最終更新日:2024/1/29
インボイス制度が益税解消につながる理由【免税事業者は何をすべき?】
ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。
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この記事でわかること
- 新たに始まったインボイス制度とはどのような制度か
- 消費税の計算から益税が発生する理由を知ることができる
- インボイス制度が導入されると益税が解消される理由
2023年10月1日に、消費税の新しい制度としてインボイス制度が始まりました。
消費税が導入されて30年以上経過していますが、このタイミングでインボイス制度が開始となった理由の1つが、益税の解消です。
そもそも益税とはどのようなものなのでしょうか。
ここでは益税が発生する理由、そしてインボイス制度で益税が解消される理由について解説します。
目次
インボイス制度とは
インボイス制度とは、正式名称を「適格請求書等保存方式」といいます。
商品やサービスを購入する側は、適格請求書(インボイス)を保存していなければ、支払った消費税額について仕入税額控除の適用を受けることができません。
仕入税額控除の適用が受けられないと、その分消費税の納税額が増えてしまう仕組みです。
商品やサービスを販売する側は、適格請求書発行事業者である場合、取引先からの請求があったときは、必ず適格請求書を発行しなければなりません。
益税とは
益税とは、主に納税義務のない免税事業者が消費税相当額を請求し、それが国庫へ納められずに事業者の手元に残ることを指します。
インボイス制度が導入されるまでの消費税の計算は、その取引の内容が消費税の課税取引かどうかに基づいて行われています。
取引の相手が消費税を納税している事業者か、それとも免税事業者かは消費税の計算には関係ありません。
そのため、免税事業者に対しても消費税を含めた金額を支払っていることになります。
この時、代金を受け取った免税事業者は、消費税の納税義務はないため、受け取った消費税額を消費税として納税することはありません。
結果的に、10%あるいは8%上乗せされた売上高が計上され、その分が利益になることから、益税と呼ばれています。
インボイス制度で益税が解消される理由
どうしてインボイス制度が導入されると、益税が解消されるのでしょうか。
益税が発生する一番の理由は、消費税の免税事業者も、納税している事業者と同じように消費税を受け取っているからです。
そこで、インボイス制度では適格請求書がなければ仕入税額控除ができないルールが設けられています。
適格請求書を発行できるのは、あらかじめ税務署で登録を行った課税事業者だけです。
経済合理性から考えると、課税事業者は、仕入税額控除ができない免税事業者との取引を敬遠するでしょう。免税事業者は市場から廃除されないように、適格請求書発行事業者になろうと考えます。
適格請求書を発行するために登録を行った事業者は、消費税の課税事業者となり、消費税を納税することになります。
そのため、益税の解消になるといわれています。
インボイス制度が始まっても、これまでと同じく、基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合には免税事業者のままでいることが可能です。
免税事業者も、請求書に消費税相当額を記載することはできます。しかし、取引先が課税事業者である場合、仕入税額控除ができないことから、値引きを求められる可能性があります。
免税事業者がインボイス制度に対応する方法
インボイス制度が始まると、免税事業者はその対応を求められることになります。
どのような対応があるのか、その選択肢をご紹介します。
免税事業者のままでいく
インボイス制度が始まっても、免税事業者のままでいることも可能です。
取引先が免税事業者または簡易課税を選択していれば、値引きを求められたり、取引を打ち切られたりすることもないでしょう。
消費税の課税事業者を選択して、消費税申告や納税をするのは負担が増えて大変です。免税事業者のままという選択をする事業者も多いでしょう。
課税事業者になる
インボイス制度の導入に伴って課税事業者となり、同時に適格請求書発行事業者になることもできます。
適格請求書発行事業者になれば、適格請求書を発行でき、取引先は仕入税額控除をすることができるため、インボイスを原因として値下げや取引を打ち切られることはなくなります。
インボイス制度で課税事業者を選択するかどうか迷ったら税理士に相談しよう
インボイス制度が始まると、これまで消費税を納税してきた事業者だけでなく、免税事業者にも大きな影響があります。
免税事業者は、インボイス制度の導入に伴って、免税事業者のままいくのか、課税事業者になるのか決めなければなりません。
どちらにするのか迷ったら、税理士に相談して、より良い選択を検討しましょう。