この記事でわかること
- 終身保険とは何か理解できる
- 終身保険の保険金はみなし相続財産に含まれることがわかる
- 相続税対策に終身保険を使用するメリットがわかる
- 終身保険を活用した相続税の節税効果が理解できる
- 相続税対策に終身保険を活用するときの注意点がわかる
相続対策を考えている方にとって、終身保険はメリットがあります。
死亡保険金の受取人として指定された相続人には、基礎控除とは別枠の控除があるため、相続財産総額を減らすことができます。
また、受取人を指定しておくことで、死後の相続争いを避けることにもつながります。
ただし、相続税対策として考える場合には注意すべき点もあるため、予め理解しておくことが大切です。
以下では、終身保険とは何か、死後に支払われる保険金は課税上どう扱われるのか、相続税対策に利用するメリットは何かについて紹介します。
また、相続税対策として終身保険を活用した場合の具体的な節税効果や活用する場合の注意点についても詳しく紹介します。
目次
終身保険とは
終身保険は通常、名前のとおり死亡したときや高度障害になったときの保障が一生続くことが特徴です。
保険会社ごとに様々な特徴や違いがありますが、一般的には次のような共通点があります。
保障は、保険の対象となる被保険者が生存している限り、また解約しない限り、一生続くことが特徴です。
また、一生続く保険の内容や保険料が変わらないことも大きな特徴と言えます。
保険料の支払い期間については、保障期間と同様に生涯払い続ける終身払いと、支払い期間が保険期間よりも短く設定されている短期払いがあります。
短期払いには、年齢で区切られるものと一定期間で区切られるタイプの他、一括して支払う一時払いもあります。
なお、生存中にまとまった金銭が必要な時や保障を必要としなくなった時には解約でき、解約返戻金として受け取ることができます。
ただし、その時点で保障は消滅し、死亡保険金などを受け取ることはできなくなります。
終身保険の保険金はみなし相続財産に含まれる
終身保険の被保険者が死亡したときには、受取人に保険金が支払われます。
では、この保険金は相続ではどのような財産として扱われ、また相続税の課税対象となるのでしょうか。
税務上はみなし相続財産
契約者と被保険者が亡くなった方自身であり、保険金の受取人が相続人の一人である場合、保険金は法律上相続財産として扱われません。
この保険金は通常、受け取った相続人に固有の財産となり、遺産分割の対象となることはありません。
受取人として指定された相続人なら、他の相続人がいても同意を得る必要はなく、単独で保険会社に請求して保険金を受けることができます。
たとえ受取人となった相続人が相続放棄した場合でも、相続財産には含まれない固有の財産であるため受け取ることができます。
しかしながら税務上の扱いでは、死後に支払われた保険金についても相続財産としてみなされることになります。
ただし、生前に保有していた相続財産とは区別され「みなし相続財産」と称されます。
みなし相続財産には非課税枠がある
死亡保険金は、相続財産とみなされるものの、法定相続人に対して優遇措置が設けられています。
これは、法定相続人一人について500万円が控除されるもので、法定相続人であれば受け取った保険金が500万円以内なら相続税を支払う必要がありません。
死亡保険金の非課税枠 = 500万円 × 法定相続人の数
このため、非課税枠を超える死亡保険金を受けった場合に、超える部分だけが相続税の課される対象となります。
したがって、預貯金などの現金として相続するよりも、終身保険の保険金として準備しておく方が節税効果が生まれることになるのです。
相続税対策に終身保険を使用するメリット
終身保険が相続税対策としてメリットがある理由として、大別して2点挙げることができます。
1点目が相続税の計算上、課税対象となる相続財産から死亡保険金の控除分を差し引くことができる節税効果あることで、2点目が受取人を指定できることです。
節税効果のメリット
相続税の課税対象となる財産には、亡くなった方が生前保有していた預貯金や現金、不動産などの遺産の他、相続財産とみなされる死亡保険金も含まれます。
しかしながら、すでに確認したとおり死亡保険金には非課税枠があるため、課税される相続財産の額を減らすことができます。
相続税には基礎控除が設けられているため、法定相続人が3人なら非課税の死亡保険金を除いた相続財産が4800万円まで相続税がかかりません。
なお、どの程度の効果があるかについてはこの後で詳しく紹介します。
