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最終更新日:2022/12/16

インボイス制度が美容室経営者や美容師に与える影響【何を準備すべき?】

税理士 鳥川拓哉
この記事の執筆者 税理士 鳥川拓哉

ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-tori

インボイス制度が美容室経営者や美容師に与える影響【何を準備すべき?】

この記事でわかること

  • インボイス制度とはどのようなものかを知ることができる
  • インボイス制度が始まると美容室の経営にどう影響するかわかる
  • インボイス制度開始に向けて美容室が準備すべきことがわかる

消費税に関する新しい制度として、インボイス制度が始まることはご存知の方も多いでしょう。

ただ、インボイス制度が開始することでどのような影響があるのか、理解している人は少ないかもしれません。

ここでは、美容室を経営する方に向けて、インボイス制度によってどのような影響があるのかご紹介していきます。

また、美容室がインボイス制度開始までにどのような準備をしなければならないのか、解説していきます。

インボイス制度とは

インボイス制度とは、正式名称を「適格請求書等保存方式」といいます。

事業者が消費税の計算を行う際に、適格請求書(インボイス)と呼ばれる書類を保存しなければならなくなる制度です。

インボイスを発行するのは、商品の販売やサービスの提供により消費税を受け取った事業者です。

ただ、事業を行っていれば誰でもインボイスを発行できるわけではありません。

税務署に対して適格請求書発行事業者の登録を申請し、番号が割り振られた事業者でなければ、インボイスを発行できないこととなっています。

インボイス制度が美容室経営に与える影響

インボイス制度の概要を簡単に説明しました。

この説明を読んだだけであれば、適格請求書発行事業者になり、受け取った適格請求書を保存するだけと思うかもしれません。

しかし、実際はそれ以上に大きな影響が事業者に及ぶと懸念されています。

美容室経営者の場合、インボイス制度が始まるとどのような影響があるのか、ご紹介します。

美容師との業務委託契約の見直し

美容室を経営している場合、外部の美容師と業務委託契約を締結している場合があります。

この場合、美容師に対して支払う業務委託費は、給料とは違い、消費税がかかる課税取引とされています。

税務署に納める消費税額は、売上にかかる消費税から仕入れにかかる消費税額を差し引いて計算します。

美容室経営者の場合、売上にかかる消費税は日々の収入金額から発生します。

一方、仕入れにかかる消費税額は、道具や消耗品の購入金額、そして業務委託費などを集計して計算します。

ここで問題になるのは、業務委託費を支払う相手からインボイスを受けることができるかということです。

支払先の美容師が適格請求書発行事業者であれば、その美容師に対する支払いから消費税額を計算することができます。

しかし、支払先の美容師が適格請求書発行事業者でない場合は、業務委託費から消費税を認識できません

すると、差引計算により計算する消費税額は大きくなるため、事業者が税務署に納める税額が多くなります。

このような問題が起こるのは、適格請求書発行事業者でない美容師に対して支払う業務委託費の消費税の取扱いが変わるためです。

インボイス制度導入前は、支払相手(美容師)が課税事業者か免税事業者かに関係なく、消費税を認識することができました。

消費税の課税取引か、課税取引でないかは、その取引の内容だけで判定することとされていました。

しかし、インボイス制度導入後は、取引先が適格請求書発行事業者かどうかにより、消費税がかかるかどうかが変わることとなります。

業務委託契約をしている美容師の中には、年間売上が1,000万円以下であるために消費税の課税事業者にならない者もいます。

消費税の課税事業者にならなければ、適格請求書発行事業者にもなれません。

そのため、業務委託費を支払ってもインボイスを受け取れず、仕入れにかかる消費税を計算することはできません。

そこで、適格請求書発行事業者にならなかった美容師に対しては、業務委託契約の見直しが必要になることが予測されます。

免除事業者は課税事業者になるか検討

美容室経営者の中には、年間売上が1,000万円以下であるために消費税の免税事業者である者もいます。

このような経営者の場合、消費税の課税事業者となって、適格請求書発行事業者になるかどうかを検討する必要があります

免税事業者が適格請求書発行事業者になると、税務署に対して消費税を納付しなければならなくなります。

