この記事でわかること
- 連れ子に相続権がない理由
- 連れ子に財産を遺す方法と注意点
- 連れ子に財産を遺したくない場合の対応
結婚するカップルのうち、どちらかが再婚であるケースも増えている昨今。今後もいわゆる「子連れ再婚」は増えていくと考えられます。
子どもがいる相手と結婚・再婚して義理の親となった場合、その連れ子に対し自分の財産を相続することはできるのでしょうか。
また、連れ子に財産を遺すためにはどのような方法があるのでしょうか。
今回は、連れ子を迎えた場合の相続について、連れ子の相続権の有無や財産を引き継ぐ方法、注意点を解説します。
目次
再婚相手の連れ子には相続権がない
子どもがいる相手と結婚あるいは再婚した場合、配偶者には相続権が認められます。
しかし、結婚・再婚しただけでは、配偶者の連れ子には相続権が認められません。
なぜなら、連れ子はあくまでも「配偶者の子ども」であり、自分の「法定相続人」ではないからです。
法定相続人とは、民法で定められた、被相続人(亡くなった人)の財産を引き継ぐ権利のある人のことです。
法律上、法定相続人になれる「子ども」は、原則として被相続人と血縁関係がある子どもとされています。
配偶者の連れ子は、自分とは血のつながりがないため法律上の親子関係になく、法定相続人には含まれません。
たとえ実の親子同然に同居・生活するなど事実上の結びつきがあっても、法律上は親子関係が発生していないとみなされます。
そのため、法律上の親子関係がないほうの親が亡くなった場合、連れ子には相続権も発生しません。
連れ子に財産を遺す3つの方法
夫婦のどちらか、または双方が子どもを連れて結婚・再婚した家族形態のことを、「ステップファミリー」とも言います。
ステップファミリーとなり、結婚・再婚相手の連れ子とも実の親子同然に暮らしていたとしても、そのままの状態では連れ子に相続権はありません。
それでは、連れ子に財産を遺すためには、どのようにすればよいでしょうか。
ここでは、連れ子に財産を遺すための3つの方法を紹介します。
- 連れ子と養子縁組をする
- 遺言書を作成して遺贈する
- 生前贈与をする
連れ子と養子縁組をする
1つ目の方法は、結婚相手・再婚相手の連れ子と「養子縁組」をすることです。
養子縁組とは、血縁関係にない者同士の間に、法律上の親子関係を作る制度のことです。
養子縁組を結ぶと、連れ子との間で法定血族関係(法律上の親子関係)が成立し、双方は「養親」「養子」の関係になります。
養子縁組を結び法定血族関係になれば、養子になった連れ子も法定相続人となります。
そのため養親が亡くなったときは、血縁関係のある実子同様、連れ子にも相続権が認められます。
養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類がありますが、通常、連れ子とは普通養子縁組を結びます。
普通養子縁組とは、養親と養子の間で縁組をした後も、養子と実親との親子関係が存続する養子縁組のことです。
普通養子縁組の主な要件は以下のとおりです。
養子縁組について知ろう
普通養子縁組の主な要件
- 養親は20歳以上でなければなりません。
- 養子縁組をするには、養親本人と養子本人の合意が必要です。養子が15歳未満の場合には、養子の法定代理人(親権者等)が、養子本人に代わって養子縁組の合意をします。
- 養子縁組は、市区町村の役所への届出によって効力を生じます。
- 養親又は養子に配偶者がいる場合には、原則として、その配偶者の同意が必要です。
出典 法務局
また特別養子縁組とは、養子となる子どもと実親との間の法的な親子関係を解消し、養子と養親との間に、実の親子と同様の親子関係を成立させる制度です。
家庭裁判所が「実親の監護が著しく困難または不適当」だと認めた場合に成立するなど厳格な条件があり、連れ子との特別養子縁組は極めてまれなケースです。
なお、養子縁組後に離婚しても、それだけでは養子縁組は解消されません。連れ子であった養子と養親の親子関係は続き、扶養義務も残ります。
養子縁組を解消するためには、普通養子縁組では協議または家庭裁判所への離縁の申立てを経て、離縁の手続きをする必要があります。
特別養子縁組では、養親からは解消請求できないなどさらに厳しい条件があり、家庭裁判所の審判がなければ離縁することはできません。
遺言書を作成して遺贈する
2つ目の方法は、遺言書を作成し「財産を連れ子に遺贈する」という内容の遺言を残しておくことです。
「遺贈」とは、被相続人の遺言書によって、個人や法人・団体に対し財産の一部もしくはすべてを譲ることです。
遺贈は法定相続人以外の人にも、財産を引き継ぐことができる制度です。
