この記事でわかること
- 遺言書の財産目録とはどのようなものでどんな意味を持つのかを知ることができる
- 財産目録をパソコンやワープロで作成できるようになった改正についてわかる
- 財産目録のサンプルと作成上の注意点について確認することができる
財産を保有する人が亡くなると、その配偶者や子供などの相続人が遺産を引き継ぐこととなります。
相続といえば「争族」ともいわれるほど、骨肉の争いになることも少なくないのですが、そのような争いを避けるために、遺言書を作成する人も増えています。
自分で遺言書を作成する際にはすべて自筆する必要がありましたが、2019年に改正が行われ、一部パソコンなどを使って作成することができるようになりました。
ここではその改正の内容を確認するとともに、遺言書作成上の注意点について解説します。
目次
自筆証書遺言において重要な【財産目録】
自分で作成する遺言書のことを「自筆証書遺言」といいます。
自筆証書遺言という名前のとおり、以前は遺書を自分ですべて手書きすることが必要とされていました。
遺言書はその記載内容によって大きく本文と財産目録に分けることができます。
本文とは、特定の財産について誰が引き継ぐかを指定したり、財産をどのような比率で分割するかを指定したりする部分をいいます。
遺言書を作成する遺言者の意思を表した部分ということができます。
一方、財産目録とは遺産の内容を明記したものです。
どのような遺産があるのかを特定するとともに、どの遺産を誰が相続するのか間違えないようにするために、その財産の内容について事細かに記載されます。
法改正で財産目録にパソコン・ワープロ使用が可能に
2019年1月13日に改正された民法により、自筆証書遺言のうち財産目録について自筆することなく、パソコンやワープロを使って作成することが認められるようになりました。
また、土地や建物の登記事項証明書、預貯金の通帳のコピーなどを財産目録として使うことも認められます。
したがって、これまですべて手書きしなければならなかった遺言書のうち、財産目録については手書きでなくてもよいこととされたのです。
この改正により影響が出ると予想されるのは、まず自筆証書遺言の作成件数が増えるだろうということです。
これまではすべて手書きしなければならなかったために自筆証書遺言の作成をためらっていた人も、パソコンやコピーなども使いながら、今までより手軽に遺言書を作成することができるようになると期待されます。
次に、遺言書が無効になることが減るのではないかということです。
これまでの自筆証書遺言においては、財産の内容を正確にしていなかったため、遺産分割の際に遺言書が無効となったケースが一定数あると思われますが、今後はそのような理由で無効になることは少なくなるだろうと考えられます。
また、遺言書を作成し直す人も増えると思われます。
いったん作成した財産目録は、財産の内容が変わらなければ作り直す必要がありません。
誰に何を相続させるのかを指定する本文だけを書き直せば遺言書を作り直すことができるため、遺言者の考え方の変化に合わせた遺言書の作成が容易にできると期待されます。
財産目録表のサンプル(法改正対応)
それでは実際に、パソコンを使って財産目録を作成する際の記載例を確認しておきましょう。
財産目録をパソコンなどで作成する場合の注意点
記載例にあるように、財産をその種類ごとに記載していきます。
パソコンやワープロで財産目録を作成した場合の一番の注意点は、署名・押印を忘れないことです。
財産目録の作成自体は手書きする必要はないのですが、必ずその目録には署名と押印が必要です。
各ページに署名・押印しなければならないため、忘れないようにしましょう。
当然、署名・押印が必要なため、印刷せずにデータをパソコンに保存しておいても財産目録としての効果はありません。
その他の注意点は、パソコンなどで作成する場合でも手書きで作成する場合でも共通するものです。
財産目録に記載した財産については、個別の財産ごとに番号を振っておくと、遺言書を作成する際にもわかりやすく記載することができますし、後から遺言書を作り直す際にも使いやすいというメリットがあります。
また、財産の内容を誰が見ても特定できるように記載しなければなりません。
