この記事でわかること
- 「相続税の申告要否検討表」の正しい書き方について理解できる
- 「相続税についてのお知らせ」をいつ頃までに回答したらいいかがわかる
- なぜ税務署から「相続税の申告要否検討表」が送られてくるのか?とその対処法
大切なご家族を亡くされた後しばらくして、税務署から突然「相続税についてのお尋ね」という封筒が届くことがあります。
普段見慣れない書類が税務署から送られるとどう対処したらいいか、戸惑ってしまいますね。
この記事では、税務署から届いた「相続税についてのお尋ね」への対応方法について解説します。
また「いつ頃までに回答したらいいか?」など、よくある疑問について相続問題の経験豊富な税理士が回答します。
ぜひ参考にしてください。
相続についてのお尋ねとは?
ご家族が亡くなられると、税務署から相続税に関する案内書類が送られてくることがあります。
死亡された日から半年くらい、6か月から8か月ほど経った時期に送られてくることが多いようです。
「相続税についてのお尋ね」と呼ばれるこの送付物には、(1)「相続税についてのお知らせ」と(2)「相続税の申告等についてのご案内」の2種類の書類が同封されています。
- (1) 「相続税についてのお知らせ」は、相続税の申告の可能性がある方あてに郵送されます。
内容は一般的な相続税についての案内文ですので、参考として目を通すのがいいでしょう。 - (2)「相続税の申告等についてのご案内」についても、同じく相続税がかかる可能性が高い方に郵送されます。
こちらの書類にはいくつか記載が必要な箇所がありますので注意が必要です。
内容として、相続税の申告が必要かどうか確認する「相続税の申告要否検討表」や、チェックシートなどが一式で同封されています。
この後、「相続税の申告要否検討表」の書き方と、書類が送られてきた時の対処法をまとめています。
ぜひ確認して下さい。
相続税のお尋ね「相続税の申告要否検討表」の書き方
ここからは、「相続税の申告要否検討表」の書き方を説明していきます。
申告要否検討表のひな形は、国税庁ホームページからダウンロードすることができます。
記載例もあるので、書き方の具体例を確認したい方はこちらから確認してください。
参考:国税庁:相続税関連情報
申告要否検討表は、全部で12の欄に分かれています。
12個も記載する欄があるのか、と思ったかもしれませんが、記載する内容は決して難しいものばかりではありません。
ですが、正確な数字を記載するのは慣れていないと案外難しいものですし、調査が必要な項目も多いですので、税理士など専門家の意見を参考にした上で記載するほうがいい場合もあります。
一つ一つ確認していきましょう。
亡くなられた方(被相続人)の基本情報について
亡くなられた方のことを、「被相続人」と言い、ここでは主に亡くなられた方の基本情報について記載します。
住所、氏名(フリガナ)、生年月日、亡くなられた日
(1) 亡くなられた人の住所、氏名(フリガナ)、生年月日、亡くなられた日を記入してください。
この欄では、
- ・住所
- ・氏名(被相続人)
- ・生年月日
- ・亡くなられた日
のそれぞれについて記載していきます。
職業及びお勤め先の名称
(2) 亡くなられた人の職業及びお勤め先の名称を「亡くなる直前」と「それ以前(生前の主な職業)」に分けて具体的に記入してください。
この欄では、以下について記載します。
- ・亡くなられる直前のご職業とお勤め先
- ・それ以前のご職業とお勤め先
具体的な会社名が分かればその名称を、もし勤務先がなければ「無職」などと書いていきます。
相続人の人数について
相続人(遺された資産を引き継ぐ人)についての情報を記載します。
相続人の人数、氏名、住所及び亡くなられた人との続柄
(3) 相続人は何人いますか。
相続人の氏名、住所及び亡くなられた人との続柄を記入してください。
この欄では、以下について記載します。
- ・相続人の氏名、被相続人との続柄
- ・相続人の数
注意書きにあるように、「相続を放棄した人」がいる場合にはその部分も含めて記入する必要があります。
明確に相続を放棄した人がわかれば記載してもいいですが、もしはっきりと分からない場合には、相続に詳しい専門家に相談した上で記入をしたほうがいいかもしれません。
またこの欄に書く「相続人」は、民法の規定通りに記載する必要があります。
