この記事でわかること
- 一次相続と二次相続の違いがわかる
- 二次相続で一人っ子の相続税が高くなる2つの理由がわかる
- 二次相続で一人っ子の税負担を軽くする7つの方法がわかる
- 一人っ子が遺産相続でするべき手続きや作業がわかる
自分が相続人になるケースは多くのが生涯に1回、または2回であり、いずれも両親の財産を相続する場合です。
夫婦の年齢は比較的近いことが多いため、父親が亡くなった数年後には母親の相続も発生し、短期間で2度の相続税を支払うケースもあります。
一方、一人っ子が親の財産を相続する場合、兄弟姉妹の取り分を考える必要がないため、遺言書も作成しやすく相続後のトラブルも起きにくいでしょう。
ただし、一人っ子の相続は課税財産が高額になる場合が多く、税負担の面ではかなり不利になってしまいます。
今回は一人っ子の二次相続がなぜ不利になってしまうのか、節税対策にはどのような方法があるのかを解説します。
目次
一次相続と二次相続の違い
夫婦(両親)のどちらかが亡くなった時の相続を一次相続といい、次に残された配偶者が亡くなる場合を二次相続といいます。
一次相続では被相続人の配偶者と子どもが相続人となり、二次相続では子どもだけが相続人となります。
ここで注目したいのが相続人の数であり、一次相続の場合は3人ですが、二次相続では2人に減っています。
相続人の数が減ると1人あたりの取り分は増えるため、一見すると得に思えますが、相続税の基礎控除も減ってしまうため、逆に相続税は高くなってしまいます。
また一人っ子の場合は税負担の面で不利になる理由は他にもあるため、一人っ子と二次相続の関係をもう少し掘り下げてみましょう。
二次相続で一人っ子の相続税が高くなる2つの理由
一次相続と二次相続では相続人の数も違いますが、被相続人の配偶者がいるかどうかも相続税に大きく影響します。
特に一人っ子の二次相続は不利な条件が重なるため、何らかの対策をしなければ高額な相続税を支払う羽目になってしまうでしょう。
では一人っ子の家庭を例に、相続税が高くなる理由をわかりやすく解説します。
二次相続では配偶者の税額軽減が使えない
配偶者の税額軽減とは、1億6,000万円または法定相続分のどちらか多い方まで相続税がかからない制度です。
つまり相続財産が1億6,000万円以下であり、配偶者がすべて相続した場合は相続税が発生しません。
また、1億6,000万円を超える財産を相続しても、法定相続分の範囲内であれば、配偶者に相続税はかからないことになります。
仮に被相続人の財産2億円を妻と一人っ子が相続する場合、法定相続分どおりに分割すると全体の相続税は3,340万円になります。
しかし配偶者の税額軽減を使うと妻には相続税がかからないため、相続税の総額は半分の1,670万円まで減額できます。
ただし、あくまでも配偶者専用の優遇税制であり、両親ともに亡くなっている二次相続には使えません。
一人っ子の二次相続は基礎控除額が低い
相続税には基礎控除があり、以下のように計算します。
- ・相続税の基礎控除:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
相続税は基礎控除額を上回る財産に課税されるため、相続人が多いほど課税額は低くなります。
相続人が配偶者と一人っ子の場合、一次相続では4,200万円の基礎控除になりますが、二次相続では法定相続人が1人になるため、基礎控除は3,600万円に下がります。
また、配偶者の税額軽減を限度いっぱいまで使っていた場合、もともと配偶者名義だった財産も加算されるため、一次相続よりも財産が増えているケースがあります。
一人っ子の二次相続では基礎控除の最低額しか適用できず、さらに一次相続以上の財産を相続することもあるため、税負担はどうしても重くなってしまうでしょう。
二次相続で一人っ子の税負担を軽減する7つの方法
高額な相続税を支払うことになるため、一人っ子の二次相続には何らかの対策が必要です。
生前から実行すれば節税効果も大きくなるので、家族間で共通認識を持ちながら相続税対策を進めていきましょう。
意外と知られていない「相次相続控除」も含め、一人っ子の二次相続対策には次のような方法があります。
一次相続で配偶者の相続分を調整する
