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【経済産業省の支援策】新型コロナウイルス感染症による支援一覧

弁護士 石木貴治

この記事の執筆者 弁護士 石木貴治

東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前職の経験を生かし、ビジネスの実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/ishiki/

この記事でわかること

  • 新型コロナウイルス対策として創設された制度を知ることができる
  • 特に資金繰り支援として設けられている制度の内容を知ることができる
  • 雇用支援や感染防止など新型コロナウイルス対策の制度があることが分かる

新型コロナウイルスの感染拡大とその予防のための緊急事態宣言により、経済は大きな打撃を受けました。

特に中小企業や個人事業主の方は、業種に関係なく新型コロナウイルスの影響をもろに受け、経営の危機を感じている人も少なくないことでしょう。

そこで、国や自治体などが新型コロナウイルス対策の支援制度を数多く創設しています。

どのような支援制度があるのか、その内容や適用要件などを確認していきましょう。

資金繰り支援

新型コロナウイルスの影響で、飲食店や小売店などは売上がほぼゼロになってしまうような時期があるなど、経営的に非常に苦しい状態となりました。

ただ、売上がほとんどなくなっても家賃や給料の支払いはゼロになるわけではないため、現預金は減る一方となってしまいます。

そのため、中には資金繰りができなくなってしまいお店を閉める決断をした会社や事業主もいると思います。

資金繰りの影響で廃業するようなことにならないよう、様々な制度を利用して事業の継続に必要な資金を確保しましょう。

家賃支援給付金

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて5月に緊急事態宣言が発表され、売上高の大幅な減少に苦しむ事業者が数多くいます。

中には、事業の継続をあきらめてお店を閉店したり、会社が倒産したりするケースも見られます。

このような事業者を支援するため、地代や家賃(賃料)の負担を軽減するための給付金制度が新設されました。

支給対象となるのは、

  • 1. 資本金10億円未満の中小企業等やフリーランスを含む個人事業主
  • 2. 5月~12月の売上高について1か月で前年同月比50%以上の減少または連続する3か月間の合計で前年同期比30%以上減少している場合のいずれかに該当する
  • 3. 事業のために占有する土地や建物の賃料を支払っている

以上3つの要件すべてを満たす事業者です。

実際の支給額の計算方法は、申請時の直近1か月における支払賃料(月額)に基づき算定した給付額(月額)の6倍とされています。

法人で支払賃料(月額)が75万円以下の場合は、給付額(月額)は支払賃料×2/3。

また、法人で支払賃料(月額)が75万円超の場合は、給付額(月額)は50万円+支払賃料の75万円の超過分×1/3とされ、月額100万円が上限となります。

個人事業者で支払賃料(月額)が37.5万円以下の場合は、給付額(月額)は支払賃料×2/3。

また、個人事業者で支払賃料(月額)が37.5万円超の場合は、給付額(月額)は25万円+支払賃料の37.5万円の超過分×1/3となり、月額50万円が上限とされます。

この計算の結果、給付額は法人に対して最大600万円、個人事業者に対しては最大300万円を一括で支給するとされています。

なお、具体的な申請方法や申請手続きの開始日などについてはまだ検討中とされているため、今後発表される情報に注目しておきましょう。

持続化給付金

令和2年1月から12月までの間に、前年同月と比較して売上高が50%以上減少している月がある場合、その月の売上高を12倍した金額と前年の総売上との差額を上限として、法人については200万円、個人事業者については100万円の持続化給付金が支給されます。

