東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前職の経験を生かし、ビジネスの実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。
新型コロナウイルスの影響の大きさを受けて、中小企業・個人事業主のために、持続化給付金・小規模事業者持続化補助金などの支援制度が創設されました。
それぞれの制度を紹介していきます。
Contents
まず、持続化給付金の大枠について説明します。
持続化給付金は、専用のWebサイトの申込か、持続化給付金相談会での申込となります。
また、商工会・商工会議所でも受付を開始しました。
持続化給付金は、後ほど述べる計算式を基準に、中小企業1社につき最大200万円、個人事業主1人につき最大100万円が支給されます。
持続化給付金の計算式は下記の通りです。
給付額=対象月の属する事業年度の直前の事業年度の年間事業収入-前年同月比で売上が50%以上減少した対象月の月間事業収入×12
一例として、
「法人で、昨年の年間売上が5,000万円あったが、2020年は新型コロナウイルスの影響で売上が落ち込み、昨年の5月は400万円の売上があったのに、今年の5月は90万円となってしまった」
というケースで計算してみましょう。
5,000万円-90万円×12=3,920万円
となり、上限の200万円を完全に超えることとなります。
このように、「前年同月比で売上が50%以上減少した対象月」が計算基準となるため、多くのケースでは、中小企業200万円、個人事業主100万円に達することが想定できます。
持続化給付金を受け取るためには、様々な条件があり、その条件に合致する必要があります。
法人の場合、基本的には下記の条件になります。
個人事業主の場合は、原則は下記の条件です。
また、2020年1月~3月に創業した人や、主たる収入を雑所得・給与所得で申告しているフリーランスなどへの救済措置として、下記のケースも認めますよ、という事例が出ました。
【2020年1月~3月創業者特例を利用する場合の条件(法人のみ)】
この場合、2020年1月から3月の月平均の事業収入に比べて事業収入が50%以上減少した月が存在する必要がある
【主たる収入を雑所得・給与所得で申告しているフリーランス(個人事業主)が申請する場合の要件】
以上のように6月29日に追加された特例のケースでは、要件が非常に厳しくなっています。
特に、被扶養者として事業をしていた人からは、被扶養者も対象にして欲しいという意見が出ています。
加えて、法人・個人問わず、以下のケースの場合は支給しませんよ、という「不支給要件」というものがあります。
具体的には、
上記に1つでも当てはまる場合は、申請ができず、もし受給後に上記に当てはまる事が判明したら罰則があります。
持続化給付金を不正な方法で受給したり、不支給要件に該当することを隠して申請したりした場合は、「不正受給」とみなされ、下記の措置が執られます。
(受給ができなくても、申請だけで「不正受給」扱いとなります)
たとえば、ちょうど1年後に不正受給が発覚し、しかも申請内容が、書類のデータを画像編集ソフトで書き換えて提出していたというケースを想定してみましょう。
実際のものと異なる、変造した書類を提出したり、事実と異なる数値を入力した場合は、それだけで悪質とみなされ、不正受給という扱いになります。
そして、下記のようなペナルティがあります。
「100万×年3%=103万 103万×120%=123万6千円の不正受給分の返還」
「会社名・法人代表者名・屋号・氏名のホームページでの公表」
「悪質であるため、刑事告発(詐欺罪・私文書偽造等の可能性)され、逮捕・検察庁への身柄送検の可能性がある。詐欺罪の場合は10年以下の懲役」
また、最近はインターネット上で、受給分の4割~6割など高額な手数料を取り、「裏技を使って対象外でも受給できます!」などの宣伝を行う者がいますが、大抵の場合は、書類に不正な細工・画像の加工などをして提出して申請する可能性が高いと推定します。
この場合でも、受給した本人がいくら知らなかったと言っても、罪に問われるのは申請者本人です。
不正受給を持ちかけた人間は、お金だけ取って消えているでしょう。
不利益は甚大で、逮捕・懲役のリスクもありますので、不正受給は絶対に避けるようにしてください。
持続化給付金の申請期間は、令和2年5月1日(金)から令和3年1月15日(金)24時(この時間までに電子送信)となっています。
申請方法は、インターネットのみで、持続化給付金の申請サイトから行います。
https://www.jizokuka-kyufu.jp/
法人の場合は、下記の書類を用意する必要があります。
確定申告書別表一の控え(1枚) | 確定申告書第一表の控えには収受日付印が押印(受付日時の印字)されていることが必要。収受日付印のないE-tax申請の場合は、受信通知(メール詳細)(1枚)が必要。 |
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法人事業概況説明書の控え(2枚(両面)) | |
2020年分の対象とする月の売上台帳等 | 様式に特に定めはなく、経理ソフト等から抽出したデータ、エクセルデータ、手書きの売上帳などもOK。ただし、提出するデータが対象月の事業収入であること、対象月の事業収入の合計額を確認できる資料を提出(2020年4月、と明確に書いてあるなど) |
