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最終更新日:2024/7/25

会社設立時に必要な定款とは?記載事項や作成方法を解説

森 健太郎
この記事の執筆者 税理士 森健太郎

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

この記事でわかること

  • 定款の概要や登記簿謄本との違い
  • 定款に記載する項目と記載サンプル
  • 定款の作成方法

定款は記載事項に決まりがあるだけでなく、記載された内容は経営に大きく関わるため、作成する難易度の高い書類といえます。公証役場での認証を得られなかったり、経営上でトラブルになったりすることを回避するためにも、記載すべき内容をしっかり把握しておきましょう。
本記事では、会社設立時の必須書類である定款について、記載事項や作成方法をわかりやすく解説します。

定款(ていかん)とは会社の根本的なルールを定めた書類

定款(ていかん)とは、法人として事業を運営するための根本的なルールを定めた書類で、「会社の憲法」とも呼ばれています。定款には会社の商号(社名)や本店所在地、事業目的といった会社の基本情報のほか、会社を経営する上での指針など、組織活動における重要な決まりごとを記載します。そのため、「登記簿謄本と何が違うの?」といった疑問を抱く人もいるかもしれません。

定款と登記簿謄本は、どちらも会社の基本情報を網羅的に記載した書類ですが、定款は社内の決めごとをあらかじめ定めておくために会社が作成するもの、登記簿謄本は会社の登記情報を証明する目的で法務局が発行するものといった違いがあります。

定款は公証役場で認証されて効力を得る

定款は、公証役場で公証人の認証手続きを受けて初めて効力を得るものです。合同会社を除き、株式会社や一般社団法人などを設立する場合は、公証役場で必ず定款の認証手続きを受けなくてはなりません。定款の認証を受ける際は、資本金の金額に応じて3~5万円の認証手数料が必要です。
定款の認証方法や認証を受ける際に必要な書類についてさらに詳しくは、以下の記事をご確認ください。

定款の原本の扱い方

公証役場で認証された定款の原本は、1部を会社で保管します。また、定款の原本は、公証役場でも原則として20年間保管されます。

万一、会社保管の定款の原本を紛失した場合、公証役場での保管期間内であれば、認証を受けた公証役場に依頼すれば再発行してもらうことが可能です。ただし、入手できるのは会社設立時の「原始定款」となるため、定款の変更を行っている場合、変更が反映された「現行定款」は入手できません。最新の定款については、作成をサポートしてもらった行政書士や司法書士などの専門家に写しをもらう方法もあります。必要であれば手続きを経て、新しく申請することも可能ですが、定款の原本は紛失しないように保管しておきましょう。

なお、定款には紙と電子があり、電子定款の場合の原本は、公証役場の認証後に受け取ったPDFデータとなります。書面ではありませんので、間違えないように注意してください。

定款が必要になるタイミング

定款が必要になる主なタイミングは「会社設立時」「助成金や許認可の申請をするとき」「法人口座を開設するとき」「会社が成長したとき」です。

会社設立時には定款認証や法人登記だけでなく、その後の税務関係の手続きにおいても定款は必要です。例えば、法人登記後、本店所在地を管轄する税務署へ2カ月以内に「法人設立届出書」を提出しますが、このときに定款の写しを添付します。また、助成金や許認可の申請、法人口座の開設手続きの際にも、申請要件を満たしているかを確認するために定款の提出が求められます。

なお、会社が成長し、本店の移転、役員の変更、事業目的の拡充などを行う場合、定款の変更が必要です。定款を変更するには株主総会での特別決議を得て、原本と共に変更した定款を保存します。

定款の記載事項

会社法によって定款に記載する事項は、「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3つに分かれています。必ず記載しなければならない内容や記載していないと効力を発揮しない内容などがあるため、株式会社の定款について、それぞれ記載する内容を詳しく見ていきましょう。

絶対的記載事項

絶対的記載事項は、その名のとおり必ず定款に記載しなければならない項目です。特に、以下に挙げる項目が漏れていると定款は認証されず、無効となってしまいます。そのような場合、法人登記ができなくなるため注意しましょう。また、発起人が複数いる場合は、発起人全員の氏名または名称と住所の記載が必要です。

