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最終更新日:2024/11/15

相続税申告の必要書類には何がある?申告書や添付書類の種類について解説

古尾谷 裕昭
この記事の執筆者 税理士 古尾谷裕昭

ベンチャーサポート相続税理士法人 代表税理士
東京税理士会 登録番号104851

東京、横浜、千葉、大宮、名古屋、大阪、神戸など全国の主要都市22拠点にオフィス展開し、年間2,200件を超える日本最大級の相続税申告実績を誇る。 業界最安水準となる明朗料金ときめ細かいフォローで相続人の負担を最小にすることを心がけたサービスが評判を得る。1975年生まれ、東京都浅草出身。

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この記事でわかること

  • すべての相続税申告で必要な添付書類
  • 相続財産に応じて必要な添付書類
  • 特例や税額控除を適用する場合に必要な添付書類
  • 戸籍収集が便利になる戸籍謄本等の広域交付制度とは

相続税申告に必要な添付書類にはいくつかの種類があります。

申告書の提出時にすべての人が準備しなければならない書類もありますが、相続する財産によって揃えなければいけない書類は異なります。また、特例や税額控除を適用する場合に集めなければいけない書類もあります。

この記事では、相続税申告で必要な添付書類の取得場所と入手方法、必要になるケースなどについて解説します。

すべての相続税申告で必要になる書類

すべての相続税申告で必要な書類をみていきましょう。

相続税申告書

相続税の申告書は第1〜15表までとそれぞれの付表があり、すべてを使用するわけではありません。必要なものを記載して税務署に提出します。

代表的な申告書は次の通りです。

申告書の種類 表及び付表名
第1表 相続税の申告書
第2表 相続税の総額の計算書
第4表 相続税額の加算金額の計算書
第4表の2 暦年課税分の贈与税額控除額の計算書
第5表 配偶者の税額軽減額の計算書
第6表 未成年者控除額・障害者控除額の計算書
第7表 相次相続控除額の計算書
第8表 外国税額控除額・農地等納税猶予税額の計算書
第9表 生命保険金などの明細書
第10表 退職手当金などの明細書
第11表 相続税がかかる財産の明細書
第11・11の2表の付表1 小規模宅地等についての課税価格の計算明細書
第13表 債務及び葬式費用の明細書
第14表 純資産価額に加算される暦年課税分の贈与財産価額及び特定贈与財産価額・出資持分の定めのない法人などに遺贈した財産・特定の公益法人などに寄附した相続財産・特定公益信託のために支出した相続財産の明細書
第15表 相続財産の種類別価額表

被相続人・相続人に関する添付書類

相続税申告では被相続人・相続人に関する書類の添付が必要です。

原則として、被相続人が亡くなってから10日以上経過した後に取得した書類が有効とされるため、事前の準備ができない点に注意してください。

必要書類 条件等 取得先
被相続人の戸籍謄本
または
図形式の法定相続情報一覧図の写し
生まれた時からのもの(改製原戸籍謄本*・除籍謄本* 各市町村役場
被相続人の住民票の除票 省略のないもの 各市町村役場
被相続人の死亡診断書コピー ご自身でコピー
各相続人の戸籍謄本又は戸籍抄本
または
図形式の法定相続情報一覧図の写し
各市町村役場
各相続人の住民票 家族全員の記載があり、省略のないもの
(本人記載のみでも可)
各市町村役場
各相続人の印鑑証明 遺産分割協議書作成時に必要(原本を2通ずつ用意する) 各市町村役場
遺言書または遺産分割協議書 申告時にどちらかもしくは両方が必要
相続人及び受遺者のマイナンバー確認資料 マイナンバーカードの両面の写しを提出した場合には、1点のみ
マイナンバーカード記載の住民票もしくは通知カード(内容が住民票と一致に限る)を提出する場合には、別途本人確認書類が必要
相続人及び受遺者の本人確認書類 運転免許所の写し、パスポートの写し、在留カードの写し、身体障害者手帳の写しなど
※1
改製原戸籍謄本とは
戸籍法の改正により戸籍の様式が変更され、新しい様式で戸籍の書き換えが行われます。この改製(つくり直し)が行われる前の古い戸籍のことを指します。
※2
除籍謄本とは
死亡のほか、結婚、離婚、転籍(本籍地変更)などにより、在籍している人が誰もいなくなった戸籍のことを指します。

