この記事でわかること
- 後見人になれる人がわかる
- 後見人になるための手続きや必要書類がわかる
- 後見人がすべきことや注意点が理解できる
成年後見制度とは、認知症などの理由で判断力が低下してしまった家族をサポートするための制度です。
判断力のある法律家や親族などが成年後見人(サポートする側)に就任し、成年被後見人(サポートしてもらう側)の財産管理や契約のサポートなどを行います。
少子高齢化が社会問題になっている日本では、年老いた親族へのサポート方法として成年後見制度への注目が高まっているのです。
誰が成年後見人になれるのか、手続きはどうすればいいのかなど、成年後見制度の基礎知識を解説します。
目次
誰が後見人になるのか
成年後見人は弁護士や司法書士などの法律の専門家が就任するという印象を持っているかもしれません。
しかし、実際は成年後見人になるために特別な資格は不要です。
弁護士や司法書士などのいわゆる士業でなくても、自分の親族などの成年後見人に就任できます。
認知症を患った父親の後見人に息子や娘が就任することも、基本的に可能です。
成年後見人には2つのパターンがあります。
「任意後見」と「法定後見」です。
成年後見人が任意後見か法定後見かによって後見人になる人が変わります。
任意後見人になる人
任意後見とは、認知症などになる前に本人から「後見人になって欲しい」とお願いして契約しておく成年後見のことです。
任意後見人になる人は、後見して欲しいとお願いされ契約を結んだ人です。
たとえば、自分が認知症になったときに後見人になって欲しいとAに依頼したとします。
あらかじめ契約を交わしておくことにより、いざというときの後見をお願いするのです。
法定後見人になる人
法定後見とは、裁判所が選んで選任する後見人です。
候補や希望などを確認し、裁判所が選任した人が成年後見人になります。
法定後見人の選任では、後見人の希望を裁判所側に伝えることが可能です。
手続きの際に後見人の候補者を伝えると、選任の際に裁判所が考慮してくれます。
ただし、最終的に裁判所の判断なので、候補者が確実に後見人に就任するわけではありません。
法定後見人候補は、親族や法律家などです。
後見人候補がいれば、裁判所は比較的柔軟に対応してくれます。
ですが、問題は「後見人候補に争いがある場合」です。
たとえば、長女が認知症を患った父親の預金などを管理していました。
妹や弟たちは長女が父親の預金を自分のために使い込んでいるのではないかと疑っていました。
父親に成年後見人をつけるにあたって候補者として長女の名前が挙がりましたが、妹や弟たちは疑いを持っているため反対したのです。
親族などが候補者になっている場合、裁判所は候補者を選任するケースも多いのですが、このように諍いや反対のあるケースでは、候補者欄に名前があっても選任されない可能性も高いのです。
反対や諍いがあるケースでは、弁護士や司法書士などが成年後見人に選任される可能性があります。
家族が後見人になれない場合とは
法定後見の場合は親族が後見人になるケースが非常に多いのが特徴です。
法定後見人の約30%以上が、親族が後見人に選任されているケースだといわれています。
家族は成年被後見人の生活に密着した存在ですから、後見をしやすいのです。
ただ、すべての家族が後見人になれるわけではありません。
欠格事由がある場合、家族は後見人にはなれないのです。
家族が後見人になれないのは、次のようなケースです。
- ・家族が未成年である
- ・行方不明の家族
- ・本人(成年被後見人)に訴訟をしている人
- ・訴訟をしている人の配偶者や直系血族 など
未成年は成年後見人にはなれません。
たとえば、父親が認知症で息子が後見人になりたいと考えています。
この息子が成人していれば問題ないのですが、未成年の場合は後見人になることはできないのです。
行方不明の家族も後見人になれません。
行方不明の家族が後見人に就任しても後見の事務などできませんから、当然のことではないでしょうか。
成年被後見人(本人)に対して訴訟を提起し、争っている家族も後見人にはなれません。
たとえば100万円の貸し借りを巡って訴訟している場合、訴訟の相手方が後見人の財産管理や契約サポートをするという奇妙な関係ができあがってしまいます。
そのため、成年被後見人に訴訟をしている人は後見人にはなれません。
本人に対して訴訟をしている人の配偶者や直系血族も、後見人になることはできないのです。
これらに該当して家族や親族が後見人になれない場合は、第三者である専門職(弁護士・司法書士・社会福祉士)が後見人になる可能性があります。
選ばれるまでの手続きと必要書類
家族や親族が後見人に就任するためには、必要書類を提出し、裁判所での手続きを経ることになります。
成年後見人の申立てができるのは、4親等内の親族や配偶者などです。
家族や親族が成年後見人になるための手続きと必要書類を順番に見てみましょう。
家族が成年後見人になる手続きと流れ
成年後見人になるための手続きは「裁判所への申立て前」と「裁判所への申立て後」にわかれます。
手続き全体の期間的な目安は半年ほどになります。
ただし、準備に時間がかかると、目安期間以上の時間がかかってしまうため注意が必要です。
裁判所へ申立てる前
成年後見人の申立てをする前に、裁判所へ提出する書類などを準備する必要があります。
しておくべきことと基本的な流れは次の通りです。
- ・推定相続人の同意書を集める
- ・管轄の家庭裁判所はどこか確認する