支給対象となるのは、2019年以前から事業収入を得ており今後も事業継続の意思がある者、そして法人の場合は資本金の額が10億円未満であることなどです。

なお、申請手続きは令和2年5月1日より開始されています。

申請はすべてオンラインによることとされており、郵送などでは受け付けていないことに注意が必要です。

新型コロナウイルス感染症特別貸付と特別利子補給制度

新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの事業者が資金繰りの悪化などの影響を受けています。

そのような状況の中で、より多くの事業者が融資を受けられるような制度が設けられています。

新型コロナウイルス感染症特別貸付は、日本政策金融公庫が実施する融資制度の1つです。

業種や地域に関係なく、売上高が前年同月などと比較して5%以上減少している場合に利用することができます。

また、融資後3年間の利率引き下げや無担保での融資というメリットがあります。

さらに、売上高についてより大きく減少している事業者は、特別利子補給制度が利用できます。

利子補給とは、借り入れをしたことによって発生する支払利息について、他の機関から給付を受けることのできる制度です。

この2つの制度を併用することで、融資から3年間は実質無利子となるのです。

新型コロナウイルス感染症対応資金

セーフティネット保証4号や5号、あるいは危機関連保証のいずれかの認定を受けた事業者は、民間金融機関から受けた融資についても実質無利子となる制度が設けられています。

また、信用保証協会に対して支払う保証料についても、要件によって減免されるほか、最長5年間の据置期間の設定も可能です。

新型コロナウイルス感染症対応資金による融資を受けるためには、市区町村によるセーフティネット保証の認定が必要となります。

感染拡大防止協力金

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため緊急事態宣言が出されるとともに、特定の業種については休業や営業時間の短縮などが要請される事態となりました。

この結果、飲食店や小売店を中心とした店舗は大きな打撃を受けることとなったのですが、都道府県や市区町村ごとに、これらの業種を営む事業者に対する協力金の制度を設けています。

要件は自治体ごとに異なりますが、

  • 休業したこと
  • 営業時間を短縮したこと
  • ・飲食店の場合は特定の時間以降の酒類の提供を取りやめたこと

などとなります。

また、その金額も自治体によって違いがあります。

緊急事態宣言が解除されていることから、このような協力金を受けるための申請期限も徐々に締め切られています。

対象になる可能性のある事業者はすぐに地元自治体のホームページなどで確認しておきましょう。

雇用支援


会社やお店の経営者にとって、従業員は大きな財産です。

しかし、売上が減少したりお店の営業時間が制限されたりする中で、しだいに従業員に対する雇用調整を実施せざるを得ない状況になっているところも増えています。

そこで、雇用を確保しておきたい経営者サイドと、休業となっても一定の給与を必要とする従業員サイドの双方を支援するため、従業員に支払った給与について一定の助成金が支払われる制度があります。

雇用調整助成金

従業員に対する休業など一時的な雇用調整を実施した企業や店舗などは、従業員に対して休業手当を支給することとなります。

しかし、休業している状態で従業員に対する給料を支給することは、ただでさえ苦しい事業の状況を悪化させかねません。

そこで、令和2年4月1日から9月30日までの期間に休業等を実施して休業手当を支給した事業者に対して雇用調整助成金を支給することとしました。

助成金の金額は従業員1人あたり最大15,000円とし、大企業については最大3/4、中小企業については最大全額を助成することとしています。

小学校等の臨時休業等に伴う保護者の休暇取得支援

新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、小学校等の臨時休業が実施されました。

この臨時休業により、小学校等に通う子供を持つ保護者が休暇を取得せざるを得なくなる事態となり、企業が年次有給休暇とは別に有給の休暇を設けて、この事態に対応するケースが見られました。

そこで、従業員が令和2年2月27日から9月30日までの間に小学校等の休業に対応するために取得した休暇に対して事業者が支給した手当について、事業者に対する助成金の支給制度が新設されました。

令和2年4月1日以降に取得した休暇については、1日あたりの上限額を15,000円に引き上げるなどして、従業員が休暇を取りやすい環境の整備を実施しています。

また、フリーランスとして委託を受けた仕事を個人で請け負っている方が、小学校等の臨時休業により契約した仕事ができなくなった場合には、休業等を余儀なくされたフリーランスの方に対する助成制度が設けられています。

感染防止施策への支援

新型コロナウイルスの感染拡大は、まだ収束したわけではありません。

すでに在宅勤務・テレワークなど新しい勤務形態を実施している会社もありますが、中小企業ではまだそのような環境にない会社も多くあります。

そこで、中小企業などでもテレワークを実施できるような環境整備を行うための補助金制度が設けられています。

IT導入補助金(生産性革命推進事業IT導入補助)