不動産については、登記事項証明書の項目を列挙してそのとおりに記載します。
預貯金については通帳に書かれている内容をもとに、有価証券については取引明細などに記載されている内容をもとに作成します。
自動車は車検証を見ながら記載することとなります。
このほか、ゴルフ会員権や書画・骨とう品などの財産がある場合には、その内容が特定できるように記載をしておきます。
誰が見ても財産の内容を特定できる状態でなければならないため、例えば「自宅の建物」や「駐車場として貸している土地」といった記載方法は認められません。
法改正後の財産目録作成で気をつけるのは手書き部分
ここまで、民法の改正により認められることとなった自筆でない財産目録の作成方法や注意点の確認をしてきました。
財産目録を作成する際に、パソコンなどで作成したりコピーを利用したりすれば、これまでよりかなり手軽に遺言書を作成することができるはずです。
一方、遺言書の本文についてはこれまでと同様、自筆で手書きをしなければなりません。
遺言書として大事なのは本文であるため、間違ってパソコンなどで作成しないこと、代筆なども認められないことに注意が必要です。
以下に、遺言書の本文を作成する際に気をつけなければならないことをまとめました。
遺言能力がなければ無効になる
遺言書を作成する際には、15歳以上であることや意思能力が失われていないことが認められなければなりません。
特に問題となるのは、認知症などのために意思能力があると認められるかどうかが微妙な場合です。
認知症を発症しているからといって、遺言能力がないと一律に判断されるわけではなく、医師などの診断結果と遺言書の内容を総合的に判断することとなります。
遺言書を作成した当時の遺言者の状況が分かる診断結果や、生活の記録などを保管しておくようにしましょう。
遺言書としての要件を満たす
自筆証書遺言とは、単に自筆すればそれで遺言書として成立するわけではありません。
自筆すること以外にも要件があり、それらを満たしていなければ遺言書としては有効に成立しません。
自筆証書遺言として効力を発揮するためには、遺言書の署名と押印、そして作成日の記載が必要です。
なお、押印に使う判子は実印でなくてもその効力に違いはありませんが、無用なトラブルを避けるためには、実印を使用し印鑑証明書と照合することで確かに本人が押したものだと確認できる状態にしておくべきです。
また、作成日を遺言書に記載することは、その遺言書が最後に作成されたものであることを確認し、あるいは遺言者の遺言能力を判断するために必要なものです。
「令和2年7月吉日」というように具体的な日付が記載されていない場合には、無効となってしまいます。
検認までスムーズに進められるように準備する
自筆証書遺言が有効に成立するためには、家庭裁判所で検認を行う必要があります。
検認は遺言者が亡くなってから行われるものですが、遺言者としてできることはあります。
まず、遺言書は封筒に入れて、しっかり封印するようにしましょう。
封印がないことで、遺言書を保管している人や発見した人が偽造や改ざんを疑われることを防ぐ必要があります。
また、封筒には遺言者の死後に検認を行うために家庭裁判所に届け出る必要があること、勝手に開封してはいけないことを書いておきましょう。
遺言書を勝手に開封してしまうと、最悪の場合5万円以下の過料が科されるため、そのことも明記しておきます。
遺言書があることで生じるトラブルもあるため、そのような事態を防ぐための工夫が必要なのです。
まとめ
これまで自筆証書遺言を作成するうえでネックとなっていたのが、すべて手書きしなければならなかったことです。
しかし、財産目録を手書きしなくてもよくなったことで、その利便性も正確性も向上すると考えられます。
自筆証書遺言を利用しようとしている方は、積極的に利用すべきでしょう。
ただ、自筆証書遺言の本文は依然として自筆しなければなりません。
また、要件が定められているだけでなく遺言書が亡くなった後の手続きも必要となるため、必ずしも有効に成立するとは限りません。
自筆証書遺言よりも公正証書遺言の方がより確実性が高いため、遺言書の作成にあたってどちらを選択するか、改めて考えてみましょう。
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