そのため、消費税の金銭的負担や、書類の保存・申告書の作成など事務的負担が増えてしまいます。

一方、適格請求書発行事業者になれば、自身がインボイスを発行できるようになります。

その結果、美容室の利用者が支払う料金について、仕入れにかかる消費税の計算ができるようになります。

美容室の利用者が一般消費者の場合、消費税の納税は行わないため、インボイスを発行する必要性はありません。

しかし、美容室の利用者が支払う金額を経費とする事業者がいる場合、消費税の計算のためにインボイスを必要とするでしょう。

事業者の取引先がある場合は、適格請求書発行事業者になる選択を前向きに検討しましょう。

美容室経営者も美容師も収入減の可能性

インボイス制度が始まると、美容室経営者も業務委託契約を締結している美容師も、収入が減る可能性があります。

美容室経営者については、美容師の中に適格請求書発行事業者でない者がいると、結果として消費税の納税が増えてしまいます。

また、美容室経営者が免税事業者から課税事業者になると、これまでゼロだった消費税の納税が発生することとなります。

いずれの場合も、消費税を納税することとなるため、収入が減少してしまいます

美容師については、美容室経営者との契約を見直す段階で、消費税を控除できなくなる分、金額を下げられる可能性があります。

また、適格請求書発行事業者になることを選択して、消費税を納付する場合もあります。

いずれの場合も、収入が減少する結果となってしまうでしょう。

インボイス制度に向けて美容室経営者が準備すべきこと

インボイス制度に向けて美容室経営者が準備すべきこと

インボイス制度が始まると、これまでとは大きく変わることがあります。

美容室経営者としてどのような準備をすべきか、その具体的な内容を解説します。

適格請求書発行事業者の申請を行う

現段階で消費税の課税事業者であれば、インボイス制度開始後に適格請求書発行事業者となる必要があります

課税事業者であっても自動的に適格請求書発行事業者になるわけではないためです。

適格請求書発行事業者の登録申請書を、管轄の税務署に提出しなければなりません。

適格請求書発行事業者になるかどうかを決める

現段階で消費税の免税事業者の場合、まずは適格請求書発行事業者になるかどうかを検討しなければなりません

免税事業者のままであることとした場合、取引先で消費税を控除できなくなるなどの影響が出ます。

一方、適格請求書発行事業者になると、取引先には影響ありませんが、自身の収入が減少することとなります。

美容室に対する支払いを経費としている事業者がどれくらいいるかにより、この判断は大きく変わります。

また、これからの美容室経営の展望なども踏まえて、適格請求書発行事業者になるかどうかの判断をしましょう。

インボイス発行の準備を行う

前述したように、インボイス制度が始まる2023年10月1日以降、適格請求書発行事業者はインボイスを発行しなければなりません。

そのため、事前にインボイスを作成するための準備をしておく必要があります。

なお、適格請求書発行事業者が、不特定かつ多数の者に対して売買やサービスの提供を行う場合は、適格簡易請求書を発行できます。

美容室においても、適格簡易請求書を発行することになるでしょう。

適格簡易請求書はレシートのようなものですが、登録番号や税率の合計金額を記載するなど、これまでのレシートとは異なります。

適格簡易請求書を発行するためのシステムをあらかじめ準備しておかなければ、インボイス制度の開始に対応できません。

そのため、レジの入れ替えや改修などを早めにしておかなければならないといえます。

また、消費税の計算を行うためには、会計システムの見直しが必要になる場合もあります。

売上計上時に消費税を計上する他に、適格請求書のある支払いについては、その記載内容に基づいて処理しなければなりません。

その処理に対応した会計ソフトを購入し、インボイス開始後に消費税の計算を行えるようにしておきましょう。

まとめ

美容室経営者や美容師の中には、インボイス制度開始と同時に課税事業者、適格請求書発行事業者になる選択をする方もいます。

インボイス制度は大きな影響を与えることとなるため、必ず事前に適格請求書発行事業者になるかどうかを検討しましょう

そして、適格請求書発行事業者になる場合は、事前に適格請求書発行事業者になる申請を行っておきましょう。

また、インボイスの発行や消費税の計算に必要な準備を行う必要があるため、前もって準備しておくことをおすすめします。

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