そのため養子縁組をしない連れ子に対しても、財産を渡すことができます。
遺贈には、「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類があります。
包括遺贈とは、遺言書で財産の全部または一定の割合のみを指定して遺贈する方法です。遺言書には「全財産の30%を、配偶者A子の連れ子であるB男に遺贈する」などのように書きます。
特定遺贈とは、遺言書で財産の内容を具体的に指定して遺贈する方法です。遺言書には「現金150万円を、配偶者A子の連れ子であるB男に遺贈する」などのように書きます。
一方、遺贈によって相続権のない連れ子に対し財産を引き継いだ場合、相続税が2割加算されます。
また包括遺贈では、場合によっては債務や連帯保証人の立場といったマイナスの財産も引き継がなければならない点や、特定遺贈では法定相続人以外に不動産を引き継ぐ場合、不動産取得税がかかる点には注意が必要です。
生前贈与をする
3つ目の方法は、結婚相手・再婚相手の連れ子に「生前贈与」をすることです。
「生前贈与」とは、被相続人の生前に双方で贈与契約を結び、財産の引き渡しまで行う贈与のことです。
なお、贈与は財産を無償で他人に与える行為であり、贈与者と受贈者の双方の合意が必要です。
生前贈与をすると自分が亡くなる前に、法定相続人ではない連れ子にも財産を引き継ぐことができます。
生前贈与をすると、財産を受け取った人に対して贈与税がかかりますが、贈与税には年間110万円の基礎控除があります。
そのため、連れ子が受け取る額が年間110万円までなら、贈与税は非課税になる「暦年贈与」の仕組みを活用でき、贈与税がかからない範囲で財産を与えることができます。
なお令和6年1月以降、相続時精算課税制度にも年間110万円の基礎控除が設けられました。養子縁組をして法定相続人となった連れ子の場合は、相続時精算課税による贈与でも年間110万円以下であれば贈与税はかからず、贈与税の申告も不要です。
【参考】連れ子を生命保険金の受取人にする
連れ子に財産を渡すには、生命保険に加入した上で連れ子を死亡保険金の受取人に指定する方法もあります。
自分が亡くなった後、保険金の受取人になった連れ子には死亡保険金が支払われます。
ただし一般的に、保険金の受取人に指定できる人は、被保険者(保険がかけられている人)の「配偶者」もしくは「2親等内の血族」と決められています。
保険会社によっては、養子縁組をしておらず、法定相続人ではない連れ子を死亡保険金の受取人に指定できないことがあるため、あらかじめ保険会社の担当者に相談しておくとよいでしょう。
また、法定相続人ではない連れ子が死亡保険金を受け取った場合、死亡保険金の非課税枠が適用されず相続税の課税対象となることや、相続税額が2割加算されることにも注意が必要です。
連れ子に財産を遺すときの注意点
連れ子に財産を遺す方法を紹介しましたが、注意点もあります。
連れ子と養子縁組をした場合、あるいは遺贈や生前贈与をした場合には、以下のような注意点が想定されます。
- 養子縁組した連れ子と実子の相続分は同じになる
- 遺言書を作成する際は「遺留分の侵害」に注意する
- 贈与内容によっては定期贈与とみなされることがある
養子縁組した連れ子と実子の相続分は同じになる
養子は被相続人の子どもとみなされます。
そのため、養子と実子の相続順位は同じであり、法定相続分も同等です。
つまり実子からすると相続権を持つ兄弟姉妹が増えた分、自身の法定相続分は減ることになります。
養子縁組で法定相続人が増えると、相続税の基礎控除額が増えて相続税対策になったり、他の法定相続人に適用される相続税率が下がったりするなどのメリットがあります。
一方で法定相続人の数が増えた分、他の法定相続人が受け取る遺産の額は少なくなります。
自分にも実子がいるときは遺産を巡って争いが起きないよう、事前に防止策を検討することも必要です。
【参考】離婚した元配偶者との子どもの相続権
離婚後も、実子との親子関係は解消されません。
そのため、たとえ離婚後に実子と離れて暮らすことになったとしても、離婚した元配偶者の相続権は消滅しますが、実子は相続権を有したままとなります。
その後、連れ子がいる人と再婚し、その連れ子と普通養子縁組を結んだ場合は、養子になった連れ子との親子関係も生じる状態になります。
したがって、自分が亡くなった場合には、離婚した元配偶者との子どもと、連れ子の両方に相続権が発生します。
なお、特別養子縁組の場合は、養子となった連れ子は実親の遺産を相続できません。
特別養子縁組をすると、養子となった連れ子と実親との間の法的な親子関係が解消されるため、養子は実親の法定相続人ではなくなります。
