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最終更新日:2023/4/10

換価分割とは?遺産分割協議書の記入方法と発生する税金について解説

本間 剛 (行政書士)
この記事の執筆者 行政書士 本間剛

ベンチャーサポート行政書士法人 代表行政書士。山形県出身。

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換価分割とは?遺産分割協議書の記入方法と発生する税金について解説

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人が亡くなって相続が開始された場合、亡くなった方(被相続人といいます)が所有していた財産は相続人に相続されます(民法第896条)。

そしてそれらの相続財産は、最終的に遺産分割協議等によって誰が取得するかを決定することになります。

ここでは、そのよう遺産分割方法としてどのような方法があるかを確認したうえで、その中の「換価分割」という方法について、具体的なやり方と税金との関係について見ていきます。

換価分割とは遺産分割方法の1つ

換価分割とは遺産分割方法の1つ

換価分割とは、亡くなった方が所有していた土地や不動産を相続する際に、土地や不動産を「お金」に換えて相続する方法のことです。

現物をそのまま相続する方法は「現物分割」とよばれるものですが、1つの土地・不動産を相続人全員で分けることが難しいため、価値を一旦お金に換えて分割する「換価分割」が選択されるケースも少なくありません。

遺産分割の方法

少しお話しましたが、遺産分割の方法には主に以下の3つがあります。

  • 現物分割
  • 換価分割
  • 代償分割

現物をそのまま相続する場合は「現物分割」、現物を一度お金に換えて相続人で分割するのが「換価分割」です。

代償分割は、相続人の一人が現物を相続し、残りの相続人に対して相続割合の現金を渡す分割方法となります。

現物分割

現物分割とは、相続財産に含まれる財産をそのまま各相続人が取得する方法による遺産分割方法です。

たとえば、被相続人の自宅の土地・建物は配偶者が取得し、別荘は長男が取得し、株式・預金は次男が取得するという形で分割する方法などがあります。

現物分割の説明図

換価分割

換価分割とは、不動産や株式などの相続財産を売却し、その売却代金を相続人の間で分割することで、税負担が軽減される効果がある遺産分割方法です。

たとえば、相続財産が被相続人の自宅の土地・建物のみ(価格4,000万円)の場合を考えてみます。

この場合、これを売却してその売却代金を配偶者、長男、次男で、それぞれ配偶者が2分の1、長男・次男がそれぞれ4分の1ずつ取得するという形で遺産分割を行います。

換価分割の説明図

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代償分割

代償分割とは、価値のある相続財産を相続人の一人が取得し、その代わり、その財産を取得した相続人が他の相続人に対して、それらの相続人が取得するべきであった相続割合に相当する金額を補償するという遺産分割方法です。

相続財産が被相続人の自宅の土地・建物だけで、その評価額が4,000万円とした場合を考えてみます。

配偶者がそれを取得し、長男と次男には配偶者がそれぞれ1,000万円ずつ支払うことによって、実質的に配偶者が2,000万円(4,000万円の不動産を取得して長男・次男にそれぞれ1,000万ずつの合計2,000万円ずつを保証金として支払っているため、差引2,000万円分の相続財産を取得したことになります)、長男と次男がそれぞれ1,000万円ずつを取得するという形で遺産分割を行うことになります。

代償分割の説明図

換価分割を選択すべき場合(メリット)

