この記事でわかること
- 相続税の納税義務が生ずるのは誰なのか
- 相続税の納税義務者に関する令和3年度税制改正の内容
- 納税義務が生じても相続税を納付する必要がない場合がある
財産を所有していた人(被相続人)はすでに亡くなっているため、相続税は別の人が支払います。
この記事では、相続税の納税義務者の定義を確認していきます。
また、納税義務者となった人でも相続税を支払わなくていいケースがあるため、併せて解説します。
目次
相続税の納税義務者とは?
相続とは、被相続人が残した遺産を法定相続人が引き継ぐことをいいます。
一方、遺贈とは被相続人が作成した遺言書の内容に従って、遺産を譲り渡すことをいいます。
また、相続税の課税対象となる財産の範囲は、被相続人と相続人の住所が重要な要素となります。
一般的な相続である、被相続人も、遺産を取得する相続人も日本に住んでいるケースは、相続税の納税義務者に該当します。
ただし、必ずしも法律の規定に該当するとは限りません。
該当するか否かを知るには、相続税の納税義務者の定義を確認するのが大切です。
相続税の納税義務者になる人
規定の中で特にポイントとなるのが、「財産を取得した人である」と「住所を有する人である」という2点です。
相続税の納税義務者となるかどうか、判断する上で重要なこれら2つのポイントを詳しく解説します。
財産を取得した人である
つまり、財産を取得した人であっても、自分で財産を購入した人や贈与を受けた人は相続税の対象にはなりません。
ここからは、相続または遺贈とは何かを具体的に説明します。
相続
法定相続人になるのは被相続人の配偶者の他、民法の規定により相続権があるとされた親族です。
相続権があるのは、第一順位の相続人である子、第二順位の相続人である直系尊属、第三順位の相続人である兄弟姉妹です。
相続順位の高い順に、該当する相続人の有無を確認し、該当する人が相続人となります。
相続人が確定したら、相続人全員で話し合う遺産分割協議を行い、具体的な遺産の分け方を決めます。
遺産分割協議により遺産を実際に相続した人は、相続税の納税義務者となります。
遺贈
遺贈が成立するのは、遺言がある場合のみです。
遺言を残すために遺言書を作成するのが一般的であり、遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。
遺言書が有効に成立すれば、その遺言書に基づいて遺産を分けることとなります。
なお、遺言により遺産を引き継ぐ人のことを受贈者といいます。
受贈者になる人は、法定相続人や親族に限られず、誰でも対象となることができます。
遺贈により遺産を受け取った人は、相続税の納税義務者になります。
死亡により効力を生ずる贈与
その後、実際に亡くなると、契約書に書かれたとおりの贈与が行われます。
取引としては贈与契約となるので、遺言と同様にその相手は親族や法定相続人に限られません。
このような贈与契約を死因贈与といい、贈与ではなく相続に近い契約行為となります。そのため、受贈者(贈与を受ける人)が相続税の納税義務者となります。
住所を有する人である
被相続人も相続人も日本に住んでいる多くのケースでは、納税義務者が当然発生します。
問題が複雑になるのは、相続時に日本に住んでいない人が関係する場合です。
納税義務者と国籍および住所についてまとめた表を用いて、詳しく解説します。
被相続人\相続人 | 相続時に国内に住所がある | 相続時に国内に住所がない | |||
---|---|---|---|---|---|
日本国籍あり | 日本国籍なし | ||||
10年以内に国内に住所がある | 10年以内に国内に住所がない | ||||
相続時に国内に住所がある | [1] | [1] | [1] | [1] | |
相続時に国内に住所がない | 10年以内に国内に住所がある | [1] | [1] | [1] | [1] |
10年以内に国内に住所がない | [1] | [1] | [2] | [2] |
[1]の無制限納税義務者とは、遺産を取得した人のうち、日本と海外の双方にある財産に相続税の納税義務を有する人を指します。
たとえば、相続発生時に海外に住んでいても、10年以内に日本に住所があった人は相続税の納税義務があります。
海外にある財産に対しても相続税の納税義務を有するので、注意が必要です。
また、日本に住んでいるかどうかで判断され、日本国籍の有無だけで判断することはありません。
[2]の制限納税義務者は、遺産を取得した場合に、日本に保有する財産に対してのみ日本の相続税がかかる人です。
