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民間金融機関が実質無利子・無担保融資を開始!対象者の要件と融資一覧

弁護士 石木貴治

この記事の執筆者 弁護士 石木貴治

東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前職の経験を生かし、ビジネスの実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/ishiki/

この記事でわかること

  • 民間金融機関が開始した実質無利子・無担保融資について理解できる
  • 実質無利子・無担保融資を受けられる対象者などの要件が分かる
  • 都道府県の民間金融機関が行う実質無利子・無担保融資が一覧で分かる

新型コロナウイルス感染症の影響を緩和するために打ち出されている様々な緊急経済対策のなかで、「実質無利子・無担保」融資が注目を浴びています。

当初は日本政策金融公庫を中心とする政府系金融機関で開始されましたが、2020年5月からは民間金融機関でも同様の融資が開始されました。

以下では、民間金融機関が開始した実質無利子・無担保融資の特徴や制度の仕組み、融資対象などの要件について詳しく紹介します。

また合わせて、各都道府県の民間金融機関が行っている実質無利子・無担保融資について、一覧にして紹介します。

実質無利子・無担保融資が開始

2020年5月からは、銀行や信用金庫などの民間金融機関による実質無利子・無担保の融資が全国で開始されました。

要件を満たす事業者なら3年間、融資額3,000万円まで実質無利子となり、保証人や保証料も必要なく融資を受けることができます。

なお、融資限度額については4,000万円に引き上げられた自治体が多く、無利子の期間なども都道府県ごとに多少異なっています。

制度の名称は都道府県によって異なるものの、多くは「新型コロナウイルス感染症対応資金」との名称が使われています。

切り札とも言えるような制度ですから、法人破産などにいたる前に積極的に利用することをおすすめします。

特徴

この融資の特徴は、当初3年間は実質無利子で、信用保証料が半額またはゼロに減免されるとともに、最大5年の据置期間があることです。

また、すでに信用保証付き融資を受けている場合は、この制度による実質無利子融資への借り換えが可能な点も大きな特徴となっています。

さらに、融資手続きは、金融機関を一元的窓口として、ワンストップで効率的、迅速にすべて済ませることができます。

これにより事業者は、迅速に有利な融資を受けることができる仕組みが実現されています。

融資の仕組み

この融資では、主に地方自治体が行う「制度融資」の仕組みが活用されています。

制度融資は、地方自治体が金融機関の融資を紹介し、信用保証料や利子を補助することによって、融資を受けやすくする制度です。

今回は、国がこの制度融資へ補助することとしたため、回収不能リスクが減り、民間金融機関がいっそう融資しやすい制度となりました。

「セーフティネット保証制度」を利用することで、融資を受けた事業者の返済が滞っても、信用保証協会が立て替えて返済する措置が可能です。

また、融資に必要な市区町村や都道府県での手続きを、民間金融機関が一元的な窓口となって代行するため、融資までがスムーズです。

従来は融資の申請に先立って、事業者自身で市区町村役場に認定書の発行を申請し、取得しておく必要がありました。

しかしながら、希望者が窓口に殺到し、認定書の発行事務の停滞を招く事態となったため、民間金融機関が代理申請できることとしたものです。

なお、この制度を利用したい場合は、まずは取引のある民間金融機関へ相談することが推奨されています。

この制度に関係する機関や組織について、それぞれの役割を整理すると、表のとおりとなっています。

役割
民間金融機関・事業者への融資
・融資に必要な市区町村のセーフティネット保証認定の申請をサポート
・都道府県への必要書類の提出などをサポート
信用保証協会・公的な保証人(民間金融機関が融資しやすくなる)
信用保証協会・利子を3年間代わりに支払い、負担を軽減
市区町村・セーフティネット保証4号、5号、危機関連保証の認定事務

デメリットは?

