東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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借金の返済ができなくなった人は、自己破産した上で免責を受けることとなります。
ところで、免責を受けるとはどのようなことをいい、免責を受けるとその後の生活はどのようになるのでしょうか。
具体的に免責後の生活をご紹介しながら、免責により変わることと変わらないことを解説します。
また、自己破産や免責についてわからない方も多いので、その疑問に答えていきます。
Contents
自己破産とは、個人の方が借金などの債務を返済できないため、支払不能であることを裁判所に認めてもらうことです。
裁判所が認めていない場合は、借金の踏み倒しや夜逃げとなります。
ただ、借金を踏み倒しても、その債務自体がなくなることはありません。
しかし、自己破産を認められ、裁判所による免責許可が確定すると、その債務を返済する義務は消滅します。
なお、自己破産しても、すべての債務の返済が免責されるわけではありません。
税金や社会保険料、養育費などは、自己破産しても支払いが継続することに注意しましょう。
自己破産し免責が確定した後、どのような生活になるのか不安に感じている方も多いでしょう。
自己破産したからといって、通常の生活が送れなくなるわけではありません。
ここでは、自己破産し免責された後の生活について、どのような変化があり、逆に変化がないことは何なのか、解説します。
自己破産して免責を受けた人は、一定期間クレジットカードを使うことができなくなります。
これは、自己破産して免責を受けたという事実が、信用情報機関に登録されているためです。
信用情報機関の情報は、すべてのクレジットカード会社が契約やカード利用時に照会しており、登録されている人は利用できません。
そのため、自己破産して信用情報に登録されている期間は、クレジットカードが利用できなくなります。
この期間は、5年~10年に及ぶこととなります。
クレジットカードを自己破産前から契約している場合は、そのカードが使えなくなり、新しいカードも作れなくなります。
また、別のクレジットカード会社で新規に契約しようとしても、やはり契約してカードを作ることはできません。
自己破産した人は、信用情報にその事実が登録されます。
金融機関や貸金業者は、融資を行う際にこの信用情報を照会し、審査を行っています。
過去に借金の返済ができなくなった人に対しては、融資を行わないという判断がされるのが普通です。
そのため、自己破産すると、住宅ローンや自動車ローンなどのローンや、借入を利用することができなくなります。
自己破産により直接その影響があった金融機関だけでなく、他の金融機関もすべて同様の対応となります。
高額の商品を購入する際に、毎月少しずつ支払って購入する分割払いを利用することがあります。
この分割払いは、信用のある人でなければ利用することができません。
したがって、自己破産した記録が信用情報に残っている人は、分割払いを利用することができなくなります。
特に分割払いの利用が多いのが、スマートフォンの購入です。
携帯会社で購入する場合、月々の利用料金と一緒に本体の代金を分割払いしているケースが多いでしょう。
自己破産すると、分割払いでスマートフォンを購入することはできなくなるので、一括で購入するなどの対応が必要です。
自己破産しても、すべての財産を手放さなければならないわけではありません。
99万円以下の現金や、破産者がその後の生活をするために差押えが禁止されている財産などは手許に残ります。
そのため、自己破産しても、本当の意味で無一文になってしまうわけではありません。
自己破産しても手元に残された財産がある場合、その財産は自由に使うことができます。
この財産を、元の債権者に対する支払いにあてる必要はありません。
どのように使っても問題なく、自己破産した後の生活費などとして利用することになるでしょう。
自己破産の申立てをすると、その時点で所有する財産は、債権者への支払いにあてるため差し押さえられます。
しかし、自己破産の申立て後、実際に免責が決定するまで時間があり、この間に獲得する財産もあり得ます。
このような財産は、債権者への支払いにあてられることはありません。
万が一、元の債権者から支払いの請求を受けたとしても、その請求を拒否することができます。
自己破産すると、一時的に資格を利用した職業につくことができなくなりものがあります。
このような資格制限があることは、ご存知の方も多いでしょう。
しかし、資格制限がいつまで続くのか、正確に認識している方は少ないかもしれません。
資格制限は、免責許可決定が確定すると解除されます。
つまり、自己破産して免責を受けることが正式に決まれば、その後すぐに復権されることとなります。
信用情報に登録された状態となり、経済活動に支障が生じる結果となっても資格制限は解除され、以前の職業につくことが可能になります。