したがって、海外に所有する財産に対する相続税は、海外の相続税がかかることとなります。
【法改正による変更】相続税の納税義務者の定義
これにより、相続税法における納税義務者の定義が一部変更されています。
改正前は、日本滞在中に亡くなった外国人の滞在期間が10年以下であれば、日本国内の財産だけに日本の相続税が課税されていました。
一方、滞在期間が10年を超える場合は、日本国内と海外の双方の財産に相続税が課税されていました。
改正後は、入管法別表第一の在留資格により日本に居住している人が亡くなった場合、日本国内の財産だけに課税されることになりました。
これは、日本で働く外国人の海外の家族が財産を取得する場合に、海外の家族が管理する財産まで課税されないようにするためです。
特定納税義務者に該当し納税義務が発生するケース
特定納税義務者となった人は、相続や遺贈により遺産を取得しなくても、相続時精算課税制度を適用して生前贈与を受けている部分に対して相続税の納税義務が発生します。
納税義務者でも相続税を納めなくてよいケース
相続税の納税義務者であっても、実際には相続税がかからないケースがあるため、以下で解説します。
相続財産に含まれる負債の方が多いケース
このようなマイナスの財産は、相続人が引き継いでその返済をしなければなりません。もし相続して返済したくないのであれば、相続放棄する必要があります。
相続税の計算においては、プラスの財産からマイナスの財産を差し引いて、課税価格の合計額(正味の遺産額)を求めます。この時、プラスの財産よりマイナスの財産の方が大きな場合は、相続税の計算上は、相続財産がないのと同じ結果になります。
そのため、マイナスの財産の方が多ければ、相続または遺贈により遺産を取得した人であっても、相続税はかかりません。
相続財産が相続税の基礎控除を下回るケース
相続税の納税義務者ごとの税額を計算する前に、いったん納税義務者が法定相続分どおりに財産を取得したと仮定して、相続税の総額を計算する点です。
相続税の総額を計算するにあたって、相続財産の相続税評価額を計算し、合計額を求めます。
次に、プラスの財産からマイナスの財産を差し引いた正味の遺産額から基礎控除額を控除して、課税遺産総額を計算します。いったん課税遺産総額を法定相続分どおりに取得したと仮定して、相続税の税率を乗じて、相続税の総額を算出します。
正味の遺産額よりも基礎控除額が大きい場合は、たとえ相続や遺贈により遺産を取得しても、相続税はかからず、相続税の申告書を提出する必要もありません。
小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減の適用を受けるケース
相続財産の評価額を減らす特例の代表例が、小規模宅地等の特例です。小規模宅地等の特例の適用を受けると、被相続人の自宅を相続した場合に敷地の評価額を最大で8割減額できます。
居住用だけでなく、事業用や賃貸用の土地を相続する場合も評価額を減額できます。小規模宅地等の特例を適用し、減額された後の金額が基礎控除額より低い金額になれば、相続税はかかりません。
また、相続税の配偶者控除(配偶者の税額軽減)の適用を受けることで、配偶者の取得した財産のうち、1億6,000万円または配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額までは相続税はかかりません。
税額控除の適用を受けるケース
さらに、相続人が未成年者である場合、相続人が障害者である場合、過去10年以内に被相続人が相続税を支払っていた場合には、税額控除ができます。
未成年者控除
障害者控除
また、特別障害者に該当する場合は、85歳になるまでの年数×20万円の控除ができます。
このような場合には、引ききれなかった金額を未成年者や障害者の扶養義務者に対して発生している相続税額から控除できます。
相次相続控除
最初の相続で相続税を支払っており、2回目の相続でも相続税が発生した場合、最初に発生した相続税額の一部が控除されます。
相続税の納税義務者の定義やしくみを確認しよう
まったくの他人であっても、遺言や死因贈与によって遺産を受け取った人は相続税の納税義務者となります。
ただし、納税義務者になったからといって、必ず納付すべき税額が発生するとは限りません。相続税の基礎控除や特例など、税負担を軽減するための制度が多く設けられているので、その内容について確認しておくといいでしょう。
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