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最終更新日:2022/6/2

公正証書遺言の作成方法と注意点|公証役場での手続きの流れを動画付きで解説

本間 剛 (行政書士)
この記事の執筆者 行政書士 本間剛

ベンチャーサポート行政書士法人 代表行政書士。山形県出身。

はじめて相続を経験する方にとって、相続手続きはとても難しく煩雑です。多くの書類を作成し、色々な役所や金融機関などを回らなければなりません。専門家としてご家族皆様の負担と不安をなくし、幸せで安心した相続になるお手伝いを致します。

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公正証書遺言の作成方法と注意点|公証役場での手続きの流れを動画付きで解説

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この記事を読むと分かること

  • 公正証書遺言書を作成するときに必要な手続きがわかる
  • 公正証書遺言の作成費用や必要書類がわかる
  • 公正証書遺言を作る際のポイントがわかる

遺言内容をもっとも確実に実行できるのは公証人や証人立ち会いのもと、作成する公正証書遺言です。

この記事では公正証書遺言とは何か、作成費用や必要書類、公証役場での手続きなど実際に作成するにあたって必要な情報をお伝えします。

とくに公正証書遺言を作成するうえで最大のネックとなる公証人面談について、おそらく日本で初めて、本物の公証人が本物の遺言作成に立ち会って口述確認している動画を掲載しています。

この記事と動画を見て、公正証書遺言作成に対するハードルが下がれば幸いです。

公正証書遺言とは

公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)とは、自分一人で作成する自筆証書遺言とは異なり、公証役場の公証人や証人の立ち合いのもと、公正証書として遺言書を作成する方法です。

相続手続きの際の家庭裁判所の検認が不要になったり、公証人が原本の管理を行ってくれたりと、遺言書に関する負担を軽減することができます。

公正証書遺言には、遺言が無効となってしまったり、発見されなかったりするリスクを避けられるといったメリットがあります。

日本の法律では、遺言の形式として、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3つが認められています。

この3つのうち、最も利用件数が多い(全体の8割以上)のが公正証書遺言です。

・公正証書遺言

公正証書遺言作成と公証役場での手続きの流れ

公正証書遺言の作成の流れ

公正証書遺言は、公証役場で公証人と一緒に作成手続きを進めていきますが、全体の流れを知っておいたほうがよりスムーズに完成まで進めることができます。

とくに遺産分配に関してどうしたいかという「遺言者の意思」は、公証人が助言することはできても決定することはできません。ご自身の気持ちを整理して考えることが必要となります。

  1. 主にどんな財産を「誰にいくら渡すか」というおおまかな遺言内容を決めておく
  2. 証人2名となってもらう人を決めておく(相続人等は不可。公証役場で有料で手配してもらうことも可能)
  3. 戸籍謄本等の必要書類を準備する
  4. 公証人と遺言作成日程を決める
  5. 公証役場で遺言書の作成を行う(遺言者の自宅や病室などが作成場所となる場合もある)
  6. 完成した遺言書を受け取り、費用を支払う

以下、それぞれの手続き内容について詳しく見ていきます。

おおまかな遺産分配の内容を決めておく

公正証書遺言は、公証役場で公証人に遺言内容を口述する形で作成します。

当然ながらおおまかな遺言の内容がすでに決まっていないと、作成の手続きを進めることができないので注意しておきましょう。

具体的には、遺産となる財産の一覧を財産目録のような形で準備しておくとともに、事前に行政書士や弁護士といった人たちと相談の上で「誰にどの財産を相続させるのか」を決めておく必要があります。

遺言書で定める遺産分割の内容は、相続人となる人の間でトラブルを未然に防ぐ意味があるほか、相続税の負担金額などを決定することになりますので注意が必要です。その場合は行政書士や弁護士のほか、税理士にアドバイスをもらうのも有効です。

証人2名になってもらう人を決めておく

公正証書遺言には、証人となってもらう人が2人以上必要です。

証人となるために資格などは必要ありませんが、次のような人は証人となることができません。

証人になれない人

  • 推定相続人、その直系血族およびその配偶者
  • 遺贈を受ける人、その直系血族およびその配偶者
  • 未成年者
  • 公証人の親族や配偶者、公証役場の書記・使用人など