わかりやすくまとめたページがありますので参考にしてください。
亡くなられた方の不動産の情報について
亡くなられた方が保有していた不動産の情報を記載します。
不動産、土地、建物
(4) 亡くなられた人や先代の名義の不動産がありましたら、土地、建物を区分して(面積は概算でも結構です。)記入してください。
被相続人の名義だった不動産を土地・建物に分けて、以下を記載します。
- ・種類
- ・所在地
- ・面積(イ)
- ・路線価(ロ)または倍率(ハ)
- ・評価額の概算(二)
- ・合計額
亡くなられた方の名義だった不動産(土地や建物)調べるには、お住まいの市区町村から送られてくる固定資産税の課税明細(納付書のつづり)を準備すると便利です。
固定資産税課税明細は、毎年1月1日時点で保有している土地建物について4月上旬に納税義務者あてに送られてきます。
納付書に記載されている数値をもとに記載するといいでしょう。
実際には路線価や倍率、評価額の概算といった項目は馴染みのない方が多いので、分からない場合には不動産会社や税理士など、不動産を扱う専門家の助言を聞いた方がいいかもしれません。
亡くなられた方の有価証券、預貯金、現金の情報
亡くなられた方が保有していた有価証券、預貯金、現金の情報を記載します。
株式、公社債、投資信託等
(5) 亡くなられた人の株式、公社債、投資信託等がありましたら記入してください(亡くなった日現在の状況について記入してください)
被相続人が保有していた株式などの有価証券について、以下を記載します。
- ・銘柄等
- ・数量
- ・金額
- ・合計額
有価証券の調べ方としては、亡くなられた方が保有していた株式等を管理していた証券会社等から定期的に送られてくる「取引報告書」、「取引残高報告書」などの書類をもとに記載することになります。
また、個人が管理している台帳などあれば、そちらを参考にするのもいいかもしれません。
預貯金・現金
(6) 亡くなられた人の預貯金・現金について記入してください(亡くなった日現在の状況について記入してください)
同じく、預貯金や年金について記載します。
- ・預け入れ先
- ・金額
- ・合計額
こちらも口座を管理していた銀行等からの情報を基に記載するのがいいでしょう。
生命(損害)保険金・死亡退職金
(7) 相続人などが受け取られた生命(損害)保険金や死亡退職金について記入してください
相続人が受け取った生命保険金や死亡した際に受け取った勤務先からの退職金などについて記載します。
- ◆生命保険金等
- ・保険会社等
- ・金額
- ◆支払い会社等
- ・死亡退職金
- ・金額
これらの情報をもとに、非課税となる金額を算出し記入します。
「生命保険金等」と「死亡退職金」は、それぞれ相続人の人数×500万円が非課税とされています。
生命保険金は死亡を原因として受け取られた金額(死亡保険金)のみが対象になり、入院給付金、入院保険金等はここには含まれません。
また、一部の損害保険などには特約として死亡時に保険金を受け取るタイプのものもあるので、記載漏れがないよう注意が必要です。
保険会社ごとに用いられている用語が違うこともあり、不明な点がある場合はファイナンシャルプランナーや税理士など、専門家の意見を参考にするといいでしょう。
その他の財産の情報
ここでは、今まで記載した財産以外の家財など、その他の財産の情報を記載します。
上記以外の財産(家庭用財産、自動車、貸付金、書画・骨とうなど)
(8) 亡くなられた人の財産で、上記4から7以外の財産(家庭用財産、自動車、貸付金、書画・骨とうなど)について記入してください。
ここでは上記以外の資産についての情報を記入します。
例えば以下のようなものがあります。
- ・貸付金・・・貸付をしている金額の残高
- ・金地金・・・死亡した日の単価×重量(いわゆる金属の「金」をイメージしてください)
- ・家庭用財産(家財)・・・一つ一つの家庭用電気機器などを算出するのは手間がかかりますので一式としてある程度の額を算出します
- ・自動車・・・時価、下取りに出した場合の概算額
- ・ゴルフ会員権・・・売却した場合の概算額×70%
- ・書画、骨董・・・下取りに出した場合の概算額
- ・死亡保険金以外の保険金・・・実際の受取金額
これらについて、財産の種類、数量、金額及び合計額について記載します。
亡くなられた方から生前贈与を受けていた場合の情報について
