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無事に相続税の申告書を提出、これでもう一段落かなと思ったら、しばらく経って税務署から税務調査の連絡が来たとしたら…例え心当たりがなくたって、途端に不安になってしまいますよね。
でも、大丈夫!あらかじめ税務調査の概要をつかみ、事前にしっかり準備をしておけば心配することはありません。
税務調査の当日に余裕を持って対応することができます。
こちらでは、税務調査の準備から当日の流れまでをまとめています。
税務調査…どんな姿勢で臨めばいい?
税務調査の実施が決まったら、相続人のみなさんも税理士も、心掛けるべきは「税務署に対して協力的な姿勢で対応すること」です。
言うまでもなく、税務署は申告漏れや申告間違いを見つけるために調査を実施します。
それに対してネガティブな感情を抱いてしまうは当然のことではありますが、なるべく表には出さずに対応することが大切です。
というのも、ここでの対応の仕方が調査官の目にどう映るかが、後々に響いてくる可能性があるからです。
税務調査といえども、行うのは人である調査官です。
例えば調査の結果、何か判断が難しい材料が出てきたとします。
調査時に反抗的な態度を取った相続人と、誠実に対応した相続人。
最終的に明確な決め手がなかった場合、やはり判定に調査時の心象も無関係ではいられません。
まずはじめの準備として、この心構えを持っておきたいところです。
税務署から税務調査の連絡が来た!正しい対応は?
税務署で税務調査の実施が決まると、電話で連絡があります。
連絡が来る先は、相続税の申告を税理士が行っている場合には税理士、本人が行っている場合は本人です。
通常「任意調査」ではありますが、実際には断る選択肢はありません。
税理士へ連絡が来る場合には税理士が対応するため心配は無用ですが、そうでない場合に知っておきたいポイントを見ておきましょう。
ポイントは日程の調整
税務署から税務調査実施の連絡があった際に気を付けるべきは「調査の日程」です。
一般的に、電話連絡の際に税務調査官から1~2週間後の日程を提示されるケースが多いです。
ですが、必ずしもその日程に応じる必要はありません。
任意調査であれば、調査を受ける側の都合に合わせた日程を交渉してもよいのです。
そして、ぜひ余裕を持った日程に調整をしてください。
理由は、時間があれば税務調査に向けて入念な事前準備ができるからです。
事前準備についてはこの後詳しくお伝えしますが、準備がどれだけできているかどうかで予想外の追加徴税を回避できる可能性がぐっと高まります。
日程を変更したい理由は追及されませんので、堂々とご自分の都合に合わせた日程にしてください。
税務調査の事前準備
税務調査を無事に乗り越えられるかは、事前の準備が大きく影響します。
こちらでは具体的な準備方法についてまとめています。
税理士に立ち合いを依頼する
税務調査が決まった場合、最初にすべきは税理士への立ち合いの依頼です。
相続人のみなさんは、ほとんどの場合税金や相続についての専門知識をお持ちでないと思います。
そのため、もし自分に不利な指摘を受けた場合でも、反論ができずそのまま税務署の言い分を呑む以外の選択肢がなくなります。
しかし、税金に関しては解釈の余地があることも多いため、専門知識や多様な経験がある税理士が対応すれば論破できるケースは少なくありません。
気になるのは税理士に立ち合いを依頼したときの報酬ですが、税理士によるものの、相場は「1日3~5万円 ✕ 調査日数」のあたりです(税理士ドットコム調べ)。
一方で、税務調査の結果、追加徴税を要求されたときに支払う金額を考えて比べてみてください。
しかも、税理士の立ち合い依頼をしなかった場合には事前準備を全て自分で行う手間が掛かります。
どんなことが聞かれそうか、何を把握しておくべきか、どの情報をどこまで話してよいのか・・・実に様々なことをひとりで想定し、整えておくのは容易なことではありません。
ここまで考えると、税理士の立ち合い費用は必要な費用だと納得できるのではないでしょうか。
相続税に関する税務調査が決まった場合は、準備の段階から税理士への立会い依頼が不可欠と考えておくべきでしょう。
相続税の申告書作成を税理士に依頼している場合には、税務調査の連絡はまず税理士にいきます。
申告内容については申告書を作成した税理士が最も詳細に把握しているからです。
そのため、相続人には税理士から税務調査実施の連絡が来るかと思います。
連絡が来たら税理士にそのまま税務調査の立会いを依頼するようにしましょう。