ソーシャルディスタンスの確保や密を避ける行動の必要性が認識されると同時に、働き方改革の高まりもあって、テレワークなどこれまでとは違う働き方に注目が集まっています。

しかし、体力の弱い中小企業がテレワークに必要な設備の投資を行うことは、簡単ではありません。

そこで、中小企業が生産性の改善を目的としてITツールを導入する際には、その導入費用のうち最大3/4について、30万円~450万円の範囲内で補助金を受けることができます。

なお、補助金算定の対象となるのはソフトウェアの導入費用やパソコン・タブレット等の機器のレンタル費用です。

パソコンやタブレットの購入費用は対象外とされているため注意が必要です。

また、テレワークやIT関連の補助金の制度は、都道府県などの地方自治体が実施しているものもあります。

各自治体によって要件や支給額が異なるため、ホームページなどで確認するようにしましょう。

保険料・公共料金等の支払いへの支援

保険料などの支払は会社の売上があってもなくても発生するものですが、現在のような緊急事態において、スムーズに支払いができる状況にあるとは限りません。

そこで、保険料の支払いが難しい状況にある場合には、その支払を猶予する制度が設けられています。

また、電気代や水道料金などの公共料金についても支払いの猶予が認められることがあります。

さらに、手形や小切手の不渡りや取引停止処分について金融庁からの要請も出ているため、これらの内容を確認しておきましょう。

厚生年金保険料の猶予制度

新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、事業収入が大幅に減少した事業者は、申請をすることによって厚生年金保険料の納付を最大1年間猶予する特例制度が設けられました。

この制度は、令和2年2月以降のいずれかの月で、事業に関する収入が前年同期と比べて20%以上減少していることが要件となります。

また、対象となるのは、令和2年2月1日から令和3年2月1日までに納期限が到来する厚生年金保険料です。

適用を受けるためには、事前に年金事務所に対して申請書を提出し、認められる必要があります。

労働保険料の猶予制度

新型コロナウイルス感染症の影響により事業収入が減少し、労働保険料の納付が困難な事業者は、その納付を1年間猶予する制度が設けられています。

令和2年2月以降のいずれかの月で、事業に関する収入が前年同期と比べて20%以上減少している場合、この猶予制度の適用を受けることができます。

猶予の対象となる労働保険料は、令和2年2月1日から令和3年2月1日までに納期限が到来するものとされています。

猶予を受けるための担保は不要であり、延滞金も発生しないこととされているため、利用しても不利益になることはありません。

納期限が到来するまでに、都道府県の労働局に対して申請する必要があるため、早めに手続きするようにしましょう。

医療保険・介護保険の減免・猶予制度

新型コロナウイルスの影響で収入が減少した場合や減少見込みがある場合には、健康保険料や介護保険料の負担を軽減することができる可能性があります。

また、健康保険料・介護保険料の支払いが厳しい状況にある場合には、一定期間の支払の猶予が認められることがあります。

国民健康保険の加入者は各自治体が担当窓口になり、健康保険組合に加入する事業者は、その健康保険組合が窓口となります。

新型コロナウイルスの影響による健康保険・介護保険の減免や猶予の条件については、自治体や健康保険組合によって異なるため、加入する保険に応じて確認するようにしましょう。

