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最終更新日:2024/2/9

配偶者居住権とは?相続時の適用要件やメリットをわかりやすく解説

古尾谷 裕昭
この記事の執筆者 税理士 古尾谷裕昭

ベンチャーサポート相続税理士法人 代表税理士
東京税理士会 登録番号104851

東京、横浜、千葉、大宮、名古屋、大阪、神戸など全国の主要都市22拠点にオフィス展開し、年間2,200件を超える日本最大級の相続税申告実績を誇る。 業界最安水準となる明朗料金ときめ細かいフォローで相続人の負担を最小にすることを心がけたサービスが評判を得る。1975年生まれ、東京都浅草出身。

PROFILE:https://vs-group.jp/sozokuzei/supportcenter/profilefuruoya/
書籍:今さら聞けない 相続・贈与の超基本
Twitter:@tax_innovation
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配偶者居住権とは?

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この記事でわかること

  • 配偶者居住権の権利について
  • 配偶者居住権を設定するケースとしないケースでの相続の違い
  • 配偶者居住権の適用要件やメリット
  • 配偶者居住権を設定する際の注意点

配偶者居住権は、残された配偶者の生活を守るために新設された権利です。従来は、相続財産の大半を自宅が占めている場合に法定相続分で遺産分割すると、妻が自宅を相続して、子どもが現預金の大半を相続することになり、妻は老後の生活の糧となる現預金を相続できなくなってしまうことがありました。

このような事態を回避するために新設された配偶者居住権には、多くのメリットがあります。ただし、配偶者居住権を設定するには注意点もあるので、どのような権利なのかを知っておきましょう。

本記事では、配偶者居住権が創設された背景やメリット、適用要件をわかりやすく解説します。

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配偶者居住権とは所有権がなくても配偶者が居住できる権利のこと

配偶者居住権とは、相続開始時に被相続人(亡くなった人)が所有していた建物に配偶者が住んでいた場合、終身にわたってその建物に無償で住み続けることができる権利のことです。2020年4月1日に配偶者居住権に関する規定が新設され、建物の「居住権」と「所有権」を分けることで、配偶者が所有権を持っていなくても、一定要件を満たせば、建物に住み続けられるようになりました。

なお、配偶者居住権を設定した後に自宅を売却するには、配偶者居住権を合意解除して権利を消滅させなければなりません。配偶者居住権の合意解除等を行うと、配偶者から所有権を持つ子どもなどに贈与されたとみなされ、贈与税が課税されますので注意しましょう。

また、被相続人が配偶者以外の誰かと共有で建物を所有していた場合は、配偶者居住権を設定できません。

配偶者居住権が創設された背景

相続が発生した場合、残された配偶者は住居と老後の生活費の両方を確保しなければなりません。

しかし、従来は不動産の評価額が高額になった場合、配偶者が不動産を相続すると、不動産以外の現預金などを相続できず、その後の生活費の確保が困難になるため、自宅を手放さなければならないケースが多くありました。

そうすると、配偶者は今後の生活費に苦しむことになりかねません。しかし、配偶者居住権を設定できれば、自宅の価値を居住権と所有権に分けることができます。そのため、配偶者が自宅に住む権利を持ちつつ、現預金も相続できます。

子どもが妻の実子であれば、いずれ自分に財産が受け継がれることを想定し、相続権の主張を控えることもありますが、最近では再婚率の増加から、妻と子どもに血縁関係がないケースもあります。
この場合、妻から子どもが財産を相続する可能性がないため、きっちり2分の1の相続を子どもが主張する可能性が高く、妻は住み慣れた自宅を手放さなくてはならないこともあるのです。

このようなケースに対応するために新設されたのが、配偶者居住権です。

配偶者居住権のメリット

配偶者居住権のメリットは、相続によって配偶者が自宅を手放す必要がなくなり、終身にわたって無償で住めることです。

配偶者居住権では、自宅の所有権は他の相続人が持つので、建物の所有権を相続するよりも低い評価額で相続できます。そのため、配偶者は現預金など他の財産も相続することができ、老後の生活を安定させることができるでしょう。

また、子ども夫婦などと同居していた際に同居を拒否されても、配偶者居住権があれば自宅に住む権利が認められることもメリットに挙げられます。

配偶者居住権を設定するケースと設定しないケースの違い

配偶者居住権を設定するケースと設定しないケースでは、相続においてどのような違いがあるのか、わかりやすく解説します。

夫が亡くなり、妻と子どもが法定相続人の場合、自宅が2,000万円、現預金が2,000万円で遺産総額が4,000万円だったとします。配偶者居住権を設定しない場合、法定相続分の2分の1ずつを妻と子どもで相続するため、自宅に住み続けるなら妻が相続できるのは自宅のみで、現預金は相続できません。今後の生活費に苦労する可能性もあります。