ここでは生前贈与や相続時精算課税制度を適用して財産の贈与が行われていたかどうかを記載します。
ここでのポイントは、生前に贈与などで財産の移管が行われていたか、また行われていたらその財産を被相続人の財産として総額に加える(持ち戻しする)必要があるか、などです。
民法やその他関連法に基づき、相続財産額を確定するために記入が求められています。
記載に不安がある方は税理士など専門家にアドバイスをもらうのもいいでしょう。
相続時精算課税を適用した財産の贈与
(9) 亡くなられた人から、相続時精算課税を適用した財産の贈与を受けた人がおられる場合に、その財産について記入してください。
「相続時精算課税制度」は、わかりやすくまとめたページがありますので参考にしてください。
この用語自体がわからない場合は、思い切って専門家に相談してみるほうがいいでしょう。
亡くなる前3年以内の生前贈与
(10) 亡くなられた人から、亡くなる前3年以内に、上記9以外の財産の贈与を受けた人がおられる場合に、その財産について記入してください。
「生前贈与」については税務署と意見の分かれやすいところです。
親族間といえども、「贈与」自体が契約行為になります。
もし契約内容を文面に残していない、子どもの口座にお金を預けたままで印鑑を自分が保管している、などの場合には、贈与行為自体が否認される場合もありますので、不明点があるときは税理士など専門家に相談してみるほうがいいでしょう。
生前贈与については、わかりやすくまとめたページがありますので参考にしてください。
亡くなられた方の債務・経費と葬式費用の情報について
借入金や、亡くなった方(被相続人)の経費で、死亡日以降に支払ったものを記入します。
借入金や未納となっている税金などの債務、葬式費用
(11) 亡くなられた人の借入金や未納となっている税金などの債務について記入してください。
また、葬式費用について記入してください。
- ・借入金(ローン)・・・死亡した日の残高
- ・固定資産税・住民税・・・亡くなられた年分の税金で、死亡した日より後に支払ったもの
- ・医療費・・・死亡した日より後に支払いったもの
- ・介護費用・・・死亡した日より後に支払ったもの
- ・敷金・・・アパート賃貸業などの預り敷金(入居者に返済義務があるため)
葬式費用はお通夜、告別式に関する支払いが含まれます。
お布施や心付けといった、通常領収書のない支払いも含めることができますが、香典返しや、初七日、四十九日に関する支払いは含められません。
どこまで税務署がこういった費用に介在してくるかという問題もありますが、原則としてはこのような取り決めになっています。
相続税申告書の提出が必要かどうか
今まで記載した内容をもとに、最終的に相続税の申告及び申告書の提出が必要かどうか、を記載します。
相続税の申告書の提出が必要か
(12) 相続税の申告書の提出が必要かどうかについて検討します。(概算によるものですので、詳細については税務署にお尋ねください)
上記の数字をまとめ金額を当てはめていきますが、この時、記載欄を間違えないように注意して下さい。
カッコ書きにもあるように、あくまで概算としての記載になりますから、必要に応じて税務署や税理士など、専門家の見解を確認してください。
これで「相続税の申告要否検討表」の作成は完了です。
左下に作成日、作成した方の住所、氏名、電話番号を記入します。
なぜ税務署から「相続税についてのお知らせ」が送られてきたの?
「相続税の申告要否検討表」が送られてきたということは、税務署の方から「相続税の対象になる可能性がある」と見られている、と考えた方がいいでしょう。
死亡した家族がいるご家庭全てに送られてくるわけではありません。
税務署は死亡届の通知を受けて、亡くなった人の資産・過去の確定申告・保険金の支払いなどをチェックします。
相続財産をチェックしたうえで「この相続は課税対象になるかもしれない」という見込みがあれば、お尋ねを送るようになっています。
一人で作成するのは少しハードルが高いと思われるかもしれませんが、指定されている項目を落ち着いて一つ一つ記載していけば、必ずしもできないものではありません。
ですが、中には金額の算出が難しい項目もありますので、不明な点がある場合は専門家のサポートを受けるのもいいかもしれません。
「相続税の申告要否検討表」を提出しないとどうなる?