受取人が指定できるメリット
終身保険では、死亡時の保険金受取人を指定できます。
指定できる範囲は、通常2親等以内の親族とされていますが、生前に指定しておくことによって相続税の納税資金対策や遺産相続争いを避ける対策ともなります。
相続税の納税など資金対策になる
遺産が多額で、相続人に高額な相続税を支払うゆとりがないケースもあります。
相続した預貯金や現金だけでは納税額を準備できず、相続した不動産を売却したくても納税期限までに間に合わないことも珍しいことではありません。
死亡保険金は、受取人に指定された相続人であれば単独で支払い手続きを行うことができるため、短期間で手元に現金を得ることができます。
この仕組みを使えば、納税資金として死亡保険金を充てるよう相続人に財産を残すことが可能です。
また、保険金を葬儀費用に充てるよう、遺族に残すこともできるでしょう。
遺産分割対策になる
財産を現金や預貯金、不動産などとして残した場合は、遺産分割が必要になります。
名義人が死亡すると、預貯金口座は凍結され、相続人が勝手に不動産を処分することもできません。
このような財産を相続人が利用できるようにするためには相続手続きが必要で、遺言がなければ相続人全員で遺産分割協議を行う必要が生じます。
相続が「争続」や「争族」と揶揄されるように、遺産を巡る協議は揉め事が起きるリスクを孕んでいます。
遺産分割協議がまとまらない場合などは、決まるまで相続した財産を利用することができなくなってしまいます。
一方、終身保険の場合は受取人を指定しておくことができるため、基本的にはこのような相続争いの影響を受けることがありません。
また、分割してほしくない不動産があり、相続人2人が相続するようなケースでは、一人には不動産を、もう一人には保険金を残すような方法にも利用できます。
終身保険を活用した相続税の節税効果
現金で相続する場合と終身保険の死亡保険金をみなし相続財産として受け取る場合では、どのくらいの節税効果があるのでしょうか。
具体例をもとに、相続税の実際の納税額を比較してみましょう。
相続税の計算方法
まず、相続税の計算方法を確認しておきましょう。
遺産は、課税対象となる正味の遺産額から基礎控除を差し引いた額が課税対象です。
なお、基礎控除は、3000万円に加え、法定相続人一人について600万円です。
ただし、課税対象となる正味の資産額は、死亡保険金の非課税枠や葬式費用、債務を除き、相続開始前3年以内の贈与財産を加えて計算します。
次に、この遺産総額を法定相続分どおりに分割したと仮定し、各人の相続税率を乗じると相続税が計算できます。
さらに、相続人ごとの実際に収める税額は、相続税の総額を実際の相続割合で按分して配偶者控除などのそれぞれ適用可能な控除を差し引いて求めることになります。
相続税の計算例(現金のみ相続)
夫婦と子2人の家族構成を前提として、夫が亡くなるケースを想定します。
現金で2億円が遺産額の場合で、終身保険の利用がなく葬式費用と債務、3年以内の贈与をゼロと仮定すれば、正味の遺産額は2億円です。
= 遺産額 - 非課税財産 - 葬式費用 - 債務 + 3年以内の贈与財産
= 2億円 - 0
基礎控除は、3000万円に加えて600万円が3人分で4800万円ですから、差し引き1億5200万円が課税対象で、3人に法定相続分で分割します。
= 正味の遺産額 - 基礎控除
= 2億円 - 4800万円
= 1億5200万円
法定相続分で相続した場合の税額を、相続人ごとの分割額に税率を乗じて求めます。
法定相続分は妻が2分の1、子はそれぞれ4分の1であるため、それぞれに分割された財産の額は妻が7600万円、子はそれぞれ3800万円です。
国税庁の相続税速算表によって税率をあてはめると、妻は30%で700万円の控除があります。
子は、20%の税率となり控除は200万円です。
これを計算すると、それぞれの税額は妻が1580万円、子はそれぞれ560万円ということになります。
一方、実際に納める税額は、相続税の総額を実際の相続割合で按分し、配偶者控除など適用可能な控除を差し引いて求めます。
実際の相続額も法定相続分と同じと仮定すると、税額は変わらないものの、妻は配偶者控除が適用できるため納税はゼロになります。
一方、子二人分の納税額は合計で1120万円となります。
相続税の計算例(現金と死亡保険金)
前提は変えずに、相続財産のうち1500万円以上の死亡保険金がある例を計算してみます。
まず、正味の遺産額は、非課税枠を差引いて1億8500万円です。
