最終更新日:2020/5/19
【まとめ】株主名簿の書き方と管理方法について
目次
株式会社を設立する際、必ず作らなければいけない書類のひとつに株主名簿があります。
その名のとおり全株主を列挙した名簿で、株主の住所や氏名、保有株式数が記載されており、株主の管理と株主の権利保護を目的としています。
株主が1人または身内が数人という会社ではほとんど出番がないため、作成した記憶がないという事業主の方もいるでしょう。
しかし、平成31年3月までは、会社設立後に税務署に提出する「法人設立届出書」には必ず株主名簿を添付する必要があったため、それ以前に設立した会社であれば必ず一度は作っているはずです。
ここでは、株主名簿の書き方や管理方法について、わかりやすくご説明します。
株主名簿の書き方と管理方法
株主名簿は会社法によって作成が義務づけられており、その記載内容や管理方法についても会社法で定められています。
株主名簿の書き方
会社法第121条には、株主名簿に必ず記載しなければならない事項として、次の4つがあげられています。
- ・株主の氏名又は名称及び住所
- ・株主の有する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)
- ・株主が株式を取得した日
- ・株式会社が株券発行会社である場合には、株式(株券が発行されているものに限る)に係る株券の番号
これらについて、ひとつずつ順に解説します。
株主の氏名または名称
株主が個人の場合には氏名を、法人の場合にはその名称を記載します。
株主に相続が発生するなどして、複数名で株式を共有することも考えられますが、その場合は株主総会の議決権など、誰が株主の権利を行使するのかも記載します。
株主の住所
株主が個人の場合には住所を、法人の場合には本店所在地を記載します。
株主の有する株式の種類とその数
株主が所有している株式の種類と、種類ごとの数を記載します。
通常の株式は普通株式と呼ばれるものですが、会社によってはいろいろなオプションがついた株式を発行しており、これをまとめて「種類株式」といいます。
例えば、配当を多くもらえる株式や議決権を行使できない株式、また、それらを組み合わせた株式などです。
こうした種類株式を発行している会社は、株主がどの株をそれぞれいくつ持っているのか記載する必要があります。
株式を取得した日
この項目は少し注意が必要です。
ここで言う株式を取得した日とは、必ずしも株式の所有権を得た日のことではありません。
株式の譲渡は、正確には当事者間の売買で完了した日が取得日となるわけですが、株主名簿に記載すべき日付は、譲渡が行われたあと会社に対して株主名簿の名義書換請求がなされ、会社がそれを受理した日です。
譲渡日と書換請求を受理した日が同日であれば問題ありませんが、異なる場合は注意しましょう。
株券の番号
株券を発行する旨を定款に記載していなければ、株券を発行する必要はないため、そのような会社では株券の番号自体が存在しません。
したがって、この項目は例外的に株券を発行している会社のみの記載事項となります。
質権が設定された場合
質権というのは、質屋と同様、品物を担保にしてお金を借りるという制度です。
会社法には、株式を担保にしてお金を借りる際の規定があります。
株式に質権を設定した人は、会社に対して株主名簿にそのことを記載するよう請求でき、会社は請求があればその旨を記載しなければなりません。
信託財産に属する株式
自分の財産を第三者に委託して、管理や処分をしてもらうことを信託と言います。
株式が信託財産になった場合、株主は会社に対してその旨を株主名簿に記載するよう請求でき、会社は請求があれば記載しなければなりません。
株主リスト
株主名簿と混同しやすい書類に、「株主リスト」というものがあります。
記載事項には重複している部分がありますが、本来的な目的は全く違うものです。
株主名簿が株主の管理と権利保護であるのに対し、株主リストは会社の変更登記申請の際に添付することによって、商業登記の真実性を担保し、犯罪行為を防止することを目的としています。
なお、株主リストを添付するのは株主総会で変更決議を行った場合だけです。
株主リストの記載事項は次のとおりです。
- ・株主の氏名又は名称
- ・住所
- ・株式数(種類株式発行会社は種類株式の種類及び数)
- ・議決権数
- ・議決権数割合
議決件数と議決件数割合を記載事項としている点が特徴です。
株主名簿テンプレート
以上でご説明したことを踏まえたうえで、株主名簿のテンプレートをご紹介します。
考にしてみてください。
氏名 | 住所 | 株式の 種類 | 株式数 | 議決件数 | 議決権の割合 | 株式取得日 | 株券番号 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
●●● | ●●● | 50 | 50 | 50% | 年月日 | ||
●●● | ●●● | 30 | 30 | 30% | 年月日 | ||
●●● | ●●● | 20 | 20 | 20% | 年月日 | ||
合計 | 100 | 100 | 100% |
ポイントは、株主名簿の記載事項ではない議決件数及び議決権の割合をあえて記載することにより、株主リストの役割ももたせていること。
会社の変更登記申請にも備えておきたいという場合に、議決件数等が一目でわかるので便利です。
なお前述のとおり、税務署へ提出する「法人設立届出書」には株主名簿を添付する必要がなくなりましたので、税務署提出用株主名簿の記載事項であった「株式の金額」や「株主の役職名」等を記載する必要はありません。
株主名簿の管理方法
株主名簿は、作成して終わりというわけではありません。
株主の管理及び権利保護という目的がありますので、適切に取り扱うよう心がけましょう。
株主名簿の保管場所
株主名簿は、原則として会社の本店に置きます。
例外的に株主名簿管理人を定めた場合は、その営業所に備え置くこととされています。
株主名簿管理人とは、会社から株式の管理を委託された信託銀行や証券代行会社のことです。
通常は気にする必要はないでしょう。
条文上では、株主名簿は本店に「備え置かなければならない」とされていますので、何となく紙媒体で保管しないといけないような気がしますが、実際はそんなことはありません。
エクセルなどで作成し、そのファイルを保存しておけば問題ないのです。
閲覧謄写請求
株主や会社に対する債権者は、その会社の営業時間内に限り、株主名簿の閲覧やコピーを請求できます。
この請求をされた場合、会社は原則として応じなければなりませんが、会社が不利益を被る可能性がある場合などは例外的に拒むことができます。
記載事項の変更
株主が代わるなど株主名簿の記載事項に変更があった場合、株主名簿の情報を新しく更新する必要があります。
ただし、株主名簿を書き換えるのは株主などから名義書換請求を受けた後です。
通常、名義書換請求は会社が任意に定めた「名義書換請求書」を提出して行います。
まとめ
会社にとって、株主を管理することは重要です。
株主名簿はそのためのツールですので、年に1回、定時株主総会の前などで確認するようにしましょう。
株主名簿の適切な管理・保管を怠ると、取締役等には100万円以下の金銭的なペナルティーがあると会社法で定められています。
心当たりがある方は、速やかに対応しましょう。