回答を提出しなかったとしても、罰金などの直接なペナルティーはありません。
ですが、後に相続税申告書の提出が必要と税務署が判断した場合には、無申告加算税や延滞税など、課徴的な税金が課せされる可能性があります。
相続税が課税される、されないに関わらず、提出を怠らない方がいいと言えるでしょう。
ただし税理士に相続相談しており、手続きを進めているなら、回答は不要です。
税務署のお尋ねは、「相続税の支払いが発生しそうな人に書面で調査する」ことが目的になります。
正しく相続手続きを行って、税金を納めようとしているなら回答しなくても問題ありません。
虚偽の回答をした場合
もし虚偽の回答をしてしまったら、それ自体にペナルティーはありません。
ただし実際の相続税を払うときに、虚偽の申告をして脱税すると、追加で課税されるので注意しましょう。
大事なのは正しく相続税を申告して、正しい相続税を支払うことです。
相続が正しく行えるか不安な人は、必ず税理士に相談して進めましょう。
自分だけで相続手続きを進めてしまうと、意図せず虚偽の申告をしてしまう危険性もあります。
書き方が分からない場合は誰に相談したらいい?
先ほどの回答にあった通り、記載項目の中には金額の算出が難しいと思われるものもいくつかあります。
書き方等がわからない場合には、近くの税理士やファイナンシャルプランナーなど、相続税の扱いに詳しい専門家に相談するのがいいでしょう。
間違いないのは、相続の実績を持った税理士に依頼することでしょう。
相続税は他の税金に比べて、税率が高く設定されています。
そのため、しっかりと節税をしないと高い税金を払うことになります。
税金のプロである税理士に依頼して「どうすれば節税ができるのか?」というアドバイスをもらいましょう。
「税理士に相談すると費用がかかる」と心配になるかもしれませんが、初回の相談を無料で受け付けている税理士も多いです。
まずは初回の無料相談を利用して、そこから実際に依頼するかどうか決めるのがおすすめです。
いつ頃までに回答すればいい?
回答としては、「すぐに対応し、1か月程度を目途に回答したほうがいい」ということになります。
「相続税のお尋ね」は、ご家族が亡くなってから6か月から8か月ほど経ったころ、税務署から届くことが多いです。
これは、相続税の納付期限と関係しています。
相続税の申告書は、被相続人(相続財産を保有していた人)が死亡後、10か月以内の期間に提出を行うことが求められています。
相続にかかる手続きから考えると、10か月は非常に短い期間といえます。
相続財産を把握するための資料収集だけでも数か月かかることは少なくありませんので、もし自分での作成が難しいと感じたら、早めに税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
任意とはいえ、役所からの手続きを放置していいことはひとつもありません。
無視して余計に怪しまれることのないよう、早めに対処するようにしたいですね。
「お尋ね」が来ない場合はどうすればいいか
お尋ねは、税務署から「この相続は税金がかかりそうだから調査しよう」という書面によるチェックになります。
お尋ね自体にペナルティがあったり、なにか強制力があるわけではありません。
また全体の相続に対して税金がかかるケースは、かなり少数とされています。
そのため「相続をしたのに税務署からのお尋ねが来ない」というケースもあるでしょう。
お尋ねが来なかったとしても、相続人のやることは変わりません。
相続財産の金額・課税されるかどうかを確認して、期限内に手続きを進めてください。
お尋ねが来ないからといって、相続税の申告を怠っていると、脱税扱いされて重たいペナルティが課されるかもしれません。
相続で不安な人は、専門家である弁護士に相談しながら、相続手続きを進めていきましょう。
まとめ
この記事では、相続税のお尋ね「相続税の申告要否検討表」の正しい書き方についてまとめました。
このような書類が税務署から突然届くと、驚く方が多いでしょう。
「自分は相続税を払わなければいけないの?」
「そもそも、なんでこんな書類が届いたのだろう?」
調査が必要な箇所や提出の手続きなど、詳細な部分には専門家の手助けが必要かもしれませんが、書類の提出自体を怠ることのないようにしたいですね。
「相続税に詳しい」税理士が、あなたの申告をサポートします。
ご不明な際は、お気軽にご相談ください。