= 遺産額 - 非課税財産(葬式費用と債務、3年以内の贈与をゼロと仮定)
= 2億円 - 1500万円(注:500万円×3人)
= 1億8500万円
課税対象となる遺産総額は、正味の遺産額から基礎控除を差引いて1億3700万円となります。
= 正味の遺産額 - 基礎控除
= 1億8500万円 - 4800万円
= 1億3700万円
法定相続分で相続した場合の税額を、相続人ごとの分割額に税率を乗じて求めます。
法定相続分は、妻が6850万円、子はそれぞれ3425万円です。
それぞれ税率を乗じて控除額を差し引くと、税額は妻が1355万円、子はそれぞれ485万円になります。
実際の相続額も法定相続分と同じと仮定すると、税額は変わらないものの妻は配偶者控除が適用できるため納税はゼロです。
一方、子二人分の納税額は、合計で970万円と計算できます。
この結果、2億円の財産のうち1500万円をみなし相続財産の非課税枠として控除できることによって、実際の納税額が150万円節税できることがわかります。
相続税対策に終身保険を活用するときの注意点
終身保険には相続対策となるメリットがあるものの、その効果を得るためには知っておくべきことや注意すべきこともあります。
契約者・被保険者・保険金受取人の名義
終身保険の契約では、保険料を支払う契約者、死亡保険金などの対象となる被保険者、死後に支払われる保険金受取人の3種類の人物が登場します。
そろぞれが誰かによって死亡保険金に課される税金の分類が異なり、相続財産として扱われなければ、非課税枠を利用することができなくなってしまいます。
相続税対策としては、契約者と被保険者を同一にして、受取人を法定相続人にしておく必要があることに注意が必要です。
死亡保険金にかかる税金の種類
契約者と被保険者が同一人物で、受取人が法定相続人の場合は保険金はみなし相続財産として相続税の対象です。
たとえば夫が契約者であり被保険者となって、妻が受取人となるケースがこれに該当します。
保険金は遺族の生活保障という役割があるため、税負担が少なく抑えられる仕組みです。
これに対して、契約者と受取人が同一人物の場合は、保険金は所得税の対象です。
たとえば妻を被保険者として、夫が契約者と受取人になるケース、子を被保険者として父親が契約者と受取人になるケースなどが該当します。
なお、このケースでは支払った保険料は経費として差し引いた後の金額に課税されることになります。
また、契約者、被保険者、受取人がすべて異なる人物の場合は、贈与税の対象です。
たとえば妻を被保険者として夫が契約者となり、受取人に子を指定するようなケースが該当します。
父から子に贈与したとみなされることになります。
必要な費用を保険料支払いに充てない
終身保険の支払いには、終身・短期・一時払いなどがありますが、いずれにしても死亡保険金に応じた額を保険料として支払わなければなりません。
年齢を重ねてからの保険料は、若い時からの契約に比べて割高になりがちです。
老後の生活費、医療や介護にかかる費用は除いた上で、保険料支払いが可能な範囲の契約とするよう注意が必要です。
契約途中で解約するようなことがあれば、相続対策として成立しない結果になってしまいます。
加入し過ぎに注意
死亡保険金が相続税の対象になれば、基礎控除とは別に法定相続人一人当たり500万円の非課税枠があるため節税になります。
ただし、非課税枠を超えた金額については相続税の課税対象です。
配偶者には、1億6千万円まで相続税がかからない控除があるものの、子にはこのような優遇された控除がありません。
また、配偶者が多額の控除を利用して相続した場合でも、配偶者が亡くなったときの二次相続では子に高額な相続税が発生する恐れがあります。
他の財産や相続人の数などを考慮したシミュレーションなども行った上で、バランスの良い保障とすることが大切です。
まとめ
終身保険を相続税対策とするなら、契約者と被保険者を同一として、配偶者や子などの法定相続人を受取人にしておくと節税になります。
遺族への税負担を減らすこととともに、生前に受取人を指定できるなどの「争続」や「争族」を避ける効果も期待できます。
ただし、高額な保険料は契約中の生活を圧迫する恐れもあり、加入し過ぎは節税効果が薄れることにもつながります。
遺言書の利用も検討しながら、バランスの取れた財産配分を検討することが大切です。
不安な場合は、相続税に精通した専門家に相談することをおすすめします。
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