この記事でわかること
- 相続で残高証明書が必要となる2つのケースがわかる
- 相続に必要な残高証明書の取得方法がわかる
- 相続に必要な残高証明書の発行手数料がわかる
- 残高証明書に請求漏れがないか調べる方法がわかる
- 相続に必要な残高証明書を請求する際の注意点がわかる
日本銀行が公表した資料によると、2015年現在の預貯金口座数は1人あたり10口座であり、世界的にみても大変多い数値となっています。
口座の保有率も高いため、ほとんどの家庭では預貯金口座が相続財産に含まれるでしょう。
しかし、これだけ数が多いと家族も知らない口座が当然出てきます。
また、相続財産の評価は本人が亡くなったときの時価になるため、死亡時の残高がいくらだったのか調べる必要もあります。
過去の預金残高は残高証明書によって判明しますが、請求できる人は限られており、必要書類も提出しなければなりません。
今回は残高証明書の請求方法を紹介しますが、「どの銀行に口座があるかわからない」というケースにも対応できるよう、口座が不明な場合の調査方法も解説します。
目次
相続に残高証明書が必要となる2つのケース
ほとんどの相続財産には被相続人名義の預貯金口座が含まれており、遺産を分ける際には相続発生時の残高を調べておく必要があります。
そこで利用されるのが銀行や証券会社などに請求する「残高証明書」ですが、相続で必要となるケースは次の2つです。
様式は各機関によってまちまちですが、いずれも口座名義人が死亡した時点の残高や、評価額を証明する資料となります。
遺産分割協議に必要
遺言書がない相続の場合、相続人全員が話し合って遺産の分け方を決めていきます。
この話し合いを遺産分割協議といいますが、相続財産に預貯金口座があれば名義人死亡時の残高を確認する必要があります。
被相続人が通帳を管理していると死亡時の残高は記帳されていないので、必要書類とともに銀行に出向いて手続きが必要ですが、残されている過去の入出金状況からある程度の推測はできます。
しかし金額を明確にしておかなければ「本当はもっとあったのでは?」と他の相続人から使い込みを疑われるかもしれません。
また、ネット銀行のように通帳がない口座も増えているため、取引明細が保管されているか確認し、ない場合は残高証明書を請求してください。
残高証明書があれば遺産分割協議も円滑に進み、相続トラブルの防止にもなります。
相続税の申告に必要
基礎控除を超える遺産があった場合は相続税申告が必要となり、残高証明書を添付して相続発生日の預金残高を証明します。
相続財産が基礎控除内に収まっていれば申告・納税は不要になるため、以下の計算で基礎控除額を確認しておきましょう。
・相続税の基礎控除:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
法定相続人が1人しかいない場合は3,600万円が基礎控除額になります。
また、相続税申告は「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」が期限であり、経過すると追徴課税などのペナルティもあります。
残高証明書の発行にはある程度の日数もかかるので、申告期限が迫った状態で請求しないよう気を付けましょう。
なお、死亡日の残高が少額であることが通帳からわかる場合は、通帳のコピーが添付書類として認められるケースもあります。
相続に必要な残高証明書を取得する方法
残高証明書の請求はほとんどの金融機関に共通した流れがあり、次のような手順になっています。
なお、残高証明書を請求できる人は限定されており、手続きの際には必要書類も提出するため、漏れがないよう準備するようにしましょう。
各金融機関へ連絡
残高証明書を請求する場合、まず被相続人の取引銀行などへ連絡し、名義人の死亡や残高証明書が必要であることを伝えておくことをおすすめします。
直接窓口に出向いても構いませんが、請求時には戸籍などの書類を添付するため、あらかじめ電話で確認しておいた方が効率的です。
金融機関によっては相続専門のフリーダイヤルを設けているので、今後の手続きの流れも確認しておくとよいでしょう。
必要書類の準備
相続手続きのために残高証明書を発行する場合、請求時には以下の書類が必要となります。