とくに注意が必要なのは、財産を与える予定の推定相続人や遺贈を受ける人が証人になれないことです。

この制限があるために信頼できる証人2名を自分で準備できずに、有料で親族以外の証人を依頼するケースはかなり増えています。

ちなみに、弊社の遺言書作成サービスをご利用頂いた場合は、追加料金なしで弊社スタッフを証人とすることが可能です。

戸籍謄本等の必要書類を準備する

公正証書遺言の作成については、公証人によって要求される書類が異なる場合があるので、作成しながらその都度、公証人に必要な書類を確認することをおすすめします。

公証人が公正証書遺言の作成を手伝ってくれると言っても、ゼロから全てを代行してくれるわけではありません。

家族関係や財産の所在など、家族しかわからないこともたくさんありますので、それを正確に証明し、説明するためにも前項で紹介した必要書類を事前に準備しておくと手続きの流れにそってスムーズに作成できます。

公証人と遺言作成日程を決める

ここまでの準備ができたら、公証役場に連絡をして作成の日程を決めます。

遺産相続について相談している行政書士や弁護士などがいる場合には、日程調整なども代行してもらえるケースが多いでしょう。

なお、公証役場は全国に約300か所ありますが、特に管轄などは決まっていません。

遺言者が公証役場に出向くことが難しい場合には、ご自宅や病院などに公証人に出張してもらうことも可能ですので、相談してみてください。
その場合、作成費用に「日当」や「交通費」が加算されます。

公証役場にて公正証書遺言作成の手続きを行う

公証人と事前にアポイントを取った日時・場所で公正証書遺言作成の手続きを行います。

公証役場に訪問するのが基本ですが、ご自宅や病院などで作成するケースもあります。

「当日、具体的に何をするのか?どのような流れで手続きが進むのか?」がもっともわかりにくい点だと思いましたので、公証人との立会い現場の一部始終を動画に収めました。本物の公証人の許可を得て、公証人指導のもと、公正証書遺言作成の流れを掲載しております。

貴重な資料となりますので、ぜひ一度ご覧いただき、自身が遺言書を作成するきっかけや、親に遺言書を書いてもらうよう勧めるきっかけとなれば幸いです。

参考虫眼鏡公証人とはどんな人たち?

公証人とは、全国におよそ300か所ある公証役場という役所で仕事をしている公務員です。 公務員とはいっても国からお給料をもらっているわけではなく、依頼者から事務を請け負うたびに手数料として料金を徴収するかたちで事務運営を行っているという特徴があります。 現在、およそ500名の公証人が活動していますが、公証人の事務を行うためには30年以上の法律事務の経験が要件として求められていますから、そのほとんどは過去に裁判官か検察官を経験された方です。

完成した遺言書を受け取り、費用を支払う

完成した公正証書遺言書を受け取り、費用の支払いを行います。

遺言の原本は公証役場で保管し、正本や謄本は遺言者本人や遺言執行者に交付されるのが一般的です。

公証役場に原本が保管されているため、紛失や改ざんのリスクはありません。

公正証書遺言の作成費用

公正証書遺言は自筆証書遺言と違って、作成に費用がかかります。公正証書遺言作成の基本的な手続きとしては、公証人の立会い当日、遺言書が完成した後にその場で現金で支払います。

公証人の手数料がいくらかかるかは、下記の表に示す財産価額によって決まります。

目的の価額 手数料
100万円以下 5,000円
100万円を超え
200万円以下
7,000円
200万円を超え
500万円以下
11,000円
500万円を超え
1,000万円以下
17,000円
1,000万円を超え
3,000万円以下
23,000円
3,000万円を超え
5,000万円以下
29,000円
5,000万円を超え
1億円以下
43,000円
1億円を超え
3億円以下
43,000円に
超過額5,000万円までごとに
13,000円を加算した額
3億円を超え
10億円以下
95,000円に
超過額5,000万円までごとに
11,000円を加算した額
10億円を
超える場合
249,000円に
超過額5,000万円までごとに
8,000円を加算した額

