この記事でわかること
- 相続税申告を弁護士に依頼できるかどうか
- 遺産分割や相続税などを相談できる専門家
- 相続税申告や手続きを専門家に依頼するメリット・デメリット
- 相続税申告や手続きを専門家に相談する際の費用相場
相続税は自己申告で納める税金ですが、税額計算や申告書作成が難しいときは税理士に依頼できます。
財産評価を税理士が代行してくれるため、税務署の指摘を受けにくい相続税申告書の作成が可能となるでしょう。
一方、相続トラブルが発生して当事者同士では解決できなくなった場合は、弁護士にサポートしてもらうことになります。
相続税申告と相続トラブルをまとめて解決したい場合、どちらも弁護士に依頼できれば効率的です。しかしながら、弁護士は相続税申告の相談に対応できるのでしょうか?
この記事では、弁護士への相続税申告の相談可否、遺産分割の問題を相談できる専門家など、相続に関わる専門家の業務範囲をわかりやすく解説します。
目次
相続税申告は弁護士に相談できる?
弁護士は税理士業務も対応できるため、相続税申告も相談できます。
ただし、弁護士が税理士業務を対応するには、以下のいずれかの手続きを済ませなければなりません。
- 弁護士会を介して国税局長に通知している
- 税理士会に税理士登録している
税理士会に登録した弁護士は「税理士」を名乗ることが可能です。
また一般的に、弁護士は紛争解決を主な業務にしています。したがって、相続税申告の相談は税理士が最適なパートナーといえます。
解決したい相続問題が複数ある場合は、これから解説する内容を参考にして専門家に相談してみましょう。
遺産分割や相続税はどの専門家に相談できる?
遺産分割や相続税申告に困ったときは、各分野の専門家が相談に乗ってくれます。
このうち、相続関係の悩みは弁護士や司法書士、行政書士、税理士に相談が可能です。
紹介する各専門家の専門分野を参考にしてください。
弁護士に相談できること
弁護士は相続税申告にも対応可能ですが、主な業務は紛争解決であり、以下のような問題を相談できます。
- 遺言書の作成
- 相続財産や相続人の調査
- 遺産分割協議書の作成
- 預貯金解約や株式の名義変更
- 相続争いの解決
- 遺留分の侵害額請求
- 遺産分割調停や審判などの法的措置
- 特別受益や寄与分をめぐる争い
- 遺言書の検認申立て
- 相続放棄や限定承認の申立て
相続争いが発生すると、当事者同士で話し合っても解決できないケースは珍しくありません。その際は弁護士に介入してもらうとよいでしょう。
また、弁護士には代理権があるため、遺産分割調停や審判の代理人になってもらえます。
相続放棄や限定承認の申立ての期限は短いため、財産調査や家庭裁判所への申立てが間に合わないときは、早い段階で弁護士に相談しましょう。
相続を弁護士に相談すべきケース
弁護士は紛争解決が専門であるため、以下のような問題が発生した場合は、弁護士への相談をおすすめします。
- 遺言書の有効性が疑わしい
- 公平な遺産分割が難しい
- 相続人同士の仲が悪い
- 一部の親族が相続財産を使い込んでいる
- 遺留分侵害額の請求期限が迫っている
- 相続放棄や限定承認の期限が迫っている
- 寄与分を認めてもらいたい
たとえば、相続財産が不動産などに偏っていて公平な遺産分割が難しいときは、弁護士に相談しましょう。代償分割や換価分割などを提案してくれます。
一部の親族が相続財産を使い込んでいる場合も、弁護士のサポートを受けるのがおすすめです。不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求で解決に繋がるでしょう。
ただし、不当利得返還請求や損害賠償請求、遺留分侵害額の請求などの手続きには時効の適用があり、一定期間を過ぎると請求権が消滅します。制度の活用を検討する場合は注意してください。
司法書士に相談できること
司法書士は以下の業務に対応しているため、不動産の相続登記関係を相談するのが一般的です。
- 相続財産や相続人の調査
- 遺産分割協議書の作成(相続登記の依頼を前提とした場合)
- 相続登記(不動産の名義変更)
- 預貯金解約や株式の名義変更
- 相続放棄や限定承認、遺言書検認の申立て(代理申請は不可)
相続登記の申請は司法書士の独占業務になるため、原則として弁護士や税理士などの士業には依頼できません。
不動産の相続時や不動産の権利関係が複雑な場合は、司法書士に相続登記を任せましょう。
相続を司法書士に相談すべきケース
相続登記は2024年4月1日から義務化されたため、法務局への申請を急ぎたい場合は司法書士に相談してみましょう。
相続登記の義務化によって、不動産を相続した日から3年以内に登記申請しなかった場合、10万円以下の過料が課される可能性があります。
不動産は相続人がすべての内容を把握していないケースがあります。まずは市町村役場で名寄帳を取り寄せ、法務局で登記事項証明書を取得しましょう。
複数の不動産がある上に、すでに亡くなっている先祖名義になっていると、相続登記の完了までに何年もかかる可能性があります。