公共料金(電気・ガス・水道など)の猶予

新型コロナウイルスの影響により収入が減少し、あるいは離職・休職した人が増えたことで、公共料金の支払いが困難になる事態が生じています。

そのため、令和2年3月19日に経済産業省や総務省から、各事業者や地方公共団体に対して支払猶予に関する要請が出されています。

これを受けて、支払いの猶予や減免に関する特別措置が行われているケースがあります。

電気料金の支払いについては、電力会社ごとに支払い期限を延長する取り扱いを定めています。

ガス料金についても、ガス会社が支払い期限の延長による猶予制度を設けています。

これらの支払い猶予については、利用者からの申請が必要とされています。

猶予を受けたい場合には、各事業者のホームページなどから要件を確認したうえで、手続きを行いましょう。

また、自治体によっては水道料金の支払い猶予や一部減額が実施されています。

このうち、支払い猶予を利用する際には申請が必要とされます。

一方、減額が実施される場合には、特別な手続きは必要でないこともあります。

どのような形で減額や猶予が実施されるのか、ホームページなどで確認するようにしましょう。

手形・小切手の不渡り・取引停止処分に対する要請

通常、支払手形や小切手の支払期日を過ぎてしまうと、その手形や小切手は不渡りとなってしまい、それ以後の取り立てや決済ができなくなります。

また、6か月以内に2回の不渡りを起こしてしまうと、その事業者は手形交換所での取引が停止されてしまうため、事実上の倒産となってしまいます。

しかし、新型コロナウイルスの影響で資金繰りが急激に悪化した中小企業の実態を踏まえて、金融庁と日本銀行は令和2年4月16日に事業者の資金繰り支援の一環として、不渡り処分を当面猶予するように全国銀行協会に要請しています。

これを踏まえて、手形や小切手の不渡りや取引停止処分は当面実施されないこととなりました。

なお、この支援はあくまでも不渡り処分等の猶予であり、支払期日が到来した手形や小切手についての支払猶予ではないことに注意しましょう。

税の支払いに関する支援


会社は利益が出れば、法人税や地方税を支払わなければなりません。

また、個人事業主は、確定申告を行って所得税を納めなければなりません。

過去1年間の利益に対する税額の計算を行っているうちに、新型コロナウイルスの影響で経営が悪化し、納税するための現金がなくなってしまったという人もいるでしょう。

このような法人・個人事業主のために、税額の納税猶予制度が設けられています。

また、毎年発生する固定資産税・都市計画税については、税額の減免の制度が設けられることとなっています。

国税についての納税猶予制度

法人税や所得税、消費税などの国税を納付することができない状況にある場合、税務署に申請することで納税猶予の適用が認められる場合があります。

また、新型コロナウイルスの影響で申告書の提出が期限内にできない事業者については、申告期限の延長が認められます

申告期限の延長を適用した場合は、自動的に税金の納付期限も延長されるため、納税のめどが立った段階で申告と納付を行うこともできるのです。

地方税についての納税猶予制度

法人については、法人税の申告書を提出すると同時に、法人都道府県民税・法人市町村民税の申告書も各自治体に提出しなければなりません。

この申告については、法人税の金額を計算していなければ税額を求めることができません。

そのため、法人税について申告期限の延長が適用されている場合には、地方税も申告期限を延長する必要があります。

所定の手続きを行えば、申告期限の延長の適用を受けることができます。

また、納付が困難な場合には国税と同じように納税の特例制度があるため、申請することで納税の猶予が認められる場合があります。

固定資産税の減免措置

新型コロナウイルスの影響を受けた事業者については、2021年度(令和3年度)の固定資産税・都市計画税の減免が行われることが決定しています。

令和2年2月~10月のうち任意の連続する3か月の事業収入が、前年と比較して50%以上減少している場合には、固定資産税・都市計画税の全額が免除となります。

また、同じく30%以上50%未満の減少となった場合には、固定資産税・都市計画税の半分が減免されます。

まとめ

ここにご紹介した多くの制度は、新型コロナウイルスの影響が拡大したことにより新たに設けられたものです。

要件は、新型コロナウイルスの影響が拡大する状況になれば、より広くの事業者が利用できるように緩められる可能性があります。

補助金や融資の金額も、今後の状況によってはさらに拡大される可能性がります。

また、さらに今後新しい制度が作られる可能性もあるのです。

これ以外にも、自治体や日本政策金融公庫などの金融機関では、事業者向けの制度を準備して支援を行っています。

あらゆる手を使って、この緊急事態を乗り切る準備をしておきましょう。

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