交通事故で歩行者が悪い場合の過失割合とは?関連する判例も解説

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交通事故で歩行者が悪い場合の過失割合とは?関連する判例も解説

この記事でわかること

  • 歩行者が悪いケースの交通事故がわかる
  • 交通事故で歩行者が悪い場合の過失割合がわかる
  • 歩行者の慰謝料がわかる

交通事故で歩行者が急に飛び出したことが原因の場合でも、運転手は損害賠償しなければならないのか、疑問に思う方もいるでしょう。

歩行者が突然に飛び出した、あるいは信号無視をするなど、歩行者に事故の発生原因がある場合には、自動車の過失割合が減刑される可能性があります。

そこで今回の記事では、交通事故で歩行者が悪い場合の過失割合、関連する判例や慰謝料などについて解説します。

交通事故は基本的に「歩行者が弱者」

交通事故においては、基本的に歩行者は弱者として扱われます。
歩行者は交通事故に遭うと大きな被害を受ける可能性が高く、自動車と接触することで死亡するケースもあるためです。

自動車と歩行者の交通事故が起きた場合は、運転手の責任が大きくなります。
運転手には、危険を及ぼさない速度で運転する注意義務が課せられています(道路交通法70条)。
さらに、歩行者が弱者とされていることから、たとえ歩行者に原因がある交通事故でも、運転手の過失がゼロになることはほぼありません。

運転手の過失をゼロとすることは難しいものの、歩行者に原因があれば状況によって歩行者に過失割合が認められます。

交通事故における歩行者が悪いケースの過失割合

交通事故は基本的に歩行者が弱者ですが、歩行者にも原因があれば、事故の状況に応じて歩行者と自動車の過失割合が修正されることもあります。
万が一、歩行者が死亡した場合においても同様です。

交通事故における過失割合は、過去の裁判例を基にして過失割合がある程度決められており、これに個別事情にあわせた修正要素を組み合わせて過失割合を算出します。

以下は、交通事故の原因が歩行者であるケースの過失割合です。

急な飛び出しの歩行者の過失割合は?

歩行者が急に飛び出したために事故が発生した場合、事故の発生場所が横断歩道か否かにより過失割合も変わります。

歩行者が横断歩道上で飛び出して事故になった場合は、基本の過失割合は自動車100:歩行者0です。これは横断歩道上では歩行者が優先すると法律に定められているからです(道路交通法第38条)。

ただし、突然の飛び出しの場合は歩行者に過失が認められると、最大で自動車85:歩行者15まで修正が可能になります。

以下は、横断歩道と横断歩道以外での歩行者の飛び出しがある場合の過失割合をまとめたものです。

<横断歩道>

過失割合の種類 自動車側 歩行者側
基本的な過失割合 100 0
歩行者が急に飛び出した場合の過失割合 85 15

横断歩道で交通事故が起きた場合は、横断歩道が歩行者優先道路であるため、原則的に自動車の過失割合が大きくなります

反対に、横断歩道ではないところで交通事故の過失割合は、自動車80:歩行者20です。
急な飛び出しの過失割合は、自動車70:歩行者30まで修正されます。

<横断歩道のないところ>

過失割合の種類 自動車側 歩行者側
基本的な過失割合 80 20
歩行者が急に飛び出した場合の過失割合 70 30

信号無視した歩行者の過失割合は?

歩行者が信号無視をしたことで事故が起きた場合は、自動車側の信号の色により過失割合が異なります。

たとえば、信号無視をした歩行者と自動車の交通事故だと、自動車側がたとえ青信号であっても、基本過失割合は、歩行者70:自動車30になります。

以下は、横断歩道で信号無視した場合の自動車と歩行者の過失割合をまとめたものです。

<横断歩道で信号無視をした歩行者と直進車>

自動車側の信号機(色) 自動車側 歩行者側
30% 70%
50% 50%
80% 20%

自動車の信号が赤か黄色の場合は、自動車の過失が重くなります。
反対に、信号無視した歩行者と右左折する自動車の事故だと、自動車が青信号の時は、自動車50:歩行者50まで修正されます。

信号無視をした歩行者と右左折する自動車の過失割合は、自動車側の信号により以下のようになります。

<信号無視をした歩行者と右左折する自動車>

自動車側の信号機(色) 自動車側 歩行者側

(基本過失割合)
50% 50%
70% 30%
80% 20%

交通事故における歩行者が悪いケースの判例

交通事故において歩行者は原則的に弱者として保護されるため、歩行者と自動車やバイクとの事故では歩行者の過失割合が少なくなるケースが多くなります。

ただし、歩行者が交通ルールに違反し、その程度が著しく大きい場合には、歩行者の過失割合が大きくなることもあります
特に信号無視をした場合は、歩行者の過失割合が大きくなります。