上記手数料は「遺産を受け取る人1人あたり」にかかる点に注意してください。

つまり、公証人に支払う金額は相続人や遺贈を受ける人の手数料を全員分合算した合計金額ということになります。事例で見てみましょう。

分配される財産金額 手数料

長男に2000万円

23,000円

次男に1000万円

17,000円

三男に500万円

11,000円
合計 62,000円

なお、次の追加費用がかかる場合があるのでご注意ください。

遺言者が病気・足が悪い等で公証人の出張が必要な場合
病床執務加算 基本手数料の50%
日当 半日10,000円、
1日20,000円
交通費 実費
正本と謄本の
交付手数料
1枚につき250円
原本の枚数が
4枚を超える場合
1枚につき250円

このようにケースによって手数料の計算は変わってきますが、「誰に、財産をいくら分配するか」が決まれば、公正証書遺言の作成に必要な費用をおおよそ計算できます。

公正証書遺言の作成に必要な書類

公正証書遺言の作成にあたって準備が必要な書類等について説明します。

公証人によって、要求される書類が異なることもあります。そのため実際に作成しながらその都度、公証人に必要な書類を確認するのが無駄がなくて済むでしょう。

必要な書類
必要書類 取得可能場所 手数料など
遺言者の本人確認書類 (印鑑登録証明書、運転免許証、マイナンバーカードなど) 印鑑登録証明書・・・住所管轄の自治体窓口 300円
戸籍謄本 (相続人との関係が記載されたもの) 本籍地のある自治体窓口 または郵送 450円※郵送の場合は返信封筒や切手代が必要
不動産の証明書類 (登記謄本、固定資産評価証明書など) 登記謄本・・・法務局の窓口もしくは登記・供託オンライン申請システムから取得 480~600円
固定資産評価証明・・・不動産を管轄する自治体または都税事務所 200~400円
遺贈を受ける人の住民票など お近くの自治体窓口 300円
証人となる人の本人確認書類 (氏名・住所・生年月日・職業が分かるメモ)
用意しておいたほうがよい書類等
書類等 取得可能場所 手数料
遺言者の実印

※金融資産の証明書類は不要ですが、公証役場に支払う手数料算出のため、作成日時点の資産の残高を自己申告します。

戸籍謄本や住民票、印鑑証明書などは、発行日から3ヶ月以内のものが必要となりますので、早めに準備しすぎると再発行しなければならなくなる点にご注意ください。

公正証書遺言を作成するときの注意点

公正証書遺言だから確実に有効な遺言を残せるというわけではありません。

公正証書遺言を作成する場合は以下の3点に注意する必要があります。

3つの注意点

  • 公正証書遺言より遺留分が優先される
  • 公正証書遺言が無効になることもある
  • 公証人は遺言の内容まではアドバイスしてくれない

それでは1つずつ詳しく見ていきましょう。

公正証書遺言より遺留分が優先される

公正証書遺言を作成するときは、各相続人の「遺留分」に注意してください。

遺留分とは、法定相続人が最低限取得できる遺産の割合であり、配偶者や子供は法定相続分の1/2、父母には1/3が民法によって保障されています。

公正証書遺言の内容は遺言者本人が決定するため、特定の相続人に財産を集中させる、または全財産を寄付するなど、偏った遺産配分も可能です。

しかし公正証書遺言よりも遺留分が優先されるため、遺留分の侵害があれば、侵害している相手に対し、侵害された側が返還請求することになります

また、遺留分の侵害額は現金返還が原則になっているため、遺留分侵害の対象財産が不動産であれば、評価額相当の現金を用意しなければなりません。

遺留分侵害のある公正証書遺言でも無効にはなりませんが、相続人同士の関係悪化に繋がる恐れがあるため、遺留分に配慮した遺言内容にする必要があります

なお、被相続人の兄弟姉妹には遺留分がないので注意してください。

公正証書遺言が無効になることもある

公正証書遺言を残せば100%確実に有効な遺言内容を残せるわけではありません。

公正証書遺言の作成は公証人の立会いのもとにされますので、形式の面でその効力が否定されることはあまり考えられません。

しかし過去には、遺言の効力が無効になったケースがあります。


公正証書遺言が無効となったケース

  • 遺言作成時点で遺言者の意思能力が欠如していた
  • 相続人の一部から脅迫や詐欺を受けた状態で遺言者が遺言書を作成した
  • 公序良俗に反するような遺言内容(愛人に全財産を相続させるなど)だった