通帳の写し | 法人名義の口座通帳の写し(法人の代理者名義も可) 銀行名・支店番号・支店名・口座種別・口座番号・名義人が確認できる必要あり。通帳の表面に、記載されていない事項がある場合は、通帳のオモテ面と通帳を開いた1・2ページ目の両方を添付。 オンライン銀行の場合は、上記が全てわかる電子通帳等の画面等の画像を提出 |
個人事業主の場合は、下記の書類を用意する必要があります。
確定申告書別表一の控え(1枚) | 確定申告書第一表の控えには収受日付印が押印(受付日時の印字)されていることが必要。 e-Taxの場合は受信通知(メール詳細)(1枚)を添付 収受日付印または受信通知(メール詳細)、いずれも存在しない場合には、提出する確定申告書類の年度の納税証明書(その2所得金額用)を提出する必要がある |
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所得税青色申告決算書の控え(2枚) | 青色申告を行っている場合 |
2020年分の対象とする月の売上台帳等 | 対象月の収入額(合計額)がわかる売上台帳等を提出、フォーマットの指定はなく、経理ソフト等から抽出したデータ、エクセルデータ、手書きの売上帳でもOK。
|
通帳の写し | 銀行名・支店番号・支店名・口座種別・口座番号・名義人が確認できるものであること。全てが網羅されていない場合は、通帳の見開きページの画像も。 また、電子通帳の場合は、上記全てがわかる画面の印刷・キャプチャデータで代用可 |
本人確認書類 | 住所・氏名・顔写真がはっきりと判別できるものであることが必要で、下記のいずれかを提出。
上記を保有していない場合は、
|
以上、提出書類自体は特別に多いわけではないものの、手続きに不慣れな人に取っては、少し迷う面もあるかもしれません。
次に、持続化給付金の特例に関して、個人事業主のケースと、法人のケースを見ていきましょう。
6月29日以降の特例分については、前の記事で説明しているため省略します。
個人事業主の特例のケース
特例事例 | 対処法・必要書類 |
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2019年分の確定申告の義務がない、その他相当の事由により提出できない | 2019年分の市町村民税・特別区民税・都道府県民税の申告書類の控え(収受印の押印されたもの)を提出 |
住民税の申告期限が猶予されており当該申告が完了していない場合またはその他相当の事由により提出できない | 2018年分の確定申告書類等の控えまたは2018年分の住民税の申告書類の控えを提出 |
2019年新規開業特例(2019年に新規開業した事業者) | 各種書類の提出により、特例の算定式を使うことが可能(詳細は持続化給付金ホームページで。以降の特例も同様) |
季節性収入特例(月当たりの事業収入の変動が大きい者に対する特例) | 収入に季節性がある場合(農業・漁業など)、特定期間の事業収入が年間事業収入の大部分を占める事業者については、下記の適用条件(1)・(2)の両方を満たす場合に限り、特例の算定式の適用を選択することが可能。
|
事業承継特例(事業承継を受けた事業者) | 事業収入を比較する2つの月の間に、「事業の承継」を受けた事業者で、対象月の月間事業収入が前年同月の承継前の事業者の事業収入から50%以上減少している場合、下記の証拠書類等を提出することにより特例の算定式を適用することが可能。
ただし、2019年1月から12月の間に事業の承継を受けた場合は、この特例は適用外。2019年新規開業特例の適用は可能 |
事業承継特例(死亡による事業承継を受けた場合の補足) | 異例なケースと思われるが、事業収入を比較する2つの月の間に、事業運営者が死亡し、後任者が事業の承継事業承継を受けたケースでは、「事業承継特例」の証拠書類等に加えて、下記のいずれかの証拠書類等を提出する事で、特例の算定式を適用。
|
罹災特例(罹災の影響を受けた事業者) | 災害の影響を受けて、本来よりも2019年の事業収入等が下がっている場合は、2018年または2019年の罹災証明書等を提出する場合に限り、2019年の事業収入の代わりとして、罹災した前年の事業収入と比較して、給付額を算定することが可能。 |
法人の場合(必要書類・算定式は持続化給付金のホームページをご確認下さい)
特例事例 | 対処法 |
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証拠書類等に関する特例:直前の事業年度の確定申告の申告期限前である場合や申告期限が延長されている場合 | 2事業年度前の確定申告書類の控えまたは税理士による押印および署名がなされた、対象月の属する事業年度の直前の事業年度の確定申告で申告したまたは申告予定の月次の事業収入を証明する書類(様式自由)を提出 |
申請書と証拠書類等の法人名が異なる場合 | 現在の法人名と証拠書類の法人名が異なる場合も、法人番号に変更がない場合は、同一の法人とみなし、通常通りに申請可能 |
2019年新規創業特例 |
|
季節性収入特例(月当たりの事業収入の変動が大きい法人に対する特例) | 収入に季節性がある場合(農業・漁業など)、特定期間の事業収入が年間事業収入の大部分を占める事業者については、
の2つを満たす場合に特例選択可能。ただし、法人事業概況説明書に月次の事業収入が記載されている必要がある |
合併特例(合併を行った法人) |
上記の場合、特例算定式を利用可能 |
連結納税特例(連結納税を行っている法人に対する特例) | 連結納税を行っている法人は、それぞれの法人が給付対象の申請要件を満たしている場合、法人ごとに給付申請を行うことが可能 |
罹災特例(罹災の影響を受けた法人) | 個人事業の場合と同様 |