そのため実親が亡くなっても、養子となった連れ子に相続権は発生しません。
遺言書を作成する際は「遺留分の侵害」に注意する
「遺留分」とは、法律上定められた最低限相続できる割合のことです。
遺留分は被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人に認められており、連れ子に遺贈や生前贈与をした場合でも、遺留分の権利が奪われることはありません。
したがって、「全財産を、配偶者A子の連れ子であるB男に遺贈する」という遺言書を残していたとしても、法定相続人が承諾しない限り、法定相続人の遺留分を奪うことはできません。
もし連れ子への遺贈や生前贈与によって遺留分が侵害された場合、法定相続人は、連れ子に対して「遺留分侵害額請求権」を行使することができます。
遺留分侵害額請求とは、贈与や遺贈を受けた人に対し、遺留分を侵害されたとして、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することです。
なお、遺留分侵害額請求権には時効があります。
遺留分侵害額請求権の時効は、「相続の開始および遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知ったときから1年」、または「相続開始のときから10年を経過したとき」です。
遺産分割の問題がこじれると、解決までに時間や費用がかかることがあります。
また遺留分侵害額請求権が消滅すると、法定相続人の不利益にもなります。
連れ子に遺贈や生前贈与をするときは、他の法定相続人の遺留分を侵害しないよう、遺産分割の割合に注意しましょう。
贈与内容によっては定期贈与とみなされることがある
連れ子への毎年の贈与金額が110万円以下だったとしても、たとえば毎年100万円を10年間にわたり贈与する契約を結ぶ(約束をする)などの行為は、「定期贈与」とみなされます。
定期贈与とみなされた場合は、贈与契約をした年に「定期金給付契約に基づく定期金に関する権利」の贈与を受けたものとして、贈与した合計額に対して贈与税がかかります。
もし、毎年100万円を10年間にわたり生前贈与した行為が定期贈与とみなされると、総額1,000万円に対して贈与税が課されます。
暦年贈与の仕組みを利用したつもりで、複数年にかけて同じ金額を生前贈与していても、手順によっては贈与税の課税対象となる可能性があります。
連れ子に生前贈与をするときは、贈与する金額を毎年変えたり、贈与する時期をずらしたりするなどの注意が必要です。
連れ子に財産を遺したくない場合の対応
何らかの事情により、連れ子に財産を遺したくない・相続させたくない場合は、どうすればよいでしょうか。
最も簡単な方法は、そもそも養子縁組をしないことです。
養子縁組で連れ子を養子にした場合、養子は法定相続人となり相続権が発生しますが、養子ではない連れ子には相続権はありません。
なお、養子縁組をした後で連れ子との関係が悪化し、財産を渡したくない状況になることもあるでしょう。
養子縁組を解消し離縁することも可能ですが、手続きに手間がかかります。
離縁をするためには、養親と養子は協議のうえ、双方とも合意することが必要です。
また、遺言書に「連れ子には相続させない」旨を記載する方法もあります。
ただしこの場合、養子となった連れ子の遺留分を侵害することになりますので、連れ子にも遺留分侵害額請求権が生じます。
養子縁組を解消しないまま相続をする場合は、養子となった連れ子に「相続放棄」や「遺留分の放棄」をしてもらうなどの話し合いや事前準備が不可欠です。
ある程度妥協をして、遺言書には「遺留分相当額を相続させる」と記載しておく方法もあるでしょう。
ほかには、連れ子以外の人に生前贈与をしたり、連れ子以外の人を生命保険金の受取人にしておいたりすることで、結果として連れ子の手元にいく相続財産を少なくする方法もあります。
連れ子が相続するときは相続専門の税理士に相談しよう
実の親子同然に仲睦まじく生活をしてきても、養子縁組をしていないと、連れ子の相続権は認められません。
相続権が認められるのは、養子縁組をして法律上の親子となった場合です。
遺贈や生前贈与をして連れ子に財産を渡す方法もありますが、いくつかの注意点があります。
一方、養子縁組をした後に連れ子との仲が悪くなったり、疎遠になったりすることもあります。
財産の引き継ぎについては、専門家のアドバイスも踏まえながら、さまざまな視点から考えていくとよいでしょう。
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