デメリットとは言えないかもしれませんが、利子補給は基本的に当初3年間ですから、4年目からは利子の支払いが必要になります。

なお、4年目からの利率は都道府県によって異なり、おおむね1.0%から2.0%程度が目安となっています。

また一部の自治体では、事業者がいったん利子を支払い後日返還される仕組みとなっているため、返還までの一時的な負担が生じるケースもあります。

借り換え

新規融資の際に、すでに民間金融機関からの信用保証付き融資を受けている場合は、新規融資と同じ条件での借り換えも可能です。

新規融資とすでに受けている融資の借換分を含め、総額で最大4,000万円の融資を受けることができます。

負債の総額は増えるものの、すでに受けている融資についても3年間は実質無利子や据置の対象になるため、返済負担が軽減されます。

対象者の要件

対象者の要件として、「セーフティネット保証4号」「セーフティネット保証5号」または「危機関連保証」を受けている必要があります。

まずは、これらの保証について理解した上で、対象者の要件を確認しましょう。

セーフティネット保証や危機関連保証とは

「保証」は、本店や事業所がある市区町村長が認定するもので、認定されると一般とは別枠の保証が受けられます。

これらの保証は、景気の低迷などによって経営の安定に支障が生じている中小企業者を支援するためのものです。

セーフティネット保証は1号から8号まで区分があり、新型コロナウイルス感染症に関係するものは4号と5号です。

なお、4号は自然災害など突発的な災害により影響を受けている業種、5号は全国的に業況の悪化している業種が対象となります。

セーフティネット保証4号

この保証を受けるための要件は3つありますが、全国47都道府県どこでも利用できます。

1 指定地域で3カ月以上事業を継続している
2 災害などの影響を受け、最近1カ月間の売上高や販売数量が前年同月と比べ原則20%以上減少
3 売上高や販売数量が20%以上減少し、3カ月後も上昇する見込みがない

セーフティネット保証5号

セーフティネット保証5号は、4号と同様、売上が減少して経営が困難な状況に陥っている中小企業者が対象で、要件が2つあります。

1 最近3カ月間の売上高が前年同月と比べ5%以上減少
2 製品などの原価のうち20%を占める原油などの仕入価格が20%以上値上がりしたものの、上昇を製品などの価格に転嫁できない

セーフティネット保証4号と5号の違い

4号と5号では、保証の割合と対象が異なります。

  • ・保証の割合は、4号が100%、5号では80%
  • ・保証の対象は、4号が日本全国、5号では指定業種

ただし、セーフティネット5号の業種については、2020年5月から全ての業種が指定されています。

危機関連保証

新型コロナウイルス感染症の影響によって、通常のセーフティネット保証に加えて、危機関連保証が初めて発動されました。

危機関連保証の認定を受けた場合は、一般保証やセーフティネット保証とは別枠で保証を利用することが可能となっています。

危機関連保証の要件は、最近1カ月間の売上高が前年同月と比べ15%以上減少し、その後3カ月間も売上高が変わらないと予想されることです。

対象者と融資の要件

この民間金融機関からの無利子・無担保融資を受けることができる対象となるためには、売上減少と保証の認定が要件です。

特に保証については、セーフティネット4号、5号、危機関連保証の3種類のうち、いずれかの認定を受けていることが前提条件です。

無利子・無担保が適用される事業主

小規模な個人事業主については売上高が5%以上減少している場合、小規模以外の個人事業主や法人では売上高が15%減少している場合が該当します。

ただし、 小規模以外の個人事業主や法人については、セーフティネット5号の認定では無利子・無担保の適用が限定的です。

具体的には、利子補給がなく、信用保証料は2分の1と、融資条件の適用が一部に留まっています。

対象者と融資要件を整理しましょう。

小規模個人事業主個人事業主(小規模以外)・法人
前提条件

市区町村でいずれかの認定を受けていることが前提

  • ・セーフティネット保証4号(売上20%減)
  • ・セーフティネット保証5号(売上5%減)
  • ・危機関連保証(売上15%減)
売り上げ減少の条件売上高5%以上減少売上高15%以上減少売上高5%以上
15%未満減少
認定の種類全ての認定に共通セーフティネット保証4号
または危機関連保証
セーフティネット保証5号
利子補給融資後3年間
利子補給により実質無利子
融資後3年間
利子補給により実質無利子
利子補給なし
信用保証料補助全額補助全額補助2分の1補助
担保不要
融資上限額3,000万円(都道府県によっては4,000万円)
据置期間最大5年