絶対的記載事項

  • 商号(社名)
  • 事業目的
  • 本店所在地
  • 発行可能株式総数
  • 設立に際して出資される財産の価額または最低額
  • 発起人の氏名または名称、およびその住所

商号(社名)

商号は、「株式会社◯◯」「◯◯株式会社」といった社名のことで、前後どちらかに法人格を入れる必要があります。商号に使用できる文字や符号が決まっているだけでなく、同一住所に同一の商号が使えないなどの決まりもあります。類似商号や商標登録済みの商品名などに注意しながら商号を決める必要があるため、関連記事も併せてご確認ください。

事業目的

設立する会社が行える事業は、基本的に事業目的に記載されている事業に限られるため、事業目的は漏れなく記載することが重要です。設立後に事業目的を変更したり、追加したりすると登記と定款の変更手続きが必要になるため、行う可能性がある事業については全て記載しておきましょう。ただし、あまりに数が多いと、事業実態がわかりにくくなり、金融機関での手続きの際に不利になることもあるため注意が必要です。事業目的の書き方に迷ったら、以下の記事もご覧ください。

本店所在地

本店所在地は、本店の住所のことです。法律上の住所なので、自宅や事務所のほかにも、レンタルオフィスやバーチャルオフィスなども設定できます。また、本店所在地は「最小行政区画である市町村(東京都の特別区、政令指定都市にあっては市)までの記載」、「番地を含めた記載」どちらでも問題ありませんが、同一行政区画内で本店の移転があった場合に定款の変更が不要になるため、最小行政区画である市町村までの記載に留めておく方がおすすめです。

発行可能株式総数

発行可能株式総数は、会社が今後発行できる株式の上限値です。発行可能株式総数を定めておくことによって、取締役会(株主総会)の決議で株式の追加発行ができ、会社の資金調達がスムーズになります。将来的に増資を予定している場合など、積極的に株式を発行する予定がある場合は多めに設定しておくといいでしょう。

設立に際して出資される財産の価額または最低額

設立に際して出資される財産の価額は、発起人が出資する金額の合計額が決まっていればその額を記載します。決まっていなければ最低額として資本金の額を記載します。現在、資本金1円から株式会社や合同会社を設立できますが、資本金があまりに少ないと、金融機関や取引先からの信用が低くなり、融資を受けられなかったり、取引ができなかったりする原因になります。売上が立つまでは資本金が事業の元手になるため、必要な初期費用や運転資金、用意できる自己資金の額を考慮して決めるとよいでしょう。また、資本金の額は、税理士に相談しておくと事業計画にもとづいた適正な金額をアドバイスしてもえらます。

発起人の氏名または名称、およびその住所

発起人の氏名または名称、およびその住所には、すべての発起人の情報を記載します。発起人とは、定款の作成や資本金の払い込みをはじめ、会社設立手続きを行う人のことです。会社設立後は株主となりますが、取締役を兼ねることもできます。

相対的記載事項

相対的記載事項は、定款に記載がないと効力を発揮しない項目です。相対的記載事項を記載しておくことによって、後々の経営上のトラブルを回避する効果が期待できます。例えば、複数人で会社を立ち上げたものの、方向性の違いで役員を解任させたい場合に任期が長いと、任期途中で正当な理由なしに解任させることができないだけでなく、解任した際に損害賠償を請求されるリスクもあります。相対的記載事項で役員の任期を短く設定しておけば、こうしたトラブルを防げるでしょう。特に以下の項目については記載しておくのがおすすめです。

相対的記載事項の例

  • 取締役など役員の任期の延長の規定
  • 株式譲渡制限の規定
  • 株券発行
  • 株主総会の通知と招集期間の短縮に関する規定
  • 公告の方法

任意的記載事項

任意的記載事項は、定款に記載しなくても社内規定など他の文書で規定しておけば、効力が発揮される項目です。違法性のない内容、かつ絶対的記載事項や相対的記載事項に記載のない項目であれば任意で記載することができます。記載するか否かは会社の判断になりますが、記載しておくことで会社のルールを明確化できたり、会社の運営がスムーズになったりする効果があります。主に記載する項目は以下のとおりです。