近年の判例では、歩行者の過失を10割とし、自動車の過失を0とする判決が出されました。
自動車の運転手は、自賠責法の運行供用者責任も不法行為責任(民法709条)も負わないとしました。

事案の概要

夜間に道路を横断しようとした歩行者が、自動車に衝突される事故がありました。
事故現場は道路幅約30メートルで中央分離帯のある片側3車線の国道です。
事故に遭った歩行者は中央分離帯から反対に渡るために、、右から左に横断していました。
その歩行中、直進してきた自動車と衝突したわけです。

歩行者は事故で外傷性くも膜下出血・外傷性胸部大動脈解離・左脛骨解放骨折などの重症を負ったため、100日以上の入院をはじめとする約2年間の治療を行いました。

当初、歩行者には衝突した自動車側の任意保険により障害認定併合等級8号が認定され、1434万円(治療費を含む)の賠償金が支払われました。
この賠償額を不満として女性側が裁判を起こします。
ところが、裁判所では自動車側には責任がないという判決が出されました。

判決で自動車側の責任が全否定となった理由は、以下の通りです。

通常であれば歩行者が横断すると予測できない広い道路だった
夜間かつ事故現場付近に樹木があり人の存在を認識するのが困難だった
現場付近には照明がない上対向車線にある施設の明かりで逆光状態だった

歩行者と自動車の交通事故でも、自動車側の過失が全く認められない珍しい判例です。
交通弱者である歩行者であっても、交通ルールを守らなければ過失が大きくなるため、十分な注意が必要といえます。

交通事故における被害者である歩行者の慰謝料

交通事故により歩行者が怪我や死亡した場合は、自動車側が損害賠償を負う可能性があります。
これは、歩行者に過失がある場合でも、相対的に自動車側の過失が大きいと判断されることが多いためです。

損害賠償は、怪我による賠償と後遺症による賠償に大別されます。
前者は、治療費や怪我を負ったことに対する精神的苦痛のための慰謝料を含みます。
後者は、後遺症が残ったときの精神的苦痛に対して支払われる慰謝料と逸失利益です。
さらに、歩行者が死亡した場合は、死亡したことの精神的苦痛に対して支払われる慰謝料となります。

加害者に請求される慰謝料は3つありますが、以下はこれらをまとめたものです。

傷害慰謝料 交通事故で怪我をさせられた精神的苦痛に対する補償
後遺障害慰謝料 後遺障害による継続した精神的苦痛に対する補償
死亡慰謝料 死亡した本人の精神的苦痛に対する補償(遺族固有の慰謝料もあり)

それぞれの慰謝料は、歩行者が自動車側に請求することが可能です。

重篤な後遺障害や死亡の場合は、自動車側が払う慰謝料額も高額になる可能性は高くなります。
しかし、歩行者にも原因がある以上は、損害賠償を満額支払う必要は少なくなるでしょう。

損害賠償の支払いは、過失相殺された額を支払うことになります。
過失相殺とは、過失割合に基づいて損害賠償額を減額することをいいます。

たとえば、過失割合が自動車70:歩行者30、損害額が1000万円であったケースをみてみましょう。
歩行者へ支払う額は、損害額の70%である700万円です。
過失相殺の計算式は、1000万×(1-0.3)=700 です。

交通事故の賠償額を計算するときは、事故の状況に応じた過失割合が適用されることで、自動車側の損害賠償義務が軽くなるケースもよく見られます。

歩行者と自動車の交通事故では、事故の状況や歩行者の怪我の具合などによっても、過失割合が大きく異なるため、専門家に相談することをおすすめします。
それぞれの計算に見合った損害賠償を請求するためにも、まずは弁護士に相談してみましょう。

まとめ

歩行者が信号無視をして突然に飛び出してきたために交通事故が起きてしまった場合は、自動車側の過失が軽減される可能性が高くなります。

過失割合を認定するには、自動車側の信号の色など事故当時の状況によっても状況が大きく異なります。
万が一交通事故を起こしてしまった時には、歩行者も自動車側も事故の状況を正確に保存しておくことが、その後の賠償請求でも重要になるでしょう。

歩行者と自動車で交通事故を起こしてしまってお困りの場合は、まずは交通事故専門の弁護士に相談することをおすすめします。

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