配偶者の所有財産が増えると二次相続の課税額も上がってしまうため、一次相続で配偶者の取り分が多くなり過ぎないように調整するとよいでしょう。
では相続財産1億円を妻と一人っ子が相続する場合、トータルの相続税がいくらになるか計算してみます。
【一次相続の相続税】
- ・妻が全額相続する場合:妻の相続税0円、一人っ子0円
- ・法定相続分に従う場合:妻の相続税0円、一人っ子385万円
【二次相続の相続税】
- ・妻が全額相続していた場合:一人っ子の相続税1,220万円
- ・妻が法定相続分で相続していた場合:一人っ子の相続税160万円
妻が全額相続した場合はトータル1,220万円の相続税になりますが、法定相続分(妻・子どもそれぞれ1/2ずつ)で分けると545万円まで相続税が下がります。
一次相続で収益物件を一人っ子に相続させる
一次相続の財産に賃貸アパートなどの収益物件がある場合、配偶者が相続すると賃料収入が入り続けるため、二次相続の財産が膨らんでしまうケースがあります。
収益物件は一次相続で子どもへ承継させた方が得策になる場合もあるでしょう。
生前贈与を活用する
相続財産を減らせば相続税の負担も軽くなりますが、消費や投資ではなく生前贈与を活用してみてください。
1年間(1月1日~12月31日)の贈与額は110万円まで非課税になるため、毎年繰り返せば10年で1100万円の財産を非課税贈与できます。
贈与税は受贈者(財産をもらった人)の負担ですから、配偶者と子共へ110万円ずつ贈与していけば、2,000万円以上の財産を移転しても贈与税はかかりません。
ただし、贈与と認められなければ相続財産にカウントされてしまうため、贈与契約書を作成して受贈者の同意も得ておきましょう。
また、毎年同じ日に同じ金額を贈与し続けると、税逃れのための「定期贈与」にみなされる場合もあるため、タイミングと金額は変えるようにしてください。
小規模宅地等の特例が使える状況にする
自宅を相続する場合、一定条件を満たせば小規模宅地等の特例が使えます。
小規模宅地等の特例では、自宅の敷地面積330㎡までが8割減額の評価額になるため、地価の高い土地ほど節税効果も高くなります。
被相続人名義の自宅は配偶者が相続するケースが多く、子どもが相続するタイミングは二次相続になりますが、それまでに以下の条件を調整しておくとよいでしょう。
- ・被相続人と同居していた子どもが自宅を相続する
- ・被相続人に配偶者や同居人がいない場合、相続前の3年間借家住まいの相続人が相続する
二次相続が発生した際、子どもが親と同居していれば問題なく特例を使えます。
また、相続開始前に3年以上借家や社宅などに住んでおり、持ち家のない子どもが相続する場合も特例の対象になります。
生命保険に加入しておく
現金や預貯金は額面どおりの相続財産となりますが、死亡保険金の場合は非課税枠が使えます。
- ・死亡保険金の非課税枠:500万円×法定相続人の数
一人っ子でも500万円の節税になるため、現金や預貯金相続に比べてかなりお得になります。
一次相続で配偶者がまとまった現金を取得した場合、保険料一括払いの「一時払終身保険」に加入し、保険料も配偶者が負担しておくとよいでしょう。
ただし、マイナス金利政策の長期化により、一時払終身保険を取り扱う保険会社は少なくなっているので要注意です。
保険契約の形態によっては相続税対策にならないケースもあるので、保険の相談窓口や税理士へ相談しながら加入を検討してください。
相続税の納税資金を準備しておく
一人っ子の二次相続対策には限界があるため、十分な節税対策を講じても高額な相続税がかかってしまう場合もあります。
このようなケースに備えて財産を現金化し、納税資金として扱いやすいようにしておくことも重要です。
特に不動産は現金化までに時間がかかってしまい、最悪の場合は相続税の申告・納付期限に間に合わないケースも出てきます。
また、一人っ子の二次相続ではあらゆる相続手続きを1人で進めるため、事前に財産を現金化してあれば事務負担も大幅に軽減されるでしょう。
相次相続控除を利用する
両親が相次いで死亡することを「相次相続」といい、一人っ子の場合は税負担もかなり重くなります。
しかし一次相続から二次相続までの期間が10年以内であれば、二次相続の税金が安くなる相次相続控除が使える場合があります。
