この記事でわかること
- 名義預金が税務署にばれる理由がわかる
- 相続で名義預金とみなされるケースがわかる
- 名義預金とみなされないようにする5つの方法がわかる
- 名義預金以外の相続税対策がわかる
口座名義人と実質的な預金者が異なる預金を「名義預金」といいます。
見かけ上は名義人の預金になるため、税務署にばれずに財産を隠せると考える人もいるようですが、税務署の目はごまかせません。
名義預金は「自分の財産ではない」と認識されているケースが多く、相続税申告から漏れやすいため、特に厳しくチェックされている財産です。
意図的な申告漏れではなくてもペナルティの対象になりますが、財産隠しや税逃れに判断されるとさらに重い罰則が科せられるでしょう。
今回は名義預金がばれる理由をわかりやすく解説します。
名義預金とみなされない対策も紹介しますので、家族名義で預金している方はぜひ最後までお読みください。
目次
名義預金が税務署にばれる理由
相続税申告から名義預金が漏れていた場合、すぐに税務署にばれるわけではありません。
税務調査は相続税申告から数ヶ月後や1年後など、ある程度の期間を過ぎてから実施されますが、その間に次のような調査が行なわれています。
預金口座の調査
税務署は本人(預金者)の承諾がなくても預金口座を調査できます。
また、本人だけではなく家族の口座も調査できる権限があるので、名義預金に疑われる資金の動きがあれば、関連口座も調査の対象になります。
多くの金融機関では過去10年分の入出金データ保存しているため、長期に渡る調査も可能です。
たとえば、生活費とはいえない高額資金が夫から妻の口座に流れており、その後払い戻した形跡がなければ、妻の口座を使った名義預金に疑われる可能性があります。
不審なお金の動きはすべてチェックされるので、税務署にばれずに名義預金することは不可能だといえます。
KSKシステムから資産状況をチェックする
国税局や税務署では、KSKシステム(国税総合管理システム)で納税者情報を管理しています。
KSKシステムには給与の源泉徴収や確定申告のデータが登録されているので、被相続人の所得状況もわかります。
被相続人の所得水準に比べて申告額が少なければ、「財産を隠しているのではないか?」と疑われるので、名義預金が調査対象になることは確実でしょう。
相続で名義預金とみなされるケース
税務署から名義預金と判断された場合、実質的な預金者の相続財産になります。
具体的には次のようなケースが名義預金とみなされるので、該当する預貯金があった場合は、必ず相続税申告に加えてください。
被相続人が実質的な預金者だったとき
代表的な名義預金の例ですが、将来は本人に渡すつもりで、親や祖父母が子どもや孫名義の預金口座を開設しているケースがあります。
口座名義は子どもや孫でも、実質的な預金者は親や祖父母になるため、本人(名義人)の名前を借りた名義預金に判断されます。
また、生活費として夫が妻にまとまったお金を渡すケースもありますが、妻が専業主婦の場合は名義預金に疑われるかもしれません。
税務署は「収入がない専業主婦の口座に預金があるのは不自然」と捉えるので、夫の名義預金に判断する可能性があるでしょう。
生活費として使い切っていれば問題はありませんが、残金を「へそくり」にしていた場合は要注意です。
相続人の収入に比べて預金残高が多いとき
社会人になったばかりの子どもの口座や、未成年者の孫の口座に高額な預金があれば、本人の収入から預金されたものではないことが明らかです。
このようなケースでは、親や祖父母の名義預金に判断される可能性が高いでしょう。
口座の開設状況が不自然なとき
税務署は口座の開設状況もチェックしているので、以下に該当するときは名義預金にみなされることがあります。
- 口座開設時の届出印に被相続人の印鑑が使われている
- 離れて暮らしている家族の口座が地元銀行で開設されている
どちらも口座開設の状況としては不自然なので、税務署に疑われる可能性は高いでしょう。
被相続人が預金口座を管理していたとき
被相続人の手元に通帳や印鑑、キャッシュカードがある場合、家族名義の口座で自分のお金を管理しているとみなされます。
本人(名義人)が自由に使える状態でなければ、名義預金に判断されるので注意してください。
名義人が預金口座の存在を知らなかったとき
子どもや孫名義の口座に内緒で預金し、一定額が貯まったら本人にプレゼントしようと考えるケースもあります。
しかし預金者が存命中、本人(名義人)に口座の存在を知らせていなかった場合は、親または祖父母の名義預金に判断されるでしょう。
生前贈与とみなされなかったとき