また、相続税の申告を税理士に依頼せずご自身で行っていたような場合には、相続人本人に直接税務署から電話が掛かってきます。
申告書の作成時に税理士に依頼していなくても、税務調査の立会いだけを依頼することも可能です。
この場合は申告時の資料や状況を最初から税理士と共有しなければならないので大変ですが、税務調査前にまずは税理士に事前相談に行くことをおすすめします。
申告内容を見直す
税務調査が決まって税理士への当日立ち合いの依頼が完了したら、次にすべきは申告内容の見直しです。
もう一度申告内容に間違いがないか、指摘が入るとしたらどこの部分なのかを念入りに確認しておきましょう。
見直した結果、何の間違いも見当たらず、税務調査で問題になりそうな点がなかった場合は、他に特段の準備は必要ありません。
堂々と当日を迎えればよいでしょう。
それで大丈夫なのかと心配になるかもしれませんが、そもそも間違いや問題になりそうな点がなくとも、税務署は税務調査を行うことができます。
実際にはこのようなケースで税務調査が実施されるのは、相続財産の総額が3億円以上の相続税の申告に関することが多いです。
財産が多ければ申告漏れが起こる可能性も高く、もし追加徴税できたとしたらその額も大きいために確認の意味合いで調査を行うからです。
一方で、申告内容を見直した結果、申告内容が間違っていた場合や、申告の漏れている財産が新たに見つかった場合が問題です。
この場合は、税務調査の当日を迎える前に自主的に修正申告をするという選択肢を検討してください。
申告間違い・申告漏れがあれば、事前に修正申請を
申告内容を見直した結果、申告内容の間違いや財産の申告漏れを発見した場合は、税務調査前の自主的な修正申告をするのが賢明な判断です。
なぜかというと、申告に間違いや漏れがあり追加の納税をしなければならないときに、税務調査を経て指摘がされた場合と税務調査前に自ら修正申告する場合では、納めるべき金額に違いが起こるからです。
税務調査での具体的な指摘を受けた場合には、修正申告の際に、追加で支払う相続税の他に過少申告加算税として10%を納めなくてはなりません。
一方、税務調査前に自ら修正申告した場合には、この過少申告加算税は原則5%になります(50万円までは5%、50万円を超える部分は10%)。
この過少申告加算税の10%は新たに納めることになった税金の額に対してかかります。
ただし、新たに納める税金が「当初の申告納税額」と「50万円」のうち多い方の額を超えている場合には、その超えている部分については15%がかかります。
さらに、課されるのが「延滞税」という税金です。
しかも、追加で支払う相続税や過少申告税・これらの税金は現金で一括の支払いが求められます。
過少申告した場合は、延納や物納といった制度もありませんので、支払い期日までに支払えない場合にはさらに重ねて延滞税が発生していきます。
修正申告は早ければ早いほど、支払う金額を最小限に抑えることができるのです。
もちろん税務調査も万能ではありません。
申告内容の間違いや多少の財産の申告漏れがあったとしても、気付かれずに終わる可能性もゼロではありません。
ですが、もしも税務調査前に気付いていながら間違いを修正しなかった場合、上記のように追加徴税は大きく膨らみます。
また、さらには意図的に異なる申告をした・財産を隠したという判断がなされる恐れもあります。
意図的と判断されてしまうと、重加算税(追加で支払う税金の35%)の支払いという重いペナルティが課せられます。
それだけでは終わらず、刑事罰に問われる可能性もあります。
このことを踏まえたとき、自主的な修正申告が最も賢明な判断ではないでしょうか。
税務調査当日
事前準備が整ったら、あとは当日を迎えるのみです。
当日の流れや気を付けておきたいことをまとめましたので、当日に心の余裕を持てるよう一度確認しておきましょう。
税務調査当日の流れ
税務調査の当日は、一般的に10時からスタートします。
まず午前中は主に調査官による質問がなされます。
とはいっても、いきなり質問攻めが始まるわけではなく、最初は世間話から入り、故人や相続人について様々な話題に広げていきます。
質問される事項については後ほど詳しくお伝えしますが、亡くなった方の趣味や仕事、そして相続人に関する生活の状況等が聞かれます。
午後になると、資料の調査や具体的な事柄についての質問が行われていきます。
相続財産にどのようなものがあり、どこでどのように保管されているのか、通帳の入出金の履歴はどうなっているのか、通帳や印鑑の現物の確認も行われます。
故人が生前どのような暮らしぶりだったのかなど、申告内容と矛盾点がないかが質問され、税務署の把握している事実と照合されていきます。