任意的記載事項の例

  • 会社の事業年度(決算月)
  • 定時株主総会の招集時期
  • 役員の員数など

定款の記載サンプルと提出方法

○×△株式会社定款

第1章 総則
(商号)
第1条 当会社は、○×△株式会社と称する。

(目的)
第2条 当会社は、次の事業を営むことを目的とする。
1.アパレル製品の企画、製造および販売
2.各種マーケティングリサーチ業
3.広告宣伝および販売促進に関する企画、運営および管理
4.ウェブサイトおよびウェブコンテンツの企画、運営および管理
5.前各号に付帯又は関連する一切の業務

(本店の所在地)
第3条 当会社は、本店を東京都○○区に置く。

(公告の方法)
第4条 当会社の公告は、官報に掲載してする。

定款は上記サンプル画像のように書面にまとめていきます。注意点は、株式会社と合同会社では、定款の記載内容に違いがあることです。組織構成や利益配分が異なるので、設立する法人形態に合わせた記載にするようにしてください。

定款のサンプルを見て「自分で作成するのは難しい」と感じたら、無料の定款作成システムを活用する方法を検討しましょう。ベンチャーサポート税理士法人では、会社設立項目を入力することで簡単に作成できる「自動作成システム」を株式会社、合同会社と分けてご用意しています。あくまでも一般的な定款に限られますが、ぜひご活用ください。

定款が作成できたら、紙または電子定款のいずれかの方法で提出します。紙で提出する場合は収入印紙代として4万円が必要ですが、電子定款の場合は不要です。ただし、電子定款で提出するには、電子署名を付与するためのICカードリーダライタや専用のソフトなどを用意しなくてはなりません。機器やソフトをそろえると収入印紙代の4万円を超えたり、慣れない作業に時間がかかったりする可能性があります。例えば、行政書士に電子定款で作成代行を依頼すれば5万円程度かかりますが、収入印紙代はかからず、自分の作業時間を省けるだけでなく、ミスなくスムーズに提出できるため安心です。予算や手間を考慮して、どの方法で提出するか検討してみましょう。

なお、定款の認証の申請時に気づいた定款の記載ミスについては再認証を受けることができますが、公証人の認証を受けた後は原則として修正できません。資本金の金額や株主構成、事業年度、役員報酬などの項目については、特に厳重に確認するようにしてください。

公証役場が定款作成支援ツールを無料公開【2024年最新情報】

公証役場がスタートアップ支援のため、法務省の協力のもと2023年12月26日に「定款作成支援ツール」をリリースしました。Excelで直感的に触れるツールです。ただし、発起人3名以下の会社が対象で、あくまで小規模でシンプルな株式会社の定款です。法人出資、取締役会設置などの場合は未対応であることに注意してください。

また、2024年1月10日から東京都および福岡県の公証役場では、定款作成支援ツールを使えば、公証人の事前チェックと認証まで原則48時間で完結できる試行運用が開始されています。対象地域についての最新情報は日本公証人連合会のWebサイト「スタートアップ支援のため、定款認証に関する新たな取組を開始します。」をご確認ください。
公証役場の定款作成支援ツールの使い方の手順は以下のとおりです。

定款作成支援ツールの使い方の手順

  1. 定款作成支援ツールをダウンロードする
  2. 基本情報入力シートや定款などに必要事項を入力する
  3. PDFデータに電子署名を付与する
  4. 公証役場にメールで提出する
  5. 審査日(認証日)の予約を取り、認証手数料を支払う
  6. 公証役場にて、法務省の登記・供託オンライン申請システムを使って認証を受ける