【各都道府県の民間金融機関】実質無利子融資一覧

各都道府県での実質無利子融資は、それぞれの都道府県が指定する民間金融機関を通じて実施されています。

都道府県での融資の名称や限度額、独自の支援、無利子期間経過後の利子を整理すると、以下の表のとおりとなります。

なお、表には記載してありませんが、融資期間は、すべての都道府県において10年以内(うち据置5年以内)とされています。

また、融資限度額は、第2次補正予算成立時に、各都道府県の判断で4,000万円への引き上げが認められたため、一律ではありません。

制度の名称にある「新コ」は、「新型コロナウイルス」の略称として記載していますのでご注意ください。

都道府県制度の名称融資限度額都道府県独自の主な支援無利子期間経過後の融資利率
北海道「新コ」感染症対応資金4,000万円融資枠の追加2,000万円以内5年以内:年1.0%、10年以内:年1.2%
青森特別保証融資制度(経営安定化サポート資金)4,000万円5号も保証料ゼロ・当初3年間金利ゼロ年0.9%
岩手「新コ」感染症対応資金(特別資金)4,000万円年1.4%以内
宮城「新コ」感染症対応資金4,000万円年1.30%
秋田経営安定資金(危機対策枠)3,000万円5号も中小企業は特別枠で無利子・無保証料危機関連保証・4号は1.15%、5号は1.35%
山形「新コ」感染症対応資金4,000万円年1.6%
福島「新コ」感染症対策特別資金4,000万円年1.5%以内
茨城「新コ」感染症対策融資4,000万円県単独枠4000万円(有利子)5年以内年1.4%、7年以内1.5%、10年以内年1.6%
栃木経営安定資金(「新コ」感染症対策パワーアップ資金)4,000万円年1.2%以内または年1.4%以内
群馬「新コ」感染症対応資金4,000万円利子補給は7年間年1.1%以内
埼玉「新コ」感染症対応資金4,000万円4年目以降:4号年1.4%以内、危機関連保証年1.5%以内
千葉「新コ」感染症対応特別資金3,000万円有利子を含め最大8,000万円融資年1.0%~1.7%
東京感染症対応融資3,000万円年1.8%~2.2%以内
神奈川「新コ」感染症対応資金4,000万円5年以内年1.4%~1.6%、10年以内年1.6%~1.8%
山梨経済変動対策融資4,000万円年1.4%
長野「新コ」感染症対応資金4,000万円年1.3%または1.4%
静岡国連携「新コ」感染症対応貸付4,000万円年1.9%
新潟民間金融機関を通じた資金繰り支援3,000万円5年以内年1.35%、7年以内1.55%、10年以内1.75%
富山「新コ」感染症対応資金4,000万円年1.25%以内
石川「新コ」感染症緊急特別融資4,000万円年1.00%以内
福井「新コ」感染症対応資金3,000万円年0.9%~1.0%以下
岐阜「新コ」感染症対応資金3,000万円年1.4%
愛知「新コ」感染症対応資金4,000万円5年以内年1.2%、7年以内1.3%、10年以内1.4%
三重「新コ」感染症対応資金3,000万円年1.6%
滋賀「新コ」感染症対応資金4,000万円年1.0%または1.5%
京都「新コ」感染症対応資金4,000万円年0.9%
大阪「新コ」感染症対応資金(保証料等補助型)3,000万円年1.2%
兵庫「新コ」感染症対応資金4,000万円年0.7%
奈良「新コ」感染症対応資金4,000万円年1.2%または0.9%
和歌山経営支援資金 「新コ」感染症対応枠4,000万円年1.2%以内または1.4%以内
鳥取「新コ」向け資金2億8,000万円5年間無利子・10年間保証料ゼロ6年目以降年1.43%
島根「新コ」感染症対応資金4,000万円県単独で8,000万円融資年1.1%または1.25%
岡山「新コ」感染症対応資金4,000万円年1.65%以内または1.15%以内
広島「新コ」感染症対応資金4,000万円5年以内年1.0%、10年以内1.2%
山口「新コ」感染症対応資金4,000万円5年以内年1.2%、10年以内1.3%
徳島「新コ」感染症対応資金4,000万円企業応援給付金(最大100万円)利用可能年1.5%以内~1.85%以内
香川「新コ」感染症対応資金3,000万円年1.0%以内
愛媛「新コ」感染症対策資金4,000万円県独自枠を含め5,000万円融資可能年0.1%
高知「新コ」感染症対応資金3,000万円年1.9%以内
福岡「新コ」感染症対応資金4,000万円年1.3%
佐賀「新コ」感染症対応資金4,000万円年1.3%
長崎緊急資金繰り支援資金(「新コ」感染症対応)3,000万円年1.3%
熊本「新コ」感染症対応資金4,000万円5年以内年1.55%以内、7年以内1.7%、7年超1.9%以内
大分「新コ」感染症対応資金特別融資4,000万円年1.3%
宮崎「新コ」感染症対応資金(全国統一要件)4,000万円年0.7%~1.2%
鹿児島「新コ」関連緊急経営対策資金4,000万円5年以内年1.7%、10年以内1.9%
沖縄「新コ」感染症対応資金4,000万円年0.8%または1.6%

まとめ

この民間金融機関による融資は、新型コロナウイルス感染症対応で利用しやすいよう、制度融資の拡充版として都道府県ごとに実施されていることが特徴です。

また、都道府県ごとに異なるものの、この融資と組み合わせて有利な融資や給付金を利用できる自治体も多いです。

今回の制度の大きな特徴である既存融資の借換を利用できれば、利子負担などを一層軽減することができ、経営の安定につながるでしょう。

経営が行き詰まったときの切り札とも言える制度ですので、積極的に利用して、法人破産などの危機を乗り越えることが期待されます。

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