こういった流れを経て、午後5時をめどに調査が終了するのが通常です。
中には2日かけて行われることもありますが、よほどのことがない限りは1日で終わるでしょう。
税務調査で気を付けるべきポイント3つ
税務調査で聞かれる質問は、ある程度定型化されています。
その内容は多岐に渡り、被相続人のことのみならず、相続人のことにまで及びます。
調査官は、質問していく中で、申告内容と現状とに齟齬がないかを常に確認しています。
虚偽の発言がないか、意図的に何かを隠そうとしていないかに目を光らせていますので、質問への回答は慎重に行いましょう。
押さえておきたいポイントは次の3つです。
- ①余計なことは口にせず、聞かれたことだけに回答する
- ②嘘はつかず、答えに困ったときは、立ち会っている税理士に確認する
- ③調査には協力的な姿勢で臨む
また、申告内容を全て記憶しておく必要はありません。
当日は提出した申告書や準備しておいた資料を見ながら質問に回答する形で充分です。
税務調査で聞かれること
税務調査当日に調査官から出る質問がどんなものなのか、具体例を見ていきましょう。
- 1. 被相続人が相続財産を築いた方法や経緯
- 2. 被相続人の出身地、職業、結婚の時期、趣味、月々の生活費の額など
- 3. 被相続人の日記の有無
- 4. 被相続人の印鑑の保管場所
- 5. 被相続人の取引のある金融機関と支店名、貸金庫の有無
- 6. 相続人の取引のある金融機関と支店名、貸金庫の有無
- 7.相続人と税理士とのこれまでの関係性
- 8. 相続税の納税に利用した金融機関と支店名
- 9. 相続人の出身大学や職業
- 10. 相続人の自宅の購入金額や売却金額(過去に住んでいたものも含む)
- 11. 相続人の家族(子供、配偶者)の年齢や学校名、職業
- 12. 被相続人の配偶者の財産状況
- 13. 被相続人の死亡直前の財産管理は誰が行なっていたか(書類や通帳の管理者)
- 14. 被相続人が亡くなったときの状況
- 15. 被相続人の生前の介護や入院にかかった費用
- 16. 相続開始直前で引き出した現金があれば、その用途
- 17. 相続人の投資状況(証券口座を持っているか、どれくらいの額を株式や投資信託へ投資しているか等々)
- 18. 被相続人から相続人が生前贈与を受けたかどうか
実際には、これらの中には答えにくい質問もあるかもしれません。
ですが、「嘘をつかない」ことが何よりも重要です。
答えにくい質問がある程度把握できているのであれば、税務調査前にどう回答するのがよいかを税理士に相談しておきましょう。
どんな回答をすべきなの?
さて、税務調査にあたり想定される質問事項を見てきました。
気になるのは「どう答えるのが正解か」ということかと思います。
ですが、これと決まった絶対的な解答はありません。
なぜなら、被相続人や相続人の状況によって回答がひとつひとつ変わってくるためです。
繰り返し述べているとおり、嘘をつかないことが大前提です。
ですが、その上で適切な回答の仕方というものはあります。
税務署に対して、あえて自分が不利になるような回答をする義務はありません。
例えばある相続人は申告の内容に適法な税金対策を行うために調整した部分があるとします。
その場合には、きちんとその申告状況に沿うような回答を述べる必要があります。
配偶者控除を最大限に活用するために母親に多い額がいくように遺産分割を行った場合には、税金対策以外の理由で母親が多く財産を必要とする理由を述べるといったイメージです。
とはいえ、どういった回答までは問題がなく、どういった回答からは問題になるのかの判断は非常にデリケートです。
さらに言ってしまうと、実務的な対応方法にはグレーな部分も存在します。
インターネットや書籍ではオープンにできない情報があるため、税理士がそういった情報をアドバイスすることができるのは個別の依頼があったときです。
個別の事情に対応した税務調査時の回答方法は直接相談するのが最も有益です。
まとめ
税務調査では事前準備が最重要です。
事前準備で押さえておくべきポイントは、以下の通りです。
- ・税務調査の実施日は準備期間を考慮した上で交渉する
- ・税理士に当日の調査立会いを依頼する
- ・改めて申告内容を見直し、追加徴税の必要があれば税務調査の前に支払ってしまう
- ・事前に調査官に聞かれそうなことを確認し、特に答えにくい質問への回答方法を税理士に相談しておく
税務調査は、事前の準備さえしっかりとしておけば恐れることはありません。
堂々と当日を迎えてください。
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