- 銀行等が指定する残高証明発行依頼書
- 対象口座の預金通帳やキャッシュカード
- 被相続人の死亡がわかる戸籍または除籍謄本
- 請求者が相続人であることを確認できる戸籍謄本
- 請求者の実印と印鑑登録証明書
- 請求者の本人確認書類(運転免許証等)
法定相続情報一覧図を提出する場合は被相続人や相続人の戸籍等は不要です。
ただし、銀行によっては被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍が必要なので、行き違いがないように事前にしっかり確認してください。
残高証明発行依頼書の様式は金融機関のホームページに掲載されている場合もあるので、あらかじめ様式をダウンロードしておきましょう。
また、印鑑登録証明書は発行から3ヶ月、または6ヶ月以内などの指定があります。
残高証明書を請求できる人
相続人であれば誰でも残高証明書を請求できますが、他にも遺言執行者や相続財産管理人、相続人の代理人となる弁護士や税理士なども請求可能です。
残高証明書は1人で請求できるため、他の相続人の同意や委任状は必要なく、よくあるケースは代表相続人(長男など)による請求です。
代理人に任せる場合は委任状が必要であり、特に様式は問われませんが、金融機関指定のものがあればそちらを使った方がよいでしょう。
なお、金融機関によっては一定範囲内の親族や、特定の士業に代理人を限定している場合もあります。
残高証明書の発行請求
残高証明書は基本的に窓口請求となりますが、一部の金融機関では郵送扱いも可能です。
証券会社の場合は郵送が基本となるので、それぞれ確認しておくとよいでしょう。
残高証明書は請求者あての郵送が一般的ですが、窓口交付に対応している銀行等もあり、受け取りの際には本人確認書類なども必要になります。
なお、銀行によってはPDF形式のダウンロードサービスもあり、夜間でも利用できるため、ご自分の生活スタイルに合った方法で行いましょう。
請求から受け取りまでの日数と手数料
残高証明書を請求した場合、受け取りまでの日数は概ね1週間~10日前後です。
ただし、金融機関によって郵便の種類が異なり、普通郵便であれば留守でもポストに投函されますが、本人限定受取郵便の場合は再配達か窓口受取になります。
自宅を留守にしやすい人は受け取りまでに時間がかかる場合もあるので注意してください。
残高証明書の発行手数料は金融機関によってまちまちですが、主な銀行では1通あたり以下の料金になっています。
- 三菱UFJ銀行:770円
- 三井住友銀行:880円
- みずほ銀行:880円
- りそな銀行:880円
- ゆうちょ銀行:520円
- ソニー銀行:440円
- 住信SBIネット銀行:880円(PDF形式は無料)
- 各種証券会社:無料のところが多い
残高証明書の請求漏れがないか調べる方法
遺産分割協議や相続税申告に備え、残高証明書は早めに取得するべきですが、口座の存在そのものを家族が知らないケースもあります。
また、取引銀行はわかっているが、通帳やキャッシュカードが見当たらないために残高証明書を請求できない場合もあるでしょう。
このようなケースでは、通帳やキャッシュカード以外で口座情報がわかる場合もありますが、手掛かりがない場合は銀行に口座の有無を調査依頼できます。
具体的には次のような方法になるので、身の回りの書類なども調べてみましょう。
過去の確定申告書などを調べる
被相続人が過去に確定申告していれば、確定申告書から銀行名や口座番号がわかります。
税理士に確定申告を依頼している場合もあるので、付き合いのある税理士がいれば確認してみましょう。
また、携帯電話の通信料や公共料金の支払いに口座振替を利用している場合、申込書や契約書の控えから口座番号がわかる場合もあります。
借金の契約書や支払明細から判明する場合もあり、ネット銀行を利用していればパソコン内に口座番号などを記録したファイルが保存されている可能性もあります。
トークン(小型のパスワード生成装置)があれば取引銀行だけでも判明するので、遺品整理しながら細かくチェックしてみてください。
銀行等に調査依頼する