すべての書類を集めるのにかかる時間は、平均して1カ月前後といわれており、それ以上にかかることもあります。

相続の手続きでは相続人を確定するため、原則として被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍が必要になります。最初に役所で戸籍謄本を取り、その記載内容をチェックしなければなりません。

もし、転籍があれば転籍前の役場で戸籍謄本を取得し、これを繰り返して出生までの戸籍を遡って追跡する必要があります。

従来、戸籍謄本は本籍地の役所でしか取得できませんでしたが、2024年3月からは最寄りの市町村役場の窓口で取得することができるようになりました。詳しくは後述します。

法定相続情報一覧図の写しは、被相続人の本籍地等を管轄する法務局において、必要書類と合わせて申出をすることで交付を受けることができます。必ず図形式のもので、子の続柄が実子または養子のいずれであるかがわかるように記載されたものである必要があります。

なお、被相続人に養子がいる場合は、その養子の戸籍の謄本または抄本の提出も必要です。

相続財産に応じて必要になる添付書類

相続する財産の種類に応じて、税務署に提出する書類は変わります。相続する財産ごとの必要書類をみていきましょう。

現金・預貯金

現金や預貯金を相続する場合、必要となる書類は次のとおりです。

基本的には被相続人が利用していた金融機関に発行してもらう書類が中心です。

必要書類 条件等 取得先
預金残高証明書 死亡日の残高 各金融機関
既経過利息計算書 定期預金の場合 各金融機関
被相続人の過去の通帳のコピー 過去5~7年分
家族全員の過去の通帳のコピー 場合によって必要になる
通帳のコピーがない場合には金融機関で取引明細書の発行を依頼することができます。

不動産関係

土地・建物などの不動産を相続する場合、原則、法務局もしくはその出張所と市町村役場に足を運ばなければなりません。

併せて、被相続人が保管していた書類も必要になります。

必要書類 条件等 取得先
全部事項証明書(登記簿謄本) 法務局の各出張所
地積測量図又は公図の写し 法務局の各出張所
固定資産税評価証明書(固定資産税課税明細書) 各都税事務所・市町村役場
名寄帳 各都税事務所・市町村役場
実測図
賃貸借契約書(貸家・貸地・借地の場合)

土地の登記関係の書類は、法務局(支局・出張所含む)の窓口で取得するか、オンラインで申請します。

固定資産税評価証明書は各市区町村の窓口で取得可能です。固定資産税課税明細書には免税点以下の不動産は記載されていないため、名寄帳も取得することで申告漏れや登記漏れを防止できます。

建物を相続する場合、固定資産税評価証明書があれば評価額を算定できますが、土地を相続する場合、評価額の算出時期に注意が必要です。土地は相続開始の年の路線価で評価を行います。

仮に相続開始月が1月で早めの申告を行いたい場合でも、7月に国税庁が公表する路線価を待って、土地の評価をしなければいけないため、6月以前に申告できない点に注意が必要です。

なお、相続する土地が路線価の設定されていない地域に所在している場合、路線価の発表を待たずに申告することができます。

有価証券等

有価証券をはじめとする金融商品を相続する場合は、現金・預貯金と同様に銀行や証券会社に書類を発行してもらわなければなりません。

必要書類 条件等 取得先
証券・株券・通帳・預り証明書 死亡日の残高 各銀行・証券会社
配当金支払通知書 保有株数表示 証券代行業者・自宅など

未上場企業の株式や債券類は見落としやすいため注意しましょう。

死亡保険金(生命保険金)・死亡退職金

みなし相続財産とされる死亡保険金や死亡退職金は、被相続人が契約していた生命保険会社や被相続人が勤めていた勤務先に書類を揃えてもらう必要があります。

必要書類 条件等 取得先
生命保険金支払通知書 各保険取扱会社
生命保険証書のコピー 継続中のものも含む 自宅など
火災保険等の保険証書のコピー 満期返戻金があるものも含む 各保険取扱会社
退職金の支払調書 勤務先の会社等

生命保険金支払通知書は保険会社、退職金の支払調書は勤務先から送られてきます。

各種保険の証書は、被相続人が保管するため、被相続人の自宅を探しましょう。

その他の相続財産

被相続人が貸しているお金やゴルフやリゾートの会員権も相続税の対象財産です。

それぞれ被相続人が保有していると証明できる書類や証書、会員権をコピーして提出します。

必要書類 条件等 取得先
金銭消費貸借契約書のコピー 貸付金がある場合 自宅など
会員権 ゴルフ会員権など 自宅など
家財一式 自宅など
車、バイク等の動産類 登録証 自宅など
書画、骨董等 鑑定書など 自宅など
死亡後に受け取った給与・賞与 給与明細書 自宅・勤務先など
高額療養費や傷病手当金 支給決定通知書等 自宅など
老人ホームなどの入居金・保証金・預け金等 返金明細、領収書等 自宅など

