この記事でわかること
- 信託登記とは何かやその必要性、登記の内容が理解できる
- 信託登記の費用は大きく分けて登録免許税と報酬であることが分かる
- 司法書士へ依頼する際の登記費用は10万円前後であることが分かる
- 費用の節約目的で専門家に頼まないとリスクがあることが分かる
家族信託は、大切な財産の管理などを家族に託すことができるため、第三者に依頼する不安や手間もなく、手軽さや安心感があります。
また、信託会社に依頼する場合のような手数料や高額な費用もかからないため、コストの面でも魅力的です。
しかしながら、不動産を含む家族信託では「信託登記」が必要となりますが、一般的に手続きについてはよく知られているわけではありません。
このため、信託登記とは何かや、その必要性、登記する内容、信託登記費用について把握しておけば、安心して検討を進めることができます。
以下では、信託登記の主な費用である登録免許税と専門家への報酬、内容や相場について紹介します。
また、専門家に依頼するメリットやデメリット、費用を節約するためだけに専門家に依頼しないことのリスクもあわせて紹介します。
目次
信託登記とは
まず、家族信託での信託登記の意義を知るために、信託登記とは何か、登記する必要性があるか、何を登記するかなどを確認しましょう。
信託登記とその必要性
不動産を取得すると、所有権の保存や移転登記を行うことによって、第三者に対してその不動産の所有者であることを主張できるようにします。
一方、家族信託では、不動産の所有者を、財産を託す受託者に変更する登記を行いますが、これが信託登記です。
この信託登記では所有者名が受託者に変わりますが、あくまでも信託財産を分離して管理するための「形式的な」手続きです。
信託登記をしたからといって、信託財産が受託者個人の財産になるわけではなく、独立した財産として登録されることになります。
登記は第三者に所有権を主張するための対抗要件であり、信託された財産であることを主張するためには、必ず登記が必要です。
逆に言えば、信託不動産が登記されていなければ、信託財産であることを証明できないということになります。
たとえば、それが相続や贈与によって受託者個人のものであると疑われた場合などには、登記がなければ立証できないのです。
信託登記の内容
信託登記では、家族信託の基本的な事項が登録され、第三者に信託財産であることを主張することが可能になります。
不動産登記簿には、登記の受付年⽉⽇、登記原因が信託であること、受託者であることを明示して⽒名と住所が記載されます。
また、信託⽬録として、受託者と受益者の住所と⽒名、信託の⽬的や信託財産の管理⽅法、信託の終了事由など信託契約書の条項が付されます。
このような内容が記録されるため、信託財産が受託者個人の財産には属さず、家族信託された財産であると証明できることになります。
信託登記の費用は大きく分けて2種類
家族信託の信託登記費用としては主に、登記にかかる税金である登録免許税と、専門家に依頼する場合の報酬がかかります。
登録免許税
信託登記の登録免許税には、所有権移転と、信託に関する登記があり、信託分については、不動産の固定資産税評価額に一定の税率を乗じた額が課税されます。
この税率は、土地が固定資産税評価額の0.3%、建物が0.4%とされる一方で、所有権移転分については課税されません。
ちなみに、相続や贈与に伴って所有権を移転する場合、不動産の固定資産税評価額に対して、相続では0.4%、贈与では2%の登録免許税がかかります。
専門家への報酬
一般的には司法書士のような専門家に依頼することが多く、その場合には専門家に対する報酬の支払いが発生します。
なお、信託登記の申請は、管轄する法務局で手続きを行うことになりますが、書類が全て整えば、受託者自身で行うことができます。
登録免許税は税金ですから、自分で手続きをするにしても節約することは難しいですが、専門家への報酬については自力でやればかかりません。
信託登記費用を節約しようと思うのであれば、こういった費用の節約方法もあります。
司法書士への登記依頼費用相場は10万円前後
信託登記の申請書や各種必要書類を揃えて法務局に提出する手続きを司法書士に依頼する場合の費用を、確認しましょう。
登記の必要書類
一般的な登記で必要な書類には次のようなものがありますが、個々のケースで異なるので注意が必要です。
まずは基本的に、信託登記の申請書が必要です。
信託に関わる当事者については、「委託者」と「受託者」の印鑑証明書、「委託者」や「受託者」「受益者」に関する戸籍謄本や住民票を準備します。
登記の対象となる不動産については、固定資産評価証明書や名寄帳、登記事項証明書、公図、登記済証または登記識別情報も必要です。
司法書士への報酬
通常の信託登記であれば、登記申請手続きを依頼する費用は10万円前後が相場です。
なお、報酬額については、一律の基準はなく、専門家それぞれの判断で決められますが、信託財産の額に応じて報酬が高くなる傾向もあります。
しかし、家族信託の登記は、所有権移転登記と同時に信託登記も行う必要があるため、専門的な知識や経験が必要です。
特に、信託⽬録については、信託の⽬的や信託財産の管理⽅法、信託の終了事由など信託契約書の条項を整理しなければなりません。
家族信託の信託契約はそれぞれの状況によって異なり、2次相続に該当するような将来的な指定もできるなど複雑になります。
