「相続」という言葉からは、財産を受け継ぐというのが一般的なイメージですが、財産にはプラスの財産もあればマイナスの財産もあります。マイナスの財産、つまり借金などの債務の承継を一部拒否したい場合、相続自体を放棄したい場合も出てきます。
具体的には、相続の方法には、単純承認、限定承認、相続放棄の3種類あり、いずれかを選ぶことになります。
単純承認
被相続人の権利や義務をすべて相続する方法です。プラスの財産もマイナスの財産もすべて受け継ぐことになります。一般的なわかりやすい相続の形になります。
借金などの債務がある場合は注意が必要です。債務の割合は、相続人の間で自由に決めることができますが、その割合は第三者である債権者に主張することは出来ません。
例えば、1人の相続人が債務の全額を相続すると決めたとしても、債権者は長男から債務を回収出来なければ別の相続人に請求することが出来ます。
◎プラスの財産もマイナスの財産も全て相続する場合
すべて相続する
一般的な相続はこの形が多いです。
限定承認
プラスの財産の範囲内で、借金などの債務の弁済義務を負う方法です。被相続人のプラスの財産からその債務を支払うので、相続人が自己の財産から支払う必要はありません。被相続人にプラスの財産とマイナスの財産のどちらの方が多いか不明な場合には有効な手段です。
◎相続財産がプラスになった場合
◎相続財産がマイナスになった場合
財産がプラスかマイナスかわからないとき有効
相続放棄について検討する際には、限定承認と比較して行う必要がありますので、この限定承認についてのメリット・デメリットを含めた内容を理解することは非常に重要です。
もしも、単純承認を行った場合には、あとからプラスの財産を超えるほどの大きな借金が発見された場合においては、これも含めて相続しなければなりません。
これに対して、限定承認の手続きを行っておけば、プラスの財産の範囲内でのみ借金を相続することになり残った債務については相続しないため安心と言えます。
しかも、結果的にプラスの財産が多かったような場合にはもちろん問題なくそのまま引き継ぐことができます。
このような点で、限定承認は相続人にとって非常に有利な制度です。
被相続人の相続財産について心配のある人は、是非この制度を利用するとよいでしょう。
ただし、限定承認は相続人一人だけでは行うことができず、相続人全員が共同で行う必要があり手続きも面倒なため、あまり行われてないのが現状です。
相続放棄
プラスの財産もマイナスの財産もすべて受け継がない方法です。借金の方がプラスの財産よりも明らかに多い場合などに有効です。
相続を放棄すると、その人は初めから相続人でなかったことになり、代襲相続も認められません。なお、相続放棄は相続人1人でも行うことが出来ます。
限定承認や相続放棄を行う場合は、被相続人の死亡の事実を知り、かつこれにより自分が法律上、相続人になったことを知った日から3か月以内に、家庭裁判所にその旨を申し出なければなりません。期間内に申し出なかった場合は、単純承認をしたこととなります。
◎すべての財産を放棄
マイナスの財産しかない場合に有効
家族関係という点でいえば、長年音信のなかった前妻の子供が父親の相続を放棄するといったパターンなどはよくみられます。
単純承認はマイナスの財産を含めて全ての相続財産を引き継ぎますから、特に手続きは必要ありません。
また、相続放棄が行われるケースで一番わかりやすいのは、相続財産と負債を比べて負債の方が多い場合ですが、そのような場合に限ったことではありません。
たとえば被相続人もしくは周囲の相続人との関係が悪くて、手続きでの書類のやりとりなどもしたくない、どうせたいした金額の財産でもないから相続に一切関わりたくないなどの理由で相続放棄する人もいます。
以上、3つの方法をご説明させていただきましたが、相続財産の一部または全部を処分した場合は、原則として限定承認や相続放棄することは出来ません。また限定承認や相続放棄を行ったあとでも、相続財産を故意に隠したり、消費したりしていたことがわかった場合なども、原則としては、単純承認をしたとして扱われますので注意が必要です。
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