子どもや孫名義の口座へ生前贈与のつもりで入金しても、贈与の証拠がなければ名義預金と判断されます。
贈与は「渡す・受け取る」の意思表示がなければ成立しないので、受贈者(贈与を受ける人)の承諾なしに預金していた場合は、生前贈与とみなされません。
名義預金とみなされないようにする方法5つ
本人(名義人)の財産だと証明できれば名義預金に疑われることはないので、次に解説する方法5つを実践しましょう。
本人が預金口座を開設する
子どもや孫の名義で口座開設するときは、本人が直接申込書を記入し、届出印も本人の印鑑を使用しましょう。
口座開設の状況に不自然さがなければ、名義預金に判断される可能性が低くなります。
名義人が口座を管理する
本人(名義人)が管理している口座であれば、名義預金に疑われることはありません。
通帳や印鑑、キャッシュカードは必ず本人に渡し、自由に使える状態にしておきましょう。
贈与契約書を作成する
生前贈与だと証明できれば名義預金には疑われないため、贈与契約書を作成しておきましょう。
贈与契約書の書式は適宜で構いませんが、以下の項目は必ず記載するようにしてください。
贈与契約書の記載事項
- 表題~贈与契約書
- 贈与者と受贈者(贈与する人と贈与を受ける人)
- 贈与額
- 贈与日
- 贈与方法(銀行振込など)
- 贈与契約の締結日
- 贈与者と受贈者の署名捺印(本人自筆と実印)
本人の意思で作成された契約書だとわかるよう、捺印には実印を使い、印鑑証明書も添付しておくことをおすすめします。
贈与には振込みを利用する
銀行振込で贈与すれば、贈与者・受贈者それぞれの通帳に記録が残るので、生前贈与の状況が明確になり、贈与契約書の内容とも一致します。
ただし、未記帳データが増えると合算されるため、預金通帳はこまめに記帳してください。
贈与税を申告する
1年間の贈与額が110万円を超えた場合は、必ず贈与税申告してください。
申告しておけば税務署が贈与だと証明してくれるので、名義預金に疑われることはありません。
申告時期は贈与があった年の翌年2月1日~3月15日なので、忘れずに申告・納税しておきましょう。
名義預金以外の相続税対策
預貯金が多い方には次のような相続税対策があります。
すべて名義預金を回避しながら節税できるので、税務署に指摘されない相続を実現できます。
暦年贈与
生前贈与には年間110万円までの非課税枠があり、この仕組みを活用した贈与を暦年贈与といいます。
毎年110万円以内の贈与を繰り返せば、1,000万円以上の非課税贈与もできるので、預貯金が多い方はぜひ活用してください。
ただし、同じ贈与日や贈与額を繰り返すと「定期贈与」とみなされる可能性があります。
税務署は「まとまったお金を贈与する予定だったが、税逃れのために分割した」と判断する可能性があるので、贈与日や贈与額は変えておきましょう。
相続時精算課税制度
相続時精算課税制度を使うと、2,500万円までの贈与が非課税になります。
2,500万円を超える部分も一律20%の税率なので、まとまった資金を贈与したいときには有効な方法です。
なお、相続時精算課税制度を使った贈与の場合、贈与財産は相続財産としてカウントするため、将来的には相続税の課税対象になります。
課税時期の先送りともいえる制度ですが、贈与額が高額になるほど節税効果も高くなるので、預貯金が多い方は検討してみることをおすすめします。
配偶者控除や小規模宅地等の特例を活用する
被相続人の配偶者は、1億6,000万円まで非課税相続できる配偶者控除を使えます。
正式には「配偶者の税額の軽減」という措置ですが、1億6,000万円を超える財産を相続しても、法定相続分の範囲内であれば相続税はかかりません。
また、預貯金の節税対策ではありませんが、小規模宅地等の特例を活用すれば、自宅敷地の評価額が8割減額になります。
330㎡(約100坪)まで適用できる制度なので、一般的な居住用宅地はほとんど8割減額の評価額にすることが可能です。
まとめ
税務署が名義預金を注視する理由ですが、ほとんどの相続財産には預貯金が含まれており、簡単に資金移動できることが挙げられます。
金融機関によっては、税務署からの照会に対応する専門部署も設置しているので、それだけ預金口座の調査も頻繁に行われているということです。
税逃れや財産隠しが目的ではなくても、名義預金の実態があれば高確率で指摘されるので、何らかの対策をしておくことをおすすめします。
名義預金は判断が難しいケースもあるので、「これは名義預金になるの?」と迷ってしまうことがあれば、早めに税理士のアドバイスを受けるようにしてください。
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