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親の土地を借りて、子供が家を建てるというパターンはよくあるのではないでしょうか。
一方で、法律上あるいは税務上、どのように扱われるのかということについては、細かいことはよくわからないという方がほとんどでしょう。
今回は、相続における使用貸借の取り扱いについてご紹介します。
使用貸借とは
冒頭でわかりやすい例を挙げましたが、使用貸借とは無料で物を借りることです。
通常かかる経費については、借りている側が負担します。
例えば、カメラを友人から借りたとします。
本体を借りるのは無料、中身のフィルムだけは自分で買って入れ替えて使うといったパターンが使用貸借にあてはまります。
親の土地に特に地代を支払うことなく子どもが借りて、家を建てて住んでいるというのも、地代をやりとりしていないので使用貸借です。
使用貸借は、貸主と借主の信頼関係に基づいた無償契約です(民法593条)。
原則として、貸主と借主の信用関係は一世代限りのものであるため、借主が死亡すると契約は終了します。
賃貸借契約との違い
賃貸借契約の場合は、賃料が発生する有償契約です(民法601条)。
権利の性質としては、一身専属ではありません。
元の借主、貸主がそれぞれ死亡した場合、それぞれに権利が相続されますので、世代を超えて継続される契約形態です。
使用貸借の権利は相続の対象にならない
原則
民法599条では、「使用貸借は、借主の死亡によって、その効力を失う」と規定しているので、当事者のうち借主が死亡すれば終了してしまいます。
したがって、使用貸借の権利は相続の対象とはなりません。
親の土地を借りている人にとって、借主である自分が死亡した場合には、その土地を借りる権利が相続されることは通常ない、ということです。
それでは、貸主が死亡した場合はどうなるのでしょうか。
貸主が死亡した場合は、その物を貸すという債務が相続人に引き継がれます。
例外
民法599条は任意規定と解されているので、借主が死亡した後も使用貸借させることなどの取り決めをすることは可能です。
さらに、借主が死亡しても、当事者の意思解釈をした結果、使用貸借を継続させることが認められる場合もあります。
借主が死亡し、引き続き借主の相続人が使用している場合で、貸主が特に異議を申し立てない場合は、黙示の承諾があったものとして使用貸借関係が継続するケースもあります。
相続税について
使用貸借の場合相続税は割高になる
使用貸借には、借地権ほどの強い権利はありません。
贈与ではないので、贈与税がかかることはありませんが、借地権相当の価値を相続すると考えるため、借地権相当額の相続税を支払うことになります。
なぜ、借地権相当額の相続税を支払うことになるのか、詳しく説明します。
まず、親から子へ通常の価格よりも割安か、無料で物をあげたら贈与になります。
贈与の場合は、贈与税を収めることになります。
使用貸借の場合、本来親に支払うべき地代分(借地権分)を、親から贈与されていると考えれば、贈与税が課税されそうですが、使用貸借は借地権よりも弱い権利なので借地権そのものではありません。
したがって贈与税は課税されません。
結果、相続の場面で借地権の評価額分、通常の相続よりも相続税よりも多く支払うことになるというわけです。
使用貸借の場合の土地の評価額
使用貸借の土地の相続税評価額は、自用地価格として計算します。
賃貸している土地を評価する場合は、自用地価格から借地権を差し引いて評価額を算出します。
つまり、使用貸借の場合は、借地権割合が差し引かれないので、その分割高になるということです。
一例で、父が所有する土地に子供が家を建てて住んでいるというケースを考えてみます。
自用地価格は3,000万円とします。
使用貸借の場合は、相続税評価額は3,000万円です。
もし、賃貸借であれば借地権を差し引くことができるので、借地権(70%とします)を差し引いて、評価額は3,000万円×(1-0.7)=900万円になります。
これだけの比較では、賃貸借の方が、相続税の支払いが少なくて済むのでお得な感じがするかもしれません。
しかし実際には、そう簡単に比較できません。
賃貸借の場合と相続税を比較
親から無料で土地を借りるのではなく、地代を支払えば賃貸借になりますが、赤の他人に貸す場合の金額と同等ではなければいけません。
さらに、権利金の支払いがない場合は、権利金相当額の贈与があったとみなされ、みなし贈与として贈与税が課税されます。
使用貸借で相続税を多めに支払うという方法をとらないのであれば、賃貸借で権利金と地代を通常通り納めなければ、今度は贈与税がかかってしまうということです。
まとめ:使用貸借から賃貸借への切り替えは慎重に検討を
使用貸借契約にするのか、賃貸借契約にするのか、契約形態によって相続税のかかり方が違うことをご説明しました。
細かい点をいろいろと検討しなければいけないので、税に詳しい専門家に相談することをおすすめします。
親子間の賃貸借契約でも、条件を満たせば相続税の計算の時に減額評価をすることができます。
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