この記事でわかること
- 宅地開発で注意が必要なセットバックとはどのようなものかわかる
- セットバックが必要な土地は減額できる可能性があることがわかる
- セットバックを適用して評価する場合の注意点を知ることができる
相続した土地の中に、今後の開発を行うためにはセットバックが必要となるものが含まれることがあります。
セットバックが必要になると、今の土地をそのまま利用することはできません。
そのため、相続税評価額を計算する際には、セットバックすることを見越してその評価額を求めることができます。
ここでは、セットバックが適用されるのはどのような土地かを確認するとともに、その評価額の計算方法を解説します。
目次
セットバックとは
現在の建築基準法では、建物を建築した敷地は幅4m以上の道路に面していなければならないとされています。
なぜなら4m以上の幅がないと、消防車が通れずに、火災時に救助活動ができないからです。
ただ、古くからの建物が建つ敷地については、現在でも道路の幅が4m以下となっている土地が多くあります。
すでに建物がある土地の場合は、今すぐに立て直して道路の幅を4m以上にする必要はありません。
これらの土地については、取り壊して新たな建物を建てる際にその敷地の一部を道路用地にしなければなりません。
そのため、道路の中心線から2mのところに道路との境界線を引き、その内側を新たな建物の敷地とするのです。
このように、道路との境界線を後退させる手続きをセットバックといいます。
セットバックは道路の幅が4m未満の場合に、道路の幅を確保するための建て替え作業になります。
セットバックが必要な土地は相続税評価減が期待できる
セットバックが必要な土地とは、敷地が面する道路の幅がきわめて狭い土地です。
このような土地の場合、建物を建て替える時にセットバックしなければならなくなることが考えられます。
もしセットバックを行うこととなれば、その分建物の敷地として利用できる土地の面積は少なくなります。
敷地面積が少なくなるということは、それだけ土地の上に建てられる建物の大きさも小さくなるということです。
たとえば賃貸物件の場合、床面積の大きな建物ほど多くの家賃収入を得られることもあり、敷地面積の広い土地の方が高くなります。
セットバックを行う必要があるのに実際にはセットバックをしていない土地は、セットバックするものとして評価額を計算します。
セットバックすると、敷地の一部が道路として利用されることとなるため、その分評価額を減額することができるのです。
また、実際にセットバックをした後でも、その土地を道路として利用している場合と道路として利用されていない場合があります。
この2つのケースでは評価方法が異なることとなるため、実際に土地の利用状況を確認する必要があります。
相続する土地をセットバックしているか確認する3つの方法
「相続する土地がセットバックされたものか確認したい」という人もいるでしょう。
そもそも土地がセットバックされているかどうか分からないと、土地の評価額も明確にできません。
下記ではセットバックされているどうか確認する方法を紹介します。
役所で確認する
一番確実なのは、役所で確認する方法です。
土地がある地域の役所に行って、建築課や建築指導課で問い合わせみましょう。
具体的には、土地に隣接している道路が2項道路なのかを聞く形になります。
そうすることでそもそもセットバックが必要なのか、セットバックをしているのかなど確実に分かります。
役所まで行く手間はかかりますが、間違いない情報が分かる確実な方法です。
周辺の物件がセットバック済か見る
相続する予定の土地だけではなく、その周辺の土地・物件をチェックするのも確認になります。
例えば隣の土地・道路向かいの土地などを見て、セットバックした形跡がないかチェックしましょう。
もしセットバックした形跡があれば、自分が相続する予定の土地もセットバックされているかもしれません。
ただしこの方法では、だいたいの確認ができるだけで確実な情報が分からないので、できれば役所での確認がおすすめです。
道路の幅を実際に測ってみる
相続する予定の土地へ行って、目の前の道路を実際に測るという確認方法もあります。
道路の幅が4m未満だった場合は、セットバックの可能性が出てきます。
ただし道路によっては4m未満であってもセットバッグの必要がなかったりするため、確実な情報を知りたいなら役所に行って確認しましょう。
【具体例付】セットバック適用時の土地評価額計算方法
実際にセットバックを必要とする土地について、セットバックを行う前に相続が発生した場合の評価額を計算してみましょう。
また、セットバックを終えた後には、どのような評価額になるのかもあわせて確認しておきます。
セットバックを必要とする土地の評価方法
ここでは、以下のような土地について、その評価額の計算方法を求めてみます。
- ・土地の面積300㎡(間口距離20m、奥行距離15m)
- ・普通住宅地区に所在
- ・正面路線価100千円
- ・整形地である
- ・正面道路の中心線から敷地の境界線までの距離が1.5mしかなく、セットバックが必要
まずは、セットバックを必要とする、しないに関係なく、土地の評価額を計算します。
この場合、100千円×300㎡=3,000万円となります。
次に、セットバックが必要となる部分の評価減となる金額を計算します。
今回のケースでは、道路の中心線から2mの距離に新たな境界線を設けることとなるため、0.5m敷地が下がります。
そのため、間口距離20m×0.5m=10㎡の敷地が削られることが想定されます。