自己破産すると、そのまま以前の自宅に住み続けられないと思っている方もいるかもしれません。
しかし、自宅が賃貸物件である場合は、家賃さえ払い続ければそのまま住み続けることができます。
自己破産して自宅を手放さなければならないのは、自宅が持ち家である場合です。
自己所有の不動産については、基本的に自宅であっても売却してお金に換え、債権者への支払いにあてられます。
しかし、賃貸物件は売却しても破産者の財産はプラスになりません。
そのため、自己破産の影響を受けることはなく、自己破産したからといって引越しが強制されることはありません。
自己破産した後に、元の債権者に対する支払いが発生することはありません。
自己破産してからも給料や年金を満額受け取ることができますし、免責したからといって減額されることはありません。
ただし、自己破産する前から年金を担保にしているケースがあります。
このような場合には、自己破産後も一定の金額を債権者に回収されることがあります。
ただそれでも、年金の受給額のすべてを債権者が差し押さえることはできません。
また、自己破産する前からお金に困っている人の中には、生活保護を受けている方もいるでしょう。
自己破産した場合は、引き続き生活保護を受け続けることができます。
生活保護が自己破産を理由に打ち切られることはありません。
自己破産の申立てを行った後、免責が決定するまでの間、海外への渡航が制限されます。
ただ、絶対に海外旅行に行けなくなるわけではなく、旅行に制約を受け、裁判所の許可が必要になります。
免責許可が決定すれば旅行の制限は解除されるので、旅行はできるだけ免責許可後にしましょう。
また、結婚できないのではないか、あるいは選挙権がなくなるのではないかと不安を感じる方もいるでしょう。
しかし、これらについて制限されることはありません。
自己破産に関する話は、一般的にはあまり知られておらず、また話しにくい話題でもあります。
他の人に聞きたくても、誰に聞いたらいいかわからない、あるいは誰にも聞けないということもあるでしょう。
そこで、免責後に関してよくある疑問点を取り上げ、解説していきます。
自己破産すると、その時点で有する借金などの債務はすべて整理の対象となります。
自己破産した場合は、借金はすべてゼロとなる代わり、ほとんどの財産を手放すこととなります。
しかし、様々な事情により自己破産した後に、他にも借金があったことが発覚する場合があります。
たとえば、他の借金があったことを完全に忘れていた場合や、特定の借金を隠して自己破産の手続きを行った場合などです。
このような場合には、後から発覚した借金が免責の対象になるのか、疑問に感じることでしょう。
このうち、借金の存在を知らなかった場合、忘れていたことについて破産しようとする人の過失がない場合は、免責を受けられます。
免責が確定した後でも、後から発覚した借金の免責が認められれば、他の借金と同じく返済しなくてもよくなります。
一方、債権者にとっては債権代金を回収することができなくなり、多額の損失が生じる結果となります。
中には、破産者が債務の存在を認識していたにもかかわらず、その借金を隠していた場合があります。
破産手続きをする際に、債権者一覧表に記載しないまま手続きを進めてしまったような場合です。
債権者一覧表に記載されていない借金は、非免責債権に該当することとなり、免責は受けられません。
そのため、自己破産しても借金の返済を続けなければならないこととされます。
自己破産して免責を受けることができるのは、一度リセットして、ゼロからのスタートを切るためです。
ただ、債権者に多大な迷惑をかけることとなるため、どのような人も必ず免責が認められるわけではありません。
そのため、自己破産して免責が認められるには多くの要件が定められ、非免責債権などの決まりもあります。
自己破産した人が再度借金の返済に行き詰まった場合、もう一度自己破産することはできるのでしょうか。
実は、自己破産は生涯に一度限りと定められているわけではありません。
そのため、二度目、三度目の自己破産も可能となっています。
ただし、二度目以降の自己破産については、原則として前回の自己破産から7年が経過していることが条件となっています。
なお、個別の事情を踏まえて、前回の自己破産から7年以上経過していない場合でも、自己破産が認められる場合があります。
個別の事情により自己破産が認められるかは、裁判官の裁量により判断されるため、具体的なケースをあげることはできません。
7年経過していない時期に自己破産しようとする場合は、まず専門家に相談するようにしましょう。
自己破産すると、借金の返済から解放される一方で、持っていた財産がほとんど差押えられてしまいます。
そのため、自己破産の免責後の生活は非常に苦しいものになると想像する方もいるでしょう。
しかし実際は生活再建のスピードが早くなり、クレジットカードが使えないなどの点を除けば、普通の生活が送れます。
ただ、ローンを組めず、分割払いもできないなど制約はあるので、その点は事前に確認しておきましょう。