債務(借金など)

借入金や未払金は相続財産の確定時にマイナスの財産としてプラスの財産から差し引くことができます。証明できる書類を用意しましょう。

必要書類 条件等 取得先
金銭消費貸借契約書のコピー 借入金がある場合 借入先など
借入残高証明書 借入金がある場合 各契約金融機関
請求書 未払金の場合 自宅など
課税通知書・納付書 未納の租税公課 自宅・役所など
明細など その他の債務 自宅など

葬儀費用を証明する領収書等

債務の他には、葬式費用等も相続財産から控除することが認められています。

具体的には、通夜・告別式等の費用、お寺への読経料・戒名料・お布施・車代等、火葬の費用、納骨の費用などです。領収書を受け取った場合はコピーを提出することになるため、しっかり保管しておきましょう。

また、お寺への支払をはじめとする領収書がないものについては、個々の金額をリスト化したメモ書きなどを提出してください。

なお、香典返し、お墓・仏壇の購入費用、初七日、四十九日法要等の費用は、葬式費用として相続財産から控除することはできないため注意が必要です。

相続の状況によって必要になる添付書類

相続の状況によって必要になる添付書類をみていきましょう。

遺言書が残されていた場合

遺言には自筆証書遺言、公正証書遺言、死亡危急者遺言、秘密証書遺言がありますが、公正証書遺言以外は家庭裁判所の検認が必要です。検認が終わった遺言書は検認済証明書が付いていることが必要となりますので家庭裁判所で申請を行いましょう。

遺産分割協議を行った場合

遺産分割協議を行った場合、相続税申告で遺産分割協議書の提出が必要となりますが、それとともに押印した実印の印鑑証明の添付も必要になります。

相続税の対象となる贈与財産がある場合

被相続人が亡くなる3年以内(段階的に7年以内)の暦年課税による贈与、相続時精算課税の適用を受けた贈与も相続税の対象のため、生前贈与の金額を証明する書類も必要となります。

相続時精算課税

必要書類 条件等 取得先
贈与税の申告書(控) 相続時精算課税 自宅など
相続時精算課税選択届出書 相続時精算課税 自宅など

暦年課税

必要書類 条件等 取得先
贈与税の申告書(控) 暦年課税 自宅など
贈与契約書 暦年課税 自宅など
貯金通帳 暦年課税 自宅など

特例や税額控除を適用するために必要な添付書類

ここからは、控除や特例適用時に必要な添付書類を紹介します。

配偶者の税額軽減措置を受けるための資料

配偶者の税額軽減措置を受けるためには、以下の書類の提出が必要となります。申告時に申告書と併せて提出しましょう。

配偶者の税額軽減措置を受けるための資料

  • 遺言書または遺産分割協議書の写し
  • 相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印したもの)

小規模宅地等の特例を受けるための提出書類

小規模宅地等の特例を受けるための提出書類は以下の通りです。

小規模宅地等の特例を受けるための提出書類

  • 遺言書または遺産分割協議書の写し
  • 相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印したもの)

この他にも、後述するケースによっては別途書類が必要になります。

配偶者が小規模宅地等の特例を適用する場合

提出書類はありません。

被相続人の居住の用に供されていた1棟の建物に居住していた親族又は被相続人と生計を一にしていた親族が小規模宅地等の特例を適用する場合

特例の適用を受ける宅地等を自己の居住の用に供していることを明らかにする書類、親族の住民票、戸籍の附票の写しなどを提出します。

特例の適用を受ける方が、マイナンバーを有する場合には提出不要です。

家なき子の特例を利用する場合

被相続人に同居親族と配偶者がおらず、相続開始前3年間に、自己、自己の配偶者、自己の三親等内の親族及び自己と特別の関係のある法人の所有する家屋に居住しておらず、相続開始時に住んでいる家屋を過去に一度も所有したことがなく、申告期限までその宅地等を所有している方は「家なき子の特例」で小規模宅地等の特例を適用できます。