法人成り特例(個人事業者から法人化した者) | 事業収入を比較する2つの月の間に個人事業者から法人化した場合、『法人設立届出書』または『個人事業の開業・廃業届出書』と『履歴事項全部証明書』を提出することで、法人の対象月の売上台帳等と個人事業者の確定申告書類を比較して申請を行うことが可能。
|
NPO法人や公益法人等特例 | 公益法人等とみなされる法人(NPO法人等)である場合は、直前の事業年度の年間収入がわかる書類として、
を確定申告書代わりとできる。 |
2020年新規創業特例 |
以上3つの条件に該当する必要がある。 |
2020年新規創業特例(2019年1月1日から12月31日までに設立した法人) | 上記の制度と非常に紛らわしいですが、「去年法人は設立していたけれども、事業収入を得てはいませんでしたよ」という場合の特例です。
以上の3つに合致する必要があります。 その他計算式・給付条件は持続化給付金のホームページを確認。 |
新型コロナウイルスの影響を直接受ける、小規模事業者に対し、新型コロナウイルス対応、サプライチェーンの既存対応、非対面ビジネスへの転換、テレワーク(リモートワーク)環境整備を行う事業者に対して、支給されます。
【応募条件】
・「サプライチェーンの毀損への対応」、「非対面型ビジネスモデルへの転換」、「テレワーク環境の整備」のいずれか一つ以上の投資に取り組む
・持続的な経営に向けた経営計画を策定していること
の、両方の条件に合致する、日本国内に所在する小規模事業者等であることを満たす必要があります。
その上で、補助金の採択・交付決定を受け、補助事業を実施した終了後は、補助事業で取り組んだ内容を報告する実績報告書および支出内容のわかる関係書類等を、定められた期日までに補助金事務局に提出する事が必ず求められます。
【補助率・補助額】
補助額の上限は100万円です。
そのうえで、下記の率で、先に支出した費用を後から補助する形となります。
類型 | 補助率 |
---|---|
コロナ特別対応型A類型(サプライチェーンの毀損対応) | 補助対象経費の3分の2以内 |
コロナ特別対応型B・C類型(非対面型ビジネスモデルへの転換・テレワーク環境の整備) | 補助対象経費の4分の3以内 |
なお、複数の事業者が共同して取り組む場合は、補助上限額が「100万円×連携小規模事業者等の数」の金額となります。(上限1,000万円)
小規模事業者の定義
業種 | 常時使用する人数 |
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商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
製造業その他 | 20人以下 |
また、補助対象の事業者・補助対象外の事業者は下記の通りです。
補助対象になり得る者 | 補助対象外 |
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このように、他の補助金に比べ、補助対象事業者が限られています。
対象事業の定義
サプライチェーンの毀損への対応 | 顧客への製品供給を継続するために必要な設備投資や製品開発を行うこと |
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非対面型ビジネスモデルへの転換 | 非対面・遠隔でサービス提供するためのビジネスモデルへ転換するための設備・システム投資を行うこと |
テレワーク環境の整備 | 従業員のテレワークを実現できる環境を整備すること (補助対象期間内に、少なくとも1回以上、テレワークを実施する必要がある) |
補助対象となる経費・ならない経費
補助対象となる経費 | 補助対象外の経費 |
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また、小規模事業持続化補助金には申請締め切りが年に4回あります。
第1回・第2回については、令和2年度分は終了しているため、第3回・第4回分について記載します。
第3回受付締切 | 第4回受付締切 | |
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申請書類一式の送付締切 | 2020年8月7日(金) 【郵送:必着】 | 2020年10月2日(金) 【郵送:必着】 |
採択結果公表 | 調整中 | 調整中 |
補助事業の実施期間 | 交付決定日(※2020年2月18日まで遡及可能)から2021年5月31日(月)まで | 交付決定日(※2020年2月18日まで遡及可能)から2021年7月31日(土)まで |
実績報告書提出期限 | 2021年6月10日(木) | 2021年8月10日(火) |
コロナウイルスによる持続化給付金・小規模事業持続化補助金など、各種支援制度に関し解説を行いました。
持続化給付金に関しては、さほど難しい手続きではないため、自社・個人事業主でも可能と言えます。
ただし、2020年1月から3月の新設法人に関しては、税理士の確認書類が必要です。
確認書類に関しては、税理士側としても責任があり、スポットで受ける税理士は少ないと推測されますので、顧問税理士に依頼するか、今後の顧問業務とまとめて申請することとなるでしょう。
一方、小規模事業持続化補助金に関しては、商工会・商工会議所の経営指導を受けることが原則となり、商工会・商工会議所未加入の場合は、加入の必要が出てくる可能性もあります。
(多くの会社・個人事業主は商工会・商工会議所に加入しています)
いずれにせよ、制度を積極的に活用、かつ適正な申請を行うことにより、経営改善の手段として、ぜひ助成金を活用してみましょう。