ここからは3つの遺産分割方法から、換価分割を選択すべき場合について見ていきましょう。

また、同時にどのようなメリットが得られるのか?も合わせて確認していきます。

  • 相続人間の公平性を確保したい場合
  • 現物分割・代償分割が困難な場合
  • 当該相続財産の相続を希望しない場合

換価分割が他の分割方法に比べて優れている点は、相続人の間で公平性を確保できることです。

相続人の誰か一人が遺産を相続する場合だと、不公平な印象が拭えないこともあります。

遺産相続において「不公平」だと感じることは揉め事へと発展するきっかけとなりますので、なるべく避けたいのが相続人同士の本音をいえるでしょう。

換価分割は分けやすい「お金」に価値を分割する方法ですので、相続人同士が納得した上で手続きできる可能性が高いといえます。

相続人間の公平を確保したい場合

現物分割の場合、各相続人の取得する財産の価値を民法が定める相続分に正確に合致させる事は、現実問題として困難です。

そのため、相続人間に不公平感が生じる可能性があります。

対して、換価分割の場合は相続財産を分割可能な現金に換えて、これを相続分に応じて正確に分けることができます。

そのため、相続人間で不公平が生じにくいというメリットがあります。

現物分割・代償分割が困難な場合

相続財産の大半が不動産である場合のように、現物分割するのが困難なものである場合には、現物分割による遺産分割はできません。

その場合は換価分割による方法か、代償分割による方法を選択するしかないと言えます。

代償分割をするためには、当該相続財産を取得した相続人が他の相続人に対して、他の相続人の相続分に相当する価額を補償する必要があります。

その結果、当該財産を取得する相続人が他の相続人の相続分を補償するに足りるだけの資産を有している場合でなければ、代償分割は使えないことになるのです。

結局、現物分割が困難な財産があって、かつ代償分割をするだけの資産を有する相続人がいない場合は、消去法として換価分割を選択せざるを得ないと言えます。

当該相続財産の相続を希望しない場合

被相続人が地方に居住していたため、地方にある被相続人の自宅の土地・建物が相続財産にある場合はどうでしょうか。

相続人全員が既に東京に居住していて、地方の土地・建物を取得しても利用価値がないといった場合は、この土地・建物を現実に取得するのではなく、これを売却して、その売却代金を相続人間で分配することが好ましいといえる場合があります。

このように、現実の財産を取得する事が有益とは言えない場合も換価分割の方法が選択されることになります。

換価分割のデメリット

換価分割は相続人同士で起こる衝突などを避けられるメリットがありますが、不動産を売却することに変わりはありませんので、現金以外の資産が減ってしまうデメリットが挙げられます。

また、売却手数料や、希望通りの価格で売却できないなど、別の問題が発生してしまうこともあるため、亡くなった方が所有していた土地・不動産の価値によって分割方法は慎重に選択しなければなりません。

換価分割の進め方・流れ

換価分割のメリット・デメリットを確認した後は、換価分割の進め方・流れについて見ていきましょう。

  1. 相続不動産の権利関係・価格調査
  2. 遺産分割協議(遺産分割協議書の作成)
  3. 相続登記
  4. 売却方針の決定
  5. 買主との売買契約
  6. 買主から売買代金を受領
  7. 遺産分割協議書に記載の「分配割合」に基づいて売却益を分配

換価分割は先述した通り、不動産の売却によって得たお金を相続人間で分ける遺産分割方法です。

したがって、まずは相続不動産の価値を調べ、誰がどのように遺産を相続するのか?を決める「遺産分割協議」を実施しなければなりません。

遺産分割協議で決定した内容は「遺産分割協議書」に記載し、記載内容にしたがって相続登記を行います。

その後、名義変更手続きが済んだ不動産の売却方針を決め、買主との売買契約を進めていくのが通常の流れとなります。

買主と売買契約を結んだ後は多くの場合引き返すことが難しくなりますので、売却方針を決定する際に覚悟を決めておくことがポイントとなります。

買主から売買代金を受領した後は、遺産分割協議書に記載されている「分割割合」に基づいて売却益を相続人間で分割しましょう。

換価分割で発生する可能性がある税金

換価分割では以下の2つの税金が発生する可能性があります。

・譲渡所得税
換価分割を選択して、売却した不動産に売却益が発生した場合は、利益分の税金(譲渡所得税)を納める必要があります。

譲渡所得税の課税は、売却益がそれぞれ相続人間で分割された後、居住用財産であるかどうかによって変わります。

・贈与税
換価分割の特性上、相続人の一人の名義で売却手続きを行うことがありますが、遺産分割協議書などを作成していない場合、売却して分割するお金を「換価分割によって発生したお金」と証明できないケースがあります。

換価分割によって売却したお金には贈与税がかかりませんので、なるべく遺産分割協議書を作成しておくことをおすすめします。

まとめ

今回は遺産分割方法の1つである換価分割について説明していきました。

換価分割には公平性を確保できるメリットがある一方で、不動産を失ってしまうデメリットもありますので、相続人間でしっかりと話し合った上で選択するようにしましょう。

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