このようにそれぞれで異なる信託契約を、信託目録として作成する場合に、ひな形を当てはめることは困難です。
また、のちにトラブルを招かないように法的な有効性や仕組みを確保する必要があり、相続登記などとは異なる難しさがあります。
このため、家族信託の信託登記については、専門家に依頼することがおすすめです。
費用の節約目的で専門家に頼まないのはリスクがある
信託登記を自分で行えば費用を節約することができますが、専門家に依頼しない場合のリスクも考えなければなりません。
逆に言えば、専門家へ依頼すればリスクを回避できるとともに、専門家に依頼することで生じるメリットが受けられます。
費用を抑えるためだけに専門家に依頼しないことで生じるリスク
家族信託契約書の作成や信託登記の申請などを自力で行えば、かかる費用を節約することができる反面、以下のようなリスクが発生します。
信託契約の不備で思ったとおりに実現しないリスク
家族だけで作り上げた信託契約では、思ったとおりの家族信託を、必ずしも実現できるわけではないことが大きなリスクです。
家族信託は、専門家に依頼せずとも実行が可能で、遺言では指定できないような、孫などへの財産承継を指定するといったような柔軟な設計も可能です。
しかしながら、柔軟な代わりにひな形のない契約となるため、間違いや漏れが発生しやすく、法律的に無効になってしまう恐れもあります。
たとえば、相続人に認められている「遺留分」を侵害する信託契約については、公序良俗に反するため無効とされた判例もあります。
また、信託財産を預ける信託専用口座を開設する際などに、公正証書の提出を求められるケースもあります。
公正証書化する際に信託契約の内容や記載事項について不備があれば、修正や作り直しなどの手間や余計な出費が発生する原因になります。
費用を節約するために家族だけで信託契約を作成したものの、かえって時間や費用がかかり、また、余計な精神的負担を抱えることにもなりかねません。
開始後にトラブルが発生するリスク
信託契約の不備から思わぬトラブルを招くケースもあります。
受託者死亡による後継者決定に手間取れば、契約が強制的に終了するケースや、受託者の監督ができず、財産管理が不適切な事態もあり得ます。
専門家に依頼しないことも可能ではあるものの、長期的に信託財産を管理・運営し、相続人などに承継していくためにも、専門家に依頼することがおすすめです。
専門家を通すメリット
専門家に依頼しないリスクを先に紹介しましたが、専門家に依頼することによって、そのようなリスクを最低限に抑えることができます。
このリスク防止効果こそが、専門家を通す最大のメリットです。
信託契約のリスクを最低限に抑えることができる
第一に、将来的に安心できる信託計画を設計することができるメリットがあります。
家族信託では、将来的に起こりうる相続税や贈与税、契約終了時の信託財産以外の財産も含めた相続手続きなども想定しておく必要があります。
専門家に依頼する場合は、これらの問題や課題を総合的に俯瞰した視点で設計できるため、将来的なリスクを大きく削減できます。
また、専門家に依頼することによって、家族間での話し合いに対するアドバイスや、契約内容の整合性や法的有効性が確認できることも大きなメリットです。
すべての事務処理を安心して任せることができる
さらには、専門家に事務的な負担を一括して任せることができ、手間や精神的な負担を減らすことができることもメリットでしょう。
信託の設計や契約書の作成、契約書の公正証書化、不動産の信託登記など、かなり面倒な法律的な事務処理をこなさなければなりません。
将来的な課題に対応できる契約書の作成には、総合的な知識が必要ですし、公正証書を作るにしても公証人との事前調整などが必要です。
信託登記を自力で行う場合は、やっと準備した必要書類を提出しても、修正や不足資料の提出を求められるなど、慣れない方には気苦労の連続です。
家族信託開始後も相談や依頼ができる
信託開始後も、変更や疑問などが発生します。
継続して同じ専門家に依頼する場合は、安心して相談や依頼ができるとともに、余計な労力や費用を省くこともできます。
たとえば、信託登記で委託者や受託者、受益者などについて登録しますが、実行後に死亡した場合は、その都度変更登記が必要です。
信託契約の当事者の変更だけではなく、信託⽬録の記載内容に変更が生じた場合も、その都度変更登記を行わなければなりません。
このようなときに、信託契約の設計や契約書作成に携わった専門家であれば、その内容を熟知しているため、改めて説明する必要がありません。
まとめ
家族信託は、家族だけで信託契約を作り、受託者自身で信託登記を済ませば、信託登記費用を最小限に抑えることが可能です。
しかしながら、家族信託の完了までをスムーズに成し遂げようと思えば、家族信託に詳しい専門家の知識やフットワークに頼ることがおすすめです。
特に、受益者を、配偶者、子、孫などと連続して指定しておく家族信託は、信託が長期に及ぶため、開始後に契約内容の不備や不測の事態も起こりがちです。
費用を節約する目的だけで専門家に依頼しないとすれば、信託が開始できないリスクや開始後に頓挫する結果にもなりかねません。
すべてを委託しないまでも、アドバイスを受けるといった利用法もありますから、疑問や不安がある場合は、専門家への相談をおすすめします。
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