土地や建物が自分の名義にならない限り、売却や賃貸などの活用もできません。相続登記への対応が難しいときは司法書士に依頼しておきましょう。
行政書士に相談できること
行政書士には、以下の相続手続きを依頼できます。
- 遺言書の作成サポート
- 相続財産や相続人の調査
- 遺産分割協議書の作成(紛争解決や相続税申告などが必要ない場合)
- 預貯金解約や株式の名義変更
- 自動車の名義変更や廃車手続き
- 法定相続情報一覧図の作成
弁護士や司法書士に比べると、行政書士の業務範囲は狭くなります。一方で、相続税申告や相続登記、紛争解決の必要がなければ、ほとんどの相続手続きを代行してもらえるのが特徴です。
行政書士は、費用も低めに設定されている傾向にあります。戸籍謄本の収集や預貯金の口座解約などをまとめて依頼しても、高額な出費にはならないでしょう。
相続を行政書士に相談すべきケース
相続手続きを低コストで依頼したいときは、行政書士に相談するのがおすすめです。
たとえば、預貯金の口座解約や株式の名義変更、車の名義変更、廃車手続きのみの内容であれば、行政書士にすべて任せても低予算で依頼できます。
車の相続手続きは普通自動車と軽自動車で異なり、運輸支局や軽自動車検査協会に出向く必要があります。時間を取れない場合は、行政書士に依頼するとよいでしょう。
名義変更を怠ったまま被相続人名義の車を運転して交通事故を起こした場合、自動車保険が適用されない可能性があります。名義変更のタイミングには注意しなければなりません。
また、自動車税の納付書は被相続人の自宅に送付されるため、相続人が別居していると滞納の恐れがあります。
被相続人名義の車を使用する予定がなければ、行政書士に廃車手続きも依頼しておきましょう。
税理士に相談できること
税理士は、以下の相続手続きに対応しています。
- 相続財産の調査
- 不動産や非上場株式などの評価額計算
- 相続税申告
- 相続税対策の提案
相続税申告は難易度が高く、確定申告に慣れている人でも間違える可能性があります。税額計算や申告書作成に不安があれば、税理士に依頼しましょう。
また、不動産や非上場株式は相続税評価額の計算が難しく、不慣れな方が評価すると相続税の申告ミスにつながる可能性が高くなります。
相続税の配偶者控除(配偶者の税額軽減)や小規模宅地等の特例など、大きな節税効果を期待できる相続税対策もありますが、いずれも相続税申告が要件です。
税理士に依頼することで、安心して相続税を申告でき、税務調査のリスクも回避できるでしょう。
相続を税理士に相談すべきケース
高額な財産を相続したときは、税理士への相談をおすすめします。
税理士には財産調査や財産評価を依頼できるので、相続税がかかるかどうかを判定できます。
相続税がかかる場合、税理士に相談しておけば適切な相続税対策を提案してくれるでしょう。
配偶者の税額軽減で節税する場合、配偶者に財産が集中すると二次相続の相続税が高額になるため、相続税対策には長期展望が必要です。
また、別居親族が被相続人の自宅を相続する場合、小規模宅地等の特例の適用要件を間違える可能性があります。
相続税は税務調査の対象になる確率も高いので、税務署からの接触をなるべく回避したいときは、税理士に相続税申告をサポートしてもらいましょう。
相続税申告や手続きを専門家に依頼するメリット・デメリット
相続税申告などの手続きを専門家に依頼するときは、以下のメリットやデメリットを考慮してください。
専門家に依頼すると相続手続きは確実に完了しますが、費用も考えておく必要があるでしょう。
相続税申告や手続きを専門家に依頼するメリット
専門家に相続税申告や名義変更などの手続きを依頼すると、以下のメリットがあります。
メリット
- 書類の収集や作成を代行してもらえる
- 多忙な方でも期限内に相続手続きが完了する
- 相続税を節税できる
- 相続争いを解決できる
戸籍謄本や預金口座の残高証明書などを取得する場合、役場や銀行の窓口受付時間に手続きに行くことが難しい方は、専門家に依頼するメリットが大きくなります。
また、相続税申告や相続放棄などを専門家に依頼すると、期限内に手続きが完了するように進めてもらえます。期限を過ぎて、延滞税を納めることになるなどのリスクを回避できるでしょう。
相続争いは長期化しやすく、次世代へ引き継がれる可能性が高い事柄です。当事者間の解決が難しいときは専門家に相談しておきましょう。
相続税申告や手続きを専門家に依頼するデメリット
相続税申告などの手続きを専門家に依頼する場合、以下のデメリットも考慮しておく必要があります。
デメリット
- 相続税に詳しい税理士が少ない
- 専門家に依頼すると費用がかかる
- 相続登記や紛争解決を個別に依頼すると費用が高くなる
- 相性の悪い専門家は依頼者のストレスになる
税理士の多くは法人税申告などをメイン業務にしており、相続税に詳しい税理士は全体の1割程度です。
相続税申告の経験が少ない税理士は特例や税額控除に詳しくないため、相続税が高額になる可能性があるでしょう。
また、各専門家へ相続登記や紛争解決などの案件を個別に依頼すると、費用が割高になりがちです。
さらに、依頼する際、相続人などの状況説明にも時間がかかってしまいます。