上記のように定款の作成を手軽にできますが、定款作成支援ツールは、記載事項についてアドバイスが受けられたり、各社の事情に合ったカスタマイズをしてくれたりするものではありません。
例えば、発起人の数に応じた役員の任期や、事業年度の決め方によっては損をしたり、トラブルになったりする可能性があります。定款作成支援ツールを使って作成した定款でも、行政書士や税理士などの専門家に記載事項をあらかじめ確認してもらうといいでしょう。
場合によっては、定款作成支援ツールを使わず専門家に一任したほうが、作成から認証まで48時間を切るスピードで完結することもあります。

定款の変更方法

定款の記載事項に変更が生じた場合は、決まった手続きに沿って定款を変更しなくてはなりません。会社設立後、定款の内容に変更が生じた場合の変更手順は以下のとおりです。

定款の変更手順

  1. 株主総会を開催し、定款を変更する旨の特別決議を行う
  2. 株主総会の議事録などを作成する
  3. 変更した内容のうち登記すべき事項については登記申請をする(原本を改変しない)
  4. 新しい定款と原始定款の両方を保管する

なお、以下に挙げる記載事項が変更になった場合は、変更が生じたときから2週間以内に変更登記する必要があります。期限内に変更を行わない場合は、100万円以下の過料がかかることがあるため注意してください。

定款の変更に伴って登記が必要な主な記載事項

  • 商号(社名)
  • 事業目的
  • 本店所在地や支店の所在地
  • 発行可能株式総数
  • 資本金の金額
  • 役員の氏名、代表者の氏名及び住所
  • 公告をする方法

定款の変更には慎重な判断が求められるため、変更するには特別決議が必要です。特別決議は、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権における3分の2以上の賛成を必要とする決議です。加えて、変更登記には登録免許税がかかり、金額は内容によって異なります。このように定款の変更手続きは、プロセスが多いため、会社設立時に記載事項を専門家に相談しておくのがおすすめです。

定款の記載事項を知って会社設立手続きをスムーズに進めよう

定款は、会社を設立する際に必ず作成しなければならない書類のひとつで、会社の基本情報のほか、会社を経営する上での指針など、組織活動における重要な決まりごとを記載します。
定款の記載項目には、絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項があり、いずれも経営に関わるため、細心の注意を払って記載しなくてはなりません。定款の作成は自動作成ツールや定款作成支援ツールなどを活用できますが、記載内容については税理士や行政書士などの専門家に相談する必要があります。会社設立後のトラブルにならないよう、定款作成のポイントを押さえて、会社設立手続きをスムーズに進めましょう。

ベンチャーサポート税理士法人では、顧問契約に関係なく、会社設立に強い税理士が無料で会社設立に関するあらゆる相談に応じています。また、会社設立の手続きを丸投げで依頼することも、必要な部分だけ司法書士や税理士と連携することも可能です。会社設立の手続きでお悩みの際はお気軽にご相談ください。

会社設立の手続き

会社設立の手続きは、設立内容の決定から始まり、事業目的のチェック、定款認証、出資金の払い込み、法務局への登記申請を行います。株式会社の設立、合同会社の設立立手続きの基本的な流れを知り、スームーズに手続を行えるにしましょう。

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会社設立内容の決定

会社設立で決めるべき項目について見ていきます。ここで決める内容は定款を作成する際に必要な事柄です。それぞれの項目についての留意点を確認して、会社設立後に問題の起きない内容にしておきましょう。

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会社設立の費用

会社設立にかかる費用は株式会社か合同会社かといった会社の種類によって変わってきます。会社設立にかかる実費と専門家に依頼した場合の費用(報酬)について見ていきます。

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会社設立全知識

起業

起業する人たちの多くは、自分の起業に関して試行錯誤した上で、会社設立のスタート地点まで辿り着いています。起業するに際しての心構え、注意すべき点を確認していきます。

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会社設立全知識

会社設立時には設立後の資金調達や税金・会計のこと、許可申請や今後の事業展開を想定した対応も求められてきます。会社設立時には色々なことを検討していかなければなりませんが、事業展望を明確にしていくよい機会となります。確認すべき事項をみていきましょう。

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節税、確定申告、税務調査

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