この記事でわかること
- 相続税の脱税として指摘される8つの手口がわかる
- 相続税の脱税が税務署にバレる理由が理解できる
- 相続税の脱税がバレたときのペナルティがわかる
- 相続税の脱税の時効は5年もしくは7年であることがわかる
相続税について申告漏れや脱税行為などが疑われると、税務署の調査が行われることになります。
国税庁によれば、2017年に亡くなった約134万人のうち、相続税の申告・納税対象となった遺族の方は約11万人で、その割合は8.3%です。
一方、同じ年に国税庁が実施した、相続税の過少申告や無申告と疑われた相続に対する実地調査の件数は約1万3千件、文書や電話、面接による簡易な調査は約1万1千件となっています。
単純に計算すると、被相続人全体の約2%に対して相続税に関する調査が行われていることになります。
この割合から考えると該当する方は決して多くはありません。
しかし、相続税対策をしたい方や遺産相続をした方なら、脱税が疑われるケースやなぜバレるのかなどについては関心が高いことでしょう。
以下では、相続税の脱税手口や相続税の脱税が税務署にバレる理由、相続税の脱税がバレたときのペナルティ、相続税の脱税にも時効があることについて、詳しく紹介します。
目次
相続税の脱税手口8つ
相続税の脱税手口も、意図的で悪質なものと、制度そのものがよく分からないし、申告しなくても誰にも分からないだろうと申告せずにいた結果脱税になったしまったものや勘違いなど、身近に存在するものに分けることができます。
意図的で悪質な手口
まず、意図して計画的に高額な脱税を試みた結果、悪質な大事件として扱われることになった手口について確認しましょう。
(1) 相続財産を無記名の債権に変える
現金を商品券や乗車券、劇場の入場券、割引債など、所持者の住所や氏名の記載がない無記名債権に変えておく方法があります。
権利者の氏名が表示されていないため、権利を行使できるのは実際に所持していた方ということになります。
以前は、商工中金やみずほ銀行などから無記名で発行される割引債が発行されていて、、額面から利子分を差し引いた額で購入することが可能でした。
金融機関に購入者の氏名などを伝える必要がない仕組みを悪用し、相続税の申告の際に遺産から外して課税を逃れようとした手口です。
(2) 海外の金融機関に隠ぺい
マネーロンダリング問題でクローズアップされましたが、親族が被相続人の遺産を海外の金融機関に送金し隠蔽する手口です。
架空名義や他人名義の金融機関口座などを利用し、あちこちに送金を繰り返して資金の出所を分からなくしようとする悪質な手口です。
新聞報道などで、シンガポールやスイスなどにある銀行口座が利用されていたことを記憶されている方も多いのではないでしょうか。
(3) 預金の現金化
これも親族による犯行で、被相続人の預金口座を数年間かけて解約して現金化し、相続税の申告ではこの現金を遺産から外すことを企んだ脱税の手口です。
また、この例のように計画的な手口ではないものの、被相続人が病気などで亡くなる直前に、親族が被相続人の預金口座から現金を引き出す手口もあります。
これは身近な例としても見られるものですが、現金化した財産を相続財産から外す行為が脱税に該当することになるのです。
(4) 寄付を偽装
一定の要件を満たす寄付であれば相続税の課税対象にならないことを悪用して、資産隠しによる脱税を試みた手口です。
寄付と見せかけて、実際は複数人が共謀して資産隠しを企んだもので、寄付行為を正当化するために遺言書の偽造まで実行した悪質な犯罪です。
遺言書の偽造は、私文書偽造の罪にも該当します。
脱税とみなされる身近な手口
新聞やニュースなどで取り上げられるような悪質で計画的な手口ではないものの、身近に存在する脱税とみなされる手口を押えておきましょう。
(1) 相続税額の過少申告
現金や預貯金であれば、相続財産の金額を間違うことはないでしょう。
しかし、特に土地については評価を行う必要があり、場合によってはかなり複雑な計算が必要なケースもあります。
相続税の申告において、専門家に依頼せず自分で評価額を計算したような場合は、相続財産の価値を過少に見積もってしまった結果、過少申告が指摘されることもあります。
このようなケースは脱税と呼ばないにしても、意図的に過少申告をしたのであれば脱税とみなされることになります。
(2) 名義預金
子や孫名義で預金をして、相続財産を過少にみせかける手口です。
以前は、本人確認書類がなくても口座を開設することが可能だった時期があり、子や孫のために積み立てるケースも少なくありませんでした。
しかし、これが高じて相続財産隠しの手口として利用されるケースも多く、税務調査で指摘される代表格ともなっています。