相続争いを調停や訴訟で解決する場合、専門家との付き合いも長くなるため、相性が合うのかもチェックする必要があります。
相続税申告や手続きを専門家に相談する際の費用相場
相続税申告や相続登記などを専門家に依頼すると、さまざまな費用がかかります。
費用は各専門家ごとに自由設定になっています。以下で紹介する内容はあくまでも一般的な相場ですが、あまり極端な差はないでしょう。
弁護士の費用相場
弁護士費用は以下のような内訳になっており、遺言書作成業務や遺産分割協議の代理人業務は20~30万円程度かかります。
法律相談料 | 30分で5,500円、1時間で1万1,000円程度 |
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着手金 | 20~30万円程度 |
報酬金 | 依頼者が得た経済的利益による |
実費や日当 | 日当は1時間1万円程度 |
法律相談料を初回無料にしている弁護士もいます。
詳細は各法律事務所の公式HPで確認するか、直接問い合わせてください。
着手金の相場は20~30万円程度ですが、着手金の計算は報酬金と同じく、依頼者の経済的利益によって変動します。
たとえば、遺産分割協議で弁護士が代理人になる場合、遺産が1,000万円であれば着手金は20万円程度、1,500万円の場合は30万円程度です。
事件が成功に終わった場合には報酬金が発生し、報酬金は依頼者が得た経済的利益に応じて変動することが一般的です。
また、実費には通信費や交通費などが含まれており、弁護士が法律事務所以外で活動するときは、1時間1万円程度の日当が発生します。
司法書士の費用相場
司法書士に相続登記などを依頼する場合、一般的には以下の費用がかかります。
戸籍謄本の取得 | 1万5,000~5万円程度 |
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登記事項証明書の取得 | 1,000~5,000円程度 |
固定資産税評価額の調査 | 1,000~5,000円程度 |
遺産分割協議書の作成 | 1万5,000~5万円程度 |
相続登記の申請 | 5万~8万円程度 |
戸籍謄本の取得から相続登記までをまとめて依頼する場合、司法書士費用の相場は7万~15万円程度です。
ただし、相続人や登記する不動産の数が多くなると、費用が数十万円になるケースもあります。
また、戸籍謄本は1通450円、登記事項証明書は1通600円程度の取得費がかかり、登記申請時に以下の登録免許税も発生します。
登録免許税
固定資産税評価額×0.4%
上記の計算式に当てはめると、仮に不動産の固定資産税評価額が3,000万円であれば登録免許税は12万円です。
行政書士の費用相場
行政書士に相続手続きを依頼すると、費用の相場は以下のようになります。
遺言書の作成サポート | 6万~10万円程度 |
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相続人の調査 | 5万~6万円程度 |
相続財産の調査 | 5万~6万円程度 |
遺産分割協議書の作成 | 3万~5万円程度 |
預金解約 | 2万~5万円程度 |
株式の名義変更 | 2万~5万円程度 |
車の名義変更 | 2万~5万円程度 |
法定相続情報一覧図の作成 | 3万円程度 |
戸籍謄本の取得や預金解約など、一般的な相続手続きをすべて依頼しても、行政書士費用が30万円を超えるケースはあまりないでしょう。 ただし、相続人や相続財産の種類が多くなると行政書士の業務量が増えるため、30万円以上の費用になるケースもあります。
税理士の費用相場
税理士に相続税申告を依頼した場合、以下のように遺産総額の0.5~1.0%を基準とした費用がかかります。
遺産総額3,000万円 | 15~30万円程度 |
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遺産総額5,000万円 | 25~50万円程度 |
遺産総額1億円 | 50~100万円程度 |
遺産総額3億円 | 150~300万円程度 |
遺産総額5億円 | 250~500万円程度(または個別に見積り) |
なお、税理士への依頼内容や、相続時の状況によっては加算報酬が発生します。
加算報酬が発生するケースは、相続人や相続財産が多い場合や、期限間近の相続税申告を依頼する場合、不動産や非上場株式の評価を依頼する場合などです。
相続人が1人であれば基本報酬のみですが、2人になると基本報酬額×10~15%程度の加算報酬が発生する可能性があります。
不動産の評価額計算は1物件につき6万円程度、非上場株式は1社につき15万円程度の加算報酬となります。
相続税申告で困ったら税理士に相談しよう
弁護士は紛争解決が主な業務であるため、相続税申告は税理士への相談がおすすめです。
ただし、相続税申告だけでなく、相続登記や相続トラブルなども同時に発生した場合は、弁護士や司法書士などの専門家との連携も必要です。
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