一方、自宅に配偶者居住権を設定すると、妻は自宅の居住権1,000万円と現預金1,000万円、子どもは所有権など他の権利1,000万円と現預金1,000万円を相続するため、妻は自宅に住みながら生活費の確保が可能となります。このように配偶者居住権を設定して居住権と所有権を分けることで、老後の生活の安定を保てるでしょう。

【配偶者居住権】ありとなしの比較

配偶者居住権の適用要件と設定登記方法

配偶者居住権の適用要件

配偶者居住権を成立させるには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

配偶者居住権の適用要件

  • 被相続人の配偶者であること
  • 被相続人が亡くなったときに、配偶者が被相続人の所有する建物に居住していたこと
  • 遺産分割、遺贈、死因贈与、家庭裁判所の審判により取得したこと

上記3つの要件をすべて満たせば、配偶者居住権は認められます。しかし、配偶者居住権の設定登記を行わなければ、第三者に配偶者居住権を主張できないため注意が必要です。

例えば、配偶者が住んでいる建物の所有権を相続した相続人が、建物を購入した第三者から配偶者に、建物の明け渡しを求められる可能性があります。このとき、配偶者居住権の設定登記を行っていれば、「私はこの家に住み続ける権利があります」と主張できるため、設定登記を行うようにしましょう。

配偶者居住権の設定登記は、配偶者と建物の所有者が共同で行います。配偶者居住権の登記申請書については法務局のWebサイト「不動産登記申請手続」をご確認ください。

配偶者居住権の注意点

配偶者居住権の注意点

残された配偶者にとってメリットの多い配偶者居住権ですが、設定する際には以下のような注意点があります。それぞれを詳しく見ていきましょう。

配偶者居住権の注意点

  • 配偶者居住権だけでは第三者へ売却できない
  • 配偶者居住権が設定できない場合がある
  • 配偶者居住権は土地には設定できない

配偶者居住権だけでは第三者へ売却できない

配偶者居住権の注意点は、自宅の売却ができないことです。配偶者居住権は自宅に住み続ける権利のため、所有権がなく、配偶者居住権を保有しているだけでは建物を売却することはできません。また、自宅の所有権を持っている子どもなどが配偶者居住権の設定された自宅を売却しても、設定登記があれば、配偶者は住み続けることができ、購入した第三者に賃料を支払う必要はありません。

配偶者居住権は、配偶者の死亡をもって消滅するものです。配偶者居住権の消滅後も所有権はそのまま残るため、配偶者が亡くなった後、所有権を持つ相続人は建物を自由に処分することができるようになります。

なお、配偶者居住権は、合意解除によって消滅させることも可能です。配偶者居住権の設定された自宅を配偶者が生きているうちに売却したい場合は、配偶者居住権の合意解除等を行ってから売却してください。ただし、合意解除等を行った場合、子どもなどの所有者に贈与されたとみなされ、贈与税が課税されます。対価の支払いがあった場合は、譲渡として所得税の課税対象となるため注意しましょう。

配偶者居住権が設定できない場合がある

配偶者居住権の設定は、被相続人の生前において、被相続人が不動産の権利を所有、または被相続人と配偶者が共有で権利を所有している場合に設定することができます。
例えば、不動産の所有権が被相続人と息子といったような、配偶者以外の者との共有である場合には、配偶者居住権の設定はできないため注意してください。

配偶者居住権は土地には設定できない

配偶者居住権の注意点には、土地には設定できないことが挙げられます。配偶者居住権が設定できるのは建物のみです。ただし、建物を使用する場合にはその建物の敷地も必然的に利用することになるため、建物に配偶者居住権を設定登記することで、その敷地に対しても配偶者は使用する権利を主張することができます。

配偶者居住権の設定は税理士に相談しよう

配偶者居住権は、要件を満たせば残された配偶者が終身にわたって、被相続人の所有する自宅に住み続けることができる権利です。所有権を相続するよりも評価額が下がるため、相続割合の多くを占めることにならずに済み、現預金を相続できるので、今後の生活費も確保できるというメリットがあります。

配偶者居住権は、遺言書(遺贈)、遺産分割協議、死因贈与、家庭裁判所の審判で設定することが可能です。相続人が最低限相続できるとされる遺留分を侵害していない遺言書であれば、遺言書どおりに相続は執行されます。
例えば、配偶者と子どもの仲が悪い、配偶者が後妻で子どもは前妻との子どもである場合などは、遺言書で配偶者居住権を設定しておくとよいでしょう。
配偶者居住権の設定方法や遺言書について不明な場合は、まず相続専門の税理士に無料相談してみるのがおすすめです。

ベンチャーサポート相続税理士法人では、親身でわかりやすい説明を心がけ、無料相談を実施しています。また、税理士だけでなく弁護士、司法書士も在籍しているため、ワンストップで相談することが可能です。初めて相続税の申告を行う方もお気軽にご相談ください。

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