脱税に当たることを知らなかったとしても、結果的には脱税とみなされることになります。
なお、子や孫名義の保険契約についても、名義預金と同様、相続財産に該当します。
このため、このような保険契約があるにもかかわらず、相続財産から外してしまう場合は脱税とみなされることになります。
(3) 相続した現金の無申告
いわゆるタンス預金など相続した現金も、相続財産として課税の対象となります。
相続税の申告が必要となる金額であるにもかかわらず、申告を怠った場合や相続財産から外して申告した場合は、脱税行為に該当します。
たとえ現金だけ相続して証拠が残らないと思う場合でも、申告が必要な場合に無申告ならば脱税調査の対象になる可能性が低くはありません。
(4) 死亡直前の預金引き出し
被相続人の生前に、親族が被相続人の預金口座から現金を引き出し、相続財産から外す手口も脱税になることを紹介ました。
ただし、、亡くなった方の病院代支払いや葬儀費用に充当することもよくあることで、相続税の申告を適正に行えば脱税になることはありません。
しかし、生前の預金の払い戻しや解約などによって得られた現金が、相続税の課税対象ではなくなると勘違いしている方もいるようです。
相続の発生時点で存在している遺産も、課税対象になることに変わりはありません。
もし遺産隠しを企んで行ったということになれば、脱税行為とみなされるでしょう。
相続税の脱税が税務署にバレる理由
税務署が個々の財産を把握していなければ、脱税の疑いをかけられることもないはずです。
誰にも知られるはずのない、タンス預金や子・孫名義の預金、亡くなる直前の預金引き出しなどの財産について、税務署はどのように把握するのでしょうか。
国税総合管理システム(KSK)
国税庁と国税局、税務署では、個々の納税者についての申告や納税などの個人情報をネットワークで一元管理しています。
申告書類には、事業所得や給与所得、譲渡所得、雑所得などの所得の他、社会保険料や各種の控除など納税に関する情報が満載です。
さらに、マイナンバーに紐づけされ、金融機関や企業などとの取引、不動産取引、保険金の受取履歴なども記録される仕組みができ上がっています。
つまり税務署は、納税者ごとの所得や控除に関する情報の他、大きな資金の移動などが把握できるシステムを管理・運用しているのです。
調査能力の高さと強力な調査権限
税務署は、KSKの情報や死亡届、不動産の名義変更登記申請などに基づき、相続税の申告が必要と見込まれる人を抽出し、相続税について尋ねる文書を送付します。
お尋ねが届いたからといって、必ずしも脱税を疑われていることにつながるわけではなく、単なる確認の場合もあります。
このような場合は、財産の状況などを正確に記載して送り返せば事足ります。
しかしながら、説明が事実と異なる場合や疑わしい場合は、調査が進められていくことになります。
税務調査の手順
税務署の調査は、まず面接によって被相続人についての経歴や交友関係、趣味、貯蓄の方法などが調べ上げられます。
また、相続人についても、職業や経歴、現在の収入などが調べられることになります。
面接調査では、タンス預金や名義預金など隠し財産の存在も、さりげないやり取り中でバレてしまうケースも多いと言われています。
面接調査で生じた疑問や疑惑については、自宅や金融機関などへの実地調査も含めて事実を確かめることになります。
実地調査では、最低でも過去10年分にさかのぼって預貯金などが調べられるため、多額の引き出しがあれば使途が追及されます。
合理的な出費がなければ、タンス預金などの財産隠しが疑われることになるでしょう。
調査官は強力な権限を持って調べることができ、金融機関といえども正式な情報開示を拒むことはできません。
さらに調査が必要な場合、反面調査が行われます。
調査官は、被相続人が生前に取引していた銀行、交流があった個人などを訪問して、故人の財産について事実を確認することになります。
相続税の脱税がバレたときのペナルティ
ご存知のように、脱税は犯罪です。
相続税を脱税していることが明らかになれば、追徴課税のペナルティはもちろんのこと、最悪の場合は刑事罰が課されることもあります。
相続税の税務調査で申告漏れの指摘を受けた場合でも、すぐにペナルティの内容が決まるのではなく、状況や事情などを踏まえて税務署が判断することになります。
以下では、相続税の脱税や申告漏れによる追徴課税のペナルティについて確認しましょう。
延滞税
相続税の納付期限は、相続開始から10ヵ月以内です。
期限を過ぎた場合は、延滞税のペナルティが発生します。
実際に納めることになる税金は、不足する相続税に加え遅れた期間に応じて延滞税が加算されることになります。
期限の翌日から2か月までは、年7.3%または前年11月30日の公定歩合に4%を加えた額のうち、いずれか低い方の額が課されます。
