です。
弁護士に示談交渉を依頼することで、直接示談交渉をしたり、資料を準備したりする精神的負担が軽減できます。
つらい事故から一日でもはやく立ち直るためにも、示談交渉は弁護士に任せて、治療に専念してください。
目次
交通事故の被害に遭い、怪我の治療のためなどで会社を休まざるを得ず(あるいは早退、遅刻した)、収入が下がってしまった場合は、その減った分を「休業損害」として加害者に請求することができます。
この記事では、休業損害の概要と休業日数の数え方について解説いたします。
交通事故に遭ったことで、治療などのために会社を休んだ場合、すべてのケースに休業損害が当てはまるわけではありません。実際に収入が減らなければ休業損害は請求できないのです。
休業損害の計算における休業日数とは、治療のために実際に会社を休んだ日のことをいいます。
たとえば、10月1日に交通事故に遭い、完治するまで1か月、月日を要した(※実際に治療のために会社を休んだ日は、10月2日、3日、4日、15日、31日)の場合の休業日数は5日(慰謝料の計算のように「期間」が採用され、31日となるわけではありません)となります。
サラリーマンの場合は、実際に会社を休んだ日については会社に資料を出してもらうことになります。
各ケースで該当する日数は下記のとおりです。
怪我の場合:治療のために実際に休んだ日
後遺障害が残った場合:治療を開始した日から症状が固定したと診断された日まで、実際に休んだ日
死亡事故(交通事故から治療を継続したが、治療の甲斐なく死亡した場合)の場合:治療を開始した日から死亡した日
この休業損害も、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3つの基準があり、慰謝料のように大幅に結果が異なることはあまりありませんが、それぞれ計算式が異なります。
自賠責基準を採用した場合、原則休んだ日一日あたり5,700円が支払われますが、何か給与所得証明書など、具体的に減った金額を証明できれば、下記計算式に基づき、19,000円を上限に支払われます。
過去3か月間の平均給与が基礎となります。また賞与などの計算にも、休業日数が影響を与えた場合は、賞与なども対象となります。
事故直前3か月前の収入÷90日×実際に休んだ日
で、一日あたりの休業損害日数を計算します。
パートやアルバイトなど月収にバラつきがある場合は日給を基準とし、
日給×事故直前3か月間の就労日数÷90日×実際に休んだ日
が休業損害となります。
少し難しいのが、サラリーマンに比べて収入の変動が激しい個人事業主の場合は、前年度の確定申告書の数値が基準となります。つまり、
(過去1年の収入額-必要経費(家賃など、休業の有無に関係せず発生する費用)÷365×実際に休んだ日
が休業損害となります。
個人事業主の場合は、他の職種と比べ、考え方や計算式が複雑なので、後でもう少し詳しく見ていきましょう。
家事従事者(専業主婦(夫)など)の場合、実際に収入が発生している訳ではありませんが、治療などで家事が出来なかった場合は、一日あたり5,700円を限度に休業損害が支払われます。
任意保険会社は、各会社が独自の基準を設置しておりますが、おおむね、実際に減った金額を基準とし、実際に減った金額の証明が難しい場合や家事従事者の場合は、自賠責と同様、一日あたり5,700円が支払われることが多いようです。
3つの基準のうち、元も高い額が算出されるのが弁護士基準であることは慰謝料と同じです。
事故前3か月の収入÷90日×休業日数となり、他基準とそこまで変わりません。
過去1年の収入額÷365×実際に休んだ日が計算式となります。
自賠責に比べ、必要経費を控除しなくてもいい点がポイントです。
家事従事者の場合は自賠責基準などのように定額ではなく、厚生労働省が定めてある賃金センサス(正式名称:賃金構造基本統計調査。年齢や性別、学歴や業種などで分類し算出されたおおよその平均賃金)をもとに、計算されます。
参考:政府統計の総合窓口(e-Stat)「賃金構造基本統計調査」
実際の収入>賃金センサスの場合は、実際の収入が採用され、
実際の収入<賃金センサスの場合は、賃金センサス記載の金額が採用されます。
つまり、
(実際の収入もしくは賃金センサスを日割り計算の多い方)×仕事が出来なかった日
が休業損害の計算式となります。
また、弁護士基準をした場合、失業者であっても労働能力や意欲がある場合は、前職の収入や賃金センサスによる計算が認められたり、学生であっても内定が決まっていたりするなどの事情がある場合は、就職していた場合の給与額か賃金センサスの高い数値が採用され、休業損害として認められる場合もあります。
ここまで休業損害の計算式を説明していきましたが、資料さえ揃えば、単純な掛け算や割り算で計算ができ、そこまで難しくないと思われたかもしれません。
しかし、実際に個人事業主や家事従事者の場合は、相手と計算が異なる場合もあります。
たとえば、個人事業主の場合は明確な確定申告書や帳簿を付けているとは限らず、実際に減った休業損害が分かりづらいこともあります。その場合は、賃金センサスなどを採用することもあります。
また、個人事業主や家事従事者の場合、相手と主張が異なる場合もあります。家事従事者の場合は、会社が休んだ日を証明してくれるわけでもなく、「実際に仕事を休んだ日」の判断ができにくいからです。
その場合は、病院とも相談して「治療に長時間かかったため労働が出来なかった日」を証明してもらったり、「この症状(たとえば両腕骨折)では労働が出来ない」などの説明も必要になったりするでしょう。
休業日数は、実際に会社を休んだ日と述べましたが、どこまでが休業日数として認められるのでしょうか。
サラリーマンの場合は、勤め先にお願いして作成してもらう「休業証明書」が基準となり、実際に交通事故の治療であれば、通院はもちろんのこと、入院のため会社を休んだ日も休業日数として計算されます。
しかし、怪我の度合いに比べ、あまりにも休業日数が多い場合は、認められないこともあります。
その場合は、個人事業主や家事従事者と同様、病院とも相談し、適切な治療を受けており、会社を休まざるを得なかったことを説明しなければなりません。
また、実際に病院に入通院せず、自宅療養を病院から命じられることもあります。
その場合も、きちんと診断書を作成してもらうなどして、自宅療養が必要不可欠であったことを証明してもらいましょう。
休業日数は、治療のために実際に会社を休んだ日となります。
したがって、治療を必要としない物損事故の場合、休業日数が認められることはあまりありません。
例外的にあるのが、物損事故により車や店舗が壊れてしまい、事業を休まざるをえなかった場合、休業損害として認められます。
具体的な計算方法は、
(1日当たりの平均売上-1日当たりの必要経費)×休業日数
として計算されます。
交通事故の被害に遭い、治療のために会社を休むなどして収入が減った場合は、その減った分を休業損害として請求することができます。
実際の計算方法は、給与明細や確定申告書をベースに、1日あたりの金額を算出し、この数値に実際に休んだ日をかけて求めていくことになります。
ただ、それだけでなく、収入が減ったことの証明が難しい場合は、賃金センサスなどの資料を揃えたり、適切な治療のための休業であったことを証明したりするために、病院に診断書作成などをお願いすることもあります。
休業日数の数え方や休業損害の計算方法に不安を覚える方は専門家に相談してみるのも一つの手でしょう。