- ・かかりつけの医師などに話し診断書を書いてもらう
- ・診断書以外の必要書類を準備する
- ・管轄の裁判所から申立て書類をもらう
- ・申立て書類を作成する
- ・印紙や切手などを準備する
- ・申立て書類や必要書類に不備がないか確認する
成年後見人を決めるのは裁判所です。
そのため、裁判所が第三者の専門家を成年後見人に選任する可能性があります。
親族内で誰を成年後見人にするか意見が一致している場合は、親族に「同意書」を書いてもらい、まとめて裁判所に提出しましょう。
同意書については、親族全員分は必要ありません。
推定相続人の分の同意書があれば問題ないのです。
推定相続人でも行方不明の人や未成年、認知症で同意書の準備が難しい人の分などは不要になります。
裁判所へ申立てた後
必要書類や申立て書類の準備が整ったら、裁判所へ成年後見人の選任を申立てます。
申立て直後にすぐ後見人が決まるわけではなく、さらに手続きを進める必要があるのです。
- ・裁判所へ申立てする
- ・面接の予約を取る
- ・審理の開始と審判
- ・後見の登記をする
裁判所への申立て後は、事情などを確認するための面接が行われます。
申立てや面接を経て裁判所の審理が行われ、審判(後見人の選任)という流れです。
後見人が決まったら、後見人の登記を行う必要があります。
後見の登記は裁判所からの依頼で行われます。
選任を経て登記まで済むと、後見人としての事務スタートです。
家族が成年後見人になるための必要書類
家族が成年後見人の選任を受けるためには、裁判所に必要書類を提出して手続きを進めることになります。
手続きの際に必要になる書類は次の通りです。
- ・申立て書類
- ・戸籍謄本
- ・住民票
- ・診断書
- ・後見登記されていないことの証明書
この他にも、本人が知的障害の場合は「愛の手帳」の写しなどが必要になります。
事前に管轄の裁判所に確認しておくと安心です。
親族が成年後見人になったらすべきこと
親族が後見になったときにすべきことは、「本人の財産管理」や「契約などのサポート」「財産目録の作成や提出、裁判所への業務報告」です。
具体的には次のようなことを行います。
- ・預金や不動産などの財産管理
- ・財産目録の管理
- ・財産目録の提出
- ・病院への入院や老人ホームへの入居手続きなど
- ・不動産の処分(裁判所の許可を要する)
- ・裁判所への報告を行う
親族が成年後見人になった場合にまず行うのは、財産目録の作成です。
就任時の財産状況を確認するためにも財産目録を作成し、裁判所に提出しなければいけません。
財産目録は後見人として裁判所に報告を行うときも、報告書へ添付することになります。
財産状況の変動などを裁判所にチェックしてもらうためです。
よく勘違いされますが、介護については成年後見人のすべきことではありません。
食事や排せつの世話などの介護を成年後見人の仕事にしてしまうと、弁護士が赤の他人である成年被後見人の介護をするなどの奇妙な関係になってしまいます。
成年後見人の主な仕事は財産管理や、契約の締結や解約などです。
婚姻や養子縁組などの身分行為の代理もできません。
親族が成年後見人になった時に注意すべきポイント3つ
親族が成年後見人になった場合、注意すべきポイントが3つあります。
成年後見人の事務をスムーズに行うためにも、注意点について知っておきましょう。
裁判所へ報告する義務がある
成年後見人は財産管理などを行うだけでなく、裁判所に事務の報告も求められます。
具体的には領収書の管理や収支のまとめなどを行い、裁判所に提出することになるのです。
弁護士や司法書士が後見人になった場合と親族が後見人になった場合、双方とも報告義務は変わりません。
裁判所への報告は年1回必要です。
ただ通帳などを管理すればいいというわけではなく、厳格かつ細かな管理と報告が求められます。
不動産の処分などは裁判所の許可が必要
後見人の事務の中には裁判所の許可を要するものがあります。
代表的なものが「不動産の処分」です。
成年被後見人の不動産を売却するなど、不動産の処分を行う場合は裁判所に事情を説明して許可を取る必要があります。
後見人だけの判断で不動産処分が行われると、成年被後見人が住居を失ってしまうなどの事態に陥る可能性があるためです。
後見監督人がつく場合がある
親族の後見人に対して後見監督人がつく場合があります。
後見監督人とは、後見の事務を監督する存在です。
弁護士や司法書士などが監督人に就任し、事務の監督役を務めると考えればわかりやすいのではないでしょうか。
後見監督人がいる場合は、不動産の処分などを行うときに裁判所の許可だけでなく後見監督人の同意も必要です。
後見監督人は事務の監督役ですが、相談役でもあります。
わからないことがあれば後見監督人に相談してみるといいでしょう。
まとめ
成年後見人になるためには特別な資格は必要ありません。
欠格事由に該当しなければ、家族でも成年後見人になることが可能です。
ただし、家族が成年後見人に就任するためには、基本的に裁判所の選任を経る必要があります。
裁判所での手続きには、必要書類などの準備が不可欠です。
準備や手続きが難航すると、成年後見人への就任が遅くなってしまいます。
必要書類や申立て書類のことでわからないことがあれば、弁護士などに相談して手続きを進めてはいかがでしょう。
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