家なき子の特例を利用する際に必要な添付書類は以下の通りです。

家なき子の特例を利用する場合に必要な添付書類

  • 相続開始前3年以内における住所又は居所を明らかにする書類
  • 相続開始前3年以内に居住していた家屋が、自己・自己の配偶者・自己の三親等内の親族又は、自己と特別な関係がある法人の所有する家屋以外の家屋であることを証明する書類
  • 相続開始時に自己の居住している家屋を相続開始前のいずれの時期においても所有していたことがないことを証する書類

具体的には、相続発生時前に居住していた家屋の賃貸借契約書、及び、その家屋の所有者が自己・自己の配偶者・自己の三親等内の親族・自己と特別な関係があり法人の所有するものではないこと、その家屋を過去に一度も所有したことがないことを証明するための家屋の登記事項証明書等、賃貸借契約書が必要です。

また、相続開始前3年以内の住所または居所を明らかにする書類として、親族の住民票、戸籍の附票の写しが必要ですが、マイナンバーを提出する場合、不要となります。

被相続人が生前老人ホームに入居していた場合

被相続人が相続開始直前まで老人ホームに入居していたなど、当該宅地等に居住していなかった場合に特例の適用を受けるには、以下の書類の提出が必要となります。

被相続人が生前老人ホームに入居していた場合に必要な書類

  • 被相続人の戸籍の附票
  • 被相続人が要介護・要支援・障害支援区分の認定を受けていたこと等を証する書類
  • 被相続人が入居していた施設が老人福祉法や介護保険法等に定める施設であることを証する書類

被相続人の住所の変遷を確認するため、戸籍の附票が必要となります。

要介護、要支援認定を受けていたことを証明する書類は、介護保険の被保険者証の写し・生涯福祉サービス受給者証の写しなどです。

施設の証明は、被相続人が入居していた老人ホーム等の契約書や、老人ホーム等の名称、所在地、住居等を明らかにする書類です。

特定同族会社事業用宅地等に該当する場合

特定同族会社事業用宅地等に該当する場合には、小規模宅地等の特例の申請に必要な書類に加えて、以下の書類を用意しなければなりません。

特定同族会社事業用宅地等に該当する場合に必要な書類

  • 当該会社の定款
  • 当該会社の発行済み株式の株式総数、被相続人の親族等が有する株式数等を記載した書類

当該会社の株式数等を記載した書類は、株主名簿や法人税別表2を用意します。その会社が証明した書類であることが必要です。

貸付事業用宅地等に該当する場合

小規模宅地等の特例を適用する土地が貸付事業用宅地等に該当する場合には、被相続人が相続開始前3年を超えて貸付事業等を行っていたことを証する書類が必要です。

具体的には、過去4年分の不動産所得の青色申告決算書や収支内訳書を提出するとよいでしょう。

「戸籍謄本等の広域交付制度」で戸籍の収集が便利に

令和6年3月1日から、本籍地以外の市区町村の窓口でも、戸籍証明書・除籍証明書を請求できるようになりました。

これによって、本籍地が遠くにある方でも、お住まいや勤務先の最寄りの市区町村の窓口で戸籍等の請求ができます。また、転籍が多い方も1か所の市区町村の窓口でまとめて請求を行えるようになります。

取得できるのは本人のほか、直系尊属、直系卑属、配偶者の戸籍のみで、兄弟姉妹のものは取得できません。

また、戸籍証明書等の請求は、市区町村の戸籍担当窓口に出向いて請求する必要があり、郵送や代理人による請求はできません。窓口では本人確認のため、運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなどの顔写真付きの身分証明書の提示が必要になります。

相続税申告を税理士に依頼すると必要書類の収集を任せることができる

税理士は、業務上必要がある場合、戸籍謄本・住民票の写し等職務上請求書を使用し、相続人に代わって必要書類の収集を代行できます。

相続税申告で必要な書類は、印鑑証明書や自宅に保管されているもの以外は、税理士が代わりに取得することが可能なため、時間がない方や仕事をお持ちの方などは税理士に依頼することも検討してみましょう。

なお、名寄帳を取得者以外が取得する場合、税理士などの資格保有者であっても委任状が必要になります。

相続税申告に必要な書類の数は膨大ですがしっかり揃えなければいけない

記事で紹介したように、相続税申告における必要書類の数は多いうえに、相続財産に応じて必要書類が異なります。

集めるのは大変ですがしっかり揃えないと、税務署から申告内容の不備を疑われることもありますし、適用を検討している特例や控除などの適用が受けられなくなることもあります。

相続税の申告期限は10カ月です。必要書類の収集や相続税申告書の作成に不安がある場合は、税理士へ依頼することも検討してみてはいかがでしょうか。

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