また、期限から2か月を超える場合は、年14.6%の延滞税を支払わなければなりません。
過少申告加算税
期限内に相続税の申告をしてあるものの、その額が過少である場合のペナルティです。
相続税の申告額が不足していた場合は、過少申告加算税が課されます。
申告した額が過少であることに気付いた時点で修正申告を行えば、ペナルティを回避できる可能性があります。
過少申告を指摘されて修正申告を行う場合は、新たに納める税額の10%が課されます。
ただし、新たに納める税額が、期限内に納めた税額または50万円のうち、いずれか多い額を超える場合は、超えた額に対して15%を追加で納めなければなりません。
無申告加算税
正当な理由がなく、申告期限にまで申告しなかった場合のペナルティです。
相続税の申告期限までに申告しなかったことに対しては、無申告加算税が課されます。
なお、期限後に自主的に申告する場合は、期限後申告として5%の課税で済みます。
税務調査で指摘されて課される無申告加算税は、原則として納付すべき税額のうち、50万円までは15%、50万円を超える金額部分については20%が加算されます。
重加算税
相続財産を意図的に隠ぺいする、あるいは事実を仮装するなど悪質な脱税の場合のペナルティです。
隠ぺいや仮装による脱税に対しては、重加算税が課されます。
税務調査で指摘されて課される重加算税の税率は、申告していた場合と申告していなかった場合で異なります。
申告書を提出している場合は35%ですが、申告書を提出していない場合は40%が課されることになります。
脱税とみなされると重加算税と刑事罰の可能性
脱税とみなされると、経済的なペナルティだけではなく、刑事罰が課されることもありえます。
経済的には、本来の税額の最大40%がペナルティとして上乗せされます。
一方、刑事罰では、親の相続財産を隠ぺいした子に対して、相続税法違反に対する懲役刑が課された事例もあります。
脱税かどうか不明確な場合は裁判
ペナルティとは異なりますが、裁判での争いになることもあります。
名義預金のような場合は、すべてが相続財産に当たるかどうか不明確なケースが多く明確な判断基準もありません。
このため、裁判での争いになるケースも多く存在します。
相続税の脱税の時効
相続税の脱税にも時効があり、5年もしくは7年とされています。
ただし、税務署の高い調査能力や強大な調査権限があるため脱税が見逃されることはありません。
脱税は必ずバレるので、決してしてはいけません。
原則として5年
基本的に、相続開始から10か月以内が相続税の申告期限です。
この期間内に無申告の相続財産がある場合や申告に計算間違いがあった場合などは、税務署による課税処分を受ける可能性があることになります。
しかしながら、課税処分にも期限があり、申告期限から一定年数が経過すると時効となり、税務署は課税できなくなります。
この期間は排斥期間と呼ばれ、原則として相続税の申告期限の翌日から5年とされています。
偽りや不正行為があれば7年
ただし、偽りや不正行為によって税額を免れた場合や還付を受けた場合は、除斥期間が7年に延びます。
税務調査に対する回答に虚偽がある場合や相続財産を隠ぺいした場合など、脱税行為があるケースに適用されます。
つまり、相続税の脱税に対する時効は、悪意をもって行われた場合には7年まで延長されることになるのです。
まとめ
相続税の節税も、度を越してしまって脱税とみなされてしまうようなら、節税の意味がありません。
せっかく蓄えた貴重な財産ですから、ペナルティなどで損失を被ることなく有効に利用できることが望まれます。
相続税対策をしたい方や遺産相続をした方も、あらかじめ節税と脱税の違いを把握していれば、安心して対策を考えることができることでしょう。
節税対策について自分だけでは不安な場合、相続税に詳しい税理士などの専門家に相談することがおすすめです。
相続専門税理士の無料相談をご利用ください
ご家族の相続は突然起こり、何から手をつけていいか分からない方がほとんどです。相続税についてはとくに複雑で、どう進めればいいのか? 税務署に目をつけられてしまうのか? 疑問や不安が山ほど出てくると思います。
我々ベンチャーサポート相続税理士法人は、相続人の皆さまのお悩みについて平日夜21時まで、土日祝も休まず無料相談を受け付けております。
具体的なご相談は無料面談にて対応します。弊社にてお手伝いできることがある場合は、その場でお見積り書をお渡ししますので、持ち帰ってじっくりとご検討ください。
対応エリアは全国で、オフィスは東京、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、神戸の主要駅前に構えております。ぜひお気軽にお問い合わせください。