取引銀行がわかっていれば、被相続人の氏名や生年月日、住所などの情報から口座の有無を調べてもらえるので、最寄りの支店に問い合わせてみましょう。
ただし、通知されるのは「○○支店に口座がある」という情報だけなので、口座番号や死亡時の残高証明書は、口座開設していた支店に直接請求となります。
また、口座の調査を依頼できるのは原則として相続人や相続人の代理人、遺言執行者や相続財産管理人に限られます。
ちなみに名義人の氏名等から調査する方法を名寄せといいますが、同姓同名の別人もいるため、生年月日や過去の住所情報は正確に伝えるようにしてください。
相続に必要な残高証明書を取得するときの注意点
相続手続きのために残高証明書を取得する場合、いくつか覚えておきたい注意点があります。
手順によっては何度も金融機関に出向くことになるため、時間が無駄にならないよう効率的に残高証明書を取得しましょう。
金融機関への電話連絡からスタートする
残高証明書の発行には戸籍等の書類を提出するため、手ぶらの状態では受け付けてもらえません。
また、提出書類はほぼ共通していますが、金融機関によっては追加提出を求められる書類もあるので、まずは電話連絡で何が必要か確認しておきましょう。
大手銀行では相続専門の電話受付窓口を設置しているケースが多く、窓口に出向かなくても残高証明書の発行手続きを受け付けてくれる場合があります。
必要書類が揃えば郵送扱いで残高証明書を取得できるので、役所に出向くだけで手続きの準備が完了する場合もあるでしょう。
音声案内で必要書類を教えてくれる銀行や、チャット(パソコンを使った文字会話)に対応した銀行もあるので、ホームページから調べてみてください。
被相続人の死亡日の残高を請求する
残高証明書を請求する際、被相続人の死亡日以外の日付で請求しないよう注意してください。
「当たり前では?」と思われるかもしれませんが、うっかり請求日の日付を記入してしまうことや、葬儀を行った日付を記入する例があります。
日付を誤ると最初からやり直しになり、遺産分割協議の日程にも影響するため、必ず死亡日の残高証明書を請求するように注意しましょう。
定期預金があれば経過利息証明書も請求する
定期預金の残高証明書には元金が記載されていますが、預け入れの日から相続発生日までの利息額も必要になるため、経過利息証明書も請求しておきましょう。
超低金利であっても、元金が高額であれば利息も大きくなり、銀行によっては100倍以上の金利差もあります。
遺産分割協議や相続税額にも影響するので、定期預金がある場合は必ず経過利息証明書を取り寄せましょう。
預金口座の凍結に注意
名義人の死亡がわかると、各金融機関では口座を凍結状態にします。
被相続人の口座を死亡時の状態で保全する目的ですが、凍結状態になった口座は入金や出金ができなくなり、公共料金などの引落しにも影響します。
電気・水道などの料金が被相続人の口座から引き落とされている場合は、早めに相続人名義の口座へ切り替えておきましょう。
また、口座凍結の解除には解約または名義変更の手続きが必要であり、遺言書や遺産分割協議書とともに戸籍等の書類も提出します。
すべての書類が揃っていても手続きには1~2週間かかるため、葬儀費用などを被相続人の口座から引き出したい場合は、預金の仮払い制度を利用してください。
預金の仮払い制度は一定額まで引き出し可能であり、当面の生活費を確保する場合にも利用できます。
まとめ
かつての銀行では口座数が格付けに影響したため、預金者にとって不要な口座でも銀行からの働きかけで開設させる動きがありました。
現在は維持管理コストの面から一つの口座に集約させていますが、一方ではネット銀行の利用も増えており、個人が保有する口座は依然として多いようです。
したがって、相続が始まると高確率で残高証明書を請求することになるため、必要書類や手順はしっかり覚えておきましょう。
「忙しすぎて預金口座の調査さえできない」という方であれば、弁護士や司法書士、行政書士などの専門家に調査や相続手続きを依頼できます。
相続税が発生する場合は早めの段階で税理士に関わってもらい、相続税申告まで依頼することも検討してください。
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