ただ、10㎡の敷地が削られるからといって、単純にその面積を減らして評価額を計算すればいいというわけではありません。
セットバックすべき部分については、通常の方法で計算した評価額から70%相当額を控除して評価することとされているのです。
この場合、100千円×10㎡×70%=70万円を控除することとなります。
したがって、セットバックが必要となるこの土地の評価額は、3,000万円-70万円=2,930万円となるのです。
セットバックを終えた後の評価額
セットバックを終えて、誰もが利用できる道路として利用されている場合、その土地は誰のものともいえない状態となっています。
そこで、不特定多数の人の通行の用に供されている土地については公衆用道路として非課税となることが定められています。
先ほどのケースでも、セットバックを終えた土地が道路として利用されると、その評価額が変わります。
セットバックした部分の土地については、評価減ではなくゼロ評価となるためです。
この場合、10㎡分の土地は相続税評価の対象から外れるため、土地の評価額は100千円×290㎡=2,900万円になるのです。
ただ、セットバックを終えても、その土地が不特定多数の人が利用する道路として利用されているとはいえない場合もあります。
たとえば、セットバックした後の土地に自転車や植木鉢を置いている場合、あるいは自動販売機が設置されている場合などです。
建物の敷地とはなっていなくても、実際に不特定多数の人が道路として利用していなければセットバック済とはいえないのです。
このような場合には、セットバックが未了であるとして、私道としての評価を行う必要があります。
私道の評価方法は、通常の評価額の30%相当額であり、セットバックを必要とする土地の評価額と同じになります。
今回の土地でも、セットバック後も何らかの形で私的に利用している場合、土地全体の評価額は2,930万円となります。
相続税でセットバックを適用するときの注意点
セットバックが必要な土地や、セットバックを行った後の土地については、その評価額が減額となることがわかりました。
ただ、実際に相続税が発生した際に、セットバックを適用するのは簡単なことではありません。
そこで、セットバックを適用するためにどのような点に注意しなければならないのか、確認していきます。
本当にセットバックをしなければならないのか
最初にも紹介したとおり、セットバックとは、敷地が面する道路の幅が狭い場合に行われるものです。
ただ、すべての道路がそのようなセットバックを必要とするとは限りません。
一見すると狭く見える道路でも、実際には幅員が4mあれば、セットバックをする必要はありません。
また、狭い道路に面している場合でも、その道路の中心線から2mの距離まですでにセットバックしている可能性もあります。
このような場合には、敷地がどれだけ狭い道路に面していても、セットバックは必要ないのです。
セットバックを必要とする道路のことを「2項道路」といいます。
これは、古くからの建物がある敷地についての規定が、建築基準法42条2項にあるためです。
2項道路に面している土地は、セットバックを必要とする土地の評価方法を適用することができるのです。
一方、2項道路に面していない場合には、セットバックをしなければならない土地ではないと判断されます。
前面道路が2項道路に該当するか否かは、その土地の所在する役所に確認しなければなりません。
セットバックが完了しているかどうか
前面道路が2項道路であっても、すでにセットバックが完了していることもあります。
このような場合には、セットバックした後の土地について、公衆用道路となるか私道となるかの判断をします。
また、道路になっていない敷地の部分については、評価減の対象となる金額は発生しないこととなります。
セットバックが完了しているかがはっきりしない場合には、やはり役所で確認する必要があります。
役所で道路の中心線の位置や、そこから2mの境界線の位置について確認するようにしましょう。
セットバックが完了していない場合
前述したように、建物を新しく建築した際にそれまでの境界線から後退した新しい境界線を設けている場合があります。
このような場合には、セットバックの計算を行うことができる可能性があります。
ただし敷地が削られた後も、その部分が道路としてではなく私的に使われていることがあります。
これは、セットバックを行ったものの、隣地がまだセットバックが完了していない場合に起こりやすいものです。
道路の幅が一部分だけ広くなっているものの、また狭くなってしまう場合、実質的には道路として利用されていないことがあります。
ただ、そこに植木鉢を置いたり、駐車場や駐輪場として利用したりしているのであれば、それはもはや公衆用の道路とはいえない状態となっています。
仮にセットバックを終えて敷地が削られた場合には、その削られた部分の土地を私的に利用しないようにしましょう。
そうすることで、少しでも相続財産の評価額を減額し、相続税の負担を減らすことができるのです。
まとめ
セットバックが必要となる土地は、まだ日本には数多く残されています。
その多くは、住宅地など身近なところに存在しており、決して珍しいものではありません。
セットバックが必要な土地に該当すると、確実にその評価額を減らすことができるため、節税効果があります。
まずは役所でセットバックを必要とするかどうかを確認し、その実際の利用状況についても調査するようにしましょう。
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