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ある程度の財産を持っている人が亡くなったら、10ヵ月以内に相続税の申告をして、納税までしなければなりません。
相続税の申告をするためには申告書だけでなく、とにかくたくさんの添付書類を集めることが必要になります。
書類を集めるためには役所や銀行などに何度も足を運ばなければならないことも多く、その上、わからないことがあれば税務署や税理士の事務所に相談するために足を運ばなければならないこともあります。
残された相続人が、亡くなった被相続人の財産や負債を手探りで探しつつ、書類を集めて10ヵ月以内に申告・納税をするのはかなり大変なことです。
10ヵ月を過ぎてしまうと延滞税がかかる上に、申告内容にミスがあれば過少申告課税や重加算税も課せられることがあります。
このように大変な相続税の申告を期限内にミスなく行うためには、チェックシートを活用することが有効です。
この記事では、相続税申告のミスを防ぐことの重要性を知っていただいた上で、税務署に提出する前にチェックシートを活用するコツや注意点をご紹介していきます。
非常に怖い相続税の申告ミス
国税庁の発表によると、平成27年中に亡くなった人は134万0,397人で、そのうち相続税申告書の提出にかかる人は11万1,728人でした。
亡くなった人の中で相続税の申告が必要だったのは8.3%だったということです。
問題は、ここからです。
相続税の申告書が提出された11万1,728件のうち、1万2,576件で税務調査(実地調査)が行われ、そのうちの1万0,521件で申告漏れなどの非違が見つかったというのです。
相続税の申告をしたケースの11.3%で税務調査が行われ、その83.7%で申告ミスが見つかったという結果です。
実地調査のほかにも、文書や電話での連絡や税務署での面接による調査(簡易な接触)によっても6,995件の申告ミスが見つかっています。
相続税の申告ミスは多い
上の数字を見て、相続税の申告ミスが多いと感じるか、少ないと感じるかは人それぞれかもしれません。
しかし、所得税の確定申告の場合と比べると、相続税の申告ミスの多さがわかります。
所得税の場合は、平成27年分について確定申告書を提出した人が約2,198万人、その中で税務調査が行われたのは約62万3千件(2.8%)、そのうち申告漏れなどの非違が見つかったのは38万4千件(61.6%)です。
相続税の申告については、所得税の確定申告の場合よりもかなり多くの割合で税務調査(実地調査)が行われ、かつ、申告ミスが発覚する割合も高いことがおわかりいただけるでしょう。
相続税の申告というのは、所得税の確定申告のように毎年行うものではありませんから、慣れていない人が多いのも原因の一つでしょう。
かつ、被相続人が思わぬときに突然亡くなってしまうことも多く、残された相続人が被相続人の財産や負債を正確に把握するのが難しいケースも多くあります。相続人が皆遠方に住んでいる場合も少なくありません。
このような状況で、10ヵ月という限られた期間内に多くの作業を進めるのは大変なことです。
相続税の申告でミスをするとペナルティがある
相続税の申告でミスをしても、訂正するだけで済むのなら問題ないかもしれません。
しかし、実際にはペナルティを課されるケースが多いので注意が必要です。
申告漏れがあると追徴税を納めなければならない上に、延滞税もかかります。
税務調査によって申告漏れが見つかった場合はさらに、過少申告加算税もかかります。
国税庁の発表によると、上の実地調査1件当たりで 623 万円の追徴税額(加算税を含む)があったとのことです。
納税額や追徴税額はケースバイケースなので、1件あたりの平均額を見ることにあまり意味はありませんが、それなりの金額の追徴があり得ることは頭に置いておかなければなりません。
さらに、財産隠しなどをしていると判断された場合には重加算税が課せられ、10ヵ月の申告期限から2週間を過ぎても申告書が提出されない場合は無申告加算税も課されますので、相続税の申告はくれぐれも期限内に、抜かりなく行うことが必要です。
相続税申告のミスを防ぐにはチェックシートの活用が不可欠
相続税の申告を税理士などに依頼せず自分で行う場合は、国税庁のホームページに掲載されている「相続税の申告のしかた」を見て作業を進めるのがおすすめです。
相続税の具体的な計算方法や申告の手続などが詳しく解説されているので、よく読んで順番に進めていきましょう。
申告書の作成を進める際には、同じく国税庁のホームページから「相続税の申告のためのチェックシート」をダウンロードして活用しましょう。
このチェックシートは、相続税の申告をする際に多くのケースで検討すべき事項で、かつ一般に誤りやすい事項をリスト化したものです。したがって、このチェックシートを活用して申告書を活用するのが最も効率的と言えるでしょう。
チェックシートを活用するコツと注意点
国税庁のチェックシートを活用するコツは、上から順番に漏れなく検討していくことです。
「検討項目」ごとに「検討内容」に記載されている事項を検討し、「検討資料」に記載されている資料で該当するものがあれば取得・確保していきます。
これを上から順番に行うことです。
注意点としては、各検討事項について、安易な判断でチェックしてはいけないということです。
検討資料で該当するものがあれば、面倒でも取得して内容を確認した上でチェックすべきです。
よくわからない事項があれば空白のまま残しておき、必要に応じて税務署や税理士に相談するのがベターです。
安易な判断でチェックしてしまうと、それが申告ミスとなりかねません。
申告ミスがあると追徴課税が発生してしまう可能性があります。
ミスを防ぐためのチェックシートですから、一つひとつ確実に検討しましょう。
他のチェックシートは使えないのか?