このような遺言の場合、遺言の一部または全てが無効になることがあるので注意が必要です。

公証人は遺言の内容まではアドバイスしてくれない

公正証書遺言を作成する際に公証人に依頼できるのは、書面化する手続き面での代行だけです。

相続に関するごく一般的な内容については質問に答えてもらうことが可能ですが、具体的に「誰にどれだけの財産を残すのがより望ましいか」といった内容については相談することができません

こうした具体的な内容について相談をしたい場合には、別途行政書士や弁護士、場合によっては税理士などの専門家に依頼または相談しましょう。

遺産相続については、相続税対策を行うかどうかによって税金の負担額が大きく変わることがあるほか、遺産トラブルを避けるために作成した遺言書が、かえって相続人どうしの感情的な対立を引き起こしてしまう事も考えられます。

遺産相続トラブルに適切に備えるためには、できるだけ早いタイミングで各分野の専門家の助言を受けるのがよいでしょう。

公正証書遺言を紛失した場合は検索ができる

公正証書遺言を作成し、公証役場に原本が保管されてからは、仮に遺言書の正本や謄本を紛失してしまっても「検索」をすればすぐ見つけることができます。

1989年以降に作成した遺言書であれば、本人の氏名・生年月日等や作成日、保管場所といったデータベースが遺言検索システム(日本公証人連合会)に登録されています。

遺言検索システムを利用できる人
生前 死後
本人のみ 遺言執行者や相続人などの利害関係者
遺言検索システムを利用する時に必要な書類
必要書類 取得可能場所 手数料
死亡の事実を証明する書類 (死亡日の記載のある被相続人の戸籍謄本) 戸籍謄本・・・本籍地がある自治体窓口または郵送 450円 ※郵送の場合は返信封筒や切手代が必要
利害関係者であることを証明する書類 (相続人の証明は戸籍謄本。相続順位によって必要な戸籍謄本の範囲が異なる) 戸籍謄本・・・本籍地がある自治体窓口または郵送 450円 ※郵送の場合は返信封筒や切手代が必要
本人確認書類 (運転免許証など)

申請者が代理人である場合は、利害関係者から代理人への委任状の提出が求められます。

注意して頂きたいのは、この遺言検索システムで確認できるのはあくまで遺言書の存否と保管場所だけという点です。したがって公正証書遺言の内容を確認するには、保管されている公証役場に出向く必要があります。

公正証書遺言のメリット・デメリット

先述のとおり、日本国内で作成されている遺言の8割以上が公正証書遺言です。

このように公正証書遺言が好んで利用される具体的な理由としては、公正証書遺言が持つ次のようなメリットが挙げられるでしょう。

公正証書遺言のメリット

  • 遺言が発見されないリスクを避けられる
  • 遺言が無効となってしまうことを防げる
  • 遺言の偽造を防げる
  • 相続発生後、ただちに遺産分割手続きを開始できる
  • 自筆する必要がない

一方で、公正証書遺言書には次のようなデメリットもあります。

公正証書遺言のデメリット

  • 遺言の内容を他人に話す必要がある
  • 作成に時間がかかる
  • 作成に費用がかかる

それぞれの詳しい内容については以下の記事に詳しく書かれていますのでご覧ください。

まとめ

今回は、遺言を公正証書遺言の具体的な作成方法や手続きの流れについて説明しました。

日本の法律では、遺言には非常に強い効力が与えられているといえます。

原則として公序良俗違反など、法的に無効になる場合を除き、遺言の内容が優先されるためです。

その一方で、遺言は法律で求められる要件を満たしていないと、内容の一部または全部が無効となってしまうリスクがあるのでご注意ください。

公正証書遺言は遺言を確実に残したい場合にとても役に立つおすすめの方法です。 また、自分ではなく親に遺言作成を勧めたい場合は親にいますぐ公正証書遺言を書いて欲しい方に伝える30の注意点の記事を参考にしてみてください。

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