ケース的には遺産が多く、配偶者が法定相続分を超えて相続した場合です。
相次相続控除では、一次相続で収めた相続税の一部を二次相続の相続税から控除できますが、利用するためには以下の条件を満たす必要があります。
- ・控除を適用する人が二次相続の相続人であること
- ・前回の相続から今回の相続までの期間が10年以内であること
- ・前回の相続の際に被相続人の財産を取得し、相続税が課税されていること
控除額の計算方法は国税庁ホームページに掲載されていますが、内容が少々複雑なため、10年以内に相次相続が起きた場合は相続専門の税理士に相談してみましょう。
一人っ子が遺産を相続するときにすべきこと
相続発生後は様々な相続手続きにも対応しなければなりません。
被相続人名義の口座解約や不動産の相続登記、相続税の申告・納付もありますが、一人っ子の二次相続はすべて自分で対応するため、ある程度の予備知識も必要です。
兄弟姉妹の協力を得られないため時間は有効に使い、期限までに申告できるよう効率よく準備していきましょう。
遺言書の調査
被相続人が遺言書を残していれば、原則として遺言内容に従うため、相続発生後はまず遺言書の有無を調査しましょう。
一人っ子の二次相続では「自分だけが相続人」と思い込みがちですが、第三者に財産を遺贈(遺言で財産をあげること)する内容が書かれているかもしれません。
遺言書の種類が公正証書遺言であれば公証役場のシステムで検索できますが、公正証書遺言以外の場合は自宅や貸金庫を調査します。
付き合いのある弁護士や司法書士に預けている場合もあるので、見落としがないよう入念に調査してください。
なお、自筆証書遺言や秘密証書遺言は家庭裁判所の検認が必要となり、検認までに開封すると罰金が課せられる場合もあります。
ただし、法務局での保管制度を利用した自筆証書遺言であれば、家庭裁判所の検認は不要となります。
相続人の調査
預貯金口座の解約や不動産の相続登記をする際、誰が相続人であるかを証明する必要があります。
一人っ子の自分しか相続人はいないと主張しても通用しないので、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本をすべて取り寄せることになります。
場合によっては除籍謄本や改正原戸籍が必要になり、転籍があれば数ヶ所の役所へ戸籍を請求するため、ある程度の日数がかかると思っておきましょう。
戸籍調査によって内縁の妻との間に生まれた子が発覚するケースもありますが、認知されていれば第1順位の相続人となります。
被相続人と養子縁組した人も第1順位の相続人になるため、自分以外の相続人が発覚した場合は全員に連絡を取り、遺産分割協議を行わなければなりません。
相続財産の調査
相続財産には現金や預貯金などのプラス財産、借金や未払金などのマイナス財産があります。
すべて判明しなければ遺産総額がわからず、相続税申告の準備もできないため、被相続人の財産も徹底調査が必要となります。
預貯金口座であれば通帳やキャッシュカードを探しますが、見つからない場合は取り引きがあったと思われる金融機関に照会します。
不動産については権利証や固定資産税の通知などを調べますが、発見したものがすべてではない可能性もあります。
他にも不動産があるかどうか確認する場合は、役所で固定資産税評価証明書や固定資産税課税台帳、土地家屋名寄帳を取り寄せてください。
借金については残額明細や督促状などの郵便物を探しますが、信用情報機関(JICC、CIC、KSC)に照会をかける方法もあります。
まとめ
一人っ子の二次相続は「財産を独り占めできるから得だ」という見方もありますが、税負担の面ではまったく逆といってよいでしょう。
また、相続開始と同時に多くの相続手続きも発生しますが、兄弟姉妹がいないためにほとんど1人で対応しなければなりません。
相続人の数が多い場合に比べて入念な節税対策が必要となり、相続手続きを進める時間も確保しなければならないため、一人っ子の相続は予想以上に大変です。
効果的な相続税対策を検討する場合、また相続手続きの時間が割けない場合は、なるべく早めに税理士へ相談して適切なアドバイスを受けるようにしてください。
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