国税庁のチェックシートの他にも、優れたチェックシートやチェックシートがいろいろ出回っています。
税理士会も独自のチェックシートを作成していますし、各税理士の事務所でも固有のチェックシートを備えているところがあります。
インターネットや書籍などでもチェックシートを手に入れることができます。
しかし、優れたチェックシートであればあるほど、検討事項の数が膨大になってしまう傾向があります。
申告漏れを防ごうとすれば、必然的に検討事項が増えるからです。
申告ミスをなくすためには数多くの事項を検討するに越したことはないのですが、あまりに膨大なチェックシートは一般の方が使用するのに向いているとは言えません。
一般の方が仕事などをしながら10ヵ月の申告期限内にすべての事項を検討するのが困難なほど膨大なチェックシートに手を出すのであれば、税理士に依頼してしまう方が賢明でしょう。
国税庁のチェックシートは、一般の方の申告ミスを防ぎたいという目的で、できるだけ多くの方の役に立つように考えて作成されたものです。使用済みのチェックシートを申告書に添付して提出するように推奨されているのも、同じ目的によるものです。
したがって、このチェックシートを活用して申告書を作成して、添付して提出すれば税務署の心証が良くなり、税務調査を受ける確率を減らすことにつながるとも考えられます。
以上の理由で、一般の方が自分で相続税の申告を行う場合は、国税庁のチェックシートを活用するのが最もおすすめだと言えます。
困ったら早めに税理士に相談した方が良い理由
相続税の申告は自分でもできますが、かなり大変です。困ったら早めに税理士に相談するのがベターです。
その理由は、第一に10ヵ月というタイムリミットがあることです。
国税庁のチェックシートに記載されている「検討内容」は必要最低限に抑えられていますが、それでもかなりの量があります。資料の収集にも時間がかかりますから、一つひとつじっくりやっていると10ヵ月で間に合わなくなるケースも少なくありません。
その点、税理士に依頼すれば資料の収集も代わりにやってくれるので安心です。
理由の2つ目としては、国税庁のチェックシートには節税の観点が入っていないということです。
相続税も節税することが可能です。
その方法は自分で調べればわかりますが、多くの人にとっては、かなりの時間をかけて勉強する必要があります。
10ヵ月というタイムリミットもありますから、その勉強に時間をかけるよりは、税理士に相談して事情に応じたアドバイスをしてもらう方が効率的です。
まとめ
相続税の申告においては、毎年たくさんの申告ミスが発覚しています。それだけ、相続税の申告は大変で難しいものだということです。
遺産が持ち家と預貯金だけで、負債はないというようなケースであれば、さほどの苦労はないのかもしれません。しかし、相続税が課されるということは、それなりの資産がいろいろあるということであり、多くのケースで大変な作業が必要になります。
悩んでいると時間がばかりがどんどん過ぎていってしまいます。わからないことがあれば、一度、税理士に相談してみてはいかがでしょうか。
各地で無料相談も開催されていますし、依頼しなくても相談してアドバイスだけしてもらうということも、もちろんできます。
相続税の申告は時間との戦いでもありますから、税理士を上